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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784062880756
みんなの感想まとめ
中国の科学技術の現状とその発展の可能性について、詳細かつ鋭い分析が展開されている本書は、著者の豊富な経験を背景に、読者に深い理解を提供します。特に、中国が理系人材を重視し、優秀な研究者を国内に呼び戻す...
感想・レビュー・書評
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TOPPOINT 2011年1月号より。
著者は文部科学省の官僚。
中国の科学技術レベルはどれぐらいなのか?の実績レポート。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
貴重な本だと思う。
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「科学技術」を切り口に、中国(人)の考え方を学び、中国(人)との付き合い方を考える、という観点からは、面白い指摘や提案があり、読む価値がある。他方、「中国の科学技術の今」についての紹介も多いが、こちらは、データが豊富である代わりに、どんどん内容が古くなってきている。本書の初版が2010年10月なので、少し古びて見える。もう少し早く本書に出会って読んでいればよかったのだが。
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「専門」というカテゴリでもないのですが・・・.
著者は1974年生まれで東京大学工学部の卒業ですので,私の同級生にあたえる人です.それだから,著者が抱いている“焦り”は痛いほどよく伝わってきます.
私が中国に行ったのはわずか2回ですが,ほぼ同じような感想を持ちました.著者は3年ほど滞在されているはずですし,もっと具体的に,もっと緊迫感のある焦りを抱いたはずです.
個人的には,学生さんにこそ読んでほしい.社会人の多くは似たような認識をお持ちの方が多くいらっしゃることと思います. -
中国はすでに科学技術先進国。
中国を平均値で見ると見誤る。
米国博士号取得者出身大学1位=清華大学、2位=北京大学、
有人宇宙飛行世界3番目、スパコン速度世界2位・・・
世界の富豪トップ1000では日本の3倍。
中国指導者はほとんど理系大学出身。
中国トップクラスと日本を比べるべき。平均で語ってはいけない。
「創新」=innovationによる発展を目指す。
資金、人材と数、市場 で日本を圧倒する。
工業製品でも医学でも。
巨大な大学と付属病院。東大の比ではない。学生数、教授数、病院規模は数倍。
日本人が発見したiPS細胞。アメリカと中国に遅れを取ってしまっている。
研究者数は1990年代から増え続け、日本の2倍。
基礎研究より応用、開発研究。企業主導ではなく国家主導。
コア技術は賢い戦略で買ってきたもの。
アメリカ同様の大陸文化、ヒーローを求める民族。努力ではなく成功に共感。
日本では出る杭は打たれる。失敗が許されない。
中国の最重要課題は国家の安定と体制維持。
真の意味でのinnovationがなされるかは、政治判断が影響を及ぼす。
「面子」重視で非効率。
政治判断による歪められる客観的判断。
ハード重視でマネジメントやソフトインフラが追いつかない。
日本の進むべき道
中国と研究初期段から進める。
中国の一人勝ちにならないよう、コア技術は特許にもせず、ブラックボックス化。
周辺技術を共同開発し、市場のニーズに融合しで業界標準とする。
評価方法を標準化し、技術優位性を明確にする。
国際標準は早い者勝ち。
標準化ではコストの安いところが勝つ。
「デファクト標準」は世界的シェアが必要。アメリカに多い。
「デジュール標準」は議論に時間がかかり、マルチ化する。欧州に多い。
「フォーラム標準」は両者の中間。これが日本に最適。
その技術が良いものとみなされるための
「用語」「定義」「評価方法」を一人からでも始め賛同を得て標準化に。
研究開発は、すべての内部に抱え込む
「リニアモデル」から、
「オープン イノベーション」へ。
多くの分野が重なり合ってブレークスルーを生み出す時代。
自身の技術への過信から没落する。
過去の延長ではなく、自らを否定する
「破壊的イノベーション」から新しい商品と市場が生まれる。
科学技術は文化を超えた「土壌」。
中国は国家戦略として、あらゆる問題の解決手段をこの土壌に求めている。
:著者は元在中国日本大使館一等書記官で、現役の文科省官僚。 -
中国の科学技術の現状を良い面、悪い面両面からわかりやすく解説。日本にとって中国が如何に脅威かが良く分かるし、一方で日本と中国がどう連携をとると良いかを考えるきっかけとなる。
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重要なところは中国の莫大な人口と政府主導の科学技術政策であろう.著者は中国の科学技術において日本を超えているところと,まだまだ日本が安心していられるところと,同時に存在していることを指摘している.しかし,人口を考えると最先端は日本を超えるし,底辺はとんでもなく底辺であることは当然である.
まさに「最」先端で日本が勝負を続けるためにはどうすれば良いか.難しい問題である. -
最近本屋を覗いてみると中国の将来に対する経済成長を疑問視するような本が目につきます。環境汚染が進んで、エネルギー効率が悪い面もあるかもしれませんが、オリンピックでは国際社会に復帰してから上位を独占しているように、中国はやる気なった分野については、人数が多い面もありますが、優秀な人が相当数出てくるような気がします。
この本の著者は、中国の科学技術の進歩の度合いを目の当たりにしている若手官僚で、書いてある内容は確度が高いのではと思い、この本を手に取ってみました。純粋な科学技術力と、製品開発力、大量生産技術力は異なるものだと思いますが、この本に書かれている中国の実力は凄いと思いました。
以下は気になったポイントです。
・中国がスパコンの性能を不断に向上させる一方で、日本の最高性能のスパコンは、22位であった、中国は20位以内に3つものスパコンをランクインさせている(p18)
・大量の研究人材と資金を投じさえすれば一定の成果が得られる遺伝子の解析作業や、リスクが大きく政府のリーダシップが必要な宇宙開発では圧倒的な強さを見せる(p20)
・中国から海外へ移住する波は歴史的には今までに3つあり、1)唐代の9世紀、2)明代の16世紀、3)19世紀清朝末期で労働力として、4)現在、である(p33)
・中国には、少数ながら共産党以外の塔はが存在しその一つが海外からの帰国華僑で構成される「致公党」である、1925年にサンフランシスコで成立、党員は2万人(p35)
・米国で博士号を取得した約5万人(2007年度)のうち、3分の1が外国人、中国:5002人、次がインド、韓国と続く、日本人は330人(p36)
・中国は理系人材を大切にする一方で、日本は理系人材が報われない、日本では学歴が上がるほど就職が困難になる(p44)
・中国の指導者は序列1位から9位まで、一人を除いて理系出身(p45)
・論文数から見る研究者の質は、米国が圧倒的な地位を占めている、そして英国、ドイツの後に日本の研究者の質が高い(p50)
・国家財政における科学技術経費の増加率は、財政収入の成長率を上回らなければならないという規定が「中華人民共和国科学技術進歩法(1993)」にある(p73)
・日本では2003年にH2ロケット6号機が打上げ失敗した後、宇宙開発予算は大幅に削減、1年半にわたって打上げは凍結された(p95)
・湾岸戦争後の終結後に、劣化措置が施されて、100メートルの誤差を有する信号として、GPS測位サービスが提供されたが、各国からの反発もありクリントン大統領によって2000円にその措置は完全に解除された(p104)
・上海交通大学の研究所では、すべてのプロジェクトは4年後とに厳しい評価を下されて、成果を上げていないプロジェクトは直ちに中止されてそれに属していた研究者全員は解雇される(p144)
・中国企業では研究開発費には、それに少しでも関わるものは全て計上している(p160)
・中国では製造額に対する研究開発費の割合が8%を超えるものを「ハイテク」と定義しており、OECDの定義とは異なる(p161)
・中国国産の自動車メーカは世界一の市場となっているが、エンジンは国産では製造する能力がない、組み立てるだけ(p164)
・中国において生み出される特許は、既存の特許に少しの変更を加えたものが大多数(p175)
・CPUをたくさん繋げることでCPUの能力を挙げているが、チップ間の同期をとる技術設計は中国では進んでいない(p181)
・サムスンは日本より上回る品質の製品を開発したわけではない、技術力ではなく、市場ニーズを把握した上でのビジネス戦略で勝利した(p207)
・米国は、ルールではなく、市場によって標準を獲得してきた、安くて質のよい「ハの字型」プラグの製品を大量に市場に投入するデファクト標準を作った(p219)
・一番大事なコア技術は公開せず、それ以外の周辺技術については公開して標準化する(p232)
2011/1/23作成 -
大陸の国家は似ているものなのだ。「平均的」国民が存在せず、スケールがでかい。悪い面でもスケールがでかく貧富、教育の差が激しかったりする。また面子を重んじ、国家的発意高揚のための情報は誇張を交えて喧伝する。政治力がが、中にはしっかり等身大の中国を見極めている人もいる。
中国が日本を追い越していると言う分野は増えてきているが、内容を精査ししっかりと日本を見据えることが先ず大事である。平均的」人間が少ないと言うことは、中にはとんでもない逸材がいるということなので、そのような人との協業関係を構築すること。また市場としては「枯れた技術」でも通用する可能性が高い市場である。その技術を受け入れられる形に日中で協力できないものだろうかと考えさせてくれた本。陳腐な評になってしまったが、メディアが伝える中国に対してもう一歩突っ込んだことが書かれていると思われる。 -
伊佐さんには、北京でたいへんお世話になりました。科学技術の専門家からみた日中の相違点というものが新鮮でよかったです。日中が相互補完してともに成長していけるような関係になると、それが本当にいいんだけどなぁ・・・。なかなかそううまくはいかないですよね・・・。
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中国の恐るべきソフトパワーの実力を、自分の目で見た事実から検証している。特に人材に関わる部分と国家のコミットメントの強さは、圧倒的に感じる。
実際、自分が現地(杭州)で行っている採用においても、わずか数万円の給料の募集に、海外留学経験を有し、3ヶ国語を操る人材がごろごろと応募に来る。この国の人材は底なしか。
ただ、それら有能な人材を使いこなす受け皿がどうか、違った問題もあるところが難しいところ。逆にそこは日本企業にとってもチャンスとなるはず。 -
2011/1/13 北京にて読了
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やはりこれからの科学技術も中国なのか。もうソ連、ロシアの時代ではない。中国VSアメリカか。
中国は理系を大切にする国である。そして海外からたくさんの優秀な中国人を呼びもどしている。そのための制度もしっかりしている。海亀政策というらしい。
そもそもアメリカのイノベーションも中国人やインド人によって生み出されたもの。そうした中国人がいまや続々と中国の良好な研究環境に引きつけられて戻っていく。中国においては日本よりも優秀な人材を見つけることは難しくない。
中国にはまだこう大なライフサイエンスの発展を支える広大なフロンティアがある。
中国の最大の課題は、国家の安定であり、体制の維持。体制が強固でなくてはならない。
よいものを作ればいつかは彼らもわかるはずだ、という日本の技術への過信はiPhoneの登場によって崩れ去った。 -
『「科学技術大国」中国の真実』(伊佐進一、2010年、講談社現代新書)
本書は、文部科学省の若手官僚(旧科技庁入庁)によって書かれた、中国の科学技術の現状と日中の科学技術協力の可能性について書かれたものである。アメリカの大学院で中国経済の研究により修士号を取得し、中国の日本大使館に科学技術担当の外交官として赴任したこともある方が書かれたものであるため、中国の科学技術の現状が詳細に分析されていると思う。
非常におもしろい。まず、中国の科学技術のレベルが理解できる点について。次に日中の科学技術協力の可能性が述べられている点について。
(2010年12月3日 大学院生) -
「客観的な目でみた中国の科学技術開発と、日本との関係」
日本はいずれ中国に追い越されそうだ、という焦燥感が、今の日本には蔓延している。その懸念にはある程度妥当な側面もあれば、単に隣の芝生を青く見ているだけの側面もあるだろう。
本書は、科学技術担当の一等書記官として三年間、北京の日本大使館に勤務した著者が、発展めざましい中国の科学技術について、何が優れており、またどこに問題があるのかを、客観的な筆致で網羅的に分析した本である。
近年の新書の傾向と異なり、はっきりした専門のある著者が、一般にはほとんど知られていない科学技術、および中国におけるその発展の進行について、いわばマニアックに記述していく本である。しかし読み進めるうちに、日々新聞やニュースで目にする情報の裏側が透けて見えるようになるという知的興奮が味わえる。
たとえば本書出版後のつい先日、10月29日の新聞各紙では、中国産のスーパーコンピュータが世界最速の演算速度を記録したというニュースが流れた。
本書によれば、実はしばらく前から中国製スパコンの演算速度は日本を追い越し、ペタフロップス級のスパコンの製造能力をアメリカに次いで二番目に手にしたとされていた。
ところが、スパコンの演算速度には「理論値」と「実効速度」があり、前者を上げることはそれほど難しくない。紙面で取り上げられているランキングの数値は理論値の方であり、それだけ見れば確かに中国は米国に次ぐ位置をすでに占めている。
しかし本書執筆時に中国製一位だったスパコンの実効性比率(実行速度÷理論値×100)は45%ほどだった。ランクインしている他国のスパコンの実効性比率は80%前後であり、日本製のそれは95%ほどだった。
これは、中国製スパコンの演算速度の速さに、実質的な意味も目立った技術革新もあまりないこと、他方で日本製スパコンは高い技術で綿密に設計されていることを示す。よってこの分野では、日本が中国に脅威を感じる必然性はあまりない。むしろ中国側が無意味なランキングにこだわりすぎであるとされる。(179-182)
もちろん、これと逆パターンの事例も数多くある。
総じて、研究者という人材を大量に投入する必要のある「研究者集約型」の分野において、中国は確かに世界のトップランナーとなりつつある。高温超伝導技術や、バイオのiPS細胞研究などがそれにあたる。
こうした分野では、核となる技術的発見がたとえ日本で行われたものだとしても、幅広いその応用的研究が「研究者集約型」であるため、科学的業績としても技術開発としても、中国にどんどん水をあけられてしまうことになる。こうした点において、日本側はむしろもっと危機感をおぼえるべきであるとされる。
著者の基本認識は、ことほどさように日本と中国は得意分野をまったく異にしているものであり、いたずらに焦燥したり敵視したり、あるいは羨望したりしても仕方がない、というものである。現状認識と分業関係をしっかり整理した上で、日中関係をwin-winの関係として構築することが重要である。
今現在、日本の方が中国に対しほとんどの科学技術分野で圧倒的に優位であることは間違いがない。しかし日本側は、科学技術投資が頭打ちとなっており、人口減少時代に入る中では研究者人材の確保もままならない。つまり「投資と人」が不足している。これにより新しい科学技術を産業化することができないでいる。
それに対し中国は、強権性と紙一重の、政府主導で資源を配分できるというお国柄ゆえ、科学技術に積極的で多大な投資を行い、その額は年々増加している。そして人材量が豊富であることは論をまたない。
日本の先端的な科学技術を中国に提供する代わりに、あちらからの投資と人を呼び寄せる。それこそが著者の考える日中の科学技術協力のあるべき姿である。そうすれば先の「研究者集約型」の分野などにおいて、日本にも多大な利益があるはずだ。実は欧米諸国は、同じような考えのもと、中国の大学や研究機関と次々に連携関係を築いており、やや日本は遅れを取っている状況であるという。
中国では、年率20%で研究開発投資が増加している。6-7割が企業、3割が政府からの資金であるが、それがともに高い伸び率を示している(72)。
しかし問題もある。第一に、こうした投資により、研究インフラのハード側面(機材など)の整備が進んでいるのと裏腹に、ソフトインフラ(使用法の解説者など)の整備が遅れており、高価な機材が有閑状態にあること。
第二に、資金の管理・運用面のマネジメントなどの問題。
第三に、短期に収益が見込める応用分野に集中し、基礎研究への投資が極めて少ないこと。かつて日本はこのためにアメリカなどから批判されたが、当時の日本のさらに三分の一ほどの比率に留まっている。これではイノベーション型国家が実現することはない。
こうした中国の抱える課題・問題点は、特に第一の側面において、まるで日本と正反対である(研究者は優秀だが施設が老朽化しているなど)という。
こうした、中国の科学技術開発の現状を概観する部分に続き、宇宙、ライフサイエンス、ハイテクといった個別分野の解説をするパートが続く。詳細は本文を参照して頂きたいが、冒頭に述べたような細かい発見を読者はたくさん見つけるだろう。
ライフサイエンスについては、政府の手厚い保護を受けた(よって本当の意味でそうとはいえないかもしれない)ベンチャー企業が大きな役割を果たしている。
またIT・コンピュータ分野においては、中関村に位置する企業と、その近くの一流大学の大学発ベンチャーとの産学連携が進んでおり、この点では日本をはるかに凌駕しているという。
しかし中国のやり方にも問題はたくさんある。総じて、「創新」というのが国を挙げてのスローガンの一つとなっている中、イノベーションマインドの養成に失敗していることである。
特に「ハイテク」企業は、ほとんど「組立型」モデルであり、先進国から部品を買うことを前提にしており、自ら先端的な部品を製造する能力がない。これは開発コストを負担しないまま大きな利潤を上げるモデルであるが、本当の意味での研究開発やイノベーションにはつながらないだろうという(166)。
また、産学官の役割分担・協力関係がやや行きすぎている。技術開発に対する大きな政府介入は日本と異なる点である。公的研究機関や大学と企業が、研究開発プロジェクトを立ち上げ、研究成果を連携関係によってもらいうけた企業が産業化・製品化を行う。
しかしこのモデルは、基礎・応用研究を研究機関や大学が行い、企業はそれを商品化するという役割を固定化させてしまい、企業の研究開発能力アップにはつながらない(170)。これが企業のイノベーションマインドを阻害させている側面も否めないという。
さらに、研究開発への意識は、知財保護意識がなければ高まることはない。しばしば指摘されるこの問題については、2001年の特許法改正など、この点においては政策的にも、中国人の意識としても、改善の方向に向かっているという。
他にも、深刻な各種の問題が存在する。機関ごとのメンツ争い(冒頭に述べたスパコンの無意味な記録更新などもその例とされる)による不合理。同じく政治的な闘争による客観的な判断の歪曲。現在の中国の最優先課題が「国家の安定」にある限り学問・研究の自由に対する政治的干渉が避けられないこと。論文偽造などの不正や汚職の横行、など。
こうした、中国の優位性と問題点の双方を踏まえると、日本が技術開発において中国と連携を深める必然性と、その際に留意するべき点が見えてくるという。
日本は高い技術力を持っている。しかし日本の独自な制度や慣習、および相対的に高い国民所得を前提とした「ガラパゴス的」な技術となっているのも否定できない。そのため、中国をはじめとする途上国市場では、日本製よりも性能は低くても廉価であるサムスンなどの追撃を許した。
しかし日本企業がサムスンの真似をする必要はない。中国でも富裕層が増えている現在では、むしろ高い技術力というブランドイメージを保持する方が良い。
必要なのは、市場調査・分析により、中国で本当に必要とされているのはどういう技術なのかという「市場ニーズ」を把握することである。
現状はこれが極めて不十分である。実は環境分野をはじめとして、中国側が喉から手が出るほど欲しがっている「市場ニーズ」は少なくない。日本の技術力を過信し高額の最高水準の技術を提供しようとするのではなく、「市場ニーズ」を踏まえた価格と技術レベルのバランス感覚さえあれば、日本側は十分にこれに応えられるという。
この点は、中国という巨大市場における「標準化」競争をどう戦うかという戦略とも関わってくる。
日本は高い技術力を持ちながらも、この「標準化」で成功を収めることができないできた。「標準化」された市場とは、均一化されたものを低価格で製造するというコスト競争の市場であり、特に中国においては中国企業の独壇場になってしまい得る。よって、標準化のため公開する技術と、秘匿化しておくコア技術の峻別が必要になる。
筆者の個人的な感慨だが、経済的な側面における中国に関しては、実態以上のやや幻想めいた期待と、頭からこれを否定し不要論・脅威論を唱える議論の、両極端に分化しがちなのではないだろうか。
本書は科学技術を切り口に、豊富な背景知識をもちながら現場をもよく知る著者が、ごく客観的な姿勢で現状分析を行い、それを踏まえた提言を行っている。こうした本が、新書という読まれやすいフォーマットで出版されることには、大きな意義がある。中国や科学技術に関心のある層に、広く手にとって頂きたい一冊である。 -
中国を持ち上げすぎることなく、また逆に貶めすぎることもなく、非常に客観的に冷静に、科学技術分野における中国の現状を描いています。そして、日本の取るべき方策(政策? 進路?)についても、比較的具体的に提言しているのではないでしょうか? 中国のことは実は中国人自身が一番よくわかっているという指摘は全くその通りだと思います。他の諸々の中国本と異なり、著者がどれだけ中国人の中に入っていって感じたことなのか、そこまでは何とも言えませんが、こういった冷めた視線の論著が、他のジャンルでも出てくると、日本人も中国を客観的に眺められるようになるのではないでしょうか?
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2010-11-08 購入
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