フリーライダー あなたの隣のただのり社員 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880565

作品紹介・あらすじ

まじめに働いても報われない本当の理由。こんな社員が会社を滅ぼす。

感想・レビュー・書評

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  •  フリーライドとは、ただ乗りのこと。組織内で仕事をせずに成果や地位だけちゃっかりいただくことを言います。
     今まで仕事をしていて「フリーライドされる」「フリーライド問題」という言葉は頻繁に使ってきました。が、本書ではフリーライダーについて類型的な分析と考察、そして対策まで書かれています。出版は2010年6月となっていますが、もっと早く読んどけば良かった…と後悔するくらいオススメの一冊です。

     まず、フリーライダーを「サボり系/略奪系」の縦軸と「実務的負担系/精神的負担系」の横軸で4象限に分類しています。
     第1象限(サボり系・実務負担系)はアガリ型。出世の見込みがなくなった年配の社員など、仕事をせずその(正社員という)地位にあって利益を享受するタイプです。
     第2象限(略奪系・実務的負担系)は成果・アイデア泥棒型。他人の手柄を自分のものとしてかっさらっていく奴です。
     第3象限(略奪系・精神的負担系)はクラッシャー型。自己認識と客観的認識がずれていて「自分は本当はできるんだ」と思い込み、上手く行かないことがあると「周りが悪い、自分は傷ついているんだ」と周囲を責めつつ被害アピールをしてくるタイプです。
     第4象限(サボり系・精神的負担系)は暗黒フォース型。守旧的でネガティブなことしか言わず、新しいことにケチを付けて周囲のやる気を削ぐタイプです。

     物事は4つに分類するのが基本、とどこかで読んだんですが、こうして見るとそれぞれのフリーライダーの特徴がつかめ、同時にぴったりの例に思い当たります(笑)。

     このようなフリーライダーに対しては、ついついペナルティを与えて解決しようとしてしまいがちです。が、本書では社会心理学の知見を紹介し、罰を与えるやり方は上手く行かないことが多く、協力者を褒めるやり方の方が上手く行くことを提示します。
     一見まだるっこしいようにも感じますが、「罰より褒め」は、最近色々なところで聞かれます。コーチングなどの指導法の世界では、叱って教えるのではなく、叱らず自分で気付かせるようにするのが一般的ですし、犬の躾でもできない時に叱るのではなく、できた時に褒めるのがトレンドです。
     無視というのはする方にも指摘したいのを我慢して気付かせるという意味でストレスがかかります。が、マザー・テレサが「愛の反対は無関心である」と言っていたように、無視というのは思っている以上に効き目があるようです。

     これらを踏まえた上で、本書は、組織でできる対策と個人でできる対策に言及します。その中で特に印象に残ったのは、他人はどうあれ、自分は積極的に相手に感謝を伝えるなどしてフリーライダーが発生しにくい「いい空気」を作っていく、というもの。
     これを読んだときに思い出したのが、内田樹の贈与経済の話です。内田氏がどこかでサッカーを例にこの話をしていたのですが、サッカーでは、良いパスを積極的に出してくれる人の所にボールが集まるようになっている。だから、ボールが欲しかったら、ボールを要求するのではなく、逆にまず自分が良いパスを積極的に出していかなければならないわけです。確かに、自分がした仕事に対する感謝というパスを出してくれる人は嬉しいですから、人が集まってきます。そしてそういうネットワークが共有されだすと、そこにフリーライダーが入ってきても、誰もパスを出さなくなります(なぜならフリーライダーは仕事をしてないわけで、他人に対してパスを出さない奴なわけですから)。
     夢物語に感じるかもしれません。が、だからといって自分までフリーライダーっぽく振る舞うのは、それこそフリーライダーのまき散らす不快な感情に感染してしまっていることに他なりません。本書で何度も言及されているのですが、フリーライダーというのは誰もがなりうる可能性のあることで、特定の気質を持った人間だけがなる特殊なものではありません。そうであるとすると、フリーライダーを敵として認識するのではなく、フリーライダーを生むような環境を改善することで、フリーライダーのフリーライド状態を解消させる方向で考えるべきだ、ということになります。

     非常に面白い本で、フリーライド問題を考える上で必読の書だと思いますが、一つだけ憂鬱なのは、多分コレ、当のフリーライダーが読んでも「ああ、あるある!これって○○の事だよね!」となるんじゃないかなぁ、ということ(笑)。知り合いが「ニーチェの想定外」というテーゼを言ってたのですが、ニーチェは自分が批判した大衆が、まさか自分の大衆批判を使って「大衆はさぁ…」などと言い出すとは思っていなかった、というものです。そういう意味では、本書もフリーライダーにフリーライドされる虞はあるかもしれません。(ま、そんなことを言い出すと、どんなに優れた性格分類法も、使い手が下手だと血液型占いレベルの決め打ちアイテムに堕してしまうわけで、もはやそれはツールの責任ではないのですが…)

  • フリーライダーを4種類に分類。
    他のみんなが頑張っているなら自分はサボったほうが労力に対する報酬が合理的になる。
    組織でする対処法は実行できそうもありませんが個人としての心構えは実行していきます。

  • フリーライダーを考えることはその逆のよく働く人間を考えることであり、フリーライダーを生む土壌を考えることはその逆の良い環境の職場を考えることなのであった.
    適切な成果主義の運営がフリーライダーの増殖を阻む.
    成長意識を持つ、新しいことに興味を持って参加していく、周囲に感謝していくことが、自分がフリーライダーにならないこと、ひいては周囲の人間もフリーライダーにしないことにつながっていくのであった.
    軽い文体でボリュームも少ないけれど要点は参考になった.

  • ビジネスにおけるフリーライダーについて。その分類,発生原因,対処法。学校におけるフリーライダーも同じか。いや,少し異なる気もする。
    p.227:フリーライダー問題に対して個人でできること:自分がフリーライダーにならないこと。負の増殖を回避するために。①成長意識を忘れない,②巻き込まれ力を高める,③おもしろがり力で近寄ってみる,④常に感謝の気持ちを忘れない。この4つ,人生を楽しくする方法でもあるな。


  • 企業で仕事している人みんなが、そうそうと思えるフリーライダーを取り上げるこの身近な感覚、さらにはそれに対する解決案の提供もあって★5つ。

    フリーライダーを4つの種類に分けて特徴と対策、自分がそうならないための施策を提供。
    職場の身近にいる人に当てはめながら読めばあら不思議、直ぐにそれぞれの特徴が理解できて話を読み進められます。
    彼らに対して、組織として、個人として彼らとどう向き合うのがよいのかの問題解決を提供してくれるでしょう。
    人事部、組織人事、評価をする立場の役職者などはぜひ読んでおいたほうがいい本。

  • 『社内失業 企業に捨てられた正社員 』(双葉新書)
    http://mediamarker.net/u/wishmountain/?asin=4575153613
    と対比して読むと奥深い。

    結局、"フリーライド"というのは日本型経営の持病ではないのか?

  • 本書は、あるある感だけで終わってしまうような内容について、わかりやすく論じるとともに、その対策も詳細に書かれているなかなかの内容。

    まず、フリーライダーの定義として4種類の生態を紹介。そしてフリーライダーが生まれる背景についても説明がなされ、ここまでは「あるある感」たっぷり。

    その後、それら4種類のフリーライダーへの個別の対策は、働いている限り手元に置いておく以外の選択肢を与えない手法が紹介されている。

    たとえば、本書では「帰属理論」という聞きなれない理論から、人物をどのフリーライダーの型に当てはめるのかを決定する手法を説明する。タイトルや似たような内容の書籍とは異なり、より実践的な内容であり、もはや新書としての枠を超えているともいえる。

    おもしろいのは「フリーライダー対策は誰が行うのかというジレンマ」として、「論理的に考えると社内で対策を行うと、対策にならない対策になるので、外部からの介入が必要」とはっきりと明言するあたり。
    この指摘に対して、痛いところを突かれたと感じるか、いや自分ならできると開き直るか。どのように対策を進めていくかによって、企業の行く末が分かれるところなのだろうと感じた。

    もっと早く読めばよかった。

    https://twitter.com/prigt23/status/1063019951395549184

  • 105円購入2013-01-12

  • あるあるネタの連続で面白かったけど、最後の草食系社員のくだりはあまり説得力なかった。感謝を表明することの重要性には大いに共感。まっとうな人間関係はギブ&テイクのバランスの上に成り立つよね、としみじみ思う。

  • サボってばかりで何もしない社員、部下の頑張りを搾取する社員など「ただ乗り」と呼ばれる社員の発生原因や類型、フリーライダーを生み出さないために会社ができる対策について書かれた本。
    どの組織にも多かれ少なかれこのフリーライダーがいるはず。彼らを生み出さないために出来ることがいろいろ書いてます。なかなか興味深い本でした。同じ筆者の『不機嫌な職場(2008講談社現代新書)も合わせてオススメ。

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