- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062881234
作品紹介・あらすじ
不当逮捕、違法監禁、冤罪、汚職、言論弾圧、闇取引-法より優先される面子・掟とは何か?暗黙のルールが支配する中国の裏側を覗く。
感想・レビュー・書評
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中国人と日本人の気質の違いを例えるものとして私が聞いた小話をあげておく。
自分が男性として、自分の母親と妻と娘との女性3人がいたと仮定して、そこに絶対に勝ち目のない怪獣が現れたと想像してほしい。怪獣は女性3人のうち2人を食べさせろと求めてきたが、1人だけは助けてやると言ってきた場合、母親、妻、娘の3人のうち、だれを助けてもらう1人として選ぶか?
日本人のほとんどは、娘を助けてもらおうとする。つまり娘を助けるためなら母親と妻は犠牲となってやむなしと考える。しかし中国人は全然違う選択をするらしい。中国人のほとんどは母親を助けようとすると聞いた。その理由は、妻はまた探せばよいし娘はまた新しい妻と作ればよいが、母親はこの世に1人であり失えば再び得ることはできないということらしい。
この本では中国人に脈々と受け継がれてきた「潜規則」という目に見えないルールについて著者自身が見聞きした事例を交えて詳細に記述されている。
しかし、この本であげられたいくつかの“えげつない”潜規則の実例を見て、潜規則の存在を以て中国人や中国社会を“劣ったもの”“遅れたもの”と決めつけるのは、早計であり現状認識を大きく誤ったものと私は考えている。
なぜなら日本にも、潜規則に相当する、外国人から見て見えない(または理解できない)ルールが厳然として存在しているのは誰も否定できないだろうからだ。昨今の森友加計問題なんか、まさに日本の潜規則が表出したものだろう。
つまり、潜規則とは中国独自のものではない。しかしながら、何を「潜規則」と見なすかは日本や中国でも全然違ってくるので、中国の潜規則に特化して記載されたこの本を表面的に読んだだけでは、日本に思いを至らせられないかもしれない。冒頭にあげた小話でもわかるように、歴史を経て形成され共有されるに至った見えないルールには正解はなく、優劣は簡単にはつけられないところが解決を難しくしている。
ではこの本から私たちは何を学べるのかというと、私は『人間が社会を制御するために、私たちは常に「未来」「社会(他人)」を思考の軸にして考えるべき』だと結論づける。
未来を考えれば、私たちは安易に原発の稼働のスイッチに手をかけられないだろうし、社会(他人)を念頭に置けば、面子(メンツ)という考えは後ろに下がるはずだ。
昨今では、中国人や日本人のほかアメリカ人やヨーロッパ人など世界中の人々の多くが他人の劣ったところを見てそれと比較して自分の優位性に満足するような発想に陥りがちに思えるが、この本で多く挙げられた中国の潜規則の事例を見て、中国は劣ってるとか、あるいは日本はまだマシとか考えて終わるのは短絡的。
そこから一歩踏み込んで、中国の潜規則を日本の潜規則の解消のための教材と考えて、中国の長い歴史の負の遺産が潜規則とすれば、正の遺産である古典(詩経)にあるように「他山の石」とすべきである。
つまり、この本は中国を語っていながら、日本についての批判や教訓を多分に含んでいる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
テンポよく読めます。ただ、そのぶん、一つ一つのテーマについての掘り下げが浅くなっていて、もう少し突っ込んで欲しいと思うこともあります。「潜規則」という単語をキーワードにしていますが、言葉自体は新しくても、その言葉が表わしている現象についてはそれほど目新しいものではなく、多くの現代中国モノとそれほど懸け離れているわけでもありません。結局、最後に著者が指摘していますが、なまじ経済成長がうまくいってしまったために、政治の民主化が却って遅れてしまっている、というのが中国の現状なのでしょう。しかし、経済成長はいつまでも続くわけではなく、その時、中国の政治はどうなるのでしょうか?
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いつか中国の「不文律」について書かれた本が出てこないかな、と思ったらようやく出てきました。後ろに参考文献がきちんと書かれてる、というのも良いところです。
よく「経済発展したら民主化が進む」法則があるように思うけれど、中国に限っては全くあてはまらないというのがよく分かる。本書に述べられてる諸問題が解決しない限り、現体制がもし仮に崩れてもまた同じことのくり返しなんだと気づかされる。
中国を知る上で語学学習は大事だと私は思うけれど、触れてはいけない「不文律」についても知るべきじゃないかと思う。 -
この本を読むと、中国を理解するのが、(日本人にとって)どれほど難しいのか
よくわかります。私も中国で数年働き、業務は中国語で行うが、
「なぜ、そのように考えるのか?」
「なぜ、そのように行動するのか?」
あまりに、日本人のそれと違うので、仕事上でも葛藤の連続である。
言語の問題というより、(当たり前ですが、、、)文化そのモノが、違うなとつくづく感じていました。
この著作を読み、「潜規則」に関して、おぼろげながら、理解できるものの、
その習慣を受け入れることは、到底できません。そして、
どのように、対処していけばいいのか、、、まるでわかりません。
ただ、なぜ、中国で文革のような、何千万人も犠牲となった事件、運動が起こった理由がわかった気がします。
それは、潜規則に代表されるような、不透明で、理解し難い、慣習が脈々と受け継がれているからだと思います。
日本での中国の事件に対する報道は、どこか、見下したような、失笑が含まれていますが、
こういう著作を読むと、「笑えない」現実が、中国にあるのだと、つくづく思います。 -
中国社会を支配する潜規則と面子。中国の伝統のなかで培われ、深く染み付いた気質。
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確かにそうだよね、と思いつつなんとなく気分が暗~くなりました。私の気持ちが参っていたからかな?
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中国人の面子。
日本人が思う面子とは違うことを認識しなければならない。
先日読んだ石平さんの本。
ほんまかいな?という話がこの本でも出てくる。
どの国にも裏社会ってのがあるんだろうが、中国のそれははっきりいって、怖い! -
中国では法律よりも面子の方が重要。
警察の面子をつ日したら、それだけで逮捕、監禁される。
死刑判決後にはすぐに執行される。見せしめの死刑もある。 -
日本にも確かに類似した思考の慣習があるが、
それが中国にはもっと先鋭化した状態で残っている。
だから、これを読むと
中国を「理解できない」とは言えない、言ってしまえないなぁ、と思う。
また、同時に中国でも西側的な発想をする人々がいるが
追い出されるか、黙らされるかという情景も描かれている。
こうした時、華僑のネットワークというさらに一歩引いたスケールから観る
中国社会はどのように立ち現われるか、それが
今後の中国のありようを左右するように思われる。