指揮官の条件 (講談社現代新書)

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  • 講談社 (2015年10月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784062883399

作品紹介・あらすじ

著者は、東日本大震災直後の被災者救援活動や福島第一原発事故後の対応で、海上自衛隊の指揮官を全うした。「船長」として、部下をまとめ確たる実績を残している。そんな著者が組織のリーダーの在り方、強い組織の作り方について、シンプルにそして力強く、考察する。「組織への忠誠心」「有事に信用できる人間の見極め方」「言葉の重要性」「指揮統率の奥深さ」・・・。これからの時代に求められる、真のリーダーとは。


責任を取ろうとしないリーダーが組織を率いれば、組織に属する人間たちも忠誠心、帰属意識を持ちようもない……。東京五輪関連の問題や、大企業の不祥事など、「もろい組織」の存在が続々と明らかになっています。強い組織を作るにはいったいどうすればよいのか? リーダーとはどうあるべきか?
著者は元海上自衛隊幹部。東日本大震災という近年最大の国難に際して、被災者救援活動や福島第一原発事故後の対応で、海上自衛隊の指揮官を務めた人物。さかのぼってイラク戦争勃発のときには、インド洋で護衛艦隊を率いていました。先の見えない荒海を行く「船長」として、部下をまとめ、確たる実績を残しています。
「組織への忠誠心は一朝一夕で醸成できない」「有事に信用できる人間は、細部まで誠実である」「厳しさこそ優しさである」「自分の言葉で話せないトップは責任を取らない」「組織はどんどんシャッフルするべき」「想定外など甘い」「物事は地球儀とともに考えよ」・・・・・・。
真のリーダーなき時代に、正面から「リーダーの条件」「強い組織の作り方」を考察するシンプルで力強い1冊です。

みんなの感想まとめ

リーダーシップの本質を探る本書は、組織を強化するための視点や姿勢について深く考察しています。著者は元海上自衛隊の指揮官として、実際の経験をもとに、部下との信頼関係や組織への忠誠心の重要性を強調します。...

感想・レビュー・書評

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  • 組織の中でどのような視点を持ち、どのような姿勢でいるか。
    とても参考になりました。

  • 海上自衛隊の元海将による、自伝的なリーダー論。部下を持つ立場の人は、一読して自らの振る舞いを省みるのも悪くないだろう。

  • 880

    私も待ち合わせの15分前ぐらいに着くんだけど、根が自衛隊なのかもしれない

    高嶋博視
    海上自衛隊元横須賀地方総監。東日本大震災直後、被災者救援、原発事故対応の海上自衛隊の指揮官を務めた。昭和27年香川県生まれ。昭和46年香川県立三本松高校卒業。昭和50年防衛大学校卒業(第19期生)、海上自衛隊に入隊。平成5年在ノルウェー防衛駐在官。平成13年護衛艦隊司令部幕僚長(海将補)。平成14年第1護衛隊群司令(インド洋派遣:補給支援活動)。平成16年海上幕僚監部人事教育部長。平成19年護衛艦隊司令官(海将)。平成20年統合幕僚副長。平成22年横須賀地方総監(東日本大震災に従事)。平成23年8月退官。現在、日本無線株式会社顧問。著書に『武人の本懐 東日本大震災における海上自衛隊の活動記録』(講談社刊)がある。

    指揮官の条件 (講談社現代新書)
    by 高嶋博視
     長い人生においては、多くの出会いがある。生まれてから 三途の川を渡るまでに、数えきれないほどの人に出会って大なり小なり影響を受け、あるいはいろいろのことを教わり、そして現在の自分がある。両親は自分が出会う 人類 の第一号だ。人と同じように、本との劇的な出会いもある。  衝撃的な出会いもあり、そうでないときもある。殆どは後者だろう。私の場合、制服生活の初期段階において、この本に出会わなかったならば、現在の自分はない。そう断言できる。それほどまでに、私の中では『戦艦大和ノ最期』は大きく重い存在だ。

     私は現役のときから、指揮官は優遇されていいと言って 憚 らなかった。制服を脱いで数年が経ち、また多くの民間人と交流している現在も、その考えは変わらない。  艦艇において真水は命だ。燃料に匹敵する。造水装置がなかった昔ほどではないが、現在でも水は貴重品である。乗員には洗面器 1 杯の水しか与えられないときでも、指揮官である艦長は 溢れんばかりの湯船につかる。艦長が風呂に入っているそのときにも、若い隊員(乗員) は雪が吹き上げる甲板で、震えながら見張りの任務に就いている。  私はそれを不平等とは思わない。理不尽だとも思わない。  艦を指揮する艦長は、数百億円もする、イージス艦に至っては 1 千億円を超える国有財産と、全乗組員の命を預かっている。個々の乗員には、両親が居り、奥さんや子供がいる。指揮官は、この人たちの命運のすべてを預かっている。  昔から、「いざとなったとき、乗員は艦長の顔を見る」と言われている。乗り組んでいる総員が、運命を艦長に委ねている。指揮官にとって、その精神的な負担は尋常なものではない。同時に、指揮官には、自分が預かる国有財産と人的財産を守り抜く能力と覚悟が求められる。我々が想定するのは、各種の事故ではない。有事の話である。

    指揮官は孤独である。その孤独に耐えなければならない。そして、指揮官は泣いてはいけない。  大きな仕事には、大きな決心が伴う。そして指揮官は、結果責任という重い十字架を背負うことになる。東日本大震災における経験を通じて、つくづくそう思う。緊急事態や非常時における重要案件は、指揮官自らが判断すべきである。そのためには、日頃から自分自身と、部下を鍛え上げておかなければならない。

     突入部隊指揮官が、原発港に突入する隊員の身上調書を添えて、名簿を持ってきた。彼は「年齢にかかわらず、チームの総員が参加を希望しました」という。私は心で泣いた。そして、この組織は 如何なる事態になっても大丈夫だと確信した。将来、たとえ有事のときがきても、逃げだすものなどいない。それが日本人の民度であり、日本海軍の文化・伝統である。我々は現在「海上自衛隊」と呼ばれてはいるが、日本海軍の精神は連綿として受け継がれている。

     愛国心か? 少し違うと思う。勿論、国を愛する気持ちはある。しかし愛国心がどうこう、というのとは少し違う。要は、自分に与えられた任務を確実に遂行するという「使命感」だと思う。上段に構えた、気負ったものではない。淡々とした気持ちだ。

     私は太宰治の「富士には月見草がよく似合う」という言葉が好きだ。指揮官は、富士の裾野に咲く、一輪の花や雑草の心が理解できなければいけない。 凛と咲く月見草の美しさに感動すると同時に、その心のひだや、心の痛みが理解できなければいけない。  しかし指揮官は、その美しさに見とれ、いつまでもその世界に浸っていることは許されない。常に 俯瞰 して、富士山の輪郭、全体像を把握することを求められる。  指揮統率は、かくも奥が深い。

     愛国心というものは、「愛国心を持て、持て!」と言われて培われるものではない。地域を愛する、家を愛する、家族を愛するのと同じである。自然発生的に生まれてくるものだ。従って、愛国心を 標榜 する自衛官が、筋金入りの軍人であるとは思わない。それは外見上だけ、見た目の話である。

    ただ一点、今日我々が注意しなければならないのは、少なくとも我が国が先の戦争に負けるまでは、最低限、日本人としての在り方みたいなものは、家庭や学校を通じて教育されていた。ところが今日の日本では、そこのところ、いわば我々の土台・基盤になるものが、どこにおいてもなされていないような気がする。  従って、このような現状・現実を踏まえた教育が必要であることも確かだ。  私は愛国心よりも、むしろ、その人の責任感や使命感を重視する。これも、口に出して言うものではない。自然と行動に出るものである。

     私は、幸いなことに、一度として敵と戦火を交えることなく、 40 年間の制服勤務を終えた。だから、胸を張って言うことはできないのだが、弾の下をくぐった経験のある先輩は、「 愈々 のとき、即ち、戦場・戦闘場面において最も信頼できるのは、自分の持ち場に誠実な人物。寡黙ではあるが、こつこつと自分の役割を果たす人、与えられた職務を淡々と遂行する人だ」という。  この意味が、私には分かるような気がする。ほら吹きは論外だが、日頃、立派なことを言う人が、究極の場面において信頼に足り得るかと言えば、必ずしもそうとは言えない。では、まったくダメかと言えば、そうでもない。それこそ、最初に述べた「軍人の真価は戦場でしか分らん」のである。  そこのところを、何をもって 峻別・識別するかと言えば、私はその人が使命感と責任感を持ち合わせているか否かを物差しにする。  責任感や使命感を内に秘めている人は、決して踏み外すことはない。

     ズボラな人間は信用できない。多少頭の回転が速くても、大口をたたく人間は信頼できない。これは、私が制服生活 40 年を通じて得た、人物評価の基準である。

     ともあれ、学生時代に数学をサボった私にとっては、無理難題、頭の痛い宿題であった。それでも艦長の命令には抗しがたく、過去の資料を 漁り、乏しい数学の知識を駆使して、それらしい値を出して艦長に提出した。

     私が言いたいのは、自分の言葉で語るということ。毎日のように、ときには日に何度もある話す機会(内容) を、すべて自分で考え、自分の言葉として語るのは骨が折れる。しかし、それこそ指揮官の務めであり、醍醐味でもある。  かりに、他人の言葉で話したことを聞いた人が感動してくれても、ちっとも嬉しくない。そう思う私は、自己中心的かもしれない。が自ら語ることによってこそ、その人の重みや人柄が表れるのだと思う。  自らの言葉で、考え方や生き方を発信できない指揮官は、指揮官としての素養を欠いている。多少は自己中心的であってもいい。強いリーダーシップに対して、部下は尊敬の念を抱き、この人についていこうと思うのだ。そして安心する。

    「具体的な代案のない批判は無視してよい」という言葉もあるので、やりっ放しにしたいが、それでは組織の歯車にはなれない。上司・上官との関係もギクシャクしたものになる。上司は、このような部下の気持ちを理解しなければならない。大なり小なり、自分も同じような経験を踏んできているのだから分かりそうなものだが、なかなかそうはいかないのである。  自分が言いたいことは、自分の言葉で語る。これは指揮官に与えられた特権である。

    件の部下隊員に、そこのところを問うた。というよりも、若かった私は 執拗 に追及した。彼の言う再就職の当てが、どうしても私の 腑 に落ちなかったからだ。数回にわたる面接において、彼が言う矛盾をことごとく指摘・論破すると、彼は突然顔を曇らせて涙を流し始めた。そして再就職の当てはないことや、悲しい過去をポツリポツリと話し始めた。彼は親の愛を知らない、つらい生い立ちの子だった。

     当たり前のことではあるが、体あっての物種である。健康管理、即ち自己管理は指揮官の義務でもある。偏見ではあるが、ファットな人は指揮官に向かないと思う。肥えていようが、喫煙者であろうが、大酒のみであろうが、仕事ができる人は大勢いる。それは間違いない。しかし、そういう人たちについても、自己管理能力の一部を欠いている、と言われても仕方がないのではないか。  多くの諸外国軍人を見てきたが、肥えている将官を目にするのは稀である。勿論、例外はある。夫人(奥さん) についても同じである。彼らは、常に自己管理に努めている。それは、「体型」が人物評価のひとつであることを知っているからだろう。

     私の場合、人と待ち合わせをしたときには、おおよそ 30 分前には会合点に着いて、周辺を散策する。敵よりも早く現場に着いて周囲の状況を確認し、相手の出方を待つのは戦闘員として当然のことである。遅くとも、 15 分前には到着して相手を待つ。土地勘がない場合には、なおさらである。便利な世の中であり、事前に交通の便を確認しているが、どうしても早め早めに動くのは、この道 40 年の習い性であり、加えて、相手を待たせるのは大変失礼なことと思っているからである。しかしながら、もしかすると相手にとっては、大層迷惑な話かもしれない。私自身も時間を無駄にしているのだが、今さらこの性格は変わらない。他人に迷惑をかけるわけでもないので、「ま、いいか」と思っている。

    自分以外の人と時間を共有する、他人の時間を占有するということは、実に大変なことである。時間はお金でもあることを、想起すべきである。

    度々で恐縮だが、私事を述べる。  平日の起床時間は自宅を出る 1 時間半前と決めている。 8 時の出発であれば 6 時半であり、遠出するため 5 時に家を出る場合には 3 時半となる。この 1 時間半で自らに課している朝の予定(洗面+ストレッチ+筋トレ+排泄等) をこなそうとするからである。  未明に起きるのは、正直しんどい。しかし、小心者で性格の弱い私は、ここで妥協すると、とめどなく堕落するような気がするのである。睡眠不足に弱い私は、通常より 1 時間早く起きる必要があるときには、その分いつもより早く床に就く。 1 時間早く就寝するためには、その日に処理すべきことを 1 時間早く終了するよう努める。あるいは、 1 時間早く切り上げる。ただそれだけのことである。

    母校(高校) 同窓会の東京支部役員をしているが、年に一回の総会に出てくる同窓生は極めて限られている。誠に残念なことだ。往復はがきや返信用のはがきを同封して案内しても、返事すらよこさない同窓生が多数いる。何がそうさせるのか。なぜそうなったのか。  おそらく、総会の運営要領などにも問題があるのだろう。しかし、その最大の理由は、組織や地域への帰属意識の低下にあると思う。返事をよこさない人には、それなりの理由があるとは思うのだが、正直なぜなんだろうと思う。

    書斎(と言えるほどのものではないが) に「教育勅語」を掲げている。そして、毎朝 読誦 する。私は懐古主義者でもないし、所謂右寄りでもない。自分では、至って中道だと思っている。  教育勅語といえば、今日の日本では軍国主義の権化のように言われるが、誠におかしな見方だと思う。どう読んでも、どう唱えても、どこが悪いのかが私には分からない。勿論、例えば「朕カ忠良ノ臣民」など、現在の国情に合わせて修正すべきところはある。しかし、言っていることは大筋において正しい。人の在り方、日本人としての生き方を示しているからだ。何百年経とうが、普遍の真理というものはある。本物は本物なのだ。

    悪いのは、勅語自体ではない。糾弾されるべきは、これを悪用した、あるいは曲解して都合のいいように利用した人間である。そこのところを、はき違えてはいけない。坊主憎けりゃ 袈裟 まで憎いでは、物事の本質を見誤る恐れがある。

    寄り道が長くなった。私が言いたいのは、要は、幼い頃にこのような普遍の真理を授けないから、帰属意識も薄くなるのではないかという推論である。昔はよかった、というつもりはまったくない。戦前への回帰を企図するものでもない。しかし、現在に比べていいもの、いいこともいっぱいあったはずだ。何でもかんでも、捨ててしまっては誠にもったいない。個人のみならず、国家として大きな損失である。

    何回も言うが、私は国粋主義者でも、軍国主義者でもない。そんな考え方は、私には縁がない。しかし、この国に生まれ、この国で生きていることを誇りに思う。そして、日本が更に発展していくことを切に願う。  人間として、至極当たり前の心情だと思っている。

    「端末処理」は、仕事をしていく上での考え方にも通用する。作業の過程において、どんなに丁寧な仕事をしても、如何に努力しても、最後の詰めが甘いとその成果が出ないばかりか、マイナスの結果さえあり得る。私自身も、生来詰めの甘い性格で、護衛艦に乗っているときには、しばしば艦長から「おまえは砂糖壺に指(爪=詰めが甘い)」と揶揄されたものである。「塩釜に指」になろうと努力したが、なかなか難しい。  人間の性格につける薬はない。治療の仕方がないのだ。自分の悪い性格をどのようにして、改善あるいはカバーしていくのか。その答えは、人生のさまざまな過程において、その都度自分に厳しく接すること。自分は斯様に詰めが甘い性格だと、常に自分自身に言い聞かせ、だからことさら慎重に物事を運ばなければならない、と。ひとつずつ、丁寧に目の前の事案を解決し処理していく。それしかないと思う。

    その国の将来を占いたければ、その国の青年を見よ。その国の青年を見たければ、その国の士官学校を見よ。という言葉がある。防大は、卒業式に総理大臣のご臨席をいただく、我が国でただひとつの大学である。  かつて、著名な作家が「防大生は日本の恥辱だ」と言ったと記憶する。お言葉ですが、彼らは「貴重な国有財産であり、国の宝です」と言いたい。

    組織にとって、人材の確保は重要な課題である。一般論として、優秀な人材が多数集まれば、当然の帰結として組織の成長が見込める。問題は「優秀」をどう定義し、どのように捉えるかである。私は、偏差値無用論者ではないが、偏差値を重視しない。学生時代から偏差値が低く、「偏差値」という言葉に悩まされた恨みと、コンプレックスが根底にあるのかもしれない。

    強がりは、弱さの裏返しである。芯から強い人は、強がりなど言う必要がないので淡々としている。本当の金持ちが、金持ちらしく見えないのと同じである。大声で部下を叱責したり、大口をたたく人に限って、小心者が多いのもうなずける。

    幼少の頃、「稔るほど頭を垂れる稲穂かな」と母が教えてくれた。今でも耳に痛い言葉だ。

     高校時代、国語の授業で太宰治の『富嶽百景』に出会い、クラスの落ちこぼれであった私は、月見草という言葉が大層好きになった。野球の野村監督も、好んで自身を月見草に例えている。  部下を持つ身になってからは、定期的な昇進の時期が来るたびに、間接的に月見草を例えに使った。超特急で昇進する人は偉いか? 決してそんなことはない。私は昇進(出世) と、その人の人間的な価値はリンクしないという考えだ。社会的な地位や権力、財力、ましてや学歴など、例えは悪いが鼻くそみたいなものだ。そんなものがなくても、世の中には素晴らしい人があまたいる。  昇進したことが偉いのではない。昇進に至る過程での、努力が素晴らしいのだ。勿論、人それぞれが持つ能力は違う。同じ仕事を 10 分でできる人がいれば、 1 時間を要する人もいる。それは仕方ないことだ。

  • 国を守る自衛官がいい加減で適当な気持ちで任務に当たってしまったら、国家が数千億を投じた軍艦や戦闘機などの損失に繋がる。民間企業ならクビや降格で済まされるだろうが、自衛官もクビにすればいいという単純な話では済まされない。彼らには国を守るという他のどの組織も持たない使命感と、国民の血税の上に成り立つ国民の資産を扱うという極度の緊張感もあるだろう。
    本書は海上自衛隊で護衛艦隊司令官や横須賀地方総監などを務め上げた元海上自衛官による組織統率の指南書と言える。海上自衛隊と言えば五万人規模の組織であるから、民間企業で言ってもかなりの規模の組織体である。
    大きな組織、様々な隊で構成される組織であるからこそ、目的達成には上に立つ者の指揮能力に大きく依存する。また、それを可能にするのは日々厳しい訓練に耐え、肉体的・精神的に鍛え上げられた自衛官の努力に支えられている。
    本書で記載された内容は民間企業の管理職にも大いに参考になる。私も筆者に比べる事も憚れるほどの僅かばかりの人数であるが部下がいる。読んで納得感が充分得られる。
    指揮される側の利益代表になってはいけないといった言葉には管理職なりたての若い自分を今でも恥ずかしく思い起こされると共に、今でもそうなってないかチェックするポイントだ。また、細かいことばかり見る、部下に好かれようとする、楽ばかり求めていないか、常に俯瞰して見て部下を察し、そうしながらも行くべき方向性を示して、部下の苦しみを自分ごとの様に思う。これらは日々できているか未だ不安を抱えながら職にあたっている。
    時には感情に流されてしまう。ついつい甘い事も言う。自らも明日でいいか、と甘える。部下はそうした上司の悪いところを全て真似する(中には反面教師にするものもいるが)。自制心とは非常に重要な要素である事は、本書を読むと痛いほど伝わってくる。
    また、企業においても目的達成のために必要なのは、下手な愛社精神では無く達成に十分なスキルであると説く。現状・状況に応じた今必要なスキルが何かを踏まえた教育の重要性を改めて感じる。愛国心(愛社精神)よりも、責任感・使命感を重視し、それが自衛隊という組織に欠けてしまったら、それは単なる「暴力装置」と化してしまう。職場でも信頼できるのは、そうした責任感・使命感のある人だし、私の部下にもいるが、自分の持ち場に誠実に寡黙にこつこつと自分の役割を果たす人こそ大切な人材だ。彼はほとんど喋らないが、資料作りや面倒な業務処理も誰よりも遅くまで独り残って片付けて行く。文句も言わずに。この責任感は毎日誠実に仕事して少しずつ身につけるしかないと思う。
    また、目的達成に必要な士気についても触れる。士気を維持するには終わりの見える仕事ばかりさせてはダメで、実践的に終わりの見えない訓練を続ける事で持続力をつけさせ、モチベーションを落とさない組織作りが必要だと感じた。
    そして、点(最も細かい仕事の単位)が見えなければ線が引けない(仕事と仕事の関連性)、線が引けない者に面は作れない(全体の整合性)。この言葉は正に自分が管理する組織を見て大いに感じる。担当者は基本的には自分の仕事に閉じこもる。その中から時間をかけて目標地点に向かい、他人の仕事と合流して線を成す。最終的にそれらを束ね揚げ面にし、更に効果を底上げして立方体にする。私もよくやってしまう、点をあれこれ細かく指示する必要はなく部下の仕事に任せる(多少の誤りは容認する)様にしないと前述の立方体を作れる人材が育たない。
    また組織のメンバーには末端まで考えさせる事が重要だ。組織全体が思考できないと目的を早く達成することが出来ないし、思考を繰り返すことなく意識しなくてもできる状態には成らない。
    チームのリーダー職にはよく言うが、これも全員に徹底したい一回級上位の考え方に立つ思考力。上位者の立場で考えるから、中身の濃い補佐ができるようになる。要は全て教育=人づくりだと感じる。
    途中羽生善治さんの言葉を紹介するが、ミスをして困難な局面に陥っても反省しない。打開に向けて瞬時に次の判断、手を打たないといけない。これにはトラブルに陥ってすぐに原因追及したがる部下の顔が思い浮かぶ。そんなの後回しで、今の業務を再開・継続させることが最優先なのだ。この辺りは将棋だけに限らず、自衛隊でも民間企業でも全く同じことである。反省は全てが終わってからで、戦いの最中ではない。
    他にも沢山の言葉・教訓に溢れる本書は、組織を統率する管理職におすすめしたい。順風に至っては細心に、逆風に至っては大胆に、常に地球儀を置いて仕事する山本五十六など、私も自身の仕事を振り返りながら、反省・改善すべき点と促進すべき点を頭の中で充分整理することが出来た。

  • 自衛官として,指揮官として、考え方の参考になります。

  • 元海上自衛隊の幹部で、インド洋での自衛隊の活動に参加し、東日本大震災では原発の処理にあたった著者が、指揮官のありかたを語った1冊。印象に残ったのは、ピンチになったとき、乗組員はみな、艦長の顔を見る、という言葉。リーダーは最後まで責任を持たねばならない。統率が取れていて、しかもコミュニケーションが円滑な組織をいかにして作るかについて、学ぶところの多い1冊でした。

  • 180120 中央図書館
    海将まで進んだ元海上自衛官による熱血で規律正しい組織統率の心得。部下とのコミュニケーション、静謐で澄明な意思決定の態勢を保てるよう、心身を鍛えろ、というようなところ。

  • インド洋給油活動や東日本大震災に指揮官として関わった海自の元将官による組織論・リーダーシップ論。
    社会に出てまだ短いけど、職場の上司や、入社後の教育とか思い浮かべながら、頷きながら読んだ。実際に管理職になったらもっと理解できるんだろうな。
    ここ最近、集団、組織、フォロワーシップやリーダーシップについて考えざるを得ない環境にいたのでタイムリーな内容だった。
    ここ最近リーダーシップをとるという経験で苦しんだことや、指導を受けたこと、そういう自分の経験や、それについて自分が思ったことと、根本で通じる面がある内容もあって、非常に参考になった。

  • 感想未記入、以下引用
    ●人の上に立つ者は、部下の多少の誤りや危なっかしさを許容する(飲み込む)懐の深さ、即ち包容力が求められる。若い人や経験の浅い人が、明らかに遠回りしていることが分かっていても、敢えてそれを見守ることが必要だろう。成功から得る教訓は少ないが、失敗から学ぶことは多々ある。失敗は将来の成功に向けた教訓の宝庫だ。そうやって我々は戦闘員として、人間として成長していくのだ思う。上級者は、若い人たちの成長を摘んではいけない
    ●自分以外の人と時間を共有する、他人の時間を占有するということは、実に大変なことである。時間はお金であることを、想起すべきである。
    ●その規則や習慣、あるいは取り決めが、本当に組織の維持・向上に寄与するかどうかを、真剣に吟味しなければならない。その際には、策定した時点まで遡らなければならに。現在の環境に合わないという理由だけで、軽々と処理していくと、後日、手痛いしっぺ返しくらうことになる。(略)過去のものを切る時に留意すべきことは、まず、そもそも今やっていることの当初の目的、趣旨はどこにあったのか、を考えてみる必要がある。その目的がしっかりしたものであれば、やり方を変えて、微修正やあるいは大修正して生かすこともある。ときには、今陳腐化しているように見えても、長い目で見ると必ずしも古くはなっていなかったことに気づくこともある。
    ●人間の性格につける薬はない。治療の仕方がないのだ。自分の悪い性格をどのようにして、改善あるいはカバーしていくのか。その答えは、人生のさまざまな過程において、その都度自分に厳しく接すること。自分は斯様に詰めが甘い性格だと、常に自分自身に言い聞かせ、だからこそさら慎重に物事を運ばなければならない、と。ひとつずつ、丁寧に目の前の事案を解決し処理していく。それしかないと思う。

  • 2015年12月新着

  • テロ対策特別措置法により海上自衛隊がインド洋に派遣された際の護衛艦隊指揮官であった著者が述べる指揮官の在り方、組織の在り方についての本。ご自身の経験を踏まえ具体的な事例を挙げておられますが、それらを集約するのは「あとがき」にある次の一節かと思います。以下抜粋「指揮官の心得であり、自らを戒めることば 1.誰よりも耐え、2.誰よりも忍び、3.誰よりも努力し、4.誰よりも心を砕き、5.誰よりも求めない」
    本書で挙げられている著者の経験の中でも、印象的なのは上記のインド洋派遣の際のものでした。以下抜粋「我々が直接戦闘に参加することはまずないだろう。しかし、その余波を受けることは大いにあり得る。『敵の友は敵』と判断するだろう。従って、テロによる攻撃を最も恐れた」、「(インド洋派遣で)私がやるべきことは大きく二つ。一つは当然のことながら、補給支援活動という任務の完遂。そしてもう一つは連れて行った隊員全員を、とにかく生きたまま帰国させること」
    自衛隊が派遣された地域は紛れもない戦場であったのだと改めて感じました。
    災害などの有事の際に最も頼られる存在の一つである自衛隊。こういう心意気の人たちによって維持運営されているんですね。

  • 戦艦大和の最後 軍人の真価は戦場でしかわからない

    いざとなったら乗員は館長の顔をみる

    指揮官には、危機に直面した時、断固として決断する判断力と、その意志を遂行する実行力が求められる

    論語 人しらずしてうらみず 自分が認められないからといって他人を恨んではいけない

    軍隊というものは、常に戦争に備えて準備し訓練されるべきものであって、いかなる組織とも融和してはならない

    羽生善治 ミスをして困難な局面に陥る。しかし反省はしない。瞬時に、打開に向けて集中する

    順風においては細心に、逆風に至っては大胆に

    樋端久 利雄 昭和の秋山真之 山本機に同乗

  • 指揮官とは何か。周りを引っ張るリーダシップで必要とされるものは何か、本書を読めばわかる。

    特に軍事関係や治安関係の人が語るリーダーシップ論は、長い歴史や目的(組織が崩壊することは即、死に繋がる)から照らし合わせても非常に信頼できる。

    今後も何回も目を通すことになると思う。おすすめ。

  • 海自の高級幹部が指揮官として必要なことは何かって話。将官でも若い頃思ってたことは他の士官と変わらないもんだなと。昇任だとか人事に関することも書いてる。

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著者プロフィール

昭和27年、香川県大川郡大川村(現さぬき市)生まれ。昭和46年香川県立三本松高等学校卒業(22回生)。昭和50年防衛大学校卒業(第19期生)。卒業後、海上自衛隊に入隊、在ノルウェー日本国大使館防衛駐在官、護衛艦隊司令部幕僚長、第1護衛隊群司令、海上幕僚監部人事教育部長、護衛艦隊司令官、統合幕僚副長、横須賀地方総監などを経て平成23年8月退官。元海将。現在は、執筆・講演活動を行っている。著書に『武人の本懐―東日本大震災における海上自衛隊の活動記録』(講談社、平成23年)、『指揮官の条件』(講談社現代新書、平成27年)がある。

「2017年 『ソロモンに散った聯合艦隊参謀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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