不愉快な現実 中国の大国化、米国の戦略転換 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881494

作品紹介・あらすじ

東アジアのハーフバランスの激変で、孤立化が進行している。

感想・レビュー・書評

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  • 「スーパー301条」という言葉を覚えているだろうか?
    戦後アメリカ追随で進んできた日本だったが、アメリカから制裁を受ける事態を日本人はどのようにうけとめようとしていただろうか?自分を守ってくれる親でもあり、親友でもあるアメリカが日本を敵視する事実に動転して慌ててすり寄ってしまった。
    多くの日本人が疑問をもたずに思い込んでいることがある。
    「民主主義国アメリカは共産主義国の中国よりも同じ民主主義の日本の仲間」
    「これまでのやりかたでこれからもうまく行く。今の不調はこれまでのやり方が正しい路線からずれているため。」
    著者の孫崎亨氏これらが幻想であることから話をひもといてゆく。

    「中国がアメリカを抜く大国になる」
    「核の傘はもう存在しない」
    「アメリカは日本を守らない」
    「日本は中国には勝てない」
    「北方2島や尖閣諸島、竹島の領有を主張する日本の根拠は薄弱」
    等、すでに明白な事実が日本人の多くにはまだ見えていない。
    アメリカは日本の友達であると信じたい気持と、そうである保証などなくなっている事実の間で、ひたすら集団で現実逃避に走る日本人。日本人の常識は単なる思い込みにすぎず、不愉快な現実がより事態を直視できなくしていることを伝えることがこの本の主題である。

    著者はこう述べている。「単純な話、今日、日中でどちらの政治指導者が、それぞれの環境を前提にした中で、それぞれの国を正しい方向に導く能力を有しているか。残念ながら、筆者はとても『日本の政策が中国よりも国益に合致した政策である』と言えない。」(P166)
    またこう問いかける。「『中国は民主主義体制でない』と批判する人々は、日本と中国のどちらの政策が『公共の利益のために行使されているか』を問えばよい。」(P168)
    私が思うに、第三国の人から見ればこの問いの答えは明らかなのだが、多くの日本人にはにわかには理解できない、また受け入れたくない「不愉快な現実」なのである。

  •  孫崎さんは外交官OBで、するどい分析だなと思っていた。

     職場の本屋の棚から新刊を購入。

     不愉快な現実。

    (1)米国はアジアの交渉の中心を日本から中国に移した。

    (2)アメリカは、日本のために本土がやられるため、日本に核の傘をかけることはない。

    (3)自衛隊だけでは現時点ですでに中国軍に対抗できない。

     この不愉快な現実の中で、日米同盟でアメリカの尻にくっついていた日本は、外交戦略を練り直さなければならない。

     まず、自分にできることとしては、中国だけでなく、地政学上重要なベトナム、タイ、インドネシア、オーストリアなどの太平洋諸国との連携を強めていくことだと思う。

  • ●スーパー301条は、経済的に日本に報復することを正当化する法律。
    ●米国にとって、もはや日本より中国の方が重要。
    ●イデオロギーより利益
    ●日本が脅威だったのは80〜90はじめ。
    ●中国が尖閣諸島を占拠しても、米軍は出てこない。
    ●いずれ中国指導部は民主化に着手する必要に直面する。
    ●東アジアのパラダイムの変化。日本人はその厳しさを認識できるのか?
    ●領土問題については、お互い軍事力を使わないで平和的に解決する取り決めを行う。
    ●中国の軍事費は日本の10倍以上になるから、軍事的に対抗できるはずがない。

  • 米国は米中が世界の二大国になると踏んでいる。中国が一極にならないように日本を利用することを考えている。
    核の使用は、敵国が自国を核で壊滅的なダメージを与えようとすると判断した時に行われる。そのため、米国が日本のために核を利用することはあり得ない。
    日本は米国のみとの関係を重視するのではなく、アジアの一国としての立場を重視するべき。EUのように日本もアセアン連合の構想を進めるべき。

  • 21世紀の中国との関係を考えていく上で必要な知識を提供してくれる。

    日米関係は、米国はオフショア・バランシングの観点から自衛隊に役割分担を強く求め、在日米軍基地を維持する。アメリカの核の傘なるものは実は存在しなく、万が一、日中が紛争状態になった場合、アメリカが助けてくれることはない。

    一方日中関係は、GDPにおける軍事費比率の差、今後の中国の経済成長を勘案すると、2020年には中国の軍事費は日本の軍事費の10倍になる。日本は中国との紛争を軍事的に解決することはできない。

    良好な日中関係(日露関係・日朝関係も同じ)を築くには「複合的相互依存関係」の構築、つまり、戦略的に経済的な結びつきを強くしていくことが望ましい。その先例がEUである。ドイツとフランスの反目が二度の大戦をもたらしたが、その根源である石炭と鉄鋼を共同管理するところからEUは始った。現在、ドイツとフランスが再び戦争を起こすと考える者はいない。

    しかし、そのような成熟した関係を作っていく準備が日中関係にはまだできていない。筆者は、日本人の対外無関心が、日本人自ら認識していないが、外国からは好戦的に見える状況に陥れていることを警鐘している。

    具体的には、東京都による尖閣諸島購入は、中国は中国への威嚇行為と受け止めるであろう。中国が軍事的に尖閣諸島奪取に動けば、日本はなすすべがない。筆者は、尖閣諸島問題は「棚上げ」し、中国との経済的結びつきを強めることを推奨する。

    野田政権のみならず、石原知事にも読んで欲しい。


    <目次>
    はじめに
    第1章 中国が超大国として米国を抜くか
    第2章 東アジアに対する米国戦略の選択
    第3章 日米同盟は日本に繁栄をもたらしたか
    第4章 中国の軍事戦略
    第5章 日本には中国との紛争を軍事的に解決する手段はない
    第6章 中国が抱える課題
    第7章 ロシア・北朝鮮にどう対応するか
    第8章 戦略論で東アジアを考える
    第9章 日本の生きる道ー平和的手段の模索
    おわりに





    2012.6.17読了

  • 非常に論理的な持論の組み立てだが、すべては中国が米国に比肩する経済大国になることが前提になっている。日本人がこれを認めたがらないとのことだが、その前提はこれまでの成長トレンドと米国人へのアンケートがベースになっている。が、ちょっと待って欲しい。本当に過去のトレンドがこの先も続くのか?
    経済成長率は生産年齢人口の増加率に大きな影響を受けるが、一人っ子政策によるdemographyの歪により2013年には中国のそれは減少に転じたと言われている。またこの数年間の高度経済成長は、経済原理を無視した無理な設備投資に支えられており、全成長率7%の内4%がそうした過剰な投資効果によるとの推計もある。これ以上の無理な投資はさすがの独裁国家でも不可能だ。更に中国には知財の蓄積がほとんどないため、成長鈍化と労務費増加によって外国企業が逃げだせば独自路線での経済成長は困難だ。一方で米国はイノベーションと戦略的外交で益々その影響力を増している。
    こういった疑念は不都合な現実から目をそらしているだけなのだろうか?自分にはそうは思えない。

  • 気になった言葉のメモ

    中国は大国化する
    アメリカは日本よりも中国を重視する
    それを見極め日本としてどうするかを考えるのがこの本の目的。

    日本の課題は日本人が厳しさを認識できるか。
    日本の最も適切な戦略とは。
    国際情勢への関心の低さ。

    自身への関心が高く
    他者への関心が低い

    2011年末に書かれた本書の予言は、2015年の今も生きているように見える。
    中国のバブル崩壊などと煽っていたメディアの論調もすでに見られない。むしろ、中国経済は大きく成長し続けている。
    日本は経済も人口もジリ貧状態。
    こういう中で中国とどう付き合っていくか。
    戦略的な思考が必要なことは不愉快なほどによーくわかった。
    あとは、教育にどう活かしていくべきなのか?

  • 不愉快だけど、これは事実だ。

  • 尖閣の棚上げは、同意できるが、東アジア共同体は、あまりにも、『お花畑』過ぎる。取り込まれのが、オチだ。もと外務官僚だけに条約の細部には詳しいが、戦略となると、書籍と貧弱な経験をもとにした、リアリティに欠けるモノにしか見えない。世間知らずの学者だってもっとまともなことを言うのでは?外務省のレベルってこんなもの?中国に不利なことには、一切、言及してない。
    中国は、皇帝を、共産党に置き換えただけの、帝国主義国家だ。
    米国や、他のアジア国家と組んで対抗するしかない。中国の内部崩壊を期待しつつ…!

  • 本書の要旨は終章で次のように書かれている…

    1 日本の隣国中国は、経済・軍事両面で米国と並ぶ大国になる。
    2 この変化の中、米国は中国を東アジアで最も重要な国と位置づける。
    3 2020年頃、中国は米国に経済的に追いつくことが予想される。
    4 軍事力で米中が接近する状況で、米国が日本を守るために中国と軍事的対決することはない。

    では、そうした中、日本はどうあるべきか…
    それは選択肢のある問題ではない。本書では次のように書く。

    ―日本には軍事的解決の選択肢はない。
     平和的解決の手段しかない。

    …であるならば、従来の対米追随のありかたは、見直されて
    然るべきなのだろう…残念ながら現在の日本の政治に、
    その萌芽はない。本書で述べられる「東アジア共同体」は、
    非現実な理想としても、ボクらは、どこへ向かうべきか考える時だ。

  • 中国の台頭、アメリカとの二極化はわかるがアジア共同体というのは少し違和感あり。EUの現状を見ると緩やかな統合も場合によっては危機的状況を脱出できない。むしろ今の日本が経済力を再生し大国とのバランスゲームを演じるほうを志向したくなる。

  • ようは最近、米国さんが日本より中国を重視してるよ〜。という警鐘
    本書の主旨ではないが、95ページにある最近20年間の世界金融機関ベスト20の入れ替わり具合が興味深かった。

  • 主張のブレ無さが逆に気になるというか、中国農村部、チベットの状況を聞いて何故そこまで信頼を寄せられるのか。
    自分が実際に係ったところに近くなるほど近視眼的になるのはよくある現象。
    アメリカが首位を脅かされる恐怖で、80年代の日本にしたように中国に噛み付くのを期待して待つしかないのか。

  • 負け惜しみ感あるけど、まぁ確かにと思う部分もある。読んでみると政治のドロドロがかい間見える本

  • 孫崎氏の著書は明快な記述のものが多いが、この本もその1冊。日本の立ち位置について、ASEAN諸国のあり方は参考になることが多いと思う。武力はいくら持ったところで安心が得られるものではないのだから、著者の主張する「複合的相互依存関係」を構築することは解になりうると私も思う。課題は何を、どうやってというところだ。悲しいことに、今の私はノーアイデア…というわけでもないか。

  • 中国がアメリカをしのぐ超大国となり,アメリカも日本より中国を重視する状況が近づきつつあるという現状認識のもとに,今後の日本外交の進むべき方向を論じる。

    TVやネットで著者の言動を目にして,唯我独尊な思い込みに基づくように感じていたが,本を読むと,まことにもっとも。
    勉強になったし,説得もされた。

  • 明治以降150年間で経験しなかった中国の大国化に日本はどう向き合うか。2020年には中国のGDPはアメリカを越えるという情況の中で、米国のオバマ政権は同盟国重視からG2戦略へ転換するのか? 中国の戦略等々を踏まえた分析、提言は傾聴に値する。
    反米傾向が強いと言われる著者だが、この本ではかなり冷静な分析、提言をしている。

  • 孫崎の日頃の主張通り。ただツイッターを最近フォローし始めてTPP反対とか東アジア共同体についていろいろ言ってる背景を初めて知れたかも。
    中国が大国化するなかで米国も東アジアで日本より中国を優先していくだろう、その中で日本はどうやって生き抜くかを考えるとゆう本。
    地政学において軍事力の重要性が弱まっていること、今までは金、技術を欲しがっていた中国がマネジメントを欲しがっていること、中国にとってEUや米国との関係が重要であるほど、日本との問題が悪い影響を与えないようにと日本にとっても都合がよくなること、逼迫する財政で手が回らないところを日本の自衛隊との共同を深めていくことで補おうとする米国、中国との関係を強化しつつ、中国との関係が悪化したときに備えて日本やインドとの同盟を強化するザカリアの「ヘッジ戦略」、BIS規制で起こった日本経済への悪影響、どうしようもなくなる日中の軍事バランス、リアリズムより複合的相互依存関係へとゆう主張、中国や韓国が領土問題についてどうゆう認識を持っているか知らない日本人、実質的な複合的依存関係を中韓と深め、EUやASEANのように段階的に東アジア共同体をつくっていこうとゆう主張など、TPP反対や経済についてはともかく、孫崎さんの国家戦略論にはいつも納得させられます。

  • キッシンジャー 日本人を戦略的にものを考えられない人たちと蔑視
    米国の戦略的資産としての日本 マイケルグリーン
    1 伝統的な日米関係を重視
    2 米中二大大国が世界を調整する
    3 米国は部分的撤退を図るがその分を同盟国で穴埋めさせ共通の敵として当たらせる オフショア・バランシンス
    4 関係国で国際的枠組みを作っている

    米国は日米同盟強化ししか動かないと錯覚している

    日本の多くの人は十分に認識していないが、尖閣諸島近辺で日中間の軍事衝突が起こった時に、日本が勝つシナリオはない

    棚上げとは現状を容認し、その変更を武力でもっておこなわないことである

    新疆ウイグル地方 イスラム教
    カトリック、プロテスタント間での宗教戦争 ドイツでは人口の10−15%減少
    戦争における膨大な犠牲を避けるため、「国家の主権を認め、互いに干渉しない」ことを原則とするウエストファリア条約が結ばれた

    ロシアの国別輸出額 日本は14番目 重要度低い

    サンフランシスコ講和条約 日本国は千島列島に対するすべての権利、請求権を放棄する 吉田茂 千島南部の択捉、国後両国が放棄の千島に含まれている

    望ましい対応 歯舞色丹は1956の日ソ間の合意にもとづき日本に返還すること 国後、択捉は歴史的事実を踏まえ日本ロシアは解決を図ること

    北朝鮮 相互依存がいいが、実際は輸出輸入ともへっている
    一方中国との相互依存は上がっている

    孫子 十なれば、則ちこれを囲みこれと戦い、五なれば、則ちこれを攻め、倍すれば、則ちこれを分かち、敵すれば、則ちこれとよく戦い、少なければ、則ちこれをよく逃れ、若からざれば、則ちおくこれを避く。故に小敵の堅は、大敵のきんなり

    戦争の原則としては、味方が10倍であれば敵軍を包囲し、5倍であれば敵軍を攻撃し、倍であれば敵軍を分裂させ、等しければ戦い、少なければ退却し、力が及ばなければ隠れる、だから少勢なのに強気ばかりでいるのは、大部隊の捕虜になるだけである

    ナッシュ均衡 我々が考える最善の戦略は、自らのあるべき姿を考えて出てくるのではなく、相手国の動きによって最適な戦略が変わる

    日本が抱える火種は領土問題である。ここで顕著なのは日本側が領土問題について相手方の主張をほとんど知らないことである

    米国の軍事思考の根幹にはトゥキュディデスの戦史がある。ここでは、アテネの滅亡は、アテネの国益に密着していない同盟国を助けたことにある

    望ましい戦略は、相手と我の力関係を冷静に判断し、最も適切な戦略を選択することである。「こうしたい」では望ましい戦略は出ない。相手と関係なく「戦う」という選択をすれば、破れ、滅びる運命が待っている

    阿部信行首相 1939/8-1940/1 無謀な戦争をやめようとした

    それを回避するためには互いに平和的解決を志向する者同士の連携を図る。これが国際政治で強く望まれることである

    欧州共同体も、はじめは欧州石炭鉄鋼共同体からスタートした

    いま日本人に求められているのは、「日本の隣国中国は、経済・軍事両面で米国と肩を並べる大国になる」という事態を直視できるか否かである。そして米国との協調のみを求めれば日本の繁栄があるという時代は終わったという事態を直視できるか否かである

  • 元々ドイツの文化圏だったアルザス・ロレーヌ地方はドイツ、フランス間で長年領土紛争が行われて来たが第二次大戦後の後その原因となった資源石炭、鉄鋼を共同管理する欧州石炭鉄鋼共同体を作り後にEUへと発展した。日本も大国化する中国との付き合い方でお互いの利益となるような体制を作ると言うのが本書の主張のようだ。

    前半では日米関係、日中関係、中米関係に関する分析がなされている。
    冷戦下でアメリカの方針として対ロシアの防御線として日本の復興を後押ししたアメリカは80年代以降は経済的な脅威として日本を捉え逆に弱体化をはかる。それが銀行のBIS規制で当時世界の銀行の内ベスト10に7行あったのがBIS規制がもとで置いて行かれたと言う。しかしこれは元々資産バブルで膨らんだ価値だったので過大評価されていただけだったと思うのだが・・・とは言え日米貿易戦争でアメリカが日本を脅威として捉えていたのは事実。

    現在のアメリカがアジアで最も重視しているのは日本ではなくて中国であり、中国が強くなりすぎないように日本を対抗させると言うのがアメリカでは一つの常識的な考え方だと言う。まあそれは有るかもね、筆者も書いてるがリチャード・アーミテージ、マイケル・グリーン、ジョセフ・ナイは日米同盟強化路線で裏には軍産複合体がいて日本にF−35なんかを売りつけようとしていると。一方金融、産業を代表するグループは中国との関係を重視し、またG2米中が国際問題を協議、解決すると言うことを目標とする勢力も有る。(個人的にはGゼロ説に1票w)筆者は日米関係強化路線にはむしろ反対の立場のようだが多くの日本人の感覚としては日米関係の強化は対中関係でアメリカのパワーを当てにしていると言うことだとの理解で日米関係さえ安泰なら何もかも大丈夫と言うほどのんきな人はあまり以内と思うのだが。

    中国と尖閣で軍事対立が起こったらどうなるかについても中国軍事力が部分的には日本を圧倒し、米軍は日本が前にたたない限り全面にはたたない。中国のミサイルは日本の米軍基地を破壊する能力が有る。などなど列挙しているがさすがに米軍基地が攻撃されたらアメリカは反撃すると思うよ。尖閣諸島の帰属についてアメリカはノーコメントなのは事実なのですがやや意図的にミスリードしているように見える。

    尖閣諸島が中国領であると言う根拠をいくつか示しているが、同様に尖閣諸島が日本領であると中国が認めた根拠もいくつかあるのにそちらには全く触れていない。北方4島についても日本が放棄した根拠のみを述べロシアが条約に参加していない部分は触れていないなど、相手方の見方はこうだという説明をするのはいいとしてもかなり一方的な主張に見える。

    他にも中国は2002年にアセアンとの間で南シナ海の行動宣言で「現在占領されていない島や岩礁上への居住などの行為を控え、領有権争いを紛糾、拡大させる行為を自制する」の項目が有ることを元に中国は武力的な解決を行わないだろうとしているが、元々島を勝手に占領したのは中国でこの宣言はある意味やっちゃったのは仕方ないがもうしません、だから取り返しにくるなと言ってる様な物なのでそう素直に信じられないと言うのが普通の感覚だと思う。

    紛争を避けて経済的にお互いに利益のある関係を作りましょうと言う主張は理解できるのだが、やったもん勝ちの中国の行為を責めずに日本政府の対応のみを問題視し平和的な解決をしましょうと言ってもねえ。最後は中国をどれだけ信用できるかと言う話になるし、それこそ中国人だってそれほど中国政府を信用していない。まあ経済的な結びつきを強くすることからですかね、EUの例に習うのであれば。

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著者プロフィール

1943年、旧満州生まれ。東京大学法学部を中退後、外務省に入省。
英国、ソ連、イラク、カナダに駐在。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大学校教授などを歴任。現在、東アジア共同体研究所所長。
主な著書『戦後史の正体』(22万部のベストセラー。創元社)、『日本外交 現場からの証言』(山本七平賞受賞。中公新書)、『日米同盟の正体』(講談社現代新書)、『日米開戦の正体』『朝鮮戦争の正体』(祥伝社)、『アメリカに潰された政治家たち』河出書房新社)、『平和を創る道の探求』(かもがわ出版)ほか。

「2023年 『同盟は家臣ではない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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