アイヌ学入門 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062883047

作品紹介・あらすじ

アイヌと聞くと、北海道の大自然の中で自然と共生し、太古以来の平和でエコロジカルな生活を送っていた民族というのが一般的なイメージでしょう。
 しかし、これは歴史的事実を無視した全くの誤解に過ぎません。例えば中国が元の王朝だった時代、元朝は現在の沿海州地方に出兵し、その地でアイヌと戦争をしました。鷲羽やラッコの毛皮など、当時珍重されていた品々を調達するために北海道、樺太から沿海州にまで進出してきたアイヌの人々を排除するためでした。この事例からも窺えるように、中世のアイヌは大交易民族でした。奥州藤原氏が建立した中尊寺金色堂の金もアイヌがもたらしたものだった可能性があるのです。
 著者によれば、アイヌは縄文の伝統を色濃く残す民族です。本州では弥生文化が定着したあとにも従来の縄文の伝統を守り、弥生に同化しなかった人々、それがアイヌだったのです。有名な熊祭りも、縄文の伝統を今に引き継いだものではないかと考えられています。
 また、日本との交流も従来考えられていたよりもずっと緊密でした。アイヌ語で神を意味する「カムイ」が日本語からの借用語であることは有名ですが、それだけに止まらず、様々な面において日本由来の文物を自身の文化に取り入れていったのです。
 本書では、従来のステレオタイプのアイヌ像を覆し、ダイナミックに外の世界と繋がった「海のノマド」としてのアイヌの姿を様々なトピックから提示します。

感想・レビュー・書評

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  • とりあえず「アイヌとは?」を知るのには良い一冊なのではなかろうか? というのも,ここんところネットでアイヌの話を(主に否定的な文脈で)見かけるのですが「そう言われたらアイヌを聞いたことはあれど全く知らんな……」という事でそのものズバリなものを読んでみたのだが,これはよかった.
    割と網羅的なのではなかろうか? 少なくとも大和民族とは明らかに違う民族が北海道を中心に樺太から千島列島,そして時に本州の仙台の辺まで住んでいたことはわかる.
    混ざり気のない純血な民族なんてものがこの世界に果たしているのか? というくらい,「民族」という括りは別段血の話だけではなく,言語や文化を含めてのものだろう.だもんで,アイヌの文化の中に多くの日本から影響された文化があるが,やはりそれはアイヌの文化なわけで,そこを否定してしまうと「では,中国や朝鮮文化の影響を受けた日本は?」となっちゃうからね.
    アイヌと「金」の関係は目から鱗でした.

  • “アイヌ”というのは、壮大な交易を行っていた人達で、アイヌが伝えてきた様々な文物には、古来からアイヌが自身で産み出しただけではない、日本等の隣接する他文化の顕著な影響を認めざるを得ない部分も在る。また日本で古来から珍重された様々なモノの中には、アイヌがもたらしたと考えられるモノも実は色々と在るという。そんな物語を考古学や近年の歴史研究の成果を踏まえて綴ったのが本作である。アイヌは文字を持っておらず、文書記録が「間接的なモノ」になってしまって限定的なので、「北海道辺りの歴史」にはマダマダ“不詳”、“不明”が多いことが否めないのだが、そういう部分を埋める様々な物語が本作の中には在る。
    アイヌが壮大な交易の中に生きた民であったという物語が、本書には判り易い型で収められている。「必読!!」という感…面白かった!!

  • 縄文前期に列島に渡来した、言わば源日本人とでも言うべきアイヌ人。
    北海道という閉じた世界の住人という通念を覆す、東アジアの多くの地域と交易と抗争を繰り返してきたダイナミックな存在であることを明らかにしている。なにしろいっときは大陸側で蒙古と戦争したりもしていたらしい。もちろん、本州とも活発に交流。それは決して「和人によるアイヌの搾取」といったステレオタイプだけで語り尽くせるものではなかった。

    海の民として各地を駆け回りつつも、島の住民がもっとも恐れるのは外来の疫病。外地の人々との接触を避けようとすることが、たとえば沈黙交易のような風習を生んだ(売り手買い手が直接会話せず、無人販売のように品物を置いておく。買い手は対価の品物を置く。納得すればお互いに持ち帰り、そうでなければ捨て置く。アフリカなどでも見られるらしい)。

    さらに隔離された千島列島のアイヌはコロポックル伝承のもとになった。本島にこっそり渡ってきて浜辺の砂を盗んで去っていったと言う。砂を必要としていたのは土器づくりの材料だから。

    「アイヌ語の『イランカラプテ』は『こんにちは』と訳されますが、そもそもは『あなたの心にそっとふれさせていただきます』という意味なのです」。縄文的価値観を継承するかくも深き「陰翳」(p295)をもった文化なのであった。

    最後に著者が絶賛しているアイヌのミュージシャン、OKI。めくるめく中毒性。我々のルーツミュージックはこれじゃないか?

    https://www.youtube.com/watch?v=_X9QxFaHJwA&feature=share

  • 歴史

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    自分はアイヌとうのは明治時代に日本が北海道を開拓する以前から北海道に住んでいた人たちという認識だったが、古代に東北地方から北上した人々に加え、サハリンから南下してきた人々が合流し、生まれたということには大変に驚いた。
    また、かなり昔から日本との交易やサハリン経由で大陸とも交易していたことは行動範囲の広いことがよく分かる内容となっている。また、その独自の文化や民俗がわかりやすく書かれており、大変に興味深い内容となっていた。

  • 著者の専門である考古学の研究成果を、文献資料や言語学、伝説まで動員して照合するという知的好奇心をくすぐられる内容。アイヌ文化の概要が知りたくて手に取ったのだけど、期待以上に深い知識が得られたと思う。異文化との接触によって変化してきたアイヌ、地域による多様性などなど、ステレオタイプな理解を拒むかのような記述に圧倒された。ただ、近代以降の差別・弾圧の歴史はかなりあっさり書かれている印象。

  • 日本という領域で(といっていいのかな)かなり互いに影響しあっている一方で、それでも大きく違うまま20世紀まで来たいくつかの民族が統合されていく中でのアイヌ学入門。後半のインタビューがけっこう大きいか。

  • 【由来】


    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • アイヌとは北海道に孤立した民族だと思っていた自分には衝撃的な本。
    古代から和人・渡来人・大陸とグローバルに交流し、交じり合い、影響しあう人々の生き生きとした姿が描かれます。
    アイヌの風俗に和人が及ぼした影響、義経伝説の影響、日本語起原のアイヌ語、驚くべきアイヌの躍動する姿。いやあ、知らなかったことばかり!
    それにしても、現代でもアイヌがおかれた厳しい状況、貧困、学歴といった問題にも驚き。こういったことはある意味隠されているんだなぁ。
    ただ、内容は筆者の仮説にとどまるものも多く注意が必要です。

    アイヌとはどのような人びとか
    縄文―一万年の伝統を継ぐ
    交易―沈黙交易とエスニシティ
    伝説―古代ローマからアイヌへ
    呪術―行進する人びとと陰陽道
    疫病―アイヌの疱瘡神と蘇民将来
    祭祀―狩猟民と山の神の農耕儀礼
    黄金―アイヌは黄金の民だったか
    現代―アイヌとして生きる

    第3回古代歴史文化賞
    著者:瀬川拓郎(1958-、札幌市、考古学者)

  • 完全にゴールデンカムイの影響。

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