- 講談社 (2011年7月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784062881166
作品紹介・あらすじ
18万部のロングセラー『発達障害の子どもたち』に、待望の続編が登場!
発達障害児の陰に潜む家庭の問題とは?
こころの骨折・トラウマはどう治す?
脳と神経に何が起こっているのか?
「発達凸凹」という新しい考え方とは?
保護者、教育関係者から小児科医まで必読の書。
感想・レビュー・書評
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2011年の本なのだけど、紹介されていただけあって、分かりやすかった。
分かりやすい反面、読んでいると、色々苦しいことを思い出したり考えたりしたし、今もそれが考え方や行動に及んでいたりする。
発達障害と虐待は結び付きやすく、愛着形成の阻害とトラウマが加わることで悪化すること。
そして、虐待は親の代から連鎖的に受け継がれていき、親御さん自身が発達障害を抱えている場合も少なくないということ。
自閉症スペクトラム、緘黙、不登校などの背景にはこうした問題が解決されないまま、大人になっていく子どもたちもいる。
私が知っている中でも、やはり親自身も精神的に病んでいたり、兄弟も学校に行けていなかったりという背景を持っている人がいた。
ただ、トラウマや拒食症を治していく話や、発達障害への対応の仕方、また大人の発達障害の話など、筆者が患者さんたちと向き合ってきた姿が見え、希望も感じられる。
学校に行けないとか、会社に行けないという状況に対して、行きたくなければ行かなくていいよ、という言葉を私自身はすんなり言えずにいる。
よく「困り感」という言葉で表されるけれど、その困った部分を取り除けるように様々な場所に頼りながら一緒にやっていく姿勢が、まずは大事だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2023/08/24 Kindle
いい本だと思った -
とても内容の濃い本だった。発達凸凹はマイナスではなく、得意を伸ばせば独創的な活動のできる人になる。だが、発達障害となると社会や周囲への適応が難しくなり、加害性、被害性を帯びることもある。また、従来の精神科診断では見落とされがちであった「発達」と「トラウマ」の問題の重要性を指摘。発達凸凹を障害にしない、トラウマを作らないための周囲の対処法も説明されている。より理解を深めたい。
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凸凹理論、ここに。被虐待児童と被虐待経験のある成人を数多く診てきた著者だから語れるものがここにある。ラベルを貼るのではなく、特性として理解し、アセスメントすることが共生への第一歩だろう。システム論を援用した構造的な理解との併用が必要であるが...。
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発達障害治療者視点の本。重症な発達障害(虐待・第二世代・クレーマー化など)の対策も網羅されていて、専門的。本気で発達障碍者と向き合おうとしてきた著者の姿勢がうかがえ、症例も多数。
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前著も目から鱗だったが、本書も本当に知っておくべきことが学べた、という衝撃をもって読み終えた。読むのと読まないのとでは、全く人を見る目が変わってしまう著書だ。今後の精神医学にとって、トラウマと発達障害の扱いがメインテーマという著者の主張に深く首肯した。日本の転換期を作る本だ。
・胎盤の重さに関係が認められるのは、母親の年齢ではなく、父親の年齢。
・男性脳と女性脳の明確な違い。自閉症率の違いが。
・自閉症スペクトラム同士の結婚と自閉症スペクトラムと元被虐待児の結婚例が多い。
・虐待的絆。いくら忌避される記憶でも、子どもたちにはそれこそ生きる基盤になっている。
・虐待の脳への影響は、発達障害よりもはるかに甚大で広範囲。
・緘黙に自閉症が併存。入院が奏功する。外来で遊戯療法は無意味。
・人に評価されるには目立つのがよいと、無理をして立候補して、逆に顰蹙を買う。
・二つのことが一度にできない
・整理整頓が出来ない、整理魔も。
・興味の偏りが激しい。興味のないことを完全に無視する。代償はハウツー本の信奉として現れる。
・KYと他者配慮が出来ないはべつもの。
・集団での介入は難しい。親への指導を含んだ個別対応が良い。
・強く叱責された時は周囲の情報が飛んでしまい、叱られたということだけが残る。 -
発達凸凹。新しい概念。障害というより個性尊重な感じで、とらえやすい。
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精神病と自閉症スペクトラムの関係がわかりやすく説明されている本。トラウマ治療の方法EMDRをもっと詳しく知りたいし、簡易的にでも自宅で対処できる方法があれば知りたい。
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【書誌情報】
製品名:発達障害のいま
著者:杉山 登志郎
発売日:2011年07月15日
定価:本体800円(税別)
ISBN:978-4-06-288116-6
通巻番号:2116
判型:新書
ページ数:264
シリーズ:講談社現代新書
18万部のロングセラー『発達障害の子どもたち』に、待望の続編が登場! 発達障害児の陰に潜む家庭の問題とは? こころの骨折・トラウマはどう治す? 脳と神経に何が起こっているのか? 「発達凸凹」という新しい考え方とは? 保護者、教育関係者から小児科医まで必読の書。
〈http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000210602〉
【簡易目次】
目次 [003-005]
発達障害の新たな分類とその経過 [006-007]
序章 母子並行治療をおこなったヒナコ 009
第一章 発達障害はなぜ増えているのか 025
第二章 発達凸凹とは 043
第三章 発達凸凹の可能性 065
第四章 トラウマの衝撃 087
第五章 トラウマ処理 117
第六章 発達障害とトラウマ 136
第七章 発達障害と精神科疾患 その1 159
第八章 発達障害と精神科疾患 その2 189
第九章 未診断の発達障害、発達凸凹への対応 221
終章 療育、治療、予防について 239
主要参考文献 [253-255]
あとがき [256-259]
著者紹介
杉山登志郎(スギヤマ トシロウ)
1951年、静岡県生まれ。あいち小児保健医療総合センター心療科部長などを経て、2010年より浜松医科大学児童青年期精神医学講座特任教授。日本における児童精神医学の第一人者で、多くの患者や家族、医療関係者、教育関係者から信頼を得ている。 -
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いいヒントをもらえた気がします。
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発達障害の人はいじめや虐待などに遭いやすく(相手の気持ちが読めない、特定のこだわりがある、知的障害がない場合は発達アンバランスがあると気づかれることがないのでなま家やサボりと勘違いされて叱責を受けやすい)、発達障害に虐待などのトラウマが加わることで、精神的な障害が発症しやすくなる。
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いままで読んだ3冊の発達障害の新書のうち、2冊はいい加減なゴミだったが、こちらの本はとてもよくて、まともな本だった。真摯に臨床にあたった豊富な経験と研鑽、知識から、叙述されているのはこの先生の本だけだった。
・トラウマの解消 EMDRの方法 (P124)
治療者が患者の目の前に指を2本たて(人差し指、中指)、その指を左右にふる。患者は目で指を追う。その眼球運動とともに、トラウマになっている記憶の想起をおこなうと、なぜかその記憶との間に心理的な距離がとれるようになる。
・療育の目標はトラウマを作らないこと。
体罰を避け、大きな声で怒鳴るのは極力避けたい。強く叱責されたときは周囲の情報が飛んでしまい、叱られたということだけが残る。すると、そのときは止めるがまたやるということを繰り返すことになるだけ。
できるはずなのにいまくいかないときには、こちらが気づいていないこだわりや、とくに過敏性が邪魔をしていないか、その目で振り返ってみることが必要。
(P245)
・トラウマによるフラッシュバックに対する薬物療法
神田橋條治 漢方薬
桂枝加芍薬湯(小建中湯or桂枝加竜骨牡蠣湯)と四物湯(or十全大補湯)の組み合わせ
(P248)
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自閉症、自閉症スペクトラム障害、トラウマなど脳機能のダメージや器質的な原因から、連続的につらなる発達障害。製薬会社による作られた病、と言われているが、その病名があることや投薬(プラシーボ的なのも含め)により、救われる人もいるのだろう。
一方でわかりあえない相手を発達障害だ、と決めつけることでスッキリする人もいるのだろう。
境界を引くだけの、かりそめの平和だとしても。
清潔で規律ある世界のために、出生前診断で発達障碍児を間引く日もくるのだろうか。空気を読めて、チームワークが上手い人間だけが残った、つるっと平坦な素晴らしい世界では皆が同じ方向に向かって、動物に戻ったり、虫みたいになりそうだ。
発達障害、という名の商品が、苦しむ人びとの救いとなるところまでの利用であれば、と思った。 -
本書は、誤解される発達障害の知識を正しく伝える本である。
発達障害は、著者によると、それは、発達凸凹とよぶ脳の機能であり、それは正しい支援教育がなされれば、「障害」へ至らないのだ。
では、昨今、話題とされる「大人の発達障害」とは何か。
それは発達凸凹が「障害化」してしまって成長してしまったのだ。
その「障害」の「原因」は、いじめや親の虐待や社会へ出てからの軋轢である。
発達凸凹が「障害」へと至ると、二次障害が起きてしまう。その二次障害こそが「発達障害」が「障害」と化したその姿である。
特別支援教育がなされないと、ますます「大人の発達障害」は増えるであろう。 -
大変良かった
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発達障害と発達凸凹の違い。虐待・トラウマとの関連。
遺伝子とエピジェネティクスと発達障害との関連など
多岐にわたって分析されている内容です。
とくに虐待とそのトラウマからくる凸凹ではなく障害に
なってしまうことについて、詳しくかかれているのと
それが遺伝も含めて、連鎖すること。その連鎖が環境因子と
なってエピジェネティクスとの関連で発症していくこと
につい多くかたられています。
虐待については、絶対に関係ないと思うのですが、何が
トラウマになっているのか?自分も何をトラウマとして
もっているのか?些細なことかもしれないが。
ということをかんがえさせられてしまうところもあります。
凸凹は確かにおおくあって、自分も絶対に凸凹はあった
と思います。そこが障害にいかに結びつかないように
なるかが大事だし、それができればいいと思っています。
息子がもし、本当に凸凹はあるが障害になっていない
のであれば、それは母親も含めて家族のおかげかも
しれませんし、偶然かもしれません。また回りに恵まれた
のかもしれません。でももしかしたら、本人の努力というか
本人の力であったのではないかと最近思っています。 -
発達障害と子ども虐待、トラウマの関係などを解きながら、発達障害児やその家族に支援者がどのような姿勢で臨むべきかが説かれている。
「発達障害の子どもたち」を読んで本書を読むと理解が深まって有意義。 -
障害者差別解消法が施行された今年度。必要な知識を与えてくれる本だと感じた。
発達凸凹の概念は保護者との関係性を構築する中でもとて重要。
児童が健全な発達を遂げるために何が必要か考えさせられた。 -
発達障害とトラウマの関係性、そして母子父子並行治療の話。ひとえに甘え云々の精神時代論では片付けてはならない問題。複雑にも負の連鎖が絡み合っていくこの障害、学校組織や家庭などの保守的な現場からは見事に見過ごされてしまいやすいだろうと感じる。凸凹を補い伸ばす、発達を阻害するものへ対処していく。実際に対面してみないとわからないが、常になんでやろを心にとめる。
著者プロフィール
杉山登志郎の作品
