消費税のカラクリ (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880596

作品紹介・あらすじ

消費税とは弱者のわずかな富をまとめて強者に移転する税制である。…大口の雇用主に非正規雇用を拡大するモチベーションを与えて、ワーキング・プアを積極的かつ確信犯的に増加させた。…これ以上の税率引き上げは自営業者の廃業や自殺を加速させ、失業率の倍増を招くことが必定だ。…消費税は最も社会保障の財源にふさわしくない税目なのである。-誤解だらけの「消費税増税不可避論」に異議あり。

感想・レビュー・書評

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  • 消費税がどのような税なのか、漫然と社会保障に必要な国民に平等にかかる税だから、目的税として税率を上げて広く薄く国民全員で負担していくすばらしい税だ!というのが大間違いの大企業・金持ち優遇のとんでもない税だと言うことがこの本には詳しく、資料等を元に書かれている。

    特にサラリーマンと自営業者を分断して税を払わない中小企業の経営者を悪者にして、消費税を肯定させるPRを電通を通じて膨大な費用を使い納得させている。

    しかし、本質は強気を助け弱気をくじく最悪の税制だと認識しました。

    消費税の増税論議をただ他人事のように肯定する前にぜひ一度読んでこの消費税のカラクリをしっかり知ってもらいたいです。

    国民に平等に薄く広くかけられる消費税というイメージは作られたもので、大企業には莫大な戻し税や人件費も派遣を利用することですり抜ける優遇など、この最近出てきた雇用の社会のひずみなど、消費税が原因だったことがよく分かります。

    輸出企業にとっては国内で支払った消費税が海外輸出製品となった段階で全ての消費税が返還され、それが利益になったりしている。

    もうけた企業が累進課税でもうけた部分にかかる税であれば不公平はないが、利益の出ていない赤字の中小企業・自営業者にもまったく同じようにかかる税、確かに消費税を中小企業・自営業者が適正にもらうことが出来れば問題はないのかもしれないが、実際は値引や適正でない価格でも自腹で吸収している中小企業や自営業者がその消費税のおかげで廃業や倒産に追い込まれている。

    自殺者の比率に自営業者が増えていること、そして小泉改革時代も含め今だに自殺者が3万人を超えているひずんだ国、日本。

    消費税をこれ以上税率を上げれば確実に中小企業・自営業者はばたばたと倒れていき、大手のチェーン店や大型のスーパーなどがふえ便利にはなるだろうが、日本という国や地方や地域というところでがんばっていたそれらの産業や商店など皆無となり、パートや契約社員・派遣社員ばかりになったおかしな国に突き進んでいくことになります。

    立ち止まれ!消費税増税はバラ色の未来などほとんどないぞ!

  • 『本書は消費税論の決定版である。』と謳っているものの、根拠の薄い推論などを並べて単に消費税批判をしているだけという、まったく役に立たない本であった。

    そもそも、著者は消費税の問題点として、
    ・税制上の問題
    ・実務上の問題
    ・運用上の問題
    あたりを挙げている。

    まず、税制上の問題だが、
    ・消費税に問題があるから中小企業者の自殺者が急増した
    ・弱者から強者への富の移転にすぎない
    と特に根拠もなく(あっても意味不明)主張する。

    実務上の問題として、
    ・卸業者が価格に転嫁できない
    ・免税事業者や益税問題などが存在する
    などを挙げているが、これは消費税の問題ではなく業者間の問題である。
    店頭で消費税を支払っている消費者としては「何をふざけたことを言っているのか」と憤らずにはいられない。

    あとは財務当局が世論操作しているとか、導入するときに強行採決したのが悪いとか、それも消費税の問題ではなく政治行政やの問題であり、もう難癖でしかない。

    消費者として消費税が上がるのは嬉しくない。
    財政不安についても財務当局の煽りが多分に入っているのも理解している。

    しかし、この本を読むと逆に著者など消費税反対派に反感が向ってしまうように感じた。
    ヘタすると消費税反対派の評判を落とし、消費税を円滑に導入・税率アップするための財務当局の陰謀本なのではないか、と疑うぐらいひどい本でした。

  • なんだか内容が「軽い」です。消費税は儲からなくても払わなければいけない税金。だから、中小企業を苦しめている。という事例が多々でてきます。
    でも、それって赤字企業ですよね?確かに消費税は負担になる税金ではあると思います。でも、赤字企業は赤字なのだからいずれ経営は行き詰まる。消費税のせいだけはないのでは?と感じました。
    消費税は不要とときつつ、行政の無駄をはぶくのが対案というのも・・・。行政の無駄をはぶいて、今の歳出を1/2にできるの?という気も。
    筆者の世の中の現状に対する怒りというのは伝わってきます。ただ、個々の状況にとらわれて、グランドデザインがないかな。という感じがしました。

  • 日本の消費税の構造上の問題からくる零細中小企業、個人事業主の苦悩を事例を用いながら説明してくれる。
    まず、消費者から預かる消費税の金額=税金として収める金額では無いという預かり金的という複雑な性質。特例として消費税の免税優遇を受けている法人もあるという益税としての扱い。
    消費税の滞納問題、失業率や自殺率など、本当にこのまま消費税を増税してもいいのか?国庫の深刻化だけで増税を納得できることではない。

  • 消費税の増税が実施されると、増税分を価格転嫁できない大多数の中小企業が倒産し、日本が混乱する。政府の見解では、『パパママストアがディスカウントスーパーに代わり、経済効率の良い社会になるのだから、スクラップアンドビルドによる多少の犠牲はつきものだ』というものでしょうか。
    僕はこの是非を別にして、よりオープンに議論してもらいたいです。地方に行っても全国チェーンのお店が並び、代わり映えしない画一な地方が日本全体を覆って良いのか、地方の根幹を揺るがすテーマに繋がるものなので、政府だけでなく様々な人々が考えなければならなりません。
    僕は消費税の引き上げには賛成でしたが、国税の中で消費税の滞納額が一番多い事を本書で初めて知り、ならばと反対します。この状況で消費税率を上げたとして、十分な効果が出るとは思えません。もっと別な方法で税収を増やすべきでしょう。
    ただ、本書ではあまり述べられていませんが、中小企業の消費税支払いは、年間売上高が1000万円以上でないと納税義務が発生しません。まぁ、そういった免税中小企業は、価格転嫁できないところが大半だろうから、別に気に留めなくても良いのでしょうが、問題は、そのことを我々消費者がきちんと認識しているか、ということです。我々消費者がきちんと支払っていると思われる消費税を『猫ババ』されていると自覚した上で、『消費税分を価格転嫁できない中小企業の苦しさ』をどう考えるのか。それを『制度の欠陥と捉えて、納税制度を是正しなくてはならない』と思うのか……。
    消費者側の視点ではなく、中小企業側の視点から見ると、消費税の在り方には様々な疑問点が残っており、拙速な議論ではなく、より良い税の在り方を学ばなければならないと思いました。僕の感想はA+にします。

  • 自分の父親も零細企業の経営をしていたという筆者の力作だ。私も零細自営業だが消費税をのせたら値引きを求めてくるクライアントなんていないので全く知らなかったが、下請けの立場にあるとそれは日常茶飯事で、消費税率が上がると自腹を切ることになるらしい。その一方で大企業は消費税の還付を受けられる仕組みとなっているそうで(そのカラクリはもう忘れてしまった)、実情を知ると本当に許せない制度だとわかる。他の人も消費税率が上がるたびに日本の景気は悪くなってきたと言っているし、一部の人が喜ぶだけの税なのだろう。なのに立憲民主党は絶対反対と言ってない?

  • 「消費税反対」の立場の本です。

    ここのところ、消費税について、いろいろ本を読みました。
    消費税については、増税(税率のアップ)を含め、賛否両論ありますが、概ね以下のように言えるように思います。
      ・賛成派:国の財政や社会保障を視野に、長いスパンで考えた上での姿勢
      ・反対派:制度の不備による不利益を解消したいが故の姿勢

    また、反対派の意見については、よくよく考えてみると、従来から存在していた制度上の不備が、消費税の導入や増税によりあぶりだされた結果、消費税が悪者にされている面もあるように思います。

    ちなみに、本書の著者は、消費税の代替手段について、「ここではスペースがないし、本書の意図とは異なるので述べないが、私には考えがちゃんとある」という趣旨のことを述べるにとどまっており、本当に代替案があるのかどうかは不明です。

    この本については、全体的に、著者(消費税反対)にとって都合のいい話だけを集めたエピソード集、という感がぬぐえません。
    が、逆にいえば、消費税の反対派の意見を知る上では、参考になると思います。

  • 消費税はきわめて政治的意図を持って導入されたもので、
    自営業者へのダメージは計り知れない。
    社会保障に役立つなんて、とんでもない。
    だからやめるべき。

    という主張が、歴史的経緯や制度設計、影響を受ける人など
    様々な側面から述べられている。

    代替手段として挙げられているのは
    法人税強化や無駄な支出削減で、
    そうだけどそれだけじゃ、、という印象もある。

  • 逆進性や経済抑制だけではない、弱者が負担を強いられる消費税の問題点を解説した本。

    消費税については逆進性や経済抑制の問題がよく取り上げられています。しかし、消費税の問題点はそれだけではありません。消費税増税により、零細企業や個人事業主を壊滅させる危険性があることを、本書は解説しています。

  •  消費税率増に対する恨みつらみで練り固まったスタンスで、政府や新聞の論調とはまるで違う印象。だがスタンスはともかく、知識として知らなかったことが幾つもあった。
     消費税は国税の中で滞納額ワーストワンであることは知られていない。その原因は中小零細業者は価格に消費税を転嫁しにくいため、かたや大企業からの仕入れは消費税が転嫁されていることから、税率増はイコール利益圧縮になっていることにある。
     消費税率増の問題点として逆進性と益税と景気冷え込み招来があげられているが、大半の中小企業では益税となることより価格転嫁できないしわ寄せを受ける損税であることが看過されているという指摘があった。
     ビックリしたのが仕入税額控除の仕組み。輸出業者が海外にその商品を販売する場面では消費税ゼロとなるため、仕入れ税額をまるまる還付請求できる仕組みであることから、実は消費税率増は輸出業者にとってイコール還付額増という大歓迎すべき事態を生んでいること。
     つまり税制改革で法人税減税と消費税率増をセットで導入することは、自動車や鉄鋼を輸出する日本の大企業にとってはダブルで利益を生んでいることが全く知られていないことだ。
     あと消費税率を論じる際にヨーロッパではどうだ福祉国家ではどうだという話題がのぼるが、実はアメリカではEC型付加価値税はいまだに導入されていない。逆進性さらには行政コストがでかいことが理由とされている。
     消費税は法人税や所得税と異なり景気や人口構成に左右されにくいことから(例:不景気だと売り上げはさがる。高齢化だと労働人口が減り所得税は徴収しにくい)、財務省は消費税率をとかくあげたがっているが、消費税というごく身近なもの1つをとっても、とかく情報を多面的に知っておくことは物事を自分のアタマで考えるうえで大事であることを知る嚆矢といえよう。

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著者プロフィール

ジャーナリスト。1958年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業。英国バーミンガム大学修士(国際学MA)。新聞記者、週刊誌記者を経てフリーに。さまざまな社会問題をテーマに精力的な執筆活動を行っている。『「東京電力」研究 排除の系譜』(角川文庫)で第三回いける本大賞受賞。著書に『日本が壊れていく』(ちくま新書)、『「心」と「国策」の内幕』(ちくま文庫)、『機会不平等』(岩波現代文庫)、『『あしたのジョー』と梶原一騎の奇跡』(朝日文庫)など多数。

「2019年 『カルト資本主義 増補版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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