大震災後の社会学 (講談社現代新書)

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レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881364

作品紹介・あらすじ

私たちはこの災禍を転機にできるのか?日本型システムの脆さ、地域経済復興の壁、災害ボランティア…新雅史、関谷直也、西田亮介、高原基彰ら気鋭の社会学者が論じる。

感想・レビュー・書評

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  • 社会
    東日本大震災

  • 読了。

  • いくらか、象牙の塔的な、大学の研究室に篭って書きました的な、思考や論理や理論などの頭でっかちさが気になりもする本でした。
    というのも、この本よりも先に、同じようなテーマの本である、東浩紀:編『思想地図β vol.2』を読んでいたからでした。『思想地図β vol.2』のほうが、実際の被災地の状況にこまかく、ソーシャルメディア空間の出来事にもくわしく、それらからのフィードバックは、現場主義的なスタンスを基礎としていて、現実に見合っている、論考集というよりはルポルタージュ的性格の強めの本でした。『思想地図β vol.2』が対象に対して直截的な性格をしているとすると、本書は、対象から抽出して加工し、学問として扱える形に
    一般化するような性格をしているように読めました。時間がある人や興味のある人は、あわせて読むといいですが、震災被害の深みに触れる意味では、『思想地図β vol.2』のほうが読むべき本かなと思います。

  • 本書は2011年3月11日に起こった東日本大震災とその後の問題を、社会学の立場から検証し、今後に向けて問題提起したもの。筆者たちは震災からの「復旧」を否定する。なぜなら、本来的に「日本型システム」に問題があったからであり、そのことはそもそも東京電力の原発が福島に設置されたことからも明らかである。こうした問題点を根本から、またボランティアの問題などを含めて、多面的に捉えた本書の意義は大きい。

  • 大震災「後」とあるが、大震災を契機に、日本と世界を改めて考え直すことができる論考集であった。

    こう言っては編著者らに失礼であるが、思っていたよりも、良い本であった。

    質問紙(アンケート)、面談(インタビュー)調査は、その解釈、質問事項、サンプル数に疑問を持つが、いくつか提示されたモデル化は興味深い。議論の余地は当然あるが、モデルがあってこそ、社会に対応する策の妥当性も検討できるからだ。

    テーマは、社会システムモデル、グローバル化、地方と中央、経済政策の硬直性、ボランティア、防災システム(防災対応)、メディア等々多岐にわたる。現状社会学の面目躍如であり、学問的な良心もある。

    ・東日本大震災は未曾有か
    ・日本における損害は世界にも広がっていく。経済的影響、政策的影響。
    ・我々の中心となっているのは、「世界からの支援」であって、「世界の危機意識」ではない
    ・キュア(治療、対応)とケア(世話、共有)
    ・1998年の文書で初めて「減災」という言葉が行政文書で使われる。
    ・運命論的価値観の危うさ。震災後に問題を直視する。風化させない
    ・風評被害の起源
    ・天罰論は為政者に下ったものから民主へ下ったものへと明治維新を境に変わってきた
    ・復旧はもちろんのこと、復興も空虚。もとより衰退していた場合もあるからだ。それよりもレジリエンス。

  • 社会学

  • なかなか勉強になる本でした!!!!
    頑張ろうニッポン!!って感じの人は是非。その他の皆様も是非。

  •  東日本大震災で日本の既存の社会システムの脆弱性が限界に達し、ついに(ようやく)崩壊したという感が漂う。本書は震災が抉り出した既存システムの限界と今後のへの新たな課題を社会システム論の基本立場からまとめられた論考集。新書にしては分厚いのだが精緻な論が展開されているのですらすら読める。
     震災における社会の変化やそのシステム上の課題を、その様相が表れる時系列的な変動、世界的なシステム内における変動、日本型システム自体の限界、防災システム上の課題、メディア、ボランティアの面から社会学的に分析・考察されている。中でも、日本型システムの限界はよく言われていることだが、政治にせよ社会にせよ人々が「決められない」のは、従来のスキーム内での処理で対処しようとするから、そのスキーム自体の更新をしなければ対処できない事態に全く対応できないからであることが読めてくる。さらに、災害における対応や防災想定、ボランティアにせよ、想定するがゆえに逆に自由度を狭めてしまうジレンマにも対応できなければならない課題が見えてくる。
     全体的に、社会システム上の問題は震災以前から幾度も言われていることだが、ここでも露呈し、その崩壊・終焉をしなければ、新たな制度にせよ社会にせよ、描くことができないことが改めて知らしめるものになった書物である。

  •  東日本大震災を過去の災害、メディア、ボランティア、社会システムなどの観点から考察を行った本。考察を行ったと言うより情報整理と言うほうが正確かもしれないです。
     
     この震災がきっかけとなり、被災地でもともと内在していた諸問題(過疎化など)が顕在化する形になりました。そういう意味では、元の状態よりも良い状態に戻すと言う意味の「復興」という言葉に現状の政府の対応を見ると、空虚な物を感じざるを得ない気になりました。このことに著者は復興という言葉ではなく「resilience(自己快癒力)」という言葉を用いていました。resilienceはリスクダメージを最小にしかつ、そのダメージをとり込んで自己強化していくという設計理念だそうです。言葉遊びになるかもしれませんが、復興と言うよりむしろresilienceを目指していきたいなと個人的には感じました。

  • 【読書その27】来月11日で東日本大震災から1年を迎える。最近、震災後の日本社会を振り返った本が多い。そんな中で若手の社会学者が震災後の防災システムの問題、地域振興策、メディアの震災報道、TwitterやFacebook等のソーシャルメディアの可能性・課題について論じている。自分と年代が近い人も多く、こういう若手の社会学者の方々が出てくるのは非常に良いことだと思う。

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著者プロフィール

遠藤 薫
1952年生まれ.東京工業大学院理工学研究科博士課程修了(社会工学).学習院大学法学部教授,博士(学術).理論社会学,社会情報学.『ネットメディアと〈コミュニティ〉形成』(東京電機大学出版局,2008年),『グローバリゼーションと文化変容』(世界思想社,2007年),『電子社会論』(実教出版,2000年)ほか。

「2019年 『日本近代における〈国家意識〉形成の諸問題とアジア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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