井伊直虎 女領主・山の民・悪党 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062883948

感想・レビュー・書評

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  • 今さらながら井伊直虎のことをあまり知らないなと思い、手に取った1冊。
    前半で直虎の人生を概要し、後半で作者なりの直虎に対する見解を述べている。
    個人的見解で申し訳ない+大河ドラマの方を見ていないので恐縮なのですが、よくぞ大河に出来たなというのが率直な感想でした。これで大河??いや、もちろん作者の「山の民」統率としての直虎には納得なんですが、
    大河にするにはなかなか要素難しかっただろうなと…。この本によれば、領主をやってたのってほんの僅かな時期だけだしね。それもなかなか意外。

    井伊がその後徳川方になったばかりに井伊家がよく描かれがちな中、最初のうちは井伊家も家督争いやらでドタバタで、それに巻き込まれつつ、今川家に揉まれつつであったという見解は良かったと思う。
    そりゃどこの家もそんな最初から上手くいくはずないと私も思ってるので(笑)

  • 今更ながら2017年の大河ドラマ(といっても12月現在、もうすぐ終わってしまうけど)井伊直虎について現実世界ではどんな感じの人だったのか気になったので読んでみた。この本は1、2章立てになっていて、1章では井伊直虎の生涯、2章ではタイトルにもある山の民や悪党などを絡めた著者の持論が展開されていた。
    感想としては、そもそも井伊直虎についてはほとんど資料が残っていないという事を知って、そんな中1年間のスパンの大河ドラマになっていたことに驚いた。1章では現実世界での直虎の生涯や井伊家について知る事が出来て大河ドラマよりかなり残酷というかこれが戦国時代なんだなって改めて思わせる事ばかりだった。特に但馬関連は全然違うからけっこうショックを受ける人も多そう。2章では資料がほとんど無い中でも、著者の持論が展開されていて直虎は山の民だったり悪党だったという考えはなるほどと思った。大河を観ていても確かに山の中に隠し里があったり、木を切る仕事を井伊家関係者が頼まれたりで、山の民感はちょっと納得できた。著者の持論に対する熱意が思ったよりすごくて何でかなと思ったら、出身地が浜松だから井伊家についての思いも強いのかと納得した。あと、文章の中で例えとしてもののけ姫が出てきて、井伊直虎=エボシ御前や、井伊谷=たたら場みたいな感じでもののけ姫の世界感に当時の井伊家周辺を当てはめてたのが面白かったし、そのおかげで映像も想像出来て話がちょっとだけ理解しやすくはなった。

  • 大河ドラマにあわせて、「井伊直虎」という人物を学ぶ。筆者は地元出身の若手の研究者。

    史料をもとに直虎の生涯を追ったあと、井伊氏は「山の民」「悪党」であるとの論を展開している。大きな視点で「直虎」を、歴史の中でどう位置付けようかとする試みであり、ただの人物伝になっていないところがおもしろい。

    筆者も言うように「仮説」が多く「実証的でない」と思われる部分も確かにあるが、持っていき方の視点は興味深く、ここからまた、遠江井伊氏の歴史が明らかになっていくと良いと思う。

  • 個人的に井伊谷や気賀に縁があり、高殿円の「剣と紅」も以前読んだ。

    本書に書かれた次郎法師=直虎の曽祖父の井伊直平から始まりその4代後の直政までの井伊一族の盛衰は、大大名に翻弄される地方豪族としては典型的なものだろうし、直虎が大河ドラマの主人公にならなければ本書は書かれなかったかもしれない(少なくとも書名は違っただろう)。

    著者が書きたかったのはむしろ後半部分の、山の民だった井伊一族が都会民である今川家や徳川家と交わることにより都会民に同化していった、という仮説だろう。
    確かに井伊谷は少し奥に行けば鬱蒼とした山岳地帯だし、500年前は更にそうだっただろう。
    当時の井伊谷にもののけ姫の世界が広がっていたと想像するのも悪くない。

  • 井伊氏は、鉄を求めて遠江の山間部に勢力を誇っていた「山の民」だった。著者によれば、井伊直虎の世界は「もののけ姫」の世界そのものだったのではないか、とのこと。本書の視点は、網野史観に通じる。

著者プロフィール

夏目 琢史(ナツメ タクミ)
国士館大学文学部史学地理学科准教授。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了、博士(社会学)。専門は日本近世史。主要著書に、 『アジールの日本史』(同成社、2009年)、『「名著」から読み解く日本社会史』(ミネルヴァ書房、2018年)、『江戸の終活』(光文社新書、2019年)など。

「2020年 『日本史概説 知る・出会う・考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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