世界史の中のパレスチナ問題 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881890

作品紹介・あらすじ

パレスチナ「国家」へ。中東危機の真相がよくわかる名講義。なぜ解決できないのか?難問の構造を歴史から読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • 「パレスチナ」をめぐる政治的紛争はなぜ解決できないのか? 難問の構造を歴史から読み解いていく。

    第一部 パレスチナという場所
    第1講 パレスチナという地域とその宗教と言語
    第2講 ユダヤ教から見たキリスト教と反ユダヤ主義の起源
    第3講 イスラームから見たユダヤ教とキリスト教
    第4講 ヨーロッパ対イスラーム─「一四九二年」という転換点
    第5講 オスマン帝国と東方問題
    第二部 列強の対立に翻弄されるユダヤ人とアラブ人
    第6講 帝国主義時代の宗教、民族、人種
    第7講 第一次世界大戦とパレスチナ委任統治
    第8講 第二次世界大戦と国連パレスチナ分割決議案
    第9講 イスラエル国家建設とナクバ
    第10講 アラブ・イスラエル紛争の展開
    第三部 「アメリカの平和」の終わりの始まり
    第11講 第三次中東戦争以降のパレスチナ問題とイスラエル
    第12講 冷戦終焉後の中東和平の挫折
    第13講 九・一一事件後のパレスチナ/イスラエル紛争
    第14講 アラブ革命とパレスチナ問題の現状
    第15講 パレスチナ問題と日本

  • 安易に古代の物語と現代を接続せず、複雑で解決の難しい現状が如何にして生まれてしまったかを丁寧に説明した良書。
    アラブの人々はなぜ諸悪の根源みたいなイギリスではなくアメリカを敵視するのか不思議だったが、イギリスは全方位に対して酷いのでユダヤ人からも恨まれている、と書かれていて、なるほど…?となった。

  • 現在のハマスとイスラエルの衝突について理解を深めたいと思い読んでみた。どうしても宗教問題として見てしまいがちだったが、根本は領土問題であること、そのきっかけはオスマン帝国の滅亡や植民地支配を望むイギリスの三枚舌外交であることに加え、もともとユダヤ教徒はヨーロッパにおいてキリスト教徒からも排斥や差別を受け、自国からユダヤ教徒を追い出したい人たちがシオニズム運動を支持することや、アメリカが911以降始めた戦争により広めたイスラモフォビアもこの問題の泥沼化の要因の一つであることなど、結局大国やヨーロッパの国々にも大きな責任がある問題であるということが理解できた。

  • 2013年発行の新書。イスラエルとパレスチナが抱える長年にわたる拗れた関係性を、ユダヤ/イスラム/キリストという3つの一神教の成立、十字軍、近代以降の西欧諸国の中東地域の植民地支配、第二次大戦以降のシオニズム運動の勃興、イスラエル建国、3次にわたる中東戦争、湾岸戦争、21世紀初頭のアラブ革命までを俯瞰。

    あまりにも細かく複雑なので一読しただけだと関係性が理解できない。Kindleハイライトしまくって、何度か読み返して理解していく感じ。

    2013年の本なので、アフガニスタンにおけるタリバンの政権掌握、シリア内戦の激化、トランプ政権時のアメリカの対イスラエル外交政策の変化、といった最近の事象はもちろん書かれていない。

  • ・そもそもイスラエルが出来るずっと前から、アラブ人はイスラエル教徒だけではなく、中東地域ではユダヤ教徒やキリスト教徒と共存が出来ていた。ナショナリズムにより排外主義が盛んになったのは近世、近代になってから。
    ・反ユダヤ主義がはびこる原因は、福音書にイエスが磔にされることを望んだのがユダヤ人の民衆だと書かれているから。
    ・レオナルド・ダ・ヴィンチの最後の晩餐は、ユダヤ教徒の儀式である過越祭を描いている。
    ・イスラム教とユダヤ教は共通の祖としてアブラハム(イブラーヒーム)を尊敬している。両方ともアブラハムを預言者として重視している。
    ・ユダヤ人がキリスト教徒から差別されるようになったきっかけは十字軍の遠征。
    ・オスマン帝国が領国内の外国人に与えた特権、カピチュレーション(領事裁判権、租税免除など)は、最初強国であるオスマン帝国が弱国のフランスに恩恵的に与えられたものだったが、後にオスマン帝国が衰退していくと、カピチュレーションは西欧諸国によるオスマン帝国に対する不平等条約に変質した。1858年に締結された日米修好通商条約のひな型もカピチュレーションに基づくものだった。
    〈帝国主義時代〉
    ・強大国が弱小国を支配するにはそれを正当化する理由が必要だった。文明化の使命という考え方が植民地支配を正当化するものだった。
    ・ヨーロッパでは人種主義が登場する。その中でもっとも暴力的な表現が反ユダヤ主義。ロシアで国家が介在してユダヤ人への組織的な差別、迫害が発展しユダヤ人虐殺が行われるようになった(ポグロム)。
    ・フランス革命以降、ヨーロッパの国々でユダヤ解放令が出されていった。封建制から資本制へと移行したということ。個人を身分で縛るより身分制を廃止して自由な労働力を確保しようとする観点からユダヤ人解放が進んだ。
    ・ユダヤ人はそれぞれの国家においてより良き国民になろうとして改宗してキリスト教徒になろうとした者もいた。しかし、ユダヤ人は改宗しても所詮ユダヤ人であり続けるのだという人種主義的な考え方が広がる。ユダヤ教徒について、社会進化論や人種論、優生学などの疑似科学が広まり「ユダヤ人」は人種としてみなされるようになった。
    ・ポグロムを契機にして起こったのがパレスチナへのユダヤ人移民だった。
    ・シオニズムは19世紀ヨーロッパ、とりわけロシアていこくのナショナリズムの影響を強く受けている。
    シオニズムはポグロムのような反ユダヤ主義の広がりに対するユダヤ人ナショナリストの民族主義的な防御反応である。
    ・第一次世界大戦でのオスマン帝国の敗北と崩壊が、この地域の政治秩序を根底から変えた。
    ・第一次世界大戦においてのイギリスの3枚舌外交。

  • ユダヤ人の2000年来の思いがあり、大国の思惑が行きかい、今となっては解けないほどに複雑な問題となってしまった。とされているが。
    しかし、己の中に理由があればどんな行為も正当化出来る、の超大きなお話しにしか読めませんでした。
    単純に行った事のみを考えれば、許されるわけがないでしょう。え、コレ、許されているの?オカシイデショ。
    しでかした事に対する言い訳がクソ長い。私の感想は、それだけです。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/60535

  • イスラム教、ユダヤ教、キリスト教の宗教、言語のこと、色々と複雑。

    イギリスの3枚舌に驚いた。イギリスの責任は大きいと思った。

    パレスチナ問題、複雑すぎて、解決は難しいと再認識。。。

    • ひーちゃんさん
      サイクス ピコ協定と、バルフォア宣言と、あとなんでしたっけ?
      サイクス ピコ協定と、バルフォア宣言と、あとなんでしたっけ?
      2019/06/21
    • hisamo99さん
      フサイン・マクマホン協定です。
      フサイン・マクマホン協定です。
      2019/06/21
  • パレスチナでありイスラエルである土地をめぐる紛争問題を考えるために知らなければならない複雑な歴史。

    一時的な避難で土地を離れ、現在も戻れず離散したままのパレスチナ人の存在や、近代の国民国家に内在する民族的排他性など。境界線を決めれば済む問題ではなくなり、また中東の近代化を西欧のそれと同じように考えること自体が西側の視点なんだと理解した。

    欧米列強の外交が中東問題を深刻にしてきたが、今後のパレスチナ問題解決には列強の関与が不可欠だという。

    現在の、特にガザの絶望的な状況を知ってこの本を読みました。

  • 新 書 KGS||228.5||Usu

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著者プロフィール

1956年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科国際関係論博士課程単位取得退学。在ヨルダン日本大使館専門調査員、佐賀大学助教授、エルサレム・ヘブライ大学トルーマン平和研究所客員研究員、国立民族学博物館教授を経て、現在、日本女子大学文学部史学科教授。京都大学博士(地域研究)。専攻は中東地域研究。主な著書に、『見えざるユダヤ人――イスラエルの〈東洋〉』(平凡社選書)、『中東和平への道』(山川出版社)、『イスラムの近代を読みなおす』(毎日新聞社)、『原理主義』『世界化するパレスチナ/イスラエル紛争』『イスラエル』(以上、岩波書店)、『イスラームはなぜ敵とされたのか――憎悪の系譜学』『大川周明――イスラームと天皇のはざまで』『アラブ革命の衝撃――世界でいま何が起きているのか』(以上、青土社)、『世界史の中のパレスチナ問題』(講談社現代新書)などがある。

「2018年 『「中東」の世界史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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