なぜフランスでは子どもが増えるのか -フランス女性のライフスタイル (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880527

作品紹介・あらすじ

女性がハッピーな国は子どもも増える!?その真相を歴史的背景から解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • フランスではなぜ子供が多いのか、なかなか興味深いことだと思い読み進めてみた。
    ヨーロッパでは今で言う少子化対策が昔から行われていたが、フランスでは特に早くから少子化対策に繋がることを行なっていたという。
    育児は社会全体で支えて行うものであるということが広く国民に浸透し、政府もそれを実行した結果なのだと思う。
    フランスで行ったことを日本でそのまま行うことは、文化的な背景からも無理があるが、一部分を取り入れて実行することは良いのではないかと思う。

  • フランスに学ぶ少子化対策」

     日本で少子化が問題となってすでに久しい。ところが、同じ経済先発国でもフランスでは子どもが増えている。私も長年フランスに住んでいて、子どもを持つ両親に対する保護政策が功を奏しているのだろう位しか考えていなかった。しかし、中島さおりの『なぜフランスでは子どもが増えるのか』を読むと、そう簡単にはまとめられない事情がからんでいることが良く分かる。
     話は、洋服の胸の開き加減から始まる。中島は日本とフランスの服の違いは、胸の谷間の深さの違いにあると言い、フランスの服は日本のものより5ミリほど深くなっていて「女がセックス・アピールを誇示することに対する社会の許容度の差が、あの五ミリの差なのである。」と述べる。
     私の家の近くに、日本人のシェフが経営するフレンチレストランがある。豊かな胸のウェイトレスが入ると男性客が急増し、彼女がやめると男性客が減ると、シェフの奥様が話してくれたことがあった。嘘のような本当の話である。たかが5ミリ、されど5ミリなのである。

     下着の話も面白い。日本では女性が下着を買うときに男性が付き添うのはなかなか抵抗があるが、フランスでは普通のことだ。そして、日本でヒットしている下着は、フランスでは売っていないらしい。つまり体型をカバーするような下着だ。これはフランスでは薬屋にでも行かないかぎり、ほとんど売っていないようだ。中島の結論は以下の通りである。

     「日本とフランスの下着は、目指す方向が逆なのではないかと私は思う。日本の女性下着の強みは、上に何か着たときに女性を美しく見せることだ。それは、万人向けに女性を美しくするが、それを脱がせる男のことだけは考えていない。」

     手をたたいて賛成している不埒な紳士の姿が見えるようだが…

     フランスでは元来「婚外恋愛」が基本であるというのも興味深い。かつての貴族らの結婚は財産相続が目的であり、それ故に夫婦間に恋愛感情は育たないし、そういった感情を持つことは「恥」であった。故に恋愛スキャンダルには寛大だ。クリントン大統領は、研修生との密会が大スキャンダルになったし、日本でも愛人問題であっという間に首相の座を下ろされた人もいた。だが、フランスのミッテラン大統領は、隠し子についてマスコミに質問されたときに「いるけれども、それで?」の一言で済んでしまった。

     フランスは恋愛に関して「大人」であり、カップルで人生を楽しむのが当然となっていて「子どもは神様」ではない。中島の夫はフランス人だが、娘が2歳の頃パパとママが仲が良いのに嫉妬して父親に「C’est pas ta maman!(あんたのママじゃない)」と抗議したらしい。日本だと父親はどうするだろうか。分かった分かったと言って、母親を譲るか、一緒に遊ぼうと言うのではないだろうか。だが中島の夫はあわてずに「Oui, mais c’est ma femme(だが、私の妻だ)」と言う。

     中島の考察は「母親というアイデンティティ一色に染まらなくてもよい。つまり、子どもを産むことによって失うものが比較的少ない。」となる。確かに日本では、出産すると夫と二人で出かける機会は極端に少なくなり、母親は家に縛り付けられ、友人と会う機会も少なくなる。せいぜいママ友ができるくらいだろうか。フランスでは幼い子をベビーシッターに預けて、二人で食事や映画に行くことは当たり前だ。要するに大人中心であり、カップル中心なのである。

     ピルが解禁され、専業主婦がほとんどいなくなり、パックスという「結婚」より緩やかな関係が存在し、3歳以上はほとんど子どもの教育費がかからない。こういった条件があるからこそ、フランスでは子どもを産みやすく、育てやすいのである。移民が多いせいだという人もいるが、移民が出生率に貢献しているのはせいぜい0.1%にすぎない。

     日本がフランスの制度を取り入れたからといって、すぐに子どもが増えるとはいえないだろう。培ってきた伝統が違うので、そう簡単な話ではない。だが、「草食系」男子が増えたから、若者が結婚しなくなったからと嘆く前に、結婚しやすく、子どもを産みやすく、子どもを育てやすくする方法を考えてみる価値はある。この一冊にはそのためのヒントが数多く潜んでいる

  • あまり肩に力を入れて読んではいけません。

    とにかく、フランスの文化を知ることのできるエッセイとしては素晴らしいけれど、フランスの出生率が高い理由を述べる論文としては、全く掴みどころがなくて無責任な本だと思う。

    「乳母」文化(17世紀)が根付くフランス、子供より夫婦、のフランス、母より女、のフランス。3歳児から「保育学校」に入るフランス、労働者の権利が確立されたフランス、事実婚「パクスPACS」が制度的に保証されているフランス。

    これらのファクターのどこに、日本の少子高齢化を少しでも改善するヒントが隠れているのだろう???

    多分、専業主婦というシステムは、出生率向上に寄与しているのだと思う。周りを見ていても、そういう古いタイプの家には複数の子どもがいる場合が多い。

    問題は、そういう古いシステムを選ぶ女性が減っているということ。或いは、減らして女性の社会進出を進めなければ、日本の国力維持がままならない、ということ。

    そういう前提で少子化を食い止めるには、「土日も勤務場所もいとわないオトコ」と「お茶くみ程度のジョシ」という二元的な食の在り方を見直す必要があるのだろう。

    「働き方」という姿勢論ではなくて、「仕事」というアウトプットの質と量で労働を評価する文化を少しずつ根付かせていくことが必要だし、大企業を中心に、物理的なインフラ整備を進めること、そういう整備を進めている企業を世の中が認めること、そういう評価が株価などの経済的な価値に繋がるような情報開示とシステムの導入を進めること。

    そういうことが必要なのだろうと思う。

  • これまでの著作は著者の主観的な要素が比較的多かったように思うけど、本作は史実やデータなども用いて客観的な視点から書かれている。女性に求める母性的な要素を減らすこと、子どもの教育にかかる費用を社会で負担する…などなど色々と女性の出産や子育て促進に向けた提言が紹介されていたけど、アラサーの日本女子としては、女性自身の意識も結構、相手に依存的な部分が多くて、フランス式?を取り入れるに際し先ずは意識改革も必要なんじゃないかと思った次第。

  • 今までのフランス出生率関連の書籍のなかでは比較的イイ出来。フランスの出生率の高さは、決して出生率向上を目指した近視眼的な政策からではなく、60年代別からの女性の社会進出を推進する政策や、労働者の権利を守るための法律、68年革命以降のピルの解禁や中絶の合法化、同一労働同一賃金など、非常に重層的に仕組が出来上がったのだと納得。それらは結果的に出生率向上に繋がったのであって、政府はむしろプライベートには干渉しない立場を取っていたようだ。ヨーロッパに比べ、日本が遅れているというのは最近あまり使われない論法だが、ピルの解禁が90年代後半だったことや、男女雇用機会均等法にしても壮絶な闘争の末に勝ち取った権利ではないことを考えると、やはり日本人の権利に対する意識はヨーロッパより遅れているのだなという感想を持たざるを得ない。単純に出生率向上という視点で政策を考えていたのでは、あまり効果は見込めないだろう。
    自分がフランスにいた経験から思うのは、フランスでは子供は未熟な大人であり、子供中心の生活になることはない。子供と大人は別世界に住んでいる。また子供時代への郷愁も比較的少ない民族である。児童文学の貧しさはそれを明確に表している。そんな子供や子供時代を理想化せず、過剰すぎる期待をしないことも、子供を作る重圧を下げていると思う。日本は子供に期待しすぎるし、子供時代への郷愁が非常に強い。それは悪いことではないが、出産へのプレッシャーを上げていると思う。

  • あまり面白くなかったので途中で返却。

  • ラテンの血なのか?フランス人は母より女性、育児は社会で行うものという意識なんだろうな。
    日本では根強く、母は女性の自分より子供を優先すべきという意識があるが、制度が整ったら、変わるはず。先ずは制度だけでも取り入れてほしいな。

  • 本書のタイトルの問いに対する意外だった答えは、フランス女性の心、価値観の中で占める育児の割合、別の言い方をすれば、妻である、それ以前に一人の女であることに対する母親であることの割合が、日本女性のそれよりも低いということである。

    著者は、社会の成熟、少子化という社会問題、女性も働かなければ生活水準を維持できないという家計の問題は、日本よりもフランスのほうが30年先行しているとし、女性の社会進出の進展、各種社会制度の変化、世論の認識の変化等により、いづれ日本でも女性が働きながら子どもを持つことがよりいっそう進展するだろうと、楽観視している。

    12月7日読了。

  • 後半随分文章が読みにくくて頭に入って来なかったけど、日本とフランスの国の違いを感じることができた

  • 果たして2015年の日本人は少子化を解決したいと思ってるのか?とこの本を読んで思ってしまった。

    フランスの少子化対策は何かこれ一つという解決方法があったわけではない。

    女性の職業への自立
    3歳までの子供の補助
    結婚契約の緩和(パックス)
    など
    いい方向へ可能性を繋げていくという事しか
    やりようがない。

    今の日本にそのまま当てはめるのは難しいように感じる。日本では解決するためにお飾りの少子化大臣を置き、頑張ってますアピールをするのが関の山だ。

    ただ悲観するのはよくない。
    子供が生まれて歓迎しない社会は
    社会としての健全性を欠いているのではないだろうか。

    肩の力を少しだけ抜いて
    隣の人と話す事から始めるべきか。

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著者プロフィール

1961年東京生。翻訳家・エッセイスト。『パリの女は産んでいる』で第54回日本エッセイスト・クラブ賞受賞。著書に『パリママの24時間』他、訳書にラシュディ『郊外少年マリク』他。家族と共にフランス在住。

「2016年 『哲学する子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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