アイヌ学入門 (講談社現代新書)

  • 講談社 (2015年2月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784062883047

作品紹介・あらすじ

海を渡り北方世界と日本を繋ぐ大交易民族としてのアイヌ。中国王朝と戦うアイヌ。従来のステレオタイプを覆し、ダイナミックに外の世界と繋がった「海のノマド」としてのアイヌ像を様々なトピックから提示する。(講談社現代新書)


 アイヌと聞くと、北海道の大自然の中で自然と共生し、太古以来の平和でエコロジカルな生活を送っていた民族というのが一般的なイメージでしょう。
 しかし、これは歴史的事実を無視した全くの誤解に過ぎません。例えば中国が元の王朝だった時代、元朝は現在の沿海州地方に出兵し、その地でアイヌと戦争をしました。鷲羽やラッコの毛皮など、当時珍重されていた品々を調達するために北海道、樺太から沿海州にまで進出してきたアイヌの人々を排除するためでした。この事例からも窺えるように、中世のアイヌは大交易民族でした。奥州藤原氏が建立した中尊寺金色堂の金もアイヌがもたらしたものだった可能性があるのです。
 著者によれば、アイヌは縄文の伝統を色濃く残す民族です。本州では弥生文化が定着したあとにも従来の縄文の伝統を守り、弥生に同化しなかった人々、それがアイヌだったのです。有名な熊祭りも、縄文の伝統を今に引き継いだものではないかと考えられています。
 また、日本との交流も従来考えられていたよりもずっと緊密でした。アイヌ語で神を意味する「カムイ」が日本語からの借用語であることは有名ですが、それだけに止まらず、様々な面において日本由来の文物を自身の文化に取り入れていったのです。
 本書では、従来のステレオタイプのアイヌ像を覆し、ダイナミックに外の世界と繋がった「海のノマド」としてのアイヌの姿を様々なトピックから提示します。

みんなの感想まとめ

アイヌの歴史や文化を新たな視点から掘り下げ、従来のステレオタイプを覆す内容が魅力的です。本書では、アイヌが自然との共生だけでなく、他民族との豊かな交易を通じてダイナミックに外の世界と繋がっていたことが...

感想・レビュー・書評

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  • 「専ら自然とのみ共生し、他との交流を断つことで独自色を保ってきた民族」という我々の偏頗なアイヌ観に、鮮やかに改定を迫る良書。本書の至る所で、和人を始めとする他民族とアイヌ民族との豊かな「交易」の実情が実証性ある資料を伴って紹介されており、読み応えは申し分なし。北海道旅行のお供にどうぞ。

  • アイヌのことを知りたくて、その時の気持ちが「入門」という書名に惹かれて購入。独自の言語体系と祭祀、習俗を持つ民族でありながら、北海道に定住していたために江戸時代以降、本土からの移民に謂れなき差別を受けた。しかし、樺太や千島列島への民族的な広がりと、青森を含め本土とも交易や文化交流の史料が残り、アイヌ研究の面白さを感じた。今度はアイヌ語に特化した入門書が読みたくなった。

  • 北東アジアと本州に挟まれた地域に住むアイヌの歴史、習俗、経済等について概説している。古代において寒冷期と温暖期を挟んで北海道と本州との間にどのような移動があったか等、著者独自の研究に基づく説が含まれ、遺伝学、考古学、化学、言語学等学際的な視点から、縄文人のオリジナリティ、北東アジアの諸民族との交流、(言語的共通性は相当乏しいものの)本州和人からの文化移入といった多彩なアイヌの姿を描き出している。最後に示されている近世以降のアイヌに対する差別と複雑なアイデンティティの問題は、多様性への課題を今なお投げかけているように思われる。

  • ただアイヌの歴史を辿るのではなく、呪術や祭祀、金などのテーマに沿ってアイヌを読み解いていく。
    本を通じて和人やロシアとの関係の中で社会をつくってきたアイヌ像が描かれており、動的な印象を持つことができた

  • 縄文前期に列島に渡来した、言わば源日本人とでも言うべきアイヌ人。
    北海道という閉じた世界の住人という通念を覆す、東アジアの多くの地域と交易と抗争を繰り返してきたダイナミックな存在であることを明らかにしている。なにしろいっときは大陸側で蒙古と戦争したりもしていたらしい。もちろん、本州とも活発に交流。それは決して「和人によるアイヌの搾取」といったステレオタイプだけで語り尽くせるものではなかった。

    海の民として各地を駆け回りつつも、島の住民がもっとも恐れるのは外来の疫病。外地の人々との接触を避けようとすることが、たとえば沈黙交易のような風習を生んだ(売り手買い手が直接会話せず、無人販売のように品物を置いておく。買い手は対価の品物を置く。納得すればお互いに持ち帰り、そうでなければ捨て置く。アフリカなどでも見られるらしい)。

    さらに隔離された千島列島のアイヌはコロポックル伝承のもとになった。本島にこっそり渡ってきて浜辺の砂を盗んで去っていったと言う。砂を必要としていたのは土器づくりの材料だから。

    「アイヌ語の『イランカラプテ』は『こんにちは』と訳されますが、そもそもは『あなたの心にそっとふれさせていただきます』という意味なのです」。縄文的価値観を継承するかくも深き「陰翳」(p295)をもった文化なのであった。

    最後に著者が絶賛しているアイヌのミュージシャン、OKI。めくるめく中毒性。我々のルーツミュージックはこれじゃないか?

    https://www.youtube.com/watch?v=_X9QxFaHJwA&feature=share

  • とりあえず「アイヌとは?」を知るのには良い一冊なのではなかろうか? というのも,ここんところネットでアイヌの話を(主に否定的な文脈で)見かけるのですが「そう言われたらアイヌを聞いたことはあれど全く知らんな……」という事でそのものズバリなものを読んでみたのだが,これはよかった.
    割と網羅的なのではなかろうか? 少なくとも大和民族とは明らかに違う民族が北海道を中心に樺太から千島列島,そして時に本州の仙台の辺まで住んでいたことはわかる.
    混ざり気のない純血な民族なんてものがこの世界に果たしているのか? というくらい,「民族」という括りは別段血の話だけではなく,言語や文化を含めてのものだろう.だもんで,アイヌの文化の中に多くの日本から影響された文化があるが,やはりそれはアイヌの文化なわけで,そこを否定してしまうと「では,中国や朝鮮文化の影響を受けた日本は?」となっちゃうからね.
    アイヌと「金」の関係は目から鱗でした.

  • “アイヌ”というのは、壮大な交易を行っていた人達で、アイヌが伝えてきた様々な文物には、古来からアイヌが自身で産み出しただけではない、日本等の隣接する他文化の顕著な影響を認めざるを得ない部分も在る。また日本で古来から珍重された様々なモノの中には、アイヌがもたらしたと考えられるモノも実は色々と在るという。そんな物語を考古学や近年の歴史研究の成果を踏まえて綴ったのが本作である。アイヌは文字を持っておらず、文書記録が「間接的なモノ」になってしまって限定的なので、「北海道辺りの歴史」にはマダマダ“不詳”、“不明”が多いことが否めないのだが、そういう部分を埋める様々な物語が本作の中には在る。
    アイヌが壮大な交易の中に生きた民であったという物語が、本書には判り易い型で収められている。「必読!!」という感…面白かった!!

  • 【内容】
    アイヌの人々の様々な風俗とその歴史について分かりやすくまとめている、まさに題名通り入門的な内容の本。最初にこれまでのアイヌ研究について検証し、それらがステレオタイプ的な誤ったアイヌのイメージ形成に繋がってしまったと批判している。その上で言語、交易、小人神話(コロポックル)、呪術、疫病への対応、祭祀、黄金採取といった7つの主要な観点について、続縄文文化、擦文文化、アイヌ文化(筆者はニブタニ文化という名称を提唱している)の変遷の中での様態とその変化を説明している。アイヌの歴史の中で、ある部分では和人の影響を受け、ある部分では大陸やオホーツク文化等周辺の影響を受けており、そういった影響を一つずつ分析することで、さらにその根底に息づく縄文時代から受け継いでいる文化、思想を読み解くことが出来ると筆者は説く。
    本書では縄文時代をそのまま引き継ぐものでもなく他民族とどこかで入れ替わるものでもなく、断続的に相互に影響し合いながらも独自の文化とアイデンティティを形成していったアイヌの人々の姿がいきいきと描かれている。また最後に現代のアイヌの生活にも触れ、筆者の知人のA氏との対話からアイヌの人々が差別により苦労してきた歴史やアイヌとしてのアイデンティティの苦悩を描いている。

    【印象に残った点】
    コロポックル伝説の正体の一案としての、千島アイヌ正体説。一方でその内容の一部は遠くローマから伝来してきた言い伝えが大陸から伝わり影響を受けている可能性も示唆している。
    北海道における砂金の採取が、奥州藤原氏の時代やさらにそれ以前から本州に影響を与えていた可能性。及びアイヌの人々が交易の品目として砂金を採取、精錬していた可能性も指摘している。そこでは、貨幣経済の枠外にある自然と生きる人々といった従来のアイヌ像とは異なる姿が示唆される。
    あとがき、渡来系の人々が5世紀後半からアイヌの人々と交流し、北海道にまで渡っていた可能性。

    【感想】
    蝦夷とアイヌの関係や違いもわかっていない、続縄文文化という響きになんとなく後進性を感じてしまう程度の初学者である私にとっては、概説書としても今後の興味への入口としても最適な入門書であるように思う。また著者のアイヌに対する思想の押し付け等がなく、客観的かつ真摯な姿勢に好感を覚えられ、少なからずセンシティブな要素がある分野にも関わらずストレスなく読み進められた。
    本書ではアイヌに影響を与えたものとして本州の陰陽道や呪術、修験道等にも触れられているが、そういった知識も不足しているため知識習得の必要性を感じた。

  • アイヌ文化が本州や朝鮮、オホーツクといった周囲の文化の影響を大きくうけてつくられてきたものだと示す。

  • 本書内でも批判的に取り上げられているが、アイヌに関する学説は多種多様である。理由としては、アイヌは文字を扱わない文化であり、単純に資料が少ないという点がある。本書も「〜ではないだろうか」といった言い回しが多く、あくまで著者の仮説の域を出ないのだろう。

    ただ、アイヌのステレオタイプ(自然とともに生き、縄文時代から大きく変わらず、狩猟採集の暮らしを送るようなイメージ)への異議申し立ての心意気は強い。特に、オホーツク人や和人との交流の視点からアイヌ像を刷新しようという意識があり、本書に限っては成功しているような印象がある。

  • アイヌに対する見方、印象が変わりました。著者の見解であって学説として広く受け入れられているかはわかりませんが、どうしてそう考えるのかなど丁寧に記載してあり、アイヌについてもっと知りたいと思わせてくれます。

  • アイヌ学「入門」と題しているが、全編にわたって著者オリジナル(?)の仮説がグイグイと前に出てくる感じがあり、そのあたりがあまり、いわゆる入門らしくない気がする。文字を持たない民族の歴史を研究する難しさはあるのだろうな、と思う

    だいぶ長いこと積読にしていたのだが、たしか渡辺京二の「黒船前夜」を読む前の勉強にしようとしていたような。そちらにも取り掛かりたい

  • 序章 アイヌとはどのような人びとか
    3つのポイント
    ①変わってきたアイヌ
    本土との交易(毛皮、鮭など)のため乱獲したり、居住地が偏る等
    元々あった敬虔さと、生きていくための現実との葛藤
    →アイヌを「変わらない存在」として祭り上げず、同じ人間として「共感」すること
    ②変わらなかったアイヌ
    縄文時代はゴミを一箇所(貝塚)に捨てていたが、アイヌは分類し階層化していた等
    ③つながるアイヌ
    異民族と盛んに交易(戦闘)するという、ヴァイキングとしての側面
    和人との交流によって、「神」観念の一部が形成されてきた
    アイヌ独特の文様は北東アジアの諸民族から影響されて生まれ、本土の漁師の労働着や歌舞伎の衣装として着用されていた等

    ・日本では元々北海道から沖縄にかけて縄文人が住んでおり、(ほぼ)同じ枠組みの人種・文化体系だった
    →弥生時代に朝鮮半島から入ったモンゴロイド集団と縄文人が交雑し、本土では和人(本土人)を形成
    本土ほど交雑が進まなかった北海道と沖縄には、それぞれ縄文人の特徴を残したアイヌ・琉球人が残った
    ・特にアイヌは異民族との交雑に積極的ではなく、日本語と根本的に異なるアイヌ語が残った
    ・アイヌは樺太から東北地方まで進出していたこともあったが、北からオホーツク人、南から和人が進出してきたこともあり、徐々に居住地が狭められていく

    第一章 縄文
    ・アイヌ語は日本語と同じ語順だが、接頭辞が優勢であり、周辺のアジア地域での孤立性がある
    →もともと縄文時代では日本列島全体で同じ言語が使われていたが、弥生時代に朝鮮からの影響で変わってしまった
    アイヌはその縄文語を受け継いでいる?
    ・小熊を数年育ててから殺す「イオマンテ」だが、縄文時代に本州でも同様の祭りをイノシシで行っていた
    ・同様に、サハリンアイヌのミイラ習俗は本州の「もがり」、刺青の習慣は土偶からも見られるように、北海道特有ではなく縄文時代共通のものだった?

    第二章 沈黙交易とエスニシティ
    ・千島やサハリンアイヌは疱瘡などの病を恐れ、沈黙交易を行っていた(沈黙交易自体は、古代ギリシャなど世界中でみられる)

    第三章 伝説
    コロポックルのモデルは北千島アイヌ
    古代ローマの記事(プリニウスの博物誌)→中国→日本→アイヌと伝播
    土器づくりのために粘土を調達しにくる、おどかすと姿を隠してしまう(沈黙交易のため接触を避ける)などが北千島アイヌの特徴と一致

    第四章 呪術
    武器を手にし、叫びながら行進するアイヌの呪術は、陰陽道の反閇(へんばい)や修験道がルーツ?

    第五章 疫病
    「諸病の王」である疱瘡の神が、海を渡ってやってくるという伝説
    →日本の蘇民将来など、「疫病歓待」という共通モチーフ
    疫病除けに藁人形を作ったり、においの強いものを吊るすなども共通

    第六章 祭祀
    祭儀に関するアイヌ語には、古代日本からの借用語が多い
    →東北から移住した和人の影響と考えられる
    またイナウ(ケズリかけ)やイクパスイなどの祭具も、日本の山の神信仰や農耕、酒づくりとの共通点

    第七章 黄金
    江戸時代、アイヌの人口を上回る和人が金掘りに北海道へ入った
    アイヌは金の価値を知らないとされてきたが、実際は価値も採取方法も知っていた?
    岩手の中尊寺金色堂の金箔には、日高の砂金が使われている?

  • 入門書を、と思い手に取りましたが、思ったより専門的、文化人類学的なのでしょうか。アイヌの交易民、和人との古くからの交流交易、文化的影響等々。まだまだ研究されていないことも多いと知りました。少しずつ学んで行きます。

  • ●獣や道具など人間に有用なものは、すべて神が与えてくれるお土産であり、人間はこの返礼として神にお土産を持たせ、神の威信を高めなければならない。これがアイヌの神観念です。
    ●アイヌの特徴を一言で表すとすれば「日本列島の縄文人の特徴を色濃く留める人々」と言うことになるでしょう。
    ●私はアイヌがモンゴロイドであると言われても納得することができません。コーカソイドとモンゴロイドとも言えないというのが実際のところ。
    ●ゴミ処理にはかなり複雑なシステムが存在し、ランクがあり、捨て場が明確に区別されている。動物の骨を頂点として毛皮や魚一般ゴミと言う所。
    ● 1280年頃は元が毎年アイヌを攻撃しています。
    ●アイヌが受け継いでいた縄文伝統の代表はアイヌ語である。
    ●クマ祭り。春先こぐまを生け捕りにし、これを集落で1年から数年飼育して秋や冬に殺して神の国を送り返す祭りを行っていました。
    ●アイヌ女性は口の周りや腕、手の甲に刺青を施していました。成熟した女性の象徴であり、美的要素であったとされる。
    ●誰もが知るアイヌ伝説と言えば、小人(コロボックル)伝説。
    ●アイヌの祭儀で書くことができないのはイナウ(けずりかけ)とイクパスイ(棒酒箸)の2つの祭具。
    ●北海道は幾度もゴールドラッシュてはいた「黄金島」です。江戸時代初期には、アイヌの総人口より多くの金掘りが北海道へ入り込んでいました。

  • ふむ

  • 東2法経図・6F指定:B1/2/Shoji

  • わかりやすいアイヌ解説本。
    現代のアイヌの話まで、カバーされているのが良い。
    これを読んで旭川の博物館に行くとなお良い。

  • アイヌは、我々が忘れ去った縄文文化の記憶を深くとどめている。しかし、それは、アイヌ文化が進化しなかった、ということでは決してない。
    アイヌは、和人や他の民族と密接に交流し、自らの文化や世界観を変化させた。和人や他の民族からたくさんの文化を吸収し、また、和人や他の民族の文化にも多くの影響を与えてきた。そのダイナミックさは、我々の想像を超える。
    アイヌは文字を持たなかったゆえに、その歴史は未解明なところが多い。だが、我々が縄文から脈々と続く真の歴史に迫るためには、さらに深くアイヌを知らなければならないのである。

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