ウルトラマンが泣いている 円谷プロの失敗 (講談社現代新書)

Kindle版

β運用中です。
もし違うアイテムのリンクの場合はヘルプセンターへお問い合わせください

  • 講談社 (2013年6月19日発売)
3.51
  • (21)
  • (80)
  • (89)
  • (10)
  • (4)
本棚登録 : 630
感想 : 100
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784062882156

作品紹介・あらすじ

1960年代から80年代にかけて、多くの子どもたちが夢中になったウルトラシリーズ。


ミニチュアや着ぐるみを駆使して、あたかも実写のように見せる独自の特撮技術を有し、
日本のみならず世界の映像業界をリードしてきたはずの円谷プロから、
なぜ、創業者一族は追放されたのか。


「特撮の神様」と呼ばれた円谷英二の孫にして、
「円谷プロ」6代社長でもある円谷英明氏が、
「栄光と迷走の50年」をすべて明かします。


----------------------------------------------------------------------


われわれ円谷一族の末裔は、祖父が作った円谷プロの経営を
全うすることができませんでした。

現存する円谷プロとは、役員はおろか、資本(株式)も含め、
いっさいの関わりを断たれています。

これから、約半世紀にわたる円谷プロの歩み、真実の歴史を明かそうと思います。

その中には、今もウルトラマンを愛してくださる皆さんにとって、
あまり知りたくないエピソードも含まれているかもしれません。

成功と失敗、栄光と迷走を繰り返した末に、会社が他人に渡ってしまった背景には、
一族の感情の行き違いや、経営の錯誤がありました。

私も含め、どうしようもない未熟さや不器用さがあったことは否めません。 (「はじめに」より)

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

特撮の歴史を語るこの作品は、円谷プロの栄光と衰退を赤裸々に描き出しています。著者は「特撮の神様」と称される円谷英二の孫であり、彼自身の視点から、円谷一族の経営の迷走や、数々の困難を乗り越えようとした努...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 著者は特撮ファンなら知らぬ者はない円谷英二の孫で、円谷プロ2代社長の円谷一の子息である。円谷プロと円谷一族の凋落はうわさに聞いていたが、この本にはその顛末と経過が赤裸々に描かれている。もちろん、すべてをその通りに受け取るのは多少躊躇を感じる_立場がちがえば異なる意見や主張も出てくるだろうから_が、少なくとも著者の誠実な語り口は信頼するに足りる。私も「ウルトラQ」に始まって、「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」と続く昭和三部作、そしてもちろん映画「ゴジラ」を観て育った世代なので、円谷プロがとにもかくにも活動してほしいと願った。しかし、結果は円谷一族の経営撤退と別会社による全面買収という無残なものになった。
    したがって現在の円谷プロは、発足当初の会社とは体制が全くちがうことになる。円谷プロの公式ホームページは現在も充実した内容で誰でも閲覧できる。ウルトラマンシリーズも、新作がでているようなので、旧作のコンテンツ管理上もこれで良かったといえるかもしれない。古い特撮は特撮として、私のような世代は多少の甘酸っぱさを感じながら今も楽しめる。著者には複雑な心証となるだろうけれども。
    本当は、「ウルトラセブン」12話の話がでてくるか、と思って読み始めたのだが、さすがにそれは完全なタブーであるようだ。  

  • ウルトラマン、やっぱり好きでした。

    以前読んだ、あの雑学の唐沢さんの本で
    フジ隊員役の桜井浩子さんが打ち合わせのために
    昼に円谷の撮影所に行ったところ、別の会議室で
    ものすごい熱い議論が行われていたそうです。
    桜井さんの会議が終わって、帰ろうとしたところ
    その激論はまだ続いていて、それが怪獣のエリマキを
    どこにつけるかどうかで、延々と揉めていたそうです。

    それ位、真剣に、そして熱かった僕らのウルトラマン。
    しかし、その会社の現状は・・・、というリアルでそして恐ろしい内幕。

    ウルトラマンは30分の子供向け番組、
    当時のTBSの通常相場で200万円のところ、
    1000万円もかけていたくらい気合が入ってました。
    それ位のクォリティーは誰が見ても確かでしょう。しかし、赤字は
    赤字でした。

    初代の円谷英二にしても、2代目にしても、モノ作り、番組作りの
    プロではありました。しかし、それと会社の経営は別物です。
    悲劇は、その部分を担う人がいなかったこと、気付く人が
    いなかったことにつきます。

    この著者が6代目の社長となるのですが、
    そこで目にした今までのつけの数々が・・・、壮絶です。

    円谷一族の争いから、会社の運営に支障が出ている問題。
    俳優のギャラの支払いさえも、円谷プロと円谷映像のどちらが
    やるのかも決定していなかったおそまつさ。

    製作費3000万と言っていても、実は5000万円かかっていたこと。
    それを誰も気づかなかったというチェック体制。しかも、経理は
    手書き伝票!
    赤字はキャラクターで埋める、という単なる見込みでのどんぶり運営。

    キャラクタービジネスといっても、
    戦略のノウハウがないために、バンダイ内での収益は
    ガンダムのわずか10分の1だそうです。

    職人気質の会社気質、ゆえに経営のプロがいなかったこと、
    そして同族企業の人の問題。
    こうしたことが、結果としてあのウルトラマンがどこかマイナー、
    いや、今や忘れ去られそうとなっている現状につながって
    きているのでしょう。

    当時、特撮のためにたくさんのスタッフが何日も徹夜をして
    準備をし、さらにそれが本番ではどのようになるのかも分からない、という
    一発勝負の番組作り、そして一流の監督・脚本で成り立っていた
    ストーリー。
    そんな日本が誇る番組を作った会社が、今にも・・・。
    タイトルの通りです。

    知らなかった豆知識。若くして亡くなられた
    著者の弟の浩さんは、宇宙刑事シャイダーの人だったそうです。

  • 円谷プロダクション、負の50年史。作る度に赤字が増える「ウルトラマン」、チャイヨーとの泥沼裁判、昌弘社長のセクハラ問題、連続する身売り騒動、新作テレビシリーズも間々ならない経営状態……。ファンの間で断片的に周知されてきた出来事の数々を、ひとつの線として俯瞰できる非常に意義深い本であると同時に、20年来のウルトラファンとしては、これほどまでに深刻でドロドロ、綱渡りどころか火の点いたロープに片手でぶら下がっている状態が何十年も続いてきたことを知り、無邪気に作品を楽しんでいた幼少時代の自分すらも責めたくなってくるほどに辛い内容の連続でもあります。それこそ、円谷プロの経営そのものが「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」のようです。

    しかし、忘れてはならないこともあります。『ティガ』と『ダイナ』で触れられた怪獣との共存可能性が、『ガイア』の怪獣も地球に生きる命という結論に繋がり、『コスモス』では守るべき存在として描かれる。その怪獣観を一度リセットするために『ネクサス』のスペースビーストは凶悪かつ醜悪な怪物とされ、前作の失敗を受けて『マックス』は原点回帰の復活怪獣路線、それをさらに推し進めた『メビウス』ではM78世界の再定義が行われました。続く『SEVEN X』『超ウルトラ8兄弟』にて作中で並行世界の存在を示唆、『ウルトラギャラクシー』と『ゼロ』ではすべての世界観を“正史”とするマルチバースを導入し、地球人の手を離れたスペースオペラとしての「ウルトラマン」をも見せてくれました。
    ファンと作品を大切にし、新しい領域に果敢に挑もうとする精神は脈々と受け継がれ、いまなお健在です。創始者一族は円谷プロから消えてしまったけれど、「ウルトラマン」はまだ終わってなんかいない。一番大切なのはきっと、その部分ではないでしょうか。

  •  円谷プロ六代目社長にして円谷英二の孫である円谷英明氏の『ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗』(講談社現代新書, 2013年)を読んだ。つか、一気に読んだ。
     俺がウルトラシリーズについてというよりも、円谷プロについて知りたかったことが一頻り網羅されており、歴史の当事者の一人である著者の証言は実に生々しかった。何故ウルトラ「兄弟」が生まれ、レオと80の間に時間が空いたのか、円谷のキャラクタービジネスとTBS、東映、そしてバンダイなどとの関係の変遷。そして徹底的に外堀を埋められて(埋めさせて?)の買収劇や、タイ・チャイヨーなどとの泥沼の訴訟。
     現場に恐怖をもたらす孤独な特撮職人としての祖父・円谷英二や父・円谷一の激務と家庭不和と死が円谷プロに残した大きな傷。
     平成三部作が実は大赤字であり、玩具メーカーによる作品支配は如何にして進んだのか、逆にキャラクタービジネスがどれだけ円谷プロを支えてきたか。
     どうも英明氏は俺が最も苦手な「古典ウルトラマン原理主義」な方ではあるようだが、それはそれとして成田亨氏に関しての見解は非常に面白かったし、創業家一族だからこそ見える風景について、「なるほどそう見ていたのかこの人は」という見解が多数あった。
     ではこの本、万人に勧められるか?と言えばさにあらず、と言わざるを得まい。
     まず、円谷特撮などに全く興味が無い人は読んでも意味が分からないと思う。そして、特撮は楽しければいい、特撮を作っている側は人それぞれに愛を持って作っているんだ!って思う人も読まないほうがいい。嫌味で言うのではなくて、それはそれで愛し方だと思う。それも割合真っ当な。
     この本は、特撮に歴史を見る人、或いは特撮の歴史に触れたいと願う人が読めばいい本だと思う。この本の内容は恐らく、真実ではあっても事実ではないかもしれない。なんせ、お家騒動のまっただ中に居た当事者による述懐なのだから。
     だけど俺はだからこそこの本の価値があると思っている。神話ではなく、伝説でもなく、歴史としての、そして歴史の当事者による言葉は、それが例え事実なのではないのだとしても、そこにそういうランドスケープがあったのだということを知るのは、今を、そして未来を観る上でものすごく大切なことだと俺は思っている。

  • 社内の円谷担当者は必読です。過去の歴史から、現在の状況までが分かります。
    自分が見ていた「ウルトラマンの裏側」がこうなっていたなんて・・・
    どんな優良な企業も、慢心が衰退の始まりだと思います。
    ちゃんと仕事に向き合って、真摯にいる事が本当に大事。
    ゲイツ、ジョブズ、など成功者の苦労物語もありますが、逆にこの本は「栄華からの転落」を自らが語っています。
    気がついて反省しても、手放してしまってからでは二度と手に入らない。
    壊すのは簡単でも、作りだすのは難しい。
    「どうして人間は愚かなのか?」と考えてしまう一冊です。
    (2014/10/2)

  • ウルトラ世代のひとりである私は、心の奥底から揺さぶられる感覚を抱きました。
    勿論それは快いものではありません。
    本書は中小企業(多くが同族経営)が陥りやすい失敗の豊富な事例集だという人も多いようです。
    一方で、現実とは真逆に、円谷一族が一致団結、健全なマネージメントのもと、大企業(東宝orバンダイ)の傘下に早期に素直に入っていれば、「ウルトラマン」というコンテンツはこの30年あたりでどのように変わったのでしょうか?
    特オタでビジネスマンの端くれの私にも、ちょっと想像がつきません。
    (少なくとも、パチンコ店の大きなウルトラマンタロウの看板は減っていたかも)

    ◆英明氏について
    本書は暴露本スタイルです。
    紛争当事者の英明氏は、自陣営に甘く、敵対陣営に厳しい表現が散見されています。
    記述情報も公平性がどこまであるかは不明です。

    ちょっと、帰りマンまで偏愛気味で、平成三部作に厳しすぎるかな? 
    ネクサスは、同意見ですがw
    子供を対象としたマーケティングは賛同します。
    もっと、オタク層ビジネスにも言及してほしかったです(パイが小さいのかな)。

    後半、英明氏が危惧した「円谷商法の破綻」は、現在でもアニメなどコンテンツ産業全般が抱く問題です。
    製作費の圧縮(CGの大幅導入)、円盤、スマゲーなど二次回収の多様化。アニメ作品放送自体が広告となっているバランスです。
    あと、海外進出は今でも難しいようです(KADOKAWAがアジアで書籍から地道にやっていますが)。

    終盤、中国ビジネスの破たんを恥をさらすように開陳されています。
    困難でリスク過多の中国での製作に、妄執の果てに私財まで投じて破滅していく様は、これまで英明さんが改めようとしていたはずの円谷プロの惨状をそっくりトレースしているかのようです。
    円谷の遺伝子?それとも「特撮」作りってそれほどに麻薬なのでしょうか?

    ラスト、父親の一氏に少年時代に早朝に叩き起こされて連れていかれた海釣りを思い起こす一節があります。
    往年の活気ある円谷プロ全盛期と現在の悔恨にくれる英明氏の対比が何とも言えないですが、家庭不和のもたらした父親を決して悪く思わずに懐かしまれているのにはわずかに救いが感じられます。

  • 円谷英二の孫にあたる著者が、円谷一族のお家騒動を語る、と言った内容。

    ウルトラマンと仮面ライダー、というのはテレビ特撮の2大ヒーローなわけだが(ふたりが戦う作品もあった)、平成以降の2者の明暗を分けたのは、作家性でも時代性でもなく、ただただ円谷プロという中小企業と東映という大企業の差、という身も蓋もない現実のゆえなのかもと思わせる、そんなことを感じされる本だった。

    記述には偏りがあらざるを得ないからそれを差し引くべきなのだろうが、客観的事実からすれば3代社長・皐(のぼる)に大きな原因があるのでは、と感じた。海外版権にかんするタイの企業との裁判沙汰は、真相はわからないけれど大きな要因のひとつには皐のワンマン的経営にあるのだろう。

    著者は原点回帰を求めているのか、実相寺昭雄の発言等を引用するするいっぽう、セブン以降のウルトラマンシリーズの評価が不当に低いように思う(半ばわからなくもない部分はあるけれど)。それが愛なのか出来ない言い訳なのか、それはわからないけれど。

    ともかく、作品を見ているだけでは決してわからない内幕を知ることのできる本であることは間違いない。

  • あのウルトラマンシリーズを輩出した円谷プロの一族の方が著者の新書。
    リアルタイム世代ではないが、夏休みのウルトラマンフェスタにより、相当はまった幼少期だった。
    TBSだったことにはまったく意識していなかったが、ビジネス的な側面を本書において確認する事ができた。

    バンダイなどと組んでいたにもかかわらず、ガンダムのようなキャラクタービジネスの成功にウルトラマンがなぜ至らなかったのかを当事者が赤裸々に語っているし、夢を作る仕事の現実感をありのままに語ってくれた良書であると思う。
    もちろん、ウルトラマンに心酔したことがあるからだが、そうでない人にもビジネスのヒントは満載であろう。

    お家騒動によって成功に至らなかった経緯は非常に残念であるが、このキャラクターの価値は永久である。
    特撮かくありなん。すばらしい書籍でぜひ一読を推奨したい。

    ■目次
    はじめに―怪獣が身もだえしたわけ
    第1章 円谷プロの「不幸」
    第2章 テレビから「消えた」理由
    第3章 厚かった「海外進出」の壁
    第4章 円谷プロ「最大の失敗」
    第5章 難敵は「玩具優先主義」
    第6章 円谷商法「破綻の恐怖」
    第7章 ウルトラマンが泣いている
    おわりに―祖父・円谷英二が残した日記

  • 20131012 ウルトラマンもある面麻薬なのかも知れない。作者の面からの話にしても他にやりようが本当になかったのか?金と夢、読んでいてなんとなく悲しい気持ちになった。

  • 1時間ドラマの制作費が500万円程度だった時代にTBSは550万円を円谷プロに払っていた。しかし、実際の経費は1本1000万近くかかり、円谷プロの特撮は金食い虫だった。

    円谷英二はとにかく建物の壊れ方にこだわり、バラバラに吹き飛ぶビル、ぐにゃりと曲がる鉄塔などディテールにうるさかった。実写とジオラマの背景の明るさが狂えば撮り直し、当時のハイスピードカメラは速度が上がるまで時間がかかり、カメラが回る前に街が壊れると作り直しだ。箱は準備してあっても細かな絵や装飾は作り直しになる。

    ウルトラマンを支えたのはドラマのTBSから派遣された演出家だった。またゴジラ以来の東宝が出資しその後も経営面で支えている。

    円谷英二とその後を継いだ長男の一(著者の父親)が早世した後、1973年から22年間次男の皐(のぼる)の長期政権が続く。1971年帰ってきたウルトラマン、ミラーマン、1972年ウルトラマンA、1973年ジャンボーグA、ファイヤーマン、ウルトラマンタロウと続くが、この頃には制作スタッフをリストラしキャラクタービジネスに走り出している。実際に累積赤字は一掃され、キャラクタービジネス最盛期にはボーナスは札束が立つほどだった。

    一方で初期ウルトラシリーズの社会派ドラマは影を潜め、バンダイの要請でオモチャになるメカは増え、ストーリーは低年齢層向けになる。路線を巡る対立でTBSとはほぼ喧嘩別れ。また1992年には契約のきれた番組販売権を担保に東宝から株を買い戻した。世間では円谷一族の同族経営と見られていたが実態は皐社長の独裁だったようだ。それまでは東宝が目を光らせていた経理のチェックもなくなった。ウルトラマンと言う金のなる木があったがためにほっておいても金が入る、もはや社会派ドラマの対象になるのは円谷プロそのものだ。

    帰ってきたウルトラマンからタロウあたりは見てたはずなのに覚えているのは再放送のウルトラマンとウルトラセブンばかりだ。怪獣もそう。後になるほど覚えてないし、造形もショボい。しかし、それでもウルトラマンフェスティバルと聞くとちょっと言ってみたい。
    http://www.ulfes.com/2013/news/

  • "ウルトラマン"という名を聞いて、知らない日本人はほとんどいないだろう。
    M78星雲から地球を救うためにやってきた、あのヒーローである。

    しかし、そんなウルトラマンを生み出した「円谷プロ」が幾度も失敗を重ね、ついには創業者一族全員が会社から追い出されてしまうという悲劇を迎えていたことを知っている日本人もほとんどいないだろう。

    P116 L3 「二〇一二年時点では、バンダイが扱う多くのテレビ番組関連キャラクター商品の中で、最も売れているのは「機動戦士ガンダム」シリーズです。ウルトラシリーズはその一〇分の一以下に過ぎません。」

    著者円谷英明は創業者円谷英二の孫にあたる人物である。
    創業当時から会社をその目で見つめ、自身も6代目社長を務めた彼が栄光の日々とその失敗の要因に迫っている。



    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    円谷プロ失敗の要因を簡単にまとめるのであれば、
    それは、①過剰な支出と杜撰な財政管理 ②経営のワンマン化 ③人材確保の軽視
    この3点に尽きるのではないだろうか。

    ウルトラマンの制作にはお金がかかる、グッズの売り上げが上がってくるからどうしても当初は赤字計上となってしまう。これらの要素は致し方のない点である。
    だがしかし、大きな問題点はここからでウルトラマンの政策をいわば聖域として捉え、支出の拡大やむなし、という判断が繰り返されていたこと。
    また、極端な支出削減に伴って視聴率が下がってしまったことから、制作費を維持したという点自体は問題なかったのかもしれないが、ではどこからその分の資金を補うのか。この点を蔑ろにしてきたことが当然なから大きな問題点である。
    次作が始まれば、それまでの作品単体としての収支ではなく、合算して捉えてしまうことで最終的な利益が見えてこない。そんな杜撰な管理が繰り返されていた。

    経営のワンマン化、創業者一族円谷家による経営は八代目まで続くこととなる。
    一族経営、一家経営と聞くと、どこかで停滞や風通しの悪さがイメージされるのは致し方ないことかもしれない。
    しかし、著者も作中で語るようにこれは間違えなくワンマン経営による弊害なのである。経営を支えてくれていた東宝やTBSとの決別によりワンマン化は猛スピードで加速し、その上経営陣の私的な資金の流用などは表沙汰にならなかった。

    そして人材確保への軽視。創業当初こそ円谷英二のもとに集まった優秀な製作陣、梁山泊とも言えた当時の円谷プロであったが、出費がかさみ経営が苦しくなってはじめに着手したことが人件費の削減である。確かにそれは致し方のないことかもしれないが、この人材への軽視はその後継続することとなる。それは製作陣に限らず、経営陣においてもそうだろう。とにかく必要な人材のパーツをその場しのぎで確保し、その都度の戦力としてしか確保しない。これらの失敗に本来歯止めをかけることができるセーフティーネット、つまり保険に円谷プロは加入しないまま突っ走ってしまったのである。


    しかし同時に注意が必要なのは、この作品が当事者である円谷英明によるものであるという点だ。当事者目線というのは、まさに生の視点、当時の実際の出来事について主観的に語られる貴重な視点であり、文献であることに違いはない。
    一方でこれらの作品が客観性を欠いてしまいがちであることには注意しなくてはならない。著者は自身のおじにあたる3代目社長の皐や4, 8代目社長の一夫を痛烈に批判する場面が散見される。著作の通りであれば確かに経営者として、適切でない状況が幾度もあったと言えるが、それはやはり色眼鏡がかけられた主張であることを否定しきれない。それぞれの視点や第三者からの視点、こうした立体的な分析がなされて初めて円谷プロの失敗がどういった点にあったのかを客観的に分析できるのであろう。

    この作品はそのひとつのパーツとしての役割をこれ以上にないほど全うしていると言えるが、これ自体がその答えであるとは言えないだろう。
    しかし、そういった点を抜きにしてもこの作品の臨場感やその歴史には引き込まれるものがある。


    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    P19 L7 「むしろ、祖父がこだわったのは壊れ方です。たとえば、鉄塔が怪獣の吐く光線で溶け落ちるシーンを撮る場合、鉄なのに燃えて炎が見えてはダメだというわけで、いろいろな素材を試した結果、ロウで作ったグニャリと溶け落ちるようにしてありました」

    P86 L2 「子供向けヒーロー番組の作風の根本が違っていたのです。アメリカでは、より現実味のある等身大ヒーローが主流でした。スーパーマンもバットマンも、スパイダーマンもキャプテン・アメリカも、長く子供たちに愛されてきたヒーローは等身大に限られています。」「ヒーローが持っている超能力も、ある程度、科学的に説明のつくようにしています。」

    P88 L4 「あえて言わせていただけば、円谷プロの経営の問題は、同族経営ではなく、ワンマン経営にあったのです。」 

    P93 L8 「結果として、円谷プロは、草創期に育ててくれた東宝とTBSという恩義のある会社を、両方とも自ら切ってしまったのです。」

    P94 L10 「円谷プロはしょせん下請けの中小企業ですから、相手次第で面白くない思いをさせられることも多々あります。しかし、そこで意地を張らず、恨みつらみを乗り越えて良好な関係にもっていくことができれば、その結果から受けるメリットは、円谷プロのほうがはるかに大きかったのです。」

    P101 L14 「怪獣ショーは一日に多いときで五回行われたのですが、無料なのに客の入れ替えをしませんでした。ショーが終わっても、次のショーを見たいからと、客はずっと最前列で座って待っています。そのため、後から来た客は、ショーを見たくても入れず、不満の声が広がりました。」

    P104 L6 「番組制作のほうでは、億単位の赤字が積み重なっていて、プラスマイナスすると実際は儲かっていないのに、入金の数を見ると、熱に浮かされたように舞い上がってしまうのです。」

    P105 L6 「キャラクターや舞台設定など、番組コンセプトのめまぐるしい変転が、視聴者をとまどわせたという面もあったと思います。」
    P115 L10「ウルトラシリーズには、その時々で適当に変えてしまうご都合主義=「しょせん子供番組なのだから何をしても許される」という言い訳が、常に付随していました。」
    P116 L10 「「ガンダムは、初期のクオリティやポリシーを守ろうとしている。実際は失敗した作品も多いんだけど、道を踏み外してはいないと思う」というものでした。ガンダムシリーズには、作る側と一緒に育てたいというファンの共感がありました。それこそが、ウルトラシリーズには決定的に欠けていた要素でした。」

    P122 円谷プロに必要とされていた3つの頭
    ①番組制作能力に秀でていること 
    ②放送枠を確保するため、テレビ局の編成局や政策局の幹部、それらの部署のトップである役員に営業をかけること。
    ③キャラクターを商品に使ってもらうために、玩具メーカーや文具メーカー、食品会社などに営業すること

    P163 L11 平成三部作の一つ「ウルトラマンダイナ」の制作費について、
    「当時、ゴールデンタイムの一時間の連続ドラマの制作費が、人気女優を主役にしても二〇〇〇万円と言われていましたから、実にその倍以上で、後から考えれば、ずいぶん馬鹿げたことをしたものです。円谷プロの制作費四〇〇〇万円に対し、テレビ局から制作費として支払われたのは一五〇〇万円程度に過ぎませんでした

  • 人生でトップ5には影響の受けた作品達が、こんな苦しい状況下で制作されてたとは。
    それでも平成三部作を子供の頃に毎週ワクワクしながら見れたこと心から感謝しています。

  • 映画「ハウス・オブ・グッチ」を彷彿とさせるお家騒動。
    ノンフィクションという背景も相まってめちゃくちゃ面白かった。

  • お家騒動、ワンマン経営、丼勘定の放漫な経理体質…よく50年も持ち堪えたな、というのが正直な感想でした。
    本書を読む限りでは、東宝やTBS、バンダイの尽力も大きく、円谷プロが東宝から離れてしまったこと、TBSと決裂してしまったことが悔やまれてならないです。

  • 円谷プロの放漫経営、、、でも特撮を取るのは本当に大変なのだということのわかる本でした。

  • 興味深く読めたけど、子どもの頃、ワクワクしながら観ていたウルトラマンに、そんな哀しい過去もあったとは!?と思い、読後スッキリしなかった。

  • ウルトラマンにそれほど思い入れはありませんでしたが、興味深く読ませてもらいました。

    恥ずかしながら、ウルトラマンを手がけた円谷英二がもとはゴジラの特撮を手がけていたというのを本書を読んで初めて知りました。

    本書に書かれている慢性的な赤字経営、創業家の会社の私物化、お家騒動の話はファンにとってはショックな話題かもしれません。

    そして、最終的には企業買収され、本来の円谷プロは消滅したということで、このことは付き合いの深かった玩具メーカー・バンダイにも影響が及んでいます。
    (丁度、バンダイがナムコと合併する時期とも近い)

    著者は先代の円谷英二の遺志を継ぐべく、中国での特撮番組を立ち上げようとした話も書かれていました。
    結局、それも中国の独特な文化を前にカモにされてしまうという、なんとも後味の悪い話でした。
    やはり特撮はコストがかかり過ぎて、今の日本では維持するのが大変なのですね。

    調べてみると、ウルトラマン自体は今も新作が作られているようですが、頑張ってほしいものです。

  • ・円谷プロと言っても「しょせん下請けの中小企業(P94)」。そこを直系の後継者達が勘違いした辺りから凋落のモメントが動き出していたのかも知れない。本書では円谷プロの現状に至るまでの軌跡が著されているが、どこまで公正かと言えば疑わしさは残る。結局、同族の身内批判の域を出ていない可能性は大いにある。

    ・仮面ライダーやガンダムがいまだに変化しながら継続しているのに対してウルトラマンの現状が目を覆わんばかりの惨状であるのはなぜなのか。そのことに対する直接の答えは本書では触れられていないが、考察するための材料は提供されている。自分としては、仮面ライダーは石ノ森章太郎から、ガンダムは富野由悠季から生まれたのに対して、ウルトラマンは必ずしも円谷英二から生まれたわけではないという点にその辺りの鍵があるのではないかと思っていたのだが、どうやらそれだけではないということが本書を読むと見えてくる。

    ・個人的には、地球の防衛というウルトラマンの基本パラダイムこそが殻であり、それを打ち破ることが新たな世界を創り出すことになるのではないかと考えていたが、どうやら殻は、円谷プロ自体だったのかも知れない。買収されてしまい、円谷一族が放逐された今こそ、実は新たなウルトラマン誕生への胎動が始まる時なのかも知れない(「ウルトラマン列伝」を見ている限り、とてもそうは思えないが)。

    ・かつて、ウルトラマンのCGパートを製作している会社の社長と話をする機会があった。その時に「今の円谷プロでも、あなたほどウルトラマンについて熱く(暑く?)語れる人はいないですよ」と言われた。その時はお世辞だと思ったが、あながちそうではなかったのかも知れない。自分並みに語れるファンなど全国にいくらでもいるが、円谷プロと仕事をしていた彼の目からすれば、そう言いたくなるほどの状況だったのだろう。

    ・円谷一族自身の手で凋落してしまった経緯を知り、それでも、最後に語られる著者の現状を読むと、若干ながらも寂寞の念を禁じ得ないのは、やはり「円谷」という名に感じるところがあるからなのだろうか。そして、読み終わった後だと、本書のタイトルは本当に胸に迫ってきて、泣けてくる。

    ・ちなみに1966年の今日(7/10)、ウルトラマンの放送が始まった。

    【由来】
    ・図書館の講談社アラート

    【期待したもの】
    ・何をか言わんや。今の惨状に至る経緯が分かるのであれば。

全86件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

円谷英明 (つぶらや・ひであき)

1959年東京都生まれ。

中央大学理工学部卒業後、バンダイを経て、1983年、祖父・円谷英二が創業した「円谷プロ」に入社。

「円谷エンタープライズ」常務、「円谷コミュニケーションズ」社長、「円谷プロ」専務などを務めたのち、2004年「円谷プロ」6代社長に就任。

2005年に退任後、新たに「円谷ドリームファクトリー」を創設、中国で特撮番組の制作を手掛けたが、2010年に同社を退いた。

「2013年 『ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗』 で使われていた紹介文から引用しています。」

円谷英明の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×