- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062883726
作品紹介・あらすじ
不朽の名著×現代の「知の巨人」による100年目のコラボレーション!
佐藤優が「貧困」の正体に挑む!
1916年の発表から1世紀――。
日本の志ある若者たちが夢中になって読み耽った古典が
わかりやすい、読みやすい現代語訳でよみがえる。
現代の若者にこそ読ませたい一冊!
「世間にはいまだに一種の誤解があって、『働かないと貧乏するぞという制度にしておかないと、人間はとにかく怠けてしかたがない。だから、貧乏は人間を働かせるために必要なものだ』というような議論があります。しかし、少なくとも今日の西洋における貧乏は、決してそういう性質のものではありません。いくら働いても貧乏から逃れることができない、『絶望的な貧乏』なのです」――本文より
なぜ豊かな国に多数の「貧乏人」がいるのか?
なぜ働いても貧乏から脱出できないのか?
トランプ、サンダース旋風の正体は?
パナマ文書が語る資本主義の現実とは?
人間関係の商品化とは?
資本主義の矛盾を解決するための処方箋とは?
絶望的な貧困が日本を、世界を覆う現在、「貧困」と格闘した経済学者の思考を現代の「知の巨人」が引き継ぐ。渾身の46ページ解説付き。
感想・レビュー・書評
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河上肇 「 貧乏物語 」 佐藤優 (現代語訳 解説)
貧乏を定義し、貧困対策を提言した本。佐藤優氏の解説が秀逸で 現在の貧困問題とリンクしやすい。貧困対策としては、マルクス主義同様「金持ちの贅沢禁止」など資本主義抑制の論調
性善説であり 実効性としては 疑問だが、貧困の一面を理解する上では 良書。租税論に繋がる考え方もある。
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貧乏人とは
1・他の誰かよりも貧乏な人
2・生活保護などの公的扶助を受けている人
3・身体を自然に発達させ維持するのに必要なものだけをギリギリまかなえる(貧乏線上にいる)もしくはそれすらも十分に得られない人(貧乏線以下の人)
〜なぜ多数の人が貧乏しているか
生活必需品の生産量が足りないから。
┗ 一部の富裕層と多数の貧乏人が存在する。富裕層は米や下駄を買ってもまだお金が余っており、贅沢品を求める。これは「購買力を伴った需要」であるため、購買力の低い貧乏人の需要(生活必需品が欲しいという需要)は追いやられ、贅沢品が供給され、儲けにならない生活必需品の供給は欠乏する。
┗貧乏な人は生活必需品を購入する資力がないことによってますます貧乏に苦しむ。
〜どうすれば貧乏を根治できるか
1・裕福な人々が自ら進んで一切の贅沢をやめる(贅沢の抑制)
2・なんらかの方法で貧富のひどい格差を縮小する(所得再分配)
3・各種の生産事業を民間人の金儲けの手段にするのではなく、政府が自ら行う(産業の国有化)
→河上の意見は最終的に2,3を否定し、1へ。
〜佐藤優さんの考える貧乏の根治
1・子どもの貧困対策として、教育の原則無償化
┗富裕層も含む。消費税で確保できるはず。
2・河上も唱える、自覚した富裕層による再配分
┗貧困層への贈与。例えばフードバンクなど。
3・友人同士の「相互扶助」
┗お互いに助け合うことのできる友人を作っておこう。そして、食事や酒の時間をもっと楽しもう
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こんな感じの内容だった。
なんだそんなことか、と思えるかもしれないけど、改めて佐藤さんの深い知識に裏付けられた口から出る「相互扶助」の考え方は響いた。
少し前まで、自助努力のみでやってけるのがカッコいい、と思ってた私だけど、自分の実力的にもしんどいと気づいた。
また、ますます少子高齢化する日本。地域ぐるみで互いを見守りあえる温かさが、貧困の恐怖を減らすと思う。
家族のように構ってくれる我が社は、単なる労働者にと資本家の間柄を超えた温かい組織。
感謝しつつ、しがみつかずに働きたい。
それから、特別富裕層かどうかにかかわらず、寄付文化が日本社会により根付くといいな、と思う。 -
人間社会が抱える諸問題、特に経済に起因する問題解決に対するアプローチの仕方、考え方、このことについて、いくら時を経ようと、先人の英知を検証し、「知の継承」ということは重要なことであると思う。
佐藤優氏のそのような考え方の下、発刊されたのが。河上肇氏の書いた「貧乏物語」の現代語訳版である。
経済学者として10数年のキャリアで書かれた当該書籍、これはこれで、情報発信するものであり、当時の時代状況で発信された内容を佐藤氏が最後に論評を加えている。
その中で、良質な小説等の紹介があり、早速、2冊を読みたいというカテゴリーにノミネートしておいた。
読書は永遠です(笑)。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685821 -
▼memo------------------------------------------------------------
・ラスキン:「財産などない、あるのは人生だけだ」。財産というものは、人生の目的-「道を聞く」という人生唯一のも目的、ただその目的をはたすための手段としてのみ、意義があるに過ぎない。貧乏が退治されることを願うのも、貧乏は人が「道を聞く」ことの妨げとなるという、ただその理由からだけなのです。
<貧乏の3つの意味>
・第一の貧乏:ただ金持ちの反対
・第二の貧乏:生活に他人の助けを受ける
・第三の貧乏:生活に必要な物を得られていない -
社会経済学入門のレポート課題のために読んだ。原文の難解な文章を読みやすく工夫して現代語訳されており、非常に読みやすかった。日本史でも登場した河上肇の初期の経済学的思想に触れることができたのも良かった。解説の章で述べられていた訳者である佐藤優氏の論評を完全には受け入れられなかったが、概して良書であると思う。
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資本主義社会で当然に発生する、多数の貧困の原因に迫った良書。大正時代の新聞連載の貧困解明は現代語訳でさらに読み易い。
著者の結論は、富裕層の贅沢禁止という良心に訴えかける施策をチョイスしている。国家の資本への介入による富の再分配でなく、江戸時代の倹約令を彷彿とさせる処方は却って目新しい。
戦前とはいえ、著者がその後日本共産党へ入党するとは、本書上では信じ難い。外部(植民地)からの富の奪取については触れてもいないのだ。 -
恥ずかしながら、『貧乏物語』というタイトルから大正期の貧困のルポルタージュのようなものをイメージしていたが、全く違った。一般新聞読者に向けた経済学の啓蒙書。しかも経済学の原理と倫理にしぼり、当時の読者になじみがあったであろう儒学の名句なども織り込みながら、当時の西欧の経済状況とこれからの日本経済のあり方について、わかりやすく説いている。ドイツ革命およびロシア革命の直前に書かれた文で、ドイツやイギリスの総力戦体制を社会主義(「経済的な国家主義」)への先駆として評価しており興味深い。現代の視点からながめれば、つっこみどころはいろいろあるが、それを差し引いても論の展開がおもしろい。現代の貧困問題を考えるにあたっても、ユニークな切り口を学べるような気がする。