日本の国防――米軍化する自衛隊・迷走する政治 (講談社現代新書)

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レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881395

作品紹介・あらすじ

北朝鮮の核から普天間移設、尖閣の対立まで。自衛隊はこの国を守れるのか?もう米軍には頼れない!?政治の迷走が呼び込んだいまそこにある危機をあざやかに明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 防衛省・自衛隊という組織、自衛隊の海外活動、北朝鮮のミサイル問題、普天間基地問題、中国との関係、米国との関係など、今日の安全保障に関わる論点についての解説。

    東日本大震災の際の自衛隊と米軍の共同作戦は、周辺事態にも対応できる陣容だった。
    外務省は、湾岸トラウマ、また安保理常任理事国入りを目指す観点から国際貢献のアピールとしてのPKO派遣を推進し、防衛省などとの軋轢を生んでいる。防衛省は任務遂行のための武器使用が認められていない現状での、政府が解禁したPKF本体業務への参加には否定的。
    3自衛隊の個性に着目した説明も分かり易かった。国際貢献に積極的な海自と、慎重な陸自など。

    米国の核抑止戦略の変化が日本のMD導入と関連している。冷戦時代の米国は相互確証破壊という、行為に伴う代償を相手に予見させることにより行為を踏みとどまらせる懲罰的抑止をとってきたが、合理的判断が期待できない、北朝鮮のような国家の登場や、守るべき領土や国民という、行為の代償となるものを持たないテロリストの脅威から、米国の抑止戦略は、相手に行為の目的が達成困難なことを予見させて行為を思いとどまらせる拒否的抑止へと転換した。この戦略に基づき、日本はアメリカのミサイル防衛システムに組み入れられた。
    MD以外でも、自衛隊と在日米軍との司令部機能の統合であったり、そもそも日本の対潜能力自体が、米空母が日本近海で活動できるようにするためにもとめられたものであったりと、自衛隊の米軍化は進んでいる。

    アメリカ国家情報会議が発表した2025年の世界情勢を予測した「グローバルトレンド2025」というレポートのなかで、日本は、日米中の政策によって4つのパターンをとるとされた。
    第一は、中国のさらなる軍事力・影響力の拡大に伴い、日米は接近し、日本はミサイル防衛能力や対潜能力をさらに強化するというもの。
    第二は、経済成長に失敗した中国が、不満をそらすために、より敵対的となり、それに対抗するため、日本は米国の支持のもと、軍事力を強化し、地域フォーラムを形成するというものである。
    第三は、米国の没落により日中が接近するパターン。
    第四は、米中接近により取り残された日本は中国に接近するというもの。
    いずれにせよ、今後の日本はより安全保障に対する不安が高まっていることが予想されている。
    第一パターンに関しては、日米韓・日米豪の安保協力などが想起されるし、第三パターンも、米国のリーダーシップの低下は如実に表れてきている。第四パターンは、中国が、「太平洋分割」を持ちかけたのに対し、後の米中首脳会談で、オバマが、「太平洋には両国を受け入れるだけの余地がある」という趣旨の発言もあり、懸念が高まる。
    集団的自衛権行使容認は、日米共同開発の迎撃ミサイルの完成が近いことが関連している。日本上空を飛翔する弾道ミサイルを撃墜する能力を手にしてしまう以上、その能力をどう行使するかという議論は避けられない。
    普天間基地の辺野古移設や集団的自衛権行使容認の閣議決定、武器輸出三原則を見直した防衛装備移転三原則など、出版から数年ですでに状況が変わりつつある分野も少なくない。とくにここ最近は国防分野は情報の賞味期限が早いので、注視し続けていくことが必要だと感じた。

    最終的なテーマは、変わりゆく国際情勢の中で、日本の国防は米国との関係でどうなっていくのかということ。自衛隊は米軍のフランチャイズ化するのか、米国からの有事の際の関与は期待できるのか。

  • 読了。

  • 今の日本における微妙な軍事問題について
    何が問題かをあげてくれている。
    よくまとまっているし、興味深い内容もないではないが、
    踏み込んだ内容、意見というものではない。
    ただ、偏りもそれほどないと思うので、
    最初の一冊には悪くないかもしれない。

    あと、いつ読み終わったかは適当である。

  • 冷戦の落とし子としての自衛隊の生い立ち、米軍を補完するものとしての自衛隊、日米安保が出来たての頃からどう変わって来たのか、三自衛隊の違い、防衛省の中の構成、2009年まであった参事官制度、票田としての自衛隊、PKOで自衛隊が出されるようになった背景、武器使用と武力行使とか非戦闘地域とかいった言葉の定義、同盟の証としてのミサイル防衛、普天間問題において解決の「惑星直列」ともいうような好機を自ら叩き潰した鳩山政権、とキーワードを抜き出すとこんな感じですか。日本の内政、外交が国防を巡ってどう動いて来たかを追いかけてます。
    自衛隊が冷戦期は米軍の補完だったこと、そしてミサイル防衛とかの分野でどんどん組み込まれてるって論旨には確かになと思うのと同時に一国で一国を守るのが困難な現代においてはしょうがないとも思う。ただ米国の意向でしか動けなくなるとしたらそりゃマズいが。
    改めて自衛隊≒防衛省の生い立ちを知って勉強になりました。

  • 日本の防衛問題の解説本。米国、中国に挟まれた我々の現在過去未来を防衛の観点から平易に解説。良書。

  • 自衛隊の成り立ちから、米・中・北朝鮮などの動きによって、いま自衛隊が置かれている状況がわかる。

    普天間の基地移転問題・尖閣諸島をはじめとした領土問題・瀬戸際外交で挑発する北朝鮮・震災による災害派遣・・・。
    もっと自衛隊のこと、国防のことを考えてもいいんじゃないのかな。

    もっと基礎的な部分から知りたい人は【池上彰の「ニュース、そこからですか!?」】からはじめて下さい。

  • 冷戦からの世界情勢の流れを受けての我が国の国防を、「現場」で追ってきた著者。ここにもグランドデザインの欠如が顕在している。
    加えて、自ら沖縄基地問題という「急所」をお膳立てした現政権。
    頭が痛いが、緊張感のなさに戦慄も覚える。どこが分水嶺となるか分かったもんじゃないのがまた怖い。ほんと、人事じゃないんだよなぁ。

  • 戦後から日本の主権回復直後まで政権を担った吉田首相のいわゆる吉田ドクトリンはなによりもまず経済成長することが優先で計武装であり、安全保障政策の基本はアメリカを中心とする西側の一員であることだった。

    東アジアの安全保障ということでは、北朝鮮の脅威に焦点が当たっていたが、休息な経済発展を背景に着々と軍拡を進める中国の同行が懸案として主役に踊り出てきた。

    陸上自衛隊は戦前の陸軍の伝統を否定したがる。
    陸自:用意周到、動脈硬化
    海自:伝統墨守、唯我独尊
    空自:勇猛果敢、支離滅裂

    アメリカ国防総省は2010年の国防計画見直し(QDR)の中で、中国人民解放軍が中距離弾道ミサイルや攻撃型潜水艦の配備に加え、サイバー空間や宇宙空間での攻撃能力を増強しているとして、軍拡に強い懸念を表明した。

  • 総括的でありながら平易で、これから防衛問題を知ろうという人にも絶好の書だろう。とかくこの組織や政策を巡っては様々な立場の人がいるが、著者は特定の立場に偏っていない。なお、2012年1月に出たばかりの本だが、普天間移設の停滞を背景に「自衛隊の任務・役割の明確化や在日米軍再編計画の改定を視野に、日米が新たな協議を始める時期が到来したと私は受け止めている」とある。実際に2月から在日米軍再編の見直し協議が本格的に始まっている。

  • 自ら血を流す覚悟で臨まない日本を、米兵を犠牲にしてまで助けてくれるほど、米国はお人よしでもない。

    懲罰的抑止というものは、実は相手も自分と同じように合理的な判断をするだろうという妙な「信頼」がなければ成り立たないことがある。ソ連とは敵対しながらも、その信頼が長い時間をかけて醸成されていた。だが、はたして北朝鮮に代表される独裁軍事国家に、合理的な判断を求められるかというと、心もとない。どんなに代償が高くつこうとも、「ならず者国家」が暴走して攻撃をしかけてくる可能性は捨てきれないのである。また、急速な経済発展にともなって軍事的にも台頭している中国も牽制しておきたい。


    はたしてどれほどの人々が、東京にある横田基地が有している横田空域のおかげで、成田や羽田から飛ぶ航空機がかなり迂回した経路を取らされていることを知っているのだろうか。

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