電力改革―エネルギー政策の歴史的大転換 (講談社現代新書)

著者 : 橘川武郎
  • 講談社 (2012年2月17日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881456

作品紹介

日本の電力業界はビジネスモデルの大転換が求められている!緊急出版!3.11以後のエネルギー政策。エネルギー産業史研究の第一人者が電力政策の最適解を提示。

電力改革―エネルギー政策の歴史的大転換 (講談社現代新書)の感想・レビュー・書評

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  •  「原発断固反対」でもなく,「原発断固推進」でもなく,中立的に日本の電力問題を考察してみたい読者にお薦め。一読すれば,金子勝先生や大阪市長のtweetに対しても,少しは客観的に批評できるようになれるかな。
     筆者・橘川武郎先生の主眼は,電力業の歴史的経緯を踏まえたうえで,「電力改革や原子力改革の方向性をポジティブな(積極的な)形で明らかにすること」(8頁)にある。そのために,①日本の電力業の産業体制,②電力の需給構造,③原子力に関する政策に対する各改革の方向性を問うている。とりわけ,長期的な原発政策については,使用済み核燃料の処理問題を根本的に解決するのは困難という立場から,第1章のタイトルにもあるように,「リアルでポジティブな原発のたたみ方」を提唱している。
     一般的に,特定の産業や企業が直面する深刻な問題を根本的に解決しようとするときには,どんなに「立派な理念」や「正しい理論」を掲げても,その産業や企業の長期間にわたる変遷を濃密に観察しなければ,効果をあげることができない――と筆者は語る。福島第一原発事故を契機に,産業・企業が置かれた歴史的文脈と,適切な理念や理論とを結びつけて,問題解決を図る必要性が求められている。こうした応用経営史の手法が注目されるのは,経済史分野の実体経済への貢献にもつながるし,同業の後輩としても,研究のやりがいを強く感じる次第である。

  • 2012年刊。著者は一橋大学大学院商学研究科教授。◆産業の深刻な問題を根本から解決するためには、理念や理論を当該産業の歴史的文脈に即す必要がある上、多大なエネルギーを要するこの問題の解決には当該企業・産業が内包する発展のダイナミズムが求められるところ、往々にして潜在化するこのダイナミズムを析出するには当該産業の史的変遷をつぶさに観察する必要がある。かかる観点、すなわち応用経営史の観点から、フクシマ以降の国内電力産業の進展を本書は解読する。◆そういう意味で、電力産業の史的展開は詳しい。が、それだけに止まる。
    確かに、原子力発電は畳まれるべきものと見る点、その根拠を使用済み核燃料の処理が不可能(バックエンド問題)とする点も同感だ。そして、その解決をリアル目線で、というのも同様。◇しかし、①原発を各電力会社から分離し国営化するというだけで(これ自体情報の透明性を如何に図るかへの懸念大)、著者が挙げる原発縮小シナリオの何れが適かを開陳しない。②再生可能エネルギーにおける最重要項目とする蓄電池開発の現状・将来像の説明が皆無。③節電の需要サイドのアプローチが重要というが、その方法が料金体系だけという……。
    加えて、④北・東北間の連係線、東西間の周波数変換装置の拡充・充実は良いとしても、北・東北の発電総量を増す方法論とその程度(数値化)が全く示されない。⑤競争こそ効率性アップの方途としておきながら、九電体制の維持を言う理由が不明。⑥2013年以降の停電リスク忌避企業の海外移転(=原発稼働の必要性の最大の理由)について、具体的業種、数値、その合計損失を全く挙げない。等々。⑦送配電分離と統合との長短比較も舌足らず。特に垂直統合の経済性(高効率性?)ありの点が説明なし。

  • 応用経営史の電力業界への適用を謳った本。若干説明が冗長で、最後の主張につながるロジックが弱いと感じた。これが応用経営史なの?でもこの業界の変遷はファクツとして勉強になった。

  • 【読書その265】「今後のエネルギー政策に関する有識者会議」、「総合資源エネルギー調査会基本問題委員会」等の委員を歴任する、一橋大学商学部教授の橘川武郎氏の著書。
    エネルギー政策をめぐる、これまでの歴史的変遷を学ぶ。「リアルでポジティブな提案」という言葉にひかれる。

  • 電力・エネルギー問題の専門家である橘川先生の本。
    一番現実的な案(30年以内を目処に原発を縮小)
    発送電部門を一体化したままの電力改革を主張

  • 読了。

  • メモ:日本のエネルギー政策の歴史がわかりやすくまとめてあった。
    原子力政策についても、発送電分離等の議論についてもメリットとデメリットを併記しており、理解がし易かった。

    ◯ 今後のエネルギー政策

    何かと発送電分離をして、電力を自由化しようという議論がある。けれど、橘川武郎さんは発送電分離は行わず、現在の9電力(沖縄電力を含めると10)の1地域1社の区割りを撤廃することで自由化すればよいとしている。その理由としては分離することで特に利益の薄い送電部門のインセンティブを維持し、安定した供給を促すためとしている。
    但し、自由化が必要ないという意味ではない。電力各社は原子力発電政策を推進する過程で国策民営になっており、民間としての活力が失われており、再興する為にも自由化は必要。

    ・原子力事業のみを国が引き取り、電力会社は競争していくのが良い。
    ・核廃棄物は全て再処理ではなく、現実を踏まえ、直接廃棄も選択肢に加えるべき。
    ・電源開発促進税などは、国が徴収して配分する方式を止め、原発立地地域に移管する。

    ◯ 日本の電力の歴史

    第3章は大小幾つもの電力会社、電灯会社が羅列され、理解しづらかった。

    火力メイン、水力メイン、火力メイン、火力メイン+原子力
    という歴史を歩んできている。
    当初電気は照明の為のエネルギーであって、動力等に変換する為の電力としての需要は少なかった。


    その後、工場の機械が電力で動くようになり、第三次産業の出現、エアコンの出現でピーク時間は冬の夕刻から夏の昼へと映っていった。

    水力発電の出現は高圧送電のとセットであり、電力の供給源と需要地が遠距離になることはここから始まった。コストが安く、常に一定の電力を発生する水力発電の出現は、昼間の電気の使用が広がった。

    原子力は1973年のオイルショック以降に大きく伸び、86年のチェルノブイリや90年代後半に発生したもんじゅのナトリウム漏れ等のイメージダウンを起こすも、1997京都議定書などの目標が示される中、ゼロエミッションのエネルギーとして注目度が上がった。

  • 釜石でお世話になっている橘川先生。
    我が社のこともちょっと触れられてます。

  •  著者はまず、自らが主張する「リアルでポジティブな原発のたたみ方」を実現するために、日本の電力産業の歴史を検証する。かつての日本にはいくつもの電力会社が存在し、激しい競争を繰り広げていた。戦争、経済成長、オイルショックなどを経て、現在のようないびつな電力業界になっていく。
     著者の「原子力発電事業を電力会社の経営から切り離す」という提案は、一考の価値のあるものだと思う。原子力事業のリスクが非常に高いことが福島の事故で明らかになったし、核兵器に応用することも可能な原子力は、やはり国やそれに準ずる組織が管理すべきものなのかもしれない。

  • 筆者は「日本電力産業発展のダイナミズム」などの著書がある電力・エネルギー産業の研究者。経済産業省「総合資源エネルギー調査会基本問題委員会」委員を務めていた。


    筆者は基本的な認識として、ビジネスモデルの歴史的大転換が必要と訴えている。そのために「リアルでポジティブな原発のたたみ方」を提唱している。
    電力改革を論じるにあたって、まず電力の大部分を供給している電力会社(ここでは行政用語でいう「一般電気事業者」、東京電力などの十の電力会社のみを指します)をどう変えるか、を検討しなければならない。本書はその議論のスタート地点を提供してくれる。



    電力会社はどう変わっていくべきか。
    「電力会社は経営の自律性を取り戻すべき」だと筆者は結論づけている。日本の電力供給は、戦時中の一時期を除いて一貫して国営ではなく民営だった。戦後は1)民営2)発送電一貫3)地域別九分割4)独占、の四つの特徴を持つ「九電力体制」(沖縄返還以降は沖縄電力が加わり「十電力体制」に)に基づいて運営されてきた。
    九電力会社の国営化が考えにくい以上、民間企業としての経営の自律性を取り戻せば国全体のエネルギー・セキュリティにもつながる、という筆者の見解には全面的に賛同する。
    石油危機以前には、九電力体制にも「黄金時代」があったという。電力会社は戦時中の国営復興を企む経済企画庁の特殊法人「電源開発」との競争や他の電力会社との低価格・安定供給競争を戦っていた。その日本の高度経済成長への貢献は計り知れない。


    では、競争を拒む現在の九電力会社の姿はどこから来るのか。
    筆者はその主因を国策民営方式の矛盾に求めている。
    電力会社にとって原子力発電は、立地する地域住民・自治体との関係構築やバックエンドといった問題が付随することにより、国家と足並みを揃えることを余儀なくされる電源だ。
    原子力発電をその手札に加えたことで、電力会社は国家と同調し官僚化することを余儀なくされた。


    端的に言えば、今日の九電力会社への不信の要因は彼らが市場競争を拒み始めたことにあると言える。地域独占が確立されていたとはいえ、石油危機の頃までは九電力会社は政府がつくった特殊法人「電源開発」や他の電力会社と競争していた。
    今はPPSとの競争を拒む官僚的組織に成り下がり、メディアと大衆から蛇蝎の如く忌み嫌われる要因を提供してしまっているのは周知の通りだ。


    このような日本の九電力体制の現状を踏まえた上で、筆者は目指すべき改革の方向性を本書の中で示している。「歴史的大転換」を論ずるだけあって、あらゆる側面を網羅していて電力改革に関心を持つ人々が手にとって損はない本に仕上がっている。特に原発推進・反対の善悪二分論に辟易している人にとって、原子力発電が占める重みは原子力発電それ自体によって決まることはないという指摘は耳を傾けるに値するに違いない(p14)。

    本書を読むことで以下の二点の重要さを改めて認識できた。
    まずは改革の前に、現状を正確に把握することの重要さ。改革を求めると、今起きている変化にばかり目が行きがちになりだ。しかし、目に付きやすい変化の外で厳然と変わらない要素群を含めた全体像を把握することが、改革を成功させるのに重要なのは言うまでもない。
    次に数十年先のことを議論する際に、必要以上に悲観せずに希望を持って難問に向き合うことの重要性さ。その希望の一例も、最終章でもれなく示されている。地域経済活性化にエネルギーが果たせる役割に関心がある方は、この章にぜひ目を通していただきたい。


    (最後に筆者のインタビューが載った新聞記事を紹介します。筆者の見解を大まかに掴むのに役立つでしょう)
    西日本新聞「九電 九州考:『普通の会社になって』」2012年7月4日
    http://www.nishinippon.co.jp/nnp/feature/article6/20120704/20120704_0002.shtml


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