未曾有と想定外─東日本大震災に学ぶ (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 46
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881173

作品紹介・あらすじ

私たちは今回の災害を転換点にできるのか?失敗学の畑村教授がいままで考えてきたこと、そして3月11日から「原発事故調査・検証委員会」委員長になるまでに考えたこと。

感想・レビュー・書評

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  • 「未曾有と想定外」。畑村洋太郎。2011年講談社現代新書。



    2011年の3月に、311が発生。恐らく出版社編集者と畑村さんで、急いで作り上げた一冊ではないでしょうが。

    (畑村洋太郎さんは、数え切れない本を世に出していて、その中に一般向けのこうした新書本も星の数ほどあるのですが、ご本人が

    「編集者がこういう本を作りたいって言ってきて、ライターさんの前で色々おしゃべりをするんだよ。そうするとね、そのライターさんと編集者で本を作って、「これでいいですか」って持ってくるんだ。俺は、本なんて一冊も書いたことないんだよ。はっはっは」

    と、大らかに仰られています。こういうところが、なんというか、脱帽。)



    2019年4月に読んだ本。
    震災が起こって、「未曾有の」「想定外」という言葉が、原発の事故についてもいっぱい使われます。

    「そういう使い方は極めて責任逃れ。想定外に備えるつもりがあれば、大事故を防げた。みんな、騙されてはいけない」

    というのが本書の趣旨ですね。

    畑村さんは311以前から、三陸などの津波の歴史や危険については、確かに着目していたんですね。それなりに知ってる人は知ってる話ですが、貞観の津波まで視野に入れておけば、あの津波は想定できたんです。そして、備えておけば、原発であれだけの事故には、ならなかった。

    つまりは、「まあ、誰も言わないから良いだろう」「そういうことになってるんだから良いだろう」「マニュアルに違反してないからいいだろう」

    そういうことでは、原発みたいなものは扱ってはイカン、という。
    311が起こってしまった後となっては、畑村さんの意見に反対するのは難しいですね。

    そしてそんな安易なお役所仕事と思考放棄の中で「絶対安全ですから」という言葉が地元の人たちに語られたわけで。地元の人たちは、「未曾有も想定外も、全て視野に入れて、プロが考えた結果としての、絶対に安全」なんだと、当然思います。

    でもそれが、そうぢゃなかった。
    ということを、日本が、世界中の人々が目撃しました。



    畑村洋太郎さんは、確か2011年5月からは政府事故調の委員長に就任しているはずなので、慌ただしくその前にこの本を作ったんでしょうね。

    ↓この記事は、割と良く出来ています。↓

    https://www.asahi.com/articles/DA3S14221896.html

  • 「未曾有」と「想定外」、二つの言葉に隠れてしまった本質的な問題とは? 3月11日から原発事故調査委員会・委員長に就任するまでに、失敗学の視点から考えた大津波と原発事故。

  • いつの間にか人間は「力で自然に対抗できる」と考えるようになった。しかしそれは大きな誤解であり、自然の力は想像以上に強大で、人間が力で同じように対抗できるようなものでない。そのことを私たちは今回の津波から学ばなければならない。

  • 「失敗学」の人、と思っていたけど、本書(震災の直後に発刊)に関しては、エッセイというか、地震津波についての小話集か。

    防潮堤高のこと(6m位がいいとか)や、ボックス型の避難ボックスを400mおきに海岸に設けるとか(※海岸景観への配慮まるでなし)、あるいはスーパー堤防や大ダムの必要性をゲリラ豪雨と結び付けて説こうとするなど、一部に科学的な意味での怪しさもみられる。

    ただところどころ考えさせられる記述も多く、ハードが備わる故のひとびとの危機感の薄れのことや、コンプライアンスとは法令遵守ではないということ等、印象に残った。

    個人的には、様々なリスクファクターについて横断的に考察してみたいとも思ったし、甚大なリスクがあるからといって必ず対策を事前にとるべきとも言い切れないんだよなぁとも思った。

    なお、幸田文『崩れ』と、寺田寅彦『天災と国防』はぜひ読みたい!と思った。こういう、読みたい本を知れる本はいい。

  • 未曽有と想定外。
    この言葉は、原因をあいまい化し、分析する雰囲気をなまらせる。原因を分析していくには、冷静に事実のみを予断なく先入観を排除した心で行わねばならない。ということがよくわかる。ひざを打ちました。

  • 津波は「高い波」というより「速い流れ」であり、速度は秒速30m、時速100km(「津波災害」河田惠昭)。人間の力は0.1馬力、馬は1馬力、建設機械は100馬力だが、自然に力で対抗するのはほとんど不可能。自然と闘うのではなく、自然と折り合うことが重要。

    3年で個人が忘れる。30年で組織が忘れる。60年で社会が忘れる。

    原発反対派の存在が原子力村の結びつきを強固にした面がある。その結果、内部で懸念を指摘する声は黙殺され、危ないことを想定して準備することができなくなる。共同体が独自の論理、文化で動いていることが根本の原因だった。

    八ッ場ダムは1947年のカスリーン台風の被害の経験から、首都圏を水害から守るために計画されたもの。首都圏や近畿圏の6河川で整備するスーパー堤防は、外側の法面の勾配を緩やかにするものだが、全体の6%しか進んでいない。民主党の事業仕訳で「廃止」となったが、長期的な展望に欠ける。

    利根川は江戸時代に東に流れるように付け替えたが、地形は水が南に流れるようになっている。2003年にアメリカを襲ったハリケーン「カトリーナ」と同規模の台風が関東を襲った場合、隅田川上流の北千住あたりで越流し、千代田線の入口から流れ込み、東京中の地下鉄をすべて水没させるおそれがある。

    首都圏で大地震が発生した場合に心配されることとして、液状化現象によって地下鉄が地中に取り残されること、首都高速の一本足の橋脚が倒れること、地下自動車道の火災をあげている。

  • 組織事故、リスクホメオスタシス理論。設計の理論の紹介。失敗学や危険学の本って訳ではない。

  • 遅ればせながら、読みました。傾聴すべきことが多く書かれています。勉強になりますね。積ん読解消キャンペーン中です。

  • 失敗学から見る東日本大震災

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著者プロフィール

東京大学名誉教授、工学院大学教授、工学博士。東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会・元委員長。消費者安全調査委員会・委員長。1941年生まれ。東京大学大学院修士課程修了。東京大学教授を経て現職。専門は失敗学、創造学、危険学、知能化加工学、ナノ・マイクロ加工学。著書に『失敗学のすすめ』(講談社文庫)、『直感でわかる数学』(岩波書店)、『未曾有と想定外』(講談社現代新書)など多数。

「2020年 『図解 使える失敗学大全』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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