死別の悲しみに向き合う─グリーフケアとは何か (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881852

作品紹介・あらすじ

死別とはどんな体験なのか? 大切な人を亡くしたとき、人はなにを思うのか? 周囲はどう接すればいいのか? 激変する社会のなかで模索する新たな悲しみの作法。(講談社現代新書)

感想・レビュー・書評

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  • 大切な人を亡くした身近な人に対して、どのように接したら良いか、また自分自身はどうしたら良いか、が学べる本。悲しみはなかなか癒えないが、「あなた(自分)は一人ではない」というメッセージを受け入れられれば、気持ちはずいぶん楽になるそう。時間をたっぷりかけて、焦らず見守ることが大切だと思った。

  • 死亡した人に見られる行動として、亡き人を見つけ出そうとして、生前に良く行った場所に出かけたり、人混みの中に故人の姿を探したりする。いわゆる探索行動がある。そこに行けば、またあの人に会えるのではないかと思うわけである。
    ・新たな人生の進路を見出す。
    ・人間としての強さを得る。自分が以前より強くなったと思えるようになることもある。苦しみの底を経験したがゆえのしなやかな強さを身に着け、力強く新たな人生を歩み始める人もいる。
    私はこんなふうに考えているのです。妻は天国にいる。私もいずれ天国に行く。妻と再会出来る。それまで生きているあいだ、たくさんの人と知り合って、たくさんの事をゆあって、土産話をいっぱい作ってから妻と会いたい。
    死亡した日から数えて四十九日の満中陰までの7日目ごとの追善供養、その後、百か日、一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌といった、法事・法要の儀式が行われる。
    一般的に三十三回忌で死靈は、祖霊となり、弔い上げとされる。
    日本では古来から亡くなった人の死を悼む挽歌が詠まれており、日本最古の和歌集とされる万葉集にも多くの挽歌が収録されている。亡くなった人への手紙を書く。
    亡き人に対して実際に 良くないこと をしてしまっていたとしても、その一方で亡き人のために、良いこともきっとたくさんしてあげたのではないだろうか、私達は普段の生活において、身近な人を喜ばせることがあれば、怒らせたり、悲しませたりすることもある。相手にとって良かれと思って取った行動が、悪い結果になってしまったりすることもある。いつも完璧な判断や行動が出来る人なんていない。
    あなたが、亡き人のために出来ること、頑張ったこと、もっと意識する必要がある。悪かったと思うことは否定なしに頭に浮かぶ一方であなたの良かった面はついつい見過ごされがちである。自分を責める気持ちに自分なりに折り合いをつけるためには、ある程度の時間も必要である。しかしそれでも、。自分を責める気持ちは完全には消えることは無いかも知れない。ただ、時間が経つにつれ、過去を冷静にふりかえるようになることで、圧倒されるほどの強い自責の念は開放されるであろう。
    今後の人生に希望や目的があれば、毎日が楽しいのでしょうが、いまは、なにもなくて毎日がむなしいです。なにか物足りない毎日です。
    このようなとき、大きな目標を立てることも悪くはないが、まずは身近なところで、すぐにでもできるような小さな目標を立てることから始めてみてはどうだろうか。小さな目標を課題を一つひとつ達成していくなかで、自身を取り戻し、生活や人生に向き合ってうけるようになるかもしれない。いつかやってみたいと思いつつ、しないままになっていたことに挑戦してみるのも良いだろう。
    最終的には、やはり自分自身の足で立ち上がるしか無い。とことん落ち込んで、死にさえしなければいいのでる。

  • 同じ著者の『喪失学』と内容が重複している部分は多くあります。
    実際に親しい人との死別を経験して、立ち直りたいという方が読むには、こちらの方がより具体的なことが書かれていて、参考になると思います。
    現代人は死から目を逸らしがちですが、元気なうちに家族や自分の死について考えておくべきですね。
    そうすれば、人への接し方も変わってくると、この本にも書いてありました。

  • 『死別の悲しみに向き合う グリーフケアとは何か』 坂口幸弘さん

    研修で先生本人の講演会を聞き、もっと詳しい話を知りたいと思い購入。
    私自身は、死別の経験が少ない。ただ、援助者として死別した人にお会いした時にどんなことが出来るかと思ってこの本を読んだ。

    小説と違ってすいすい進まないが、書いてることは確かにそうだなと思うし、納得した。そういう人に出会った時に心がけたい事ばかりだった。

    複雑性悲嘆のある人に出会った時に、また読み返したいと思う。

    〈本の側より〉
    ひとりではないというめっせーを伝えることが大事
    自分を気にかけてくれている人がいると思えるだけで、人は安心できる。死別した人の悲しみを代わりに引き受けることはできないが、悲しみの暗闇の中にいる人をひとりにしないことはできる。気の利いた言葉ではなくても、あなたはひとりではないというメッセージが伝われば、彼らの悲しみの淵から新たな一歩を踏み出す力にきっとなるはずである。

    〈本文より〉
    ・(死別の)体験があるか、ないかではなく、当事者一人ひとりの体験を尊重し、その思いや気持ちに寄り添えるかが支援する上で重要なのである。
    ・「さみしい」と「さびしい」は微妙に決定的にちがうと述べられている。「さみしい」には「さびしい」よりも、もっと術のない心の深みからくる切実な音感がある。
    ・身近な人の死を悲しめなかったり、解放感や安堵感を経験したりすることは、ごく自然なことであり、なにもおかしいことではない。人によって亡き人との関係や、いまにいたるまでの経緯や状況は異なる。したがって、どのような感情や思いであっても、無理に抑えこんだり、自分を責めたりする必要はないのである。
    ・複雑性悲嘆の症状とうつ症状のちがいについてみると、うつ症状には、何事にもおっくうになる精神運動の遅滞や、自尊心の低下などが含まれる。それにたいし、複雑性悲嘆に特徴的な症状は、思慕、故人の死を信じられないという思い、故人なしでは人生は空虚であり満たされないという感覚などであるといわれている。治療効果に関しても、抗うつ薬の使用や心理療法によってうつ症状の改善は認められるが、悲嘆の症状にたいする治療効果は必ずしも示されていない。
    ・複雑性悲嘆とPTSDのちがいについては、PTSD症状の特徴である恐怖刺激の回避が、複雑性悲嘆においては顕著な症状ではないことが挙げられている。PTSD患者は、外傷的できごとにたいして恐怖を感じ、そのできごとを忘れたいのだが忘れられない。それにたいし、複雑性悲嘆の場合ら、故人を忘れたくないからしがみつくというのが遺族の基本的な態度であるとされる。
    ・"Give sorrow words(悲しみに言葉を与えよ)"
    ・人に語ることの価値は、相手に何らかの反応を期待するというよりは、みずからの気持ちにたいして距離をとって見つめ直せることにある。
    ・なにかしら喜ぶことを自分のまわりから見つけるようにするのよ。だれでも本気になってさがせばきっと自分の周りには、喜べることがあるものよ。
    ・だれかに聴いてもらおうとひとが重い口を開くのは、何を言っても受け容れてもらえる、留保をつけずに、反論もせずに、とにかく言葉を受け取ってくれる、自分のままを受け容れてもらえる、そういう感触を確認できたときである。
    聴くというのも、話を聴くというより、話そうとして話しきれないその疼(うず)きを聴くということだ。そして聴き手の聴く姿勢を察知してはじめてひとは口を開く。
    ・中高年の時期に伴侶を亡くした人は、そうでない人に比べ、六十五才以上の老年期での認知機能低下が大きく、アルツハイマー病になるリスクが七.六七倍も高いという。
    ・サポートする側の精神的な疲労は、自他ともに見過ごされがちでたる。
    ・遺族の方に接するにあたって、自分ができることには限界があることを認識しておくことも必要であろう。
    ・あなたがかかわっている人がなかなか悲しみから抜け出せないからといって、必要以上に自分を責める必要はない。遺族を支援する取り組みに長年たずさわっている援助職の人であっても、思うようにいかないことは多い。なんとか力になりたいという思いが強ければ強いほど、もどかしさやいらだち、無力感をいだきがちになるかもしれない。しかし、ここは少し冷静になって、気を長く持つことが大切である。
    やや極端な言いかたになるが、「その人が死ななければいい」くらいの気持ちの余裕があってもよいのではないのだろうか。もしあなたが疲れきって、その場から立ち去ることになれば、あなたの目の前にいる遺族を支える人がひとりもいなくなってしまうかもしれないのである。
    ・六つのポイント
    ①相手の価値を見つめなおし、関係を大切にする
    "Tomorrow Never Comes(邦題:最後だとわかっていたなら)"
    自分にとって大切な人が生きていることの幸せをかみしめてみませんか。大切な人の死を意識することは、その人との今の時間を大切にすることにつながるのである。
    ②元気なうちにお互いの最期の迎えかたについて話し合っておく
    心残りのない別れないなどないのかもしれないが、亡き人のためにできる限りのことはしてあげられたとの思いは、残された者の救いになるだろう。
    ③死別した時に経験することについて知っておく
    ④家事や金銭管理などの生活技術を身につけておく
    ⑤自分なりの生きがいや人生の楽しみを見つけておく
    ⑥まわりの人とのつながりを大切にする

    ・死別といった体験は、十人いれば十通りの体験があり、十通りの支援のかたちがある。それを十把一絡げ(じっぱひとから: いろいろな種類のものを区別なしにひとまとめにして扱うこと)にして論じることにはそもそも無理がある。

  • 別れの悲しみというのは、その人と別れたくないという思い、相手への愛情の裏返しである。

    大切な人との出会いの副産物である死別の悲しみの存在を積極的に認める。

  • 今の時期にしか読めないかなと思って選んだ本です。こうしたことに関しても研究されているというのは素晴らしいことだなとまずは感心します。この本を読んで「死別」とはきわめて個人的な体験であることと、そのことから悲嘆との付き合いもきわめて個人的なもので、どうあるべきというものではないと言う事です。この個人的な意見を言うのなら悲しみや無念さは忘れるものではなく、距離を置いて並走するものというのが、私なりの捉え方で、そうやって、人生の物語は続いていくものと思えるようになってきました。

  • 本書を読んで身近な肉親の死を受けとめるヒントを得たような気がする。

  • 「死」は、現代においても、タブー視されている。
    しかし、話すことによって気持ちの整理をすることもできるだろう。
    また、死と向き合うことによって、はじめて生きることを考えることができるのではないだろうか。

  • グリーフケアという何か専門療法的なことについてではなく、死別を迎えた場合・迎えた知り合いがいた場合、どうするかということが丁寧に書かれている。語る・聞くことの大事さについて改めて理解できた。

  • 色んな視点から見てくれている。
    結局のところ死別体験は十人十色であり自分自身と向き合って折り合いをつけて行くしかないのだけれど、こういう本が沢山あると死別と向き合おうとするヒントになってくれる。
    なかなか日常では深くまで語り合えない現実の中で、単なる体験談ではなく、俯瞰的に見れる本。

  • 【2017/10読了】有縁の人との死別を生きるにあたり生じるくさぐさのことども。

  • 死について。
    職業柄私にとって死は身近にあります。
    なるべく誠実に、まっすぐに死と向き合いたいと思っています。患者さんとご家族と寄り添って、悲嘆も共有して、少しでも支えになれたらいいと思います。

    今まで看取った方たちと家族について考えながら読んで、うるっときました。

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著者プロフィール

関西学院大学人間福祉学部人間科学科教授
悲嘆と死別の研究センターセンター長

「2022年 『増補版悲嘆学入門 死別の悲しみを学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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