「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論 (講談社現代新書)
- 講談社 (2015年2月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062883030
作品紹介・あらすじ
世界の企業の競争力を分けるのは、知識や才能を利益に変える人材戦略だ!
「タレント・マネジメント」の人事・組織コンサルタントとして活躍する著者によるかつてない人材戦略論、誕生!!
なぜソニーは消費者が欲しがる商品を生み出せなくなったのか? なぜトヨタはいまでも売れるクルマをつくれるのか? アップルやグーグルなどがマネをして成功した日本のやり方とは?
そこには「タレント」と呼ばれる優秀な人材を生かす仕組みがあった。
市場も成熟化し、生産方法も世界中で標準化したいま、企業の浮沈の鍵は、消費者が欲しくなるような新しい商品を生み出すことにつきる。
そのためには単なるプロフェッショナルともスペシャリストとも違う、価値創造の中心となる「タレント」といわれる新商品を生み出せる優秀な人材と、組織内でタレントを生かすための仕組み作りが決定的に重要。
タレント人材とは何か、その仕組みとはどんなものなのかを詳細に解説。
(目次)
第1部 タレントの時代
近年、負け続ける日本企業、いちばんの問題点は、「人の働き方」を理解していないことにある。
1 「ものつくり敗戦」の正体
2 市場の成熟化=製造技術の成熟化
3 情報化・知識化・グローバル化
4 売れる商品は設計情報の質で決まる
5 設計情報の質を決める人達
第2部 タレントとは何か
企業の成否を決めるのは設計情報の質、そしてそれをつくれる人こそがタレント人材である。ではタレントとはどんな人達か?
1 企業の活動を情報視点で見る
2 人間の労働を情報視点で見る
3 人のキャリアを情報視点で見る
4 タレントとはどんな人達か
第3部 タレントを生かす仕組み
じつは日本企業には多くのタレント人材がいる。しかしソニーの凋落が象徴しているように、タレント人材も使い方次第で宝の持ち腐れ。一方、シリコンバレーの発展は日本企業の仕組みに学びタレントを生かす仕組みを地域でつくりあげたことにある。
1 なぜタレントを生かすのは難しいのか?
2 ソニーの失敗
3 トヨタのタレントを生かす仕組み
4 米国が学んだトヨタ
5 シリコンバレーのシステム
感想・レビュー・書評
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企業の人材戦略論。「選りすぐりの人が集まる成果の出ない組織」を問題意識として「知識を利益につなげる」ための人材論、組織論である。
話はそれるが、以前テレビで、限りなく真球に近い金属球の製作技術を競うという番組があった。斜面のレール上でどれだけ長い距離を転がすことができるか、ドイツの有名企業に挑む日本の中小企業の技術者たち、といった番組運びだった。
最新の製造装置で製作するドイツ企業に対し、日本の会社は手作りともいえるその卓越した職人技で対抗していく…。
結果。日本の小さな会社はその職人技でドイツの有名企業に勝ったのだった。
そしてこの手の番組のご多分に漏れず、最後は日本の技術力の高さを賛美して番組は終わった。
ただ現実にはこのドイツの企業はこうした技術を用いた製品を世界中から大量に受注し、生産し、販売している。些少な精度の差はともかく要求される一定の精度の製品を安定した生産ラインで早く大量に生産できることが世の中には必要とされているのだ。
かたや日本の会社は勝負に勝つには勝ったが、このような手間暇をかけた技術をどれだけ商売に、儲けに繋げているのだろう。
この会社がどうかはわからない。しかしいかに技術力が素晴らしくとも、「こんなのが作れました」だけでは儲けにはならないのだ。
この本は「選りすぐりの人が集まる成果の出ない組織」に陥りがちな日本の企業のための人材戦略論である。-
なるほど。「選りすぐりのタレント」を集めるだけでは成果は出ないのですね。毎年のように主力選手を引き抜かれたサンフレッチェが、優勝を続けている...なるほど。「選りすぐりのタレント」を集めるだけでは成果は出ないのですね。毎年のように主力選手を引き抜かれたサンフレッチェが、優勝を続けていることと通じるのではと思いました。1+1が必ずしも2にならないところが、人材育成の難しさですね。2016/03/08
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自分がタレントなのか、プロフェッショナルなのか、スペシャリストなのかはたまたただのワーカーなのか、自分の立ち位置を理解した。そういう意味で自分はタレントでは現状ない。ただ、救いとしては、知識のアナリシスとシンセンスがタレントへの道であること。複数の知識のシンセンスが創造的知識をつくることは凡人の自分でもできること。何かを創造するには、ある問題点・改善点に身をおいて初めて、新たな知識が創造される。この話は、スティーブジョブズのconnect dot の考えに通じると思う。
また、定型労働となり下がった税理士業務に縛られない自分の生き方はやはり正しかったのだと自信をもてた。
●キーワード
・アナリシスとシンセンス
・トヨタの『主査』
・ベンチャーキャピタル=金融+リクルーティング(主査の発掘・投入) -
タレントの本ではなく、企業の人材戦略論の本。
トヨタの看板方式を海外がマネしてるということで、日本もマネするべきというのは勉強にになった。 -
2015.03.01 現代ビジネスより
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タレント・マネジメントの話。モノ不足が解消しもはや供給過剰の現代では、大量生産のための「情報の転写」よりも売れる商品を開発する「設計情報」にこそ企業価値の源泉があり、トヨタの主査制度を引き合いにして、価値を生み出すメカニズムとそれを支えるタレントの重要性を説明しています。トヨタの強みの理由は、真似たら同じ効果が得られやすい「転写」での品質管理システムではなく、グーグルもアップルも参考にしている主査制度によるタレントの活用なのだという点は納得です。また、VCが主査制度に直接金融を直結させたという見方は慧眼です。
全般的に説得力あるのですが、NTTの研究所が巨額の研究費を使って何も新しいものを生み出してないだの、郵便局員とコンビニ店員との比較で公務員の給与は高すぎるだの、ソニーはプロの経営者によってダメになっただの、知識獲得能力の低い人は他人を理解する能力に欠けて自分を特別だと思い込む傾向が強く自分より劣った人材で周りを固めがちだの、人によって好き嫌いはあるかもしれません。私は好きですが。
間接部門の責任者としては、企業価値の創出については間接的な関与しかないので、本書の対象ではないのですが、ビジネス・プロセスの担い手としてタレント/プロフェッショナル/スペシャリストの関係性、業務の専門性と定型/非定型での分類とそれぞれのキャリア開発などを考える良い機会となりました。 -
第1章しか読んでいないが、根本的な思想が全然合わなかったため、途中で読むのを辞めてしまった。
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財務諸表に表されない情報資産に焦点をあてたユニークな経営論だなと感じました。
「設計情報転写論」(東大 藤本教授 発)をベースに、有形の製品は図面、無形のサービスはその仕組み・プロセスを創造物である「設計情報」と捉え、それらを媒体に転写する能力で利益を上げるという論です。
中でも重要なのは、源流に位置し創造性が求められる「設計情報」であり、その実現のためには、目的のために、自分の知識や関係者からの情報を統合し創造することのできる「タレント」型の人材が必要であるという。創造的知識労働が、企業に利益をもたらすという主張です。
この書においても、シンセシス(統合)力が重要であるとの一定の結論が得られます。もっとも統合するためには、様々な情報を獲得もしくは自らの知識蓄積が前提であることが必要ですが。 -
以前、コールセンタシステムの構築プロジェクトでご一緒させていただいたアクセンチュアの方が紹介されていたので読んでみました。確かにとても示唆に富む内容でした。冒頭、紹介されている著者が勤務していたという研究所の様子をはじめとして、本書で触れられている多くのシーンに“既視感”を感じたせいもありますが・・・。
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かつては栄光を極めた日本の電気機器業界の失敗と、その間に日本の成功企業を研究し世界のトップ企業へと成長したアップル、サムソンと言った外資系企業を例にとって、人材戦略とハタラキ方について提言している。アップルのスティーブ・ジョブズがソニーをまね、フォードの社員はトヨタを研究し、日本人が成果の出ない莫大な研究費を浪費している間にどのようにグローバル企業に追いつかれていったかということがわかる。売れるサービスありきで、そこからタレントをもった人材によって設計され、有形のものに落とし込まれて初めて稼げる商品が生まれるのであり、設計情報を生み出せる人材を育てる風土を育てるべきだと述べられている。
ここにある日本企業の課題は①売れないものが平然と作られている。②ものをつくる(アイデアの創造からそれを実際の有形物へと完成させる)人材が育っていないことである。自動車業界において世界トップシェアを維持しているトヨタはこの2つの課題を持っていない。日本が世界に誇るグローバル企業がもうすでに課題解決策を見出しているのであれば、なぜ本書に出てくるソニーやパナソニックなどといった企業でも積極的にその経営方式が検討されないのだろうかという疑問がわいた。業界は違えど、前者と後者の明暗はっきりと分かれており、海外企業が必死でトヨタに学ぼうとしているのにも関わらず、あくまで自国より他国の経営から学ぼうとするその傲慢さが未だに経営を立て直すことができない理由なのではないだろうか。 -
153優れたタレントは、知識にせよ職業にせよ、「目的」を達成するための「手段」だと考えているところに際立った特徴がある。
155優れたタレントの仕事は必要な知識を獲得し、あらゆる階層の知識を総動員し、組み合わせ目的を達成するようなイメージ。
156知識は明通にセグメント化できる。
①学校以前・学校以外で学ぶもの-感覚的に理解できるに身体知・経験知のようなもの。
②学校教育で学ぶもの-千尋が作り上げてきた記号や数字として理解できるもの。
③企業などの組織であれば、社内に付けされた知識など。
166自分が持っている知識の中に3種類の状態がある
①詳細まで理解してる状態
②その先がぼんやりわかっている状態
③理解する手がかりがまるでない状態
知識獲得能力が高く既知の範囲の拡張スピードが速い人は②の部分の領域を①と③の境界領域として広く持っている。 -
タレントとしてのスキルを身に付けたいと思った。そのために、プロフェッショナルスキルを複数分野で身に付ける必要があるという話はその通りだと感じた。
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トヨタの「主査制度」を中心にプロダクト・マネジャーのあり方を論じる名著。現代の付加価値は良質な「設計情報」から生まれ、それを作れる「タレント」こそが競争力の源泉である。
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「タレント」についての定義、事例、考察がコンパクトにまとまっています。個人的には第2部以降が面白かったです。 和田
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職場のことを考える、いいきっかけになる本です。トヨタの生産システムの本を読んだことがありますが、著者は、トヨタの強さが別なところにあると書いています。納得できる、わかりやすい説明でした。これから、世界の中で日本が生き抜いていくための大事なヒントだと感じました。
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タレントの獲得とタレントを活かす仕組みを作ることが今後の企業に重要。
主査制度は聞いていたが、ここまで重要な概念だとは考えたこともなかった。 -
労働 人間が頭や身体を使って何らかの処理をすること
仕事 会社のような組織がわから、役割として労働する人に与えられるもの
ハタラキ その労働の結果、期待されている成果を生み出したか否か
労働を通じて無事仕事が行われ成果が生まれた時、ハタラキがあったという
事業部門が閉鎖になった事業部長 高度な知識をもった人材の能力を、売上や利益に結びつけられなかった
企業は、売れる商品、サービスを生み出さなければ個々の人材がいきら優秀だろうと意味がない。
個々の人材がいくら優秀だろうと、日々一生懸命仕事をしていようが、高品質な製品を製造していようが、技術に新規性があろうが、すべてが無駄になる
結果的に、売れる商品やサービスをが生まれていなければ最初から誰も仕事(=利益を生むこと)をしていることにすらなっていない
現在は何を作るかといった質的な事柄が、企業活動では最も重要である。消費者のニーズにマッチした何かをつくることができれば、あとは安く高品質に作るだけである。
ものつくりの本質は設計情報をつくること
結局私たちは、モノをかっているように見えて、実際は設計情報を飼っているのである。
日本での実質的な労働の賃金相場
知識を伴わない提携労働 時給1000円
改善労働を伴う非定型労働 年収300-500万
知識を伴う提携労働 400-600万
複数分野の知識を伴う創造的知識労働 1000万ー数億
実際に、トヨタのようにグローバル市場で成功している企業では、定型労働をを駆逐し、非定型労働比率を高める努力を営々としている
アップルでは、自社内では設計情報やノウハウ創造に関係する創造的知識労働に特化し、定型労働および転写型労働は、可能な限り社外で行うようにしている
タレント 複数分野の知識あり、創造的知識労働、目的的、改革、改善、地頭、洞察、未知を既知に変える能力
プロフェッショナル 知識あり、定型労働、既知の事柄を確実にこなす
スペシャリスト 知識あり、定型労働、特定分野の知識にくわしい
改善ワーカー 知識なし、定型労働+改善能力
ワーカー 定型労働
バカほど威張る 知識獲得能力の低い人達は、一般的に他人を理解する能力にかけている
経営学が役に立つ業種は、石油などの天然資源、パナナや小麦などの食料、そして金融商品などの古典的な剤のビジネる
資産の創造でなく、資産の管理であれば、旧来の経営学でも十分にカバーできる。反対に、資産の創造が難しい分野の企業の経営は、経営のプロでは難しい
トヨタ生産方式 売れるものを売れる時に売れる数だけ生産
売れるものをつくる仕組みをつくったのは 創業者の従兄弟の豊田英二氏と航空技術者出身の長谷川龍雄氏 タレントを見出すしくみが導入され制度化された 主査制度(チーフエンジニア制度)
p255 主査の要件
一つの分野にくわしいエンジニアは普通のエンジニア、2つの専門分野にくわしいのは立派なエンジニア、3つ以上の専門分野に詳しいエンジニアは天下のエンジニア
米国人が優れているのは実は調査能力 米国人は創造性よりも調査能力がすぐれている
すりあわせ 三河ではすり合わせなどという言葉はだれも使わない
シリコンバレーとシリコンバレーのベンチャー企業の弱点は、息の長い研究開発、技術開発に向いていない
優れたタレントの特徴は、目的意識と、目的を達成するための知識獲得能力、地頭、洞察能力、論理的思考能力、コミュニケーション能力の高さである
優れたタレントを認め、全員が異なるのだとうことを、個性として心理的に受け入れられるかが、ほっとしたら日本人の最大の挑戦かもしれない
米国式経営を進めて大失敗したソニー ソニー化
ソニーの場合は、どういう商品にどういう価値があるのか、消費者自体もまだ知らない商品を生み出すことが企業価値だったはずだ -
トヨタの本なにか読みたくなりました
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ものづくり企業の成功のカギは設計力、というのには同意。売れるものしかつくらない、というのはシビアだ。
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企業は「設計情報」を売っている。ものつくりも同様である。
というのは私にとって非常に新鮮な、かつ言われてみれば至極もっとうな言説であった。 -
これまでの産業で鍛えられたプロや手法を用いた。ソニーは見たことないを作る会社なのに。うまくいかなくなった。
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2015年5月新着
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旧電電公社と、密接な関係にあった企業群に対して辛辣すぎる書き方で、個人的な恨みでもあるのかと勘繰りたくなる。
そこまで酷評をしなくても本は書けるのでは・・・笑
が、しかし今の日本企業に存在する問題点を的確に言い当てていて、なおかつ図示も分かり易いので、内容としては非常に読みやすく納得感はあった。
優れた人を生かせる組織なのかどうか、よく考えてみる必要が雇用者にも被雇用者にもある、という事だろう。 -
NTTは毎年4000億円も研究費用をかけているのに、ノーベル賞を誰も出していない。IBMと違う。
R&Dはある日ハタと思いついて決められているわけではない。勝手にボトムアップで創発されているものでもない。世界中から集められた莫大な情報をもとに様々な制約条件を踏まえたうえで商品設計、製品企画を担当する人達がコンセプトを創造している。
目的を達成するためにはまず組み合わせる対象の知識を広げる能力が必要になる。知識を獲得する力の強さがタレントの必要条件なのである。
優れたタレントの特徴は、目的意識と目的を達成するための知識獲得能力、地頭、洞察力、論理的思考能力、コミュニケーション能力の高さ。 -
4〜5
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2015年41冊目。
あちこちで絶賛されている「トヨタ生産方式」だが、今の日本の企業はこれを取り入れて生産工程を良くしたところで、そもそもの製品の価値が低く「売れないモノ」であることが多いため意味がないと著者は指摘する。
企業が行っていることの本質は「情報の設計」と「情報の転写」であり(設計情報転写論)、この前半の「設計情報」の質が製品・サービスの行く末を左右する。
そして、プロフェッショナルやスペシャリストを動員して優れた設計情報を生み出せるのがタレントであるとしている。
このタレントを活かす仕組みとして、終盤でトヨタの「主査制度」を紹介している。
この制度は、グーグルやアップルに真似されているほどらしい。
非常に辛口だが、論旨が明快な本だった。 -
サブタイトルは、「世界で勝ち続ける企業の人材戦略論」とあるように、これからの企業にとって必要となる人材をどうやって生かすのかについて書かれている。
「ものづくり敗戦」の正体では、なぜ日本にアップル製品があふれているのか、売れないものを作ることが存在理由になっている企業、その一方でトヨタのように世界で稼いでいる企業が例に挙げられている。
現在において希少価値のあるタレントについて次のように述べている。「広くて深い真の基礎、基礎の知識を持ち、二つか三つの専門分野があり、目的的に、知識獲得をしながらアナリシス・シンセシスを繰り返し、答えを出す人」と言うように、頭が柔らかくてアンテナを高く張っていて実行力のある人が必要とされている。
「どうしてタレントを生かすのは難しいのか?」では、原因の1つに「馬鹿ほど威張る」で、A級レベルの人材ではなく、B級レベルの人材が上に立つと、自分よりもできる人材を排除する傾向がありなかなか良い人材が活躍しづらいとある。
アメリカ人の特徴について以下のように述べている。「調査能力にあり」。かつて日本が右肩上がりでもう欧米から何も学ぶことなんてないと息巻いていた頃に、アメリカは日本の成功の秘密をきちんと研究していたとある。研究の一例にトヨタが挙げられている。甘く見ると怖い国だ。 -
日本の企業と労働者を叱咤激励する本。
失敗として、NTTの罪、ソニー化などをあげた上で、
TOYOTAはなぜグローバルで成功しているのか?
という事例を交えて、タレント・マネジメントを説いている。
そのため、ちまたにある人材管理論よりも現実感がある。