岩崎彌太郎─「会社」の創造 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880510

感想・レビュー・書評

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  • 面白い!名著。

    岩崎彌太郎の生涯を綴った本で良書に巡り逢うのは簡単ではない。そもそも書籍の数が多くなく、その上内容が薄っぺらい(参考文献の少なさ、考証の少なさ、著者の学の少なさが目立つ)ものが多い。そんな中、本書は傑出している。

    本書の面白さは、大きく二つある。

    一つは、筆者の記述スタイルにある。岩崎彌太郎自身の日記をベースに、筆者の軽快な文体で本文が進んでいく。面白くて飽きない。途中声をあげて笑う箇所がいくつもあった。その上素晴らしいのが、彌太郎関係の逸話や諸説に関して筆者が自ら考証を行っており、他書と比べたときに、岩崎彌太郎評・内容の正確さは光っていると思う。

    二つ目は、筆者が岩崎彌太郎という個人を通じて、「会社とは何か」というテーマに迫っている点である。筆者は、彌太郎を「会社」の創造者と述べ、三菱の創世記はすなわち会社の創世記であると述べている。

    明治維新後、資本主義社会に飲み込まれた日本においては、自ら「差異」=「価値」を生み出せる人材と、そしてそれを束ねる経営者が必要だった。

    岩崎彌太郎は、会社を作り運営していく能力(「価値」を生み出す人材を集め、活かし、組織化する)に長けており、その意味で資本主義という暴れ馬を乗りこなす能力が卓越していた。

    一方で、そんな彌太郎の生涯を顧みると、(後藤象二郎などに)振り回されるし、自分の願いは叶えられないし、と、なんか可愛い側面もある。

    明治維新後、資本主義社会に飲み込まれる日本においての三菱・岩崎彌太郎と存在と意味、そして人間っけのある彌太郎の姿、両方を味わえる、名著であった。

  • 渋沢栄一をベンチマークとして読んでみると非常に面白い。

  • 岩崎彌太郎以外についての、作者の主張が多過ぎて、鬱陶しい。もっと淡々と客観的に追っていれば、かなり良かったのに残念。

  • 先年岩崎彌太郎を描いたドラマがNHKであったが、そこで描かれていた岩崎彌太郎の姿に違和感を感じていた。
    彌太郎自身の日記や関係した人物の日記などに基づいたこの本を読んでみると、前に描いていたイメージとかなり違う彌太郎が書かれている。 

  • 面白い部分と面白くない部分があったかな。
    自分が岩崎弥太郎に対して持っていたイメージと異なるエピソードや考え方が描かれていて、そこはとても面白かったし勉強になった。
    岩崎弥太郎はこれまで思っていたよりは真面目な人だったかな。
    ただ、海運業を具体的にどのように拡大していったのかというところが、省略されてしまっていて、そこを期待して読み始めた分、残念であった。

  • 新しく生まれた均一な商業空間 近代的な市場において継続的に利益を生むためには、情報伝達や輸送手段の速度の優位性、様々な情報を厚め分析し、応用することのできる高度な教育を受けた人材、さらには、それらを組織として束ねるとともに、先見的な洞察力を持つ経営者が必要とされた。岩崎弥太郎と三菱は会社を創造することによって、近代的な資本主義の世界にいち早く、またうまく適合したがゆえに、江戸期以来の豪商達との競合に負けなかった。両者には、近代以前と近代以降の違いがある。岩崎弥太郎が追い求めたものとはいかに。300ページ以上に渡って語られる渾身の一冊。

  • [ 内容 ]


    [ 目次 ]
    第1章 その人となり
    第2章 岩崎彌太郎の修業時代
    第3章 修業時代の終わり
    第4章 長崎土佐商会
    第5章 余人を以て代えがたし
    第6章 大坂に拠点を移す
    第7章 三菱誕生
    第8章 「政商」への道
    第9章 岩崎彌太郎の残したもの

    [ POP ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 三菱の創始者として名高い岩崎弥太郎。本書はいわゆる「作家の手による歴史モノ」のジャンルに含めて良い一冊だが、作家の作品にしてはどうも面白みが足りない。もしかすると、それは作家の力量のせいではなく、岩崎弥太郎という人物が、実はまじめに取り扱うとそれほど面白くないということに起因するのかもしれない。あるいは、真偽不明なエピソードをちりばめずに「歴史」をまじめにやり過ぎたのが災いしたのかもしれないが、いずれにせよ、現代に生きる一読者にとっては、ちょっと残念な本であった。

  • 2010.12.14~29 読了
    彌太郎や近親者が残した日記から彌太郎の生涯をたどっている。NHK「龍馬伝」が執筆のきっかけとか。現代の会社、会社員に通ずる概念を初めて定義付けたのは彌太郎が造り上げた三菱だ、とする。

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著者プロフィール

伊井直行(いいなおゆき)
1953年、宮崎県生まれ。83年「草のかんむり」で群像新人文学賞、89年『さして重要でない一日』で野間文芸新人賞、94年『進化の時計』で平林たい子文学賞、2001年『濁った激流にかかる橋』で読売文学賞受賞。他の著書に『お母さんの恋人』『青猫家族輾転録』『愛と癒しと殺人に欠けた小説集』『ポケットの中のレワニワ』『岩崎彌太郎「会社」の創造』『会社員とは何者か? ─会社員小説をめぐって』などがある。

「2016年 『尻尾と心臓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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