「天下り」とは何か (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880282

感想・レビュー・書評

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  • さっくり天下りについてまとめられているのでよい

  • 天下りの必要性に関する論法は身内?に甘いように感じ、正直、一介の自営業者に過ぎない私から見れば鼻白む内容であった。また、天下りの経済効用の点も、公務員内部のそれに止まり、社会全体の効用分析には程遠い(経済学者でない著者に求めるのは酷かも)。一方、天下りの実態分析、淵源、経緯は、見分談も交えられ、丁寧かつ有益な情報。著者の処方箋は、明示されないものも含め、恒常的な政権交代、随意契約など支出に関する情報公開の徹底、支出に関する責任者の明示と第三者への情報開示。年次主義の緩和の点は共感。
    ただし、公務員試験受験の年齢制限や官民移動が極小の現状が続く限り、公務員の身分安定や天下りは、自己保身・参入障壁と目されるのでは、との危惧を持つ。

  • 本書は、元キャリア官僚の著者が天下りについて論じた本である。内幕ものとしては面白いが新書のためか、内容が薄い感じがしてしまう。また、時代によって天下りの質が変化してきている事がわかる。

  • 元官僚であり公務員改革にも関与した筆者が、天下りの仕組みと問題点を指摘する。

    筆者は本書のなかで自身の客観性を主張している。しかし、この本の良さはむしろ筆者が官僚の気質やそれらを取り巻く雰囲気に精通している部分にあるのではないだろうか。官僚たちの天下りに対する本音、各省の気質に関する記述が個人的には勉強になった。

    違和感を感じた個所は、例えば公務員退職後の「職業選択の自由」について、一般会社員と対比して語られる個所がある。筆者のこうした心情は分からないでもないが、そもそも公務員と会社員は違うものであるし、焦点とされている退職後についてもどこか違和感が残る。根本的な問題点は退職後の待遇ではなく、退職者が溢れてしまう入省年次に基づいた垂直的な人事制度ではないだろうか。その点に関しての議論が少ないように感じる。

    注目すべきは、巻末の歴代事務次官の再就職先一覧であろう。こちらは所属の変遷まで記されており、資料的価値もあるだろう。

  •  いわゆる「天下り」問題について述べた本。この本で特に問題とするのは、キャリア官僚のうち、課長や企画官以上のポストにつく人が関連法人などに再就職する天下りで、これは全退職者(約1200人)の約6割にのぼる。

    興味深い記述
    ・天下りは国交省、厚労省など産業界との繋がりが深く、関連法人の多い官庁に多く、防衛省など関連法人が少なく、新しい省庁には少ない。また、環境省には上の定義にあてはまる天下りは存在しない。

    ・発生の背景
    50歳前後での早期退職慣行、年次主義(同期横並び昇進)、年金水準の低さの3つ。
     1つ目は若手に道を譲って昇進を促す狙いや、官庁内での派閥争いが関係する。
     そして3つ目は意外に思った。局長級の年金水準は英(1618万)、米(1394万)のキャリア官僚の半分以下である622万円。さらには、90年代以降の景気の悪化も、それまで問題になっていなかった天下りへの風当たりが強くなった。

    ・天下りの弊害
     税金の無駄遣い、官民癒着、官需に頼ろうと考える天下り先の活力と競争力の低下。

    ・天下りの長所
     政官界のパイプ役、公務員のインセンティブ(ご褒美)、安い人事コスト(天下り自体のコストは安い)。

     盲目的な批判や擁護に偏ることなく、天下りの実態が客観的に記されているという印象を受けた。必要なのは天下りを完全に根絶しようという強硬な姿勢ではなく、その弊害を最小限に抑えることだと思う。

     それにしても圧巻なのは最後の歴代事務次官の再就職先一覧。池田勇人や鳩山威一郎など国政を担った人の名前も出てくる。

  • [ 内容 ]
    元キャリア官僚が赤裸々に明かす、省庁別の実態から現役官僚の本音まで。
    天下りの知られざる全貌がわかる決定版。

    [ 目次 ]
    序章 官僚たちの「第二の人生」
    第1章 あまねく広がる天下り
    第2章 天下りはなぜ発生するのか
    第3章 省庁別に見た天下りの実態
    第4章 幹部官僚たちの天下り人生
    第5章 天下りの弊害
    第6章 当世キャリア官僚の本音
    第7章 受け入れる側の事情―民間企業・特殊法人・公益法人
    第8章 天下りは根絶できるか
    終章 建設的な議論のために

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    [ 参考となる書評 ]

  • 世界各国の大使ポストも天下り先のひとつ。
    財務省は天下りのチャンピオン、しかし財務省の役人は腰が低くてよい人が多い、調整能力を必要とする頭脳派だからだろう。
    昭和40年代までは政治化への転身が目立っていた。NTTはリクルート事件後、心がけていたのはできるだけ政治の世界と距離を置くこと。

  • 最近の世論では天下りは悪いという印象が感情が常態となっているが、著者は元官僚なので、内部事情も考慮して割と公平な論じ方をしているように感じる。それでも尚、天下りの温床となっている特殊法人や公益法人の増設は税金の無駄遣いという批判的な態度である。
    国家公務員というシステムや、政治と官僚の関係など様々な問題点を改良していかないと解決できない難しい課題であることもよく理解できた。政権が変わったことで変化が起きる可能性もあるが、あまり強引なやり方でも小手先の改革だけでもうまくいかない気がする。

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著者プロフィール

神戸学院大学現代社会学部教授。1964年、奈良県大和郡山市生まれ。同志社大学文学部英文科卒業、The School of Public Polich, The University of Michigan 修了(公共政策修士)、新潟大学大学院現代社会文化研究科(博士後期課程)修了(経済学博士)。大和郡山市役所勤務ののち、旧労働省入省(国家公務員Ⅰ種試験行政職)。厚生省生活衛生局指導課課長補佐(法令担当)、新潟県総合政策部情報政策課長、厚生省大臣官房国際課課長補佐(ILO条約担当)を経て、2004年公募により兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科助教授、その後教授。2014年より現職。2007年官房長官主催の「官民人材交流センターの制度設計に関する懇談会」委員、2008年からは国家公務員制度改革推進本部顧問会議ワーキンググループ委員を務める。主な著書に、『天下りの研究』『公務員バッシングの研究』(明石書店)、『政治主導はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)、『間違いだらけの公務員制度改革』(日本経済新聞社)、『財務省支配の裏側』(朝日選書)など多数。

「2018年 『没落するキャリア官僚 エリート性の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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