邪馬台国をとらえなおす (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881548

作品紹介・あらすじ

著墓は卑弥呼の墓か、纒向は邪馬台国の宮殿跡か 三角縁神獣鏡は「魏志倭人伝」の鏡か-日本国家の起源に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 2012年刊。著者は明治大学名誉教授。

     日本古代史において、最大の謎と鋭い論争が続いてきたテーマは、邪馬台国の所在とその内実であることは論を待たないであろう。本書は、その邪馬台国に関し「魏書鮮卑烏丸東夷伝倭人条」など文献史学で解明できないことを前提としつつ、その解明の一助としての考古学的知見を広範に解説する。

     具体的には①銅鏡(三角縁神獣鏡ほか)、②青銅器、③墓制(古墳時代の3世紀への前倒し論)、④土器(錯綜状況と地域差が顕著で銅鏡よりも分析解読が困難)、⑤鉄から邪馬台国の所在比定と3世紀状況を切り取る。

     この点、著者は慎重な叙述に終始し、その比定地に関しては結論を持ち越してはいる。
     が、纒向遺跡と箸墓古墳を基軸とする著者はいわゆる畿内説に親近性を持つということになろうか。
     その中でも、放射線炭素年代測定・年代年輪法から導かれる古墳時代の前倒しと、九州その他に3世紀の大型古墳が見当たらない点は、大まかには無視できない事情であろう。

     さて、中部以東の土器その他の遺跡から、3世紀には全国的交流が相当盛んであったとの指摘は、古代交易史の観点から、特に日本海交易の隆盛に関する知見から見ても、さもありなんか。

     ところで、考古学を基軸に据える本書だが、⑴文献史学の概略と、⑵2~3世紀の東アジア情勢と邪馬台国との関連性への言及は流石のそれである。
     もっとも、この点は攫っただけにすぎない。⑴は講談社メチエの「邪馬台国論争」、朝日文庫「邪馬台国」、⑵は岡田英弘著「倭国の時代」「倭国」などで補充した方が良いかもしれない。

  • 邪馬台国論争にかかわる問題点を整理して紹介した新書。一般向けの講座が元になっているようで、読みやすく分かりやすい。「論争は何となく知っているが、最近の論点の概要を知りたい」という人向け。



    著者の立場である畿内説を中心に叙述されているが、個々の問題ではなるべく断定をさけ、慎重な態度を崩さない学術的姿勢は信頼できる。ただ淡々とした紹介が中心になっていて、この本で著者が邪馬台国をどう「とらえなお」したいのかを、もっと知りたかった。新書なので仕方ないかもしれないが、文章・内容ともに物足りない。

  • 邪馬台国とは?畿内説、九州説に捉われることなく文献学、考古学両方の見解から正に"とらえなおす"。これまでの発掘事実などから結果ありきではなく何が分かるのか?を説明されており興味深い。箸墓古墳の発掘が許可されればいろいろ分かるんだろうな~とやはり思ってしまう。

  • 最近の邪馬台国論の本。畿内説に基づく本。箸墓古墳が女王卑弥呼の墓だと言う説。ある意味まともな本である。

  •  本書は、邪馬台国についての現在最新の知見を紹介したものとして実に興味深い良書であると思った。
     日本の弥生時代や古墳時代の年代が「放射性炭素年代測定法」や「年輪年代測定法」により大幅に時代がさかのぼっていると判明してきているとは聞いていたが、それにより邪馬台国がどこにあったのかについての本書の考察は面白かった。
     「箸墓」の周壕土器の年代が西暦240年~260年となると卑弥呼の死去の年代にあう。では箸墓は卑弥呼の墓なのだろうか。その本書の考古学的検証は興味深い。
     本書では、「魏志倭人伝」などの中国の文書資料や、当時の東アジア情勢、そして「鉄と鏡の考古学」や「土器と墓」等を関連付けて、専門的かつ詳細な考察を展開しているが、どれも説得力がある。
     特に年代がわかってきている土器について「土器だけが歩いてくるわけはない」とはまさにその通り、人と共に土器は移動したのだろうと思えた。
     では、箸墓の纒向遺跡は邪馬台国なのだろうか。本書は、その可能性の高さと共に、否定的な発見もとり上げている。纒向遺跡では「木製の輪鐙」も出土しているが、「魏志倭人伝には邪馬台国では牛馬はいない」との記載があるというのだ。
     最終的な本書の結論として、「今の考古学的資料はからは奈良県桜井市箸墓古墳が卑弥呼の墓と断定できる状況にはないと言わざるを得ない」との結論は面白かった。最新の知見でも、いまだ邪馬台国の所在地は謎なのだ。だから古代史は面白い。

  • 土器編年は結局、相対的な前後関係しか明らかにできない。三角縁神獣鏡は国内産の可能性あり。箸墓に先行する前方後円墳がある。なかなか結論を出せないが、弥生時代の始まりや古墳の成立などさまざまな年代が繰り上がっている。ヤマト朝廷の成立もかなり早まるのではないだろうか?

  • 邪馬台国本2冊目。

    箸墓について触れないわけはないですよね。

    てか、なんで岩手説を聞いたんだっけ??

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著者プロフィール

1926年 東京都に生まれる。1957年 明治大学大学院文学研究科博士課程後期史学専攻修了、文学博士。現在 明治大学名誉教授。 ※2021年8月現在
【主要編著書】『東国の古墳文化』(六興出版、1986年)、『東国の古墳と大和政権』(吉川弘文館、2002年)、『歴史を塗り替えた日本列島発掘史』(KADOKAWA、2014年)、『古代天皇陵の謎を追う』(新日本出版社、2015年)

「2021年 『邪馬台国をとらえなおす』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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