絶望の裁判所 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 613
レビュー : 81
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062882507

作品紹介・あらすじ

第1章 私が裁判官をやめた理由(わけ)
――自由主義者、学者まで排除する組織の構造
第2章 最高裁判事の隠された素顔
――表の顔と裏の顔を巧みに使い分ける権謀術数の策士たち
第3章「檻」の中の裁判官たち
――精神的「収容所群島」の囚人たち
第4章 誰のため、何のための裁判?
――あなたの権利と自由を守らない日本の裁判所
第5章 心のゆがんだ人々
――裁判官の不祥事とハラスメント、裁判官の精神構造とその病理
第6章 今こそ司法を国民、市民のものに――司法制度改革の無効化、悪用と法曹一元制度実現の必要性

感想・レビュー・書評

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  • タイトルで受ける印象を、良くも悪くも裏切らない本である。
    著者は裁判官として勤務しながら、研究・執筆活動を行い、後、大学院教授に転身した人物。内情を知りつつ、外からの目を持つという点で、裁判所全体を批判するには、ある意味、適任者であるのだろう。

    本書の言わんとすることは、タイトルの「絶望の裁判所」につきる。
    要するに、裁判所組織は、真に裁判に当たるべき人を正しく選び出し、そうした人が取り立てられるように機能していないというのである。
    組織が淀み、情実人事がはびこり、上に阿り下に厳しい者ばかりが出世する。少しでも人に違うことをすれば執拗に叩かれ、人事で不利な待遇を受けるため、心ある者の多くは出て行き、人材の劣化が起こる。結果、無理な「和解」を進める裁判官、事件の本質をまったく考察しない裁判官などが残り、国民にとっても不利益きわまりない状態になっているといった主張である。

    暴露本といえばそうなのだろうが、著者が、幅広い教養のある人物であることもあって、徒に露悪的、とまでは感じられない。
    トルストイの『イヴァン・イリイチの死』やカフカの『流刑地にて』への言及は興味深かったし、また刑事・民事・家裁といった裁判所のセクションについての説明もわかりやすかった。

    但し、読者である自分はまったくの門外漢なので、著者による腐った内情の描写を文字通り受け取ってよいのか、判断に困るところがある。
    本来なら、ある業界の腐敗、みたいな本は、自分でどうしようもないので、手に取らないのだが、どこかで見かけた本書の書評で裁判員についても触れられているようであったため、ちょうど裁判員制度に興味があったこともあって読んでみた。
    裁判員についての記述は思っていたより多くなく、あまりにもタイトル通り、表紙から受ける印象通りだったので、通り一遍の感想しか持てなかった。
    一番は、「任に当たるべき理想の人を選び出し、理想的に運営される組織を構築して維持することの難しさ」である。ある組織にどのような人物が適任であるかを判断するということは、(受験や入社試験を含めて)本当に困難なことなのだと思う。
    あとは、つまらないことだが、やはり必要以上に裁判所のお世話になる事態は避けた方がよいなという感想だろうか。
    もっと漠然としたところでは、組織が淀み、歪んできたときに、まったく別の視点から見てみることも必要なのかもしれないな、と。これはただの思いつきでしかないけれども。

    「絶望」的であったとしても、絶望しても仕方がない。絶望の先に何かがあると信じて進むしか、ないではないか。
    大きすぎる、漠然とした、すなわち具体的解決策がまったく見つからない問題を抱えつつ、いつか、(別の問題かもしれないけれど、根は同じ)問題を解決する日のために、考え続けていくこと。そうして考えた1つ1つの小さなことがいつか実を結ぶと思ってあきらめないこと。
    とりあえずはそんなことしかないかなぁ・・・というため息混じりの茫漠とした感想を持った。

  • うーん、かなり冒頭から読む気を殺がれる。一般人のうかがい知れない世界なのでところどころ興味深い記載もあるが、それでも、さもありなんの想像の範疇。 期待外れの一冊。

     元裁判官による裁判所批判、法曹界に物申す的な内容ではあるけど、内部告発というほどに大きな問題提起をしているわけでもなく(いや、しているのだろうけど)、自分が辞めた元職場への恨み節に終始しているところが、何とも寂しい。ちゃんと読めば、裁判所内部の腐敗、モラルの低下など問題提起もしているだろうけど言っている本人のことを信じるに値するか?という点で、どうも記載内容そのものに入っていけなかったのだ。

     第1章「私が裁判官を辞めた理由(わけ)」
     出だしからイカン。学究の途を歩むため退官するのだが、その事実を口外してはならないと言われ、有給を取るなら早くやめろと言われる。なんだ、このあまりに卑近な例は? だから裁判所は腐敗している?こんなところからはじめるの?とまずは肩透かし。それ、裁判所だけじゃないですから、普通の企業でもよくある話です。
     なら裁判官として法律を盾に抗弁すればいいと思うのだが、有給未消化の件も「労働法の基本的原則違反の言葉である」、「裁判官の身分保障(日本国憲法第78条)の趣旨にももとる行為である」と本書で言い募るのみで、その当時、戦った素振りがない。なにそれ?

     そもそも、人としてどうなのと思う記述が散見する。
     自身を分析するにあたり、裁判官より学者向けで、しかも芸術肌だとでも言いたいのだろう、「幼いころから数多くの書物を読み、あらゆる芸術に親しんできた」って、おいおい、白洲正子ですら、“あらゆる芸術に親しんで”なんて不遜な言い方を自分からしないって。
     『鬼が来た!』(チアン・ウェン監督、2000年)を紹介するときも、「数少ないすぐれた中国映画のひとつである」って、なに、そこ? 中国映画界を暗に批判したいのかなんなのか。そういう論旨の中で使っていない箇所なのに、さらっと見下したかのような記述が出るあたりで、人としてどうよ、と思ってしまった。
     そんな人物が書いているのかと思うと、すいません、ヒネクレ者なので、論旨も主張もあまり頭に入ってきませんでした。

     要は、本書の主旨としては、日本の司法制度はアメリカ的法曹一元制度を導入するしか、正しく真っ当なものにならないということだと思うが、ならば、その導入がなぜ積極的に検討されないか、解決のために何が必要で、どうするべきかという提言まで含んでほしかった。そうすれば意味のある一冊になったとは思うが、これではただ組織に馴染めず、言いたいことも言えなかった敗者の単なる愚痴の垂れ流しにしか聞こえない。

     勉強が出来て、エリート意識だけが高くて、処世術に乏しく、世間知らず。その程度の人物が裁判官をやっているという悪例を示すことよって「絶望」感を表現したというなら、自らの体を張った快著ということなのかもしれないが。

    新刊小説『黒い巨塔』、読みません。

  • 完読には至ってないのだが、趣旨はよくわかる。
    警察、官僚ときて?「裁判所よ、おまえんとこもか…」という話。
    国家中枢権力機構の腐敗様子の詳細。
    システムを替えたら万事解決するという話ではない。
    人格を高めるという教育をどうするか?というどこにでも通じる根深い話でもある。
    自身に寄って立てる人と、人の顔色ばかり見て立つ人というのはなくならない。
    それだけに、権力を握る際のバトルバランスは拮抗するようなシステムにしないと救われないね。

    ●『絶望の裁判所』著者・瀬木比呂志氏インタビュー
      → http://gendai.ismedia.jp/articles/-/38171

  • 最初はよくあるドロップアウト側からの告発本かと思いながら読み始めたが、すぐにそれが皮相的な短絡だということに気づかされる。裁判所は外部からの観察に曝される機会が少ないうえ、代替組織もないため競争原理とも無縁。そんな組織が自己目的化を始めたら、確かに筆者の言うとおり権利侵害の防壁としての役割は期待できないだろう。トルストイの短編を引き合いにした「空疎な知識人」としての裁判官批判も興味深く読めた。

    ただやはり残念なのはどうしても「グチ」っぽく聞こえてしまう箇所があるところ。ある意味仕方ないのかもしれないが、そのために本意が伝わらない読者もいるのでは。売れているところを見ると杞憂か。

  • 身内に判事がいる身として、興味を持って、手にしたが。
    現在の裁判所、その官僚体制、及び裁判官に対する批判の書であるが、途中退職したものが、元の職場に対する恨みつらみを列挙した感があり、2~3割差し引いて読まなければ、そんな思いを抱きながら読了。

  • 元判事によるある種の暴露本。しかし社会に広く暴露、というよりは、自分の身に降りかかった出来事、こんな奴がいた、というニュアンスがやや強いように感じる。ただ全体的に言えることは、裁判官の能力が落ちている、もうちょっと有り体にいうと阿呆が増えている、と。司法改革系の話は、このようにスピンアウトしてきた人からの話ぐらいしか視点を持ちづらくて、本当に中の人たちがどう考えているのかは、こういうヤメた人の話からしかうかがい知れない。著者がもし裁判をするなら、判事はスーパーマンではなく自分の能力とその限界を謙虚に認識している人に担当して欲しいという。でもスーパーマンでも謙虚でもない人が多いんだろう。日本のキャリアシステムが悪いんや、と。裁判官の嫉妬深さや幼稚性もすごいんや、と。酸いも甘いも噛み分けられるようになってから裁判官になるようにしろ、と。そうするとスーパーマンが出てきそうですな。

  • 「イヴァン・イリイチの死」読んだことないので読んでみようと思った

  • 元裁判官の著者が記した裁判所の実態。

    裁判所はその性質ゆえ、官公庁よりも官僚的で、結果として刑事も民事もその内容が恣意的なものになりやすいということがよくわかった。

  • 自己満足の文章、というのが最初の感想。知らないことばかりだったけれど、それでも節々に違和感というか、決め付けのような気配を感じた。単純に気になったのは、正規分布の使い方はそれで良いのか、正規分布という概念を出したかっただけじゃないのか、ということで、その他にも、きっと一言一句にすごく気を遣っている割には、詳しく論じているはずなのに、結論は私はこう思う、だったりする。行政官僚が悪という前提も、自分にとっては知らないことだから当たり前ではないし。
    まあそれでも読んで良かったなとは思った。
    170919

  • 法曹界、とりわけ裁判官の実体に迫る。要は、裁判所とはいえ依然として日本だよね、という話。著者視点の感情眼鏡が非常に高度数なため、どこまで客観的なファクトとしてとらえて良いものか難儀であるが、イメージを膨らませるための情報としては面白い。

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