村上春樹を読みつくす (講談社現代新書)

  • 講談社 (2010年10月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784062880718

作品紹介・あらすじ

リトル・ピープル、羊男、ドーナツ、井戸、螢、海辺……。全作品を通じて、村上春樹が読者に伝えようとしているものとは。世界各国で読まれながら、それでもなお濃厚に漂う「日本」とは。25年にわたって村上氏と対話をつづけてきた文芸記者が、謎に満ちた物語世界を案内する入門書。初級者もマニアも、読めば「目からウロコ」間違いなし!


リトル・ピープル、羊男、ドーナツ、井戸、螢、海辺……。
全作品を通じて、読者に伝えようとしているものとは。
世界各国で読まれながら、それでもなお濃厚に漂う「日本」とは。
25年にわたって村上氏と対話をつづけてきた文芸記者が、
謎に満ちた物語世界を案内する入門書。


【目次】
一章  近い「生」と「死」の世界
二章  今そこにある言葉への不信
三章  動物の力
四章  偏愛する図書館  
五章  ブーメラン的世界
六章  「あちら側」と「こちら側」
七章  永遠のヒーロー・羊男
──など、全二十章


【著者紹介】
1949年群馬県生まれ。
一橋大学卒。73年共同通信社入社。
川崎、横浜支局、社会部を経て、84年から文化部で文芸欄、生活欄などを担当。
現在、同社編集委員兼論説委員。
著書に『文学者追跡』(文藝春秋)、『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』(共同通信社、文庫版は新潮文庫)、『白川静さんと遊ぶ 漢字百熟語』(PHP新書)など。

みんなの感想まとめ

村上春樹の作品世界を深く掘り下げる本書は、彼の代表作から選ばれた20のテーマを通じて、読者に新たな視点を提供します。「生」と「死」などのテーマが織り交ぜられ、作品間のつながりや日本の古典との関連性が考...

感想・レビュー・書評

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  • 著者、小山鉄郎さんは、ウィキペディアによると、次のような方です。

    ---引用開始

    小山 鉄郎(こやま てつろう、1949年5月3日 - )は日本のジャーナリスト。元共同通信社編集委員兼論説委員。日本記者クラブ賞受賞。

    ---引用終了


    で、本書の内容は、BOOKデータベースによると、次のとおり。

    ---引用開始

    リトル・ピープル、羊男、ドーナツ、井戸、螢、海辺…全作品を通じて、読者に伝えようとしているものとは。謎に満ちた物語世界を案内する入門書。デビュー作『風の歌を聴け』以降、『1Q84』までのすべての長篇に触れながら考察した。

    ---引用終了

  • 『風の歌を聴け』から『1Q84』にいたるまでの村上春樹の作品のなかから20のテーマをえらび出し、それぞれについて作品横断的な解説をおこなっている本です。

    「あとがき」には、著者が母の病床の傍らで村上の「螢」を読んでいて、不思議な心の落ち着きが訪れたという体験が語られています。こうした体験が出発点となっているのでしょうが、著者は村上作品における「生」と「死」というテーマを論じた第一章で、『ノルウェイの森』のなかの蛍をめぐるエピソードと、和泉式部の「もの思へば澤の螢もわが身よりあくがれ出づる魂かとぞ見る」という歌をかさねる解釈を提出しています。

    このほかにも、日本神話や『平家物語』、『雨月物語』といった、日本の古典と村上作品とのつながりについて、考察のいとぐちがいくつか提示されていることが目を引きます。著者は、『螢・納屋を焼く・その他の短編』の紹介文を執筆したときに、和泉式部についても論じたことを振り返って、「当時、村上作品はアメリカ文学との関係で語られることが多く(もしかしたら今もそうかもしれない)、日本の古代の歌に触れながらの紹介はまだ殆どなかったと記憶している」と述べています。

    河合隼雄との接点を通じて、日本の古典のうちに含まれる神話的想像力に通じる補助線を引くことで村上作品を読み解く試みは、いまではそれほど珍しいものではないと思いますが、本書にはそうした観点から村上作品について考察をおこなうさいに手がかりとなるような視点がいくつか提示されており、興味深く読みました。

  • 読んでない作品についての話は読まなかっし、この人の解釈を鵜呑みにする気にはならないけど、一解釈として楽しめた。

  • きちんと読みたい。

  • 作品ごとにテーマがあると考えていたけど、ある書き手にとって、自らの書くべきものが一貫して存在するということを知れた一冊。はじめての読書体験。他の人の村上春樹評も読み、相対化したうえでもう一度この人の解釈を見てみたい。

  • 雨月物語と村上春樹とのつながり等、村上作品の奥行きを、多面的に教えてくれる本。 あちら側とこちら側が、合わせ鏡的な像を共有している、という指摘や、古代神話と村上作品の類似性や、古事記等とのつながり等の指摘には、そうなんだ、という驚きもあり、とても新鮮です。

  • 人間ゆうのは、記憶を燃料にして生きていくもんなんやないかな。
    何かを探す過程で成長する話が好きです。
    自分が置かれた状況に抗さず、状況や命令に合わせて、自省もなく一貫性もなく集団的に変わっていってしまう日本人
    自由と自立への第一歩
    日本人は異界に自由に出入りしながら、それと折り合い、関係性をひらいていく力を持っている。そんな日本的な特性を持つ物語で村上春樹は世界の文学の再編成に寄与しようとしている。

  •  筆者は今年度日本記者クラブ賞を受賞した人物。この賞を文芸記者がもらうのは初めてらしい。今まで村上春樹作品に関する書評やガイドブックは読んでこなかったが、この小山さんに興味を持っていたので読んでみた。この小山さんがインタビューした主な作家は、安部公房、中上健次など私が好きな作家ばかりで興味を持ったのだ。
     内容は、村上春樹の全作品を貫く作者の思想を可視化させるものだった。異界、ブーメラン(あるいはドーナツ)、日本、というものがキーワードだったように思う。このような深い読み方ができたら、もっと読書を楽しめるだろうなと思った。
     作中に「自己表現という罠」という言葉が出て来た。村上が今の時代は各個人に対して「自己表現をするべきだ」という強迫観念を押し付けていると指摘したことを示した言葉だ。自己表現というものに対し、村上は違和感を覚えているようだが、それならば何故村上は小説という形で自己表現を続けるのだろうか?個人に自己表現を求めることは良くないことだろうか?ということを考えさせられた。私は、日本人はもっと自己表現をした方が良いと思う。それは、自己表現をしなかったら、「自らの大切な心や魂を自分以外の他のものに預けて生きる」ことになるからである。制度的な観点から見れば、自己表現に対する束縛は大分緩和されてきているだろう。デモの自由等もきちんと憲法で守られている。社会的に「自己表現」というものが良いものとして認知されてきているのに、それに対して抵抗を抱く人は少なくない。そのような人はきっと「自己表現』を難しく考えすぎているのではないだろうか。私はコンビニでおにぎり一つ買うのも自己表現だと考えている。便利で、安いからという理由で添加物の入ったおにぎりを買う。これは「私は経済性を重視しています」という自己表現だ。ただの消費活動もそれだけで自己表現なのだと思う。もちろん、お金をたくさん持っている人は投票券をたくさん持っていることになる。仕事をするということだって自己表現だ。一つ一つの行動の意味を考えていたら疲れちゃうけど、頑張って考えて行動しなくてはいけないと思う。それが資本主義社会の中で生きるということだ。自分の消費・生産行動が、自己表現であると考えながら生きていくことが求められているのだと思う。
     直接相手と話さないと得られない情報。それがこの作品の背骨となっている。書評というものは図書館に籠ってもできる作業であるが、ここまで内容を深めるには、やはり実体験が伴わないといけないのだなと思い知らされた。

  • 森、四国、旭川、動物(鳥、猫、羊、カラス)などが頻繁に登場する春樹作品の意味を解き明かしていく。「風の歌に聴け」から「1Q84」まで。作品毎ではなく、「生と死」「言葉への不信」「動物の力」「偏愛する図書館」「ブーメラン的な世界」「あちら側とこちら側」などと、一連の著作を理解するためのキーワード(テーマ)を説明していきます。その解題は非常に知的刺激に富んでいます。「ノルウェイの森」の赤と緑の装丁、そして直子と緑が生と死を象徴し、またそれが度々逆転していくということは原作を読んだときには全く気が付かなかったものですし、レイコさんが四国(死国)の旧家出身と結婚し、僕と気持良いセックスを4回した後は旭川に行くことになっているということ、旭川が霊の入り口を象徴していること。霊柩車のよう新幹線で東京に来たということ、これらはレイコさんが霊の世界を象徴し、主人公の霊との関係の深さを語っているという解釈には脱帽です! その他、「ねじまき鳥クロニコル」「アンダーグラウンド」「ワンダーランド」などいろいろ哲学的な寓喩が含まれている作品を、その深意を考えながら読んでみたいものだと思いました。羊が何を示しているかの紹介では、この動物を日本人は明治まではほとんど見たことがなく明治以降、国家レベルで輸入、育成されたとのこと。そして戦後、輸入自由化されて以降は育成の意味がなくなり、再び減っていったということから、「羊をめぐる冒険」は「日本近代をめぐる冒険」とも置き換えられるというのは、凄い考え方です。芦屋浜の埋め立て、モノリスのようなマンション群への批判もこの作品の中には込められているそうです。「1Q84」をカラマーゾフに例えて、善と悪を考えさせるテーマということは確かに感じるところです。リトル・ピープルが倭人つまり日本人を意味しているということは恐らくその通りなのでしょう。ヤナ―チェック「シンフォニエッタ」など音楽の意味するものも、ワーグナーが随所に象徴として出てくるなど、数字についても、青梅という地名の意味するものなど・・・とにかくあちらこちらに謎が散りばめられていることが驚きです。
    「1Q84Book3」の最後が「暗きより 暗き道にぞ 入りぬべき 遥かに照らせ 山の端の月」という和泉式部の名歌をイメージされるというのは、とにかく圧巻ですね。

  • 村上春樹作品の解説。最近似たような本を読んだけど、この本では、作品中のキーワードはもちろん、「ノルウエイの森」の赤と緑の装丁に込められた意味を読み解いたり、また新たな視点で村上作品を捉えることが出来た。
    「ノルウエイの森」は、私も少なからずそのシンプルな装丁のデザインに目を引かれ、購入してしまった。しかもその発想は村上氏自信が考えたものらしい。

    「ノルウエイの森」をもう一度読んでみたくなった。そう言えば映画ではキレイにカットされていた、あのレイ子さんと女生徒とのピアノレッスンのシーンは、当時読んで衝撃的だったなー。

  • 図書館で借りたけれど、ほとんど読まなかった。

    村上春樹が言うように「読者にとって必要なことは小説の中に全部書いている」
    『明快な解答というのは、大方の場合死んだ解答』

  • 本棚を見ていたら、以前に買ってまだ読んでいない本書を見つけた。物語に飢えを感じていたこともあり、読み始めた。さすがに村上春樹の関連本である。電車の中でもほとんど居眠りせずに読んだ。
    筆者は村上春樹を、日本的なものを追求し続けて来た作家だとする。それを、村上春樹の全作品から後付けようとする。この視点は斬新ではないものの、あまり注目されていないものであり、村上春樹の作品を理解するのに良い視点だと思う。今後の村上春樹研究には欠かせない文献となろう。
    この本を読んで、『アンダーグラウンド』や『約束された場所で』などのオウム真理教関連のインタビュー作品も、村上春樹を理解するには必読なのだなぁと思った。機会を見つけて読んでみるか。これらも本棚で眠っているけれど。

  • デビュー作「風の歌を聴け」から「1Q84」までの作品に通底して出てくる20のテーマを、村上春樹本人に何回もインタビューして得られた知見とともに詳しく解説する。
    村上春樹は取っ掛かりやすさとうらはらになかなか文章力のある文章を書くので読解の助けになり、より村上春樹の小説を理解できるのではないかと思う。気取った文体や比喩だけが目立つ作家と思っている向きにこそ読まれるべき本である。

    ただし、20というきりのいい数で説明できるというのはどうも胡散臭い。きりが良すぎる。
    「向こう側とこちら側の論理」とか「羊男」みたいな、より重要なフォーカスをあてて、それらモチーフ同士の関係を中心に説明してもらいたかった。

  • 村上春樹作品への理解を深めたくて読んでみた。

    一度読んだ作品たちを思い返しながら、
    「へぇ~、そこはこういう解釈ができるのか!」
    などなど、発見が色々あった1冊。

    最後の方の章は個人的にイマイチやったけど、
    読む価値あり!

  • 通常の文学評論とはちょっと異質だが、村上春樹を通して、世界を物語ることに成功している。著者の筆力を感じる。

    私は村上春樹の小説はもちろん、エッセイもほとんど読んでいるが、それを貫く物語を感じたことはなかった。歴史、近代、善悪といったテーマを読み解く過程は大変に興味深かった。

  • たとえ著者が文学理論に疎かろうと、村上作品の深い読みは、とてもわくわくして味わうことができる。少し前、新聞の読書欄で、文学理論に疎い文芸評論家を名指しで批判していた大学の先生がいたが、あれは大人げなかった。理論は学ぶだけで身につくが、感性はそうはいかん。

  • 著者が学者ではないので、かっこよさげな専門用語や、
    虚飾的な思想の援用がなく、敷居の高さが自分の身の丈に合っていた。

    ジェイ・ルービンもそうだけど、この方も村上春樹が本当に好きなんだなというのが伝わってきた。
    こんなジャーナリスト、私は好きだ。

    もう一度原典を読み返したくなる書評だ。

  • まだ読んでいない作品のチェックとともに、読んだ作品の内容も再び思い出されて、村上春樹の作品にぐぐっと近づけさせてくれる一冊。

  • 2011/5/16読了。
    著作の長編小説を通じて、村上春樹が読者に伝えようとしているものとは、を考察した本。それぞれの小説の読了後に考えた・感じたことをまとめてはいるものの、作品を越えて背後にあるものを把握することはなかなか困難である。この本を読んで、全く別物に思える作品同士にも幾多の関連があることに大変驚いた。日本人の空気に影響される性質、近代から現代へと連続する歴史、生と死の距離感などへの気づきを得た今、そんな村上春樹の思考に想いを馳せながら再読してみたい。
    村上春樹に数多くのインタビューをしている著者だからこそ、それぞれの作品と様々な村上春樹の発言を有機的に繋げることができたのだろう。見えてきたものはとても興味深かった。

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著者プロフィール

小山鉄郎(こやま・てつろう)
1949年、群馬県生まれ。
一橋大学経済学部卒。共同通信社編集委員・論説委員。
村上春樹作品の解読や白川静博士の漢字学の紹介で、日本記者クラブ賞受賞。
著書に
『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』『白川静さんに学ぶ 漢字は怖い』(共同通信社)、
『白川静入門 真・狂・遊』(平凡社新書)、
『村上春樹を読みつくす』(講談社現代新書)、
『村上春樹を読む午後』(文藝春秋、共著)、
『村上春樹の動物誌』(早稲田新書)、
『村上春樹クロニクル BOOK1 2011 ~ 2016』
『村上春樹クロニクル BOOK2 2016 ~ 2021』(春陽堂書店)、
『大変を生きる―日本の災害と文学』『文学はおいしい。』(作品社)、
『白川静さんに学ぶ これが日本語』『あのとき、文学があった─「文学者追跡」完全版』
『白川静さんに学ぶ 漢字がわかる コロナ時代の二字熟語』(論創社)など。
2009年から白川静博士の業績を学ぶ同人会「白川静会」の事務局長を務めている。

「2024年 『白川静さんに学ぶ 漢字の秘密まるわかり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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