捨てられる銀行 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062883696

作品紹介・あらすじ

森信親・金融庁長官が剛腕を揮う、金融改革とは何か。会議の一新。銀行を飛び越えて、取引相手の中小企業に銀行について徹底ヒアリング。金融検査マニュアルを実質廃止して、金融機関の事業性を評価する新基準。始まったばかりの改革の行く末と狙いを明らかにする。
森信親、金融庁長官の素顔。森長官が地銀から異例の一本釣りをして改革の担い手として抜擢した日下智晴氏の正体。地域金融のトップランナー、多胡秀人氏の信条。
金融検査マニュアルや信用保証協会の存在で、顧客を見なくなり、目利き力を失った金融マンの問題とは。ノルマ達成がメインだった人事評価を一変せよ!
稚内信金、北國銀行、きらやか銀行、北都銀行など、改革をいち早く始め成果を上げた地域金融のケーススタディ。

感想・レビュー・書評

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  • 卒業論文の資料の1つとして読んだ文庫本。地方銀行の現状とその原因が書かれている本。その後で,テーマを変えてしまったのでこの本を活用する機会はなくなってしまったが,純粋に教養本として面白かった。元々,銀行志望の人間だったので硬い文章ではあるもののなんとか最後まで読むことが出来た。ちょっと専門用語も目立つので基本的な単語を一通り学んでから,読むことをおすすめします。

  • 金融庁の方策と影響は素人には判りにくい。高度に専門的であるのと影響範囲が捉え難いからであろう。そうした面で本書は難解ではあるものの、うまく筋道立てて概説されているといえる。金融行政の内幕は通信社や新聞社が得意とするところだ。

    まずは批判から。『捨てられる銀行』の題名は言い過ぎだ。地域金融の取組強化は長官交代による方針変更である。森信親金融庁長官の礼賛は提灯記事に見える。かつそうした地域金融を焚き付け体力を奪ったのは他ならぬ金融庁であったのではないか。金融機関に対して検査と指導という強権を持って言いなりにしておきながら、今後は主体的な地域金融連携を尊重する、とはこれ如何に。「金融検査マニュアル」と「信用保証制度」の功罪や意義については総括しているものの、金融庁の行政上の問題点や歴代長官の失敗もしっかり指摘すべきだ。

    良い点。元広島銀行の日下智晴氏、元東京銀行の多胡秀人氏、両名の地域金融に対する問題意識と使命感の件は良かった。テーマに対する著者の熱量が取材の深みと文章を通して伝わってくる。また「金融検査マニュアル」と「信用保証制度」についても、新聞や雑誌では現時点から見た批判が主だが、本書では当時の施策必要性と制度的欠陥、期待効果との乖離、そして現時点での経済環境とのミスマッチが丁寧に解説されている点は良い。

    純粋なノンフィクションではなく多少金融庁寄りではなるものの、いまの金融行政のあり方と転換を勉強するにはよい読み物である。

  • 金融庁森長官を主軸に現在の金融行政と地域金融機関について記しています。一貫して、貸し出し変調、担保保証主義を批判しています。また、金融業界が平時に移行している中で、金融検査マニュアルに依拠した検査体制を批判しています。

    論じられていることはわかるのですが、金融庁をヨイショしすぎていて、読んでいて気持ち悪いです。そもそも、ジャーナリストが行政施策を無批判に礼賛するのはいかがかと思います。

    地銀が顧客の方を見てビジネスをするのは当然です。ですが、不良債権処理が片付いてすることがなくなった金融庁が指導することでもなく、民間が創意工夫をすればいいだけです。それよりも、平時に移行しているので、金融庁の規模削減でも提言した方がいいように思います。

  • これも数年前の話題の本。

    勝手に、経済学者が銀行業界の行き詰まりの原因と現状を分析した本だと思っていた。
    が、著者は、経済、特に金融庁を専門とする記者。
    本書は、近年の金融庁の方針転換をドキュメンタリーとしてまとめたものだった。

    少子化によるマーケットの縮小で、地銀どころかメガバンクさえ、最近行員の削減やら、統廃合で喧しい。
    バブルの不良債権処理を、金融庁指導のもと、マニュアル化して進めてきた結果、地銀が地方経済を支える金融の役割を果たさなくなった。
    (この辺り、半沢直樹で陰湿な金融庁監査の話が頭をかすめる。あれはメガバンクという設定だったけど。)
    目利き力も、コンサル能力も失った。
    いわば、失政だ。
    それを立て直そうとした金融庁の関係者の奮闘が描かれる。

    ただ、彼らの理想がうまくいかなかったくだりには、ど素人ながら、やっぱりね、と思ってしまう。
    中小企業に密着して取引関係を築くリレーションシップ・バンキングを金融庁は解禁する。
    アイディアも技術もあるのに資金がなくて潰れていく地方の優良中小企業が救える、と見込んでの改訂だ。
    ところが、実際に動いたのは余力のあるメガバンクだけ。
    筆者は、地銀の側に原因を求める。
    勿論、しっかりした取材に基づき、地銀の問題点を指摘するのだが、金融庁の施策の側に問題はないのか?と素朴に思ってしまう。
    理屈ではそうかもしれないが、地銀の機能不全は起こるべくして起きていて、それに対するアプローチがかけている理想論だったのではないか?なんて思ってしまうのだが。

  • 地方の零細企業の一経営者として地元金融機関の『雨の時に傘を取り上げる』と言うのは身に染みて感じていた。全て保証協会付でリスクを取らないわ、貸す事のみで経営改善の提案なんぞゼロ、どれだけ口惜しい思いしたかと。確かにその当時は金融庁の指示で不良債権処理が何よりも優先であったが、ただ、今ではもう不良債権処理は銀行の課題でもない中、未だに当時と同じ事をしているところが多数、そう、もう今の金融機関には考える力がないのだと。
    森金融長官のこの改革によってどれだけ地銀が変わるかが見もの。実際に北國銀行のように営業ノルマを廃止して徹底して顧客に寄り添う事で業績を上げている銀行もある。
    と言う事で弊社メインバンクの某地銀さん、今後とも宜しくお願い致します(・∀・)

  • 2015年に金融庁長官に就任した森信親氏、そして民間から登用した2人の懐刀、日下氏と多胡氏。この3人の人間物語である第2章。そして、地方信金・地方銀行の例が紹介される第4章。この2章だけ読めば十分。まだ途についたばかりの森金融庁政策。そんな時期に、何故本書が発行されたのか?

  • 森金融庁長官が就任以来の金融行政の転換、地域金融機関の課題がコンパクトにまとめられている良書。
    金融庁だけを見て、健全性の維持と収益の拡大をひたすら唱える硬直的な経営。疲弊する地方経済。本書は地域金融機関の問題をこれでもかとつきつける。
    それゆえ行政の転換に至ったわけだか、しかし、銀行の経営戦略にまで踏み込む金融行政って、何なんだろう?ただの過剰介入?自ら考えることのできない金融機関はそもそもまともな企業と言えるのか?

  • 2015年7月に就任した森金融庁長官が進める地銀に対する政策を新聞記者がレポート。森長官は従来の金融検査マニュアルに基づく形式的な検査手法を批判する一方で、地域金融機関に対してはリレバンを重視した対応をとるべきだと説く。単なる低金利を売り物とする営業戦略だけでは、これからの銀行は生き残れない。経営者と同じ目線で利益改善政策を打ち出せる金融機関を目指すべきだとの金融庁の方針転換がよく理解できた。第4章新しい4つのビジネスモデル(稚内信用金庫事例、北國銀行事例、きらやか銀行事例、北都銀行事例)は筆者の取材成果が読み取れた。

  • やや、太鼓持ちな感はありますが、面白く読みました。
    金融庁って、できた経緯からなのか、豪快な、本当の意味で「物言う」官僚がいて、活気のあるイメージ。
    日銀の金融政策が、アクセルを踏み抜いてるような状況で、それでも、地方の中小企業にカネがまわってないとしたら、やっぱり、地銀の体質を変えないといかんという問題意識は、まさにその通り。
    ここで描かれる銀行像って、良くも悪くも、池井戸潤さんの小説の世界そのままです。半沢直樹とかで思いっきりカリカチュアライズされて描かれた、銀行の体質や、あの検査官も、強ちドラマの中だけの話じゃないと思うと、背筋に冷たいものが。

  • 地方銀行に地域金融の責任を問うているが,むしろ地方銀行の重要な顧客であるはずの中小企業をつぶして何とも思わない銀行の感覚を問題とすべきでは?その結果,地元に取引先がなくなり,広域での合併・業務提携を模索しなければならなくなってきたのでは?
    実際の地方銀行の活躍内容はおもしろい。
    細かな部分に読みにくい,理解しにくい部分もあるが,全体としては,とても勉強になった。

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著者プロフィール

はしもと たくのり
共同通信編集委員。1975年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2006年共同通信社入社。経済部記者として流通、証券、大手銀行、金融庁を担当。09年から2年間、広島支局に勤務。金融を軸足に幅広い経済ニュースを追う。15年から2度目の金融庁担当。16年から資産運用業界も担当し、金融を中心に取材。『捨てられる銀行』シリーズ(講談社現代新書)は累計30万部を突破。本作はその第4弾となる。


「2020年 『捨てられる銀行4 消えた銀行員 地域金融変革運動体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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