ヒットの崩壊 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 502
レビュー : 52
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062883993

作品紹介・あらすじ

激変する音楽業界、「国民的ヒット曲」はもう生まれないのか?

●宇多田ヒカルの登場はJ-POPをどう変えたのか?
●小室哲哉はどのように「ヒット」を生み出してきたのか?
●いきものがかり・水野良樹が語る「ヒットの本質」とは?
●オリコンは「AKB商法」をどう受け止めているのか?
●なぜ「超大型音楽番組」が急増したのか?
●「スポティファイ」日本上陸は何を変えるのか?
●なぜBABYMETALは世界を熱狂させたのか?
●SMAP解散発表で広がった購買運動の意味とは?

「ヒット」という得体の知れない現象から、エンタメとカルチャー「激動の時代」の一大潮流を解き明かす。

テレビが変わる、ライブが変わる、ビジネスが変わる。
業界を一変させた新しい「ヒットの方程式」とは…?

【目次】
■第一章 ヒットなき時代の音楽の行方
「音楽不況」は本当か?/10年代の前提条件/AKB48とSNSの原理/「共通体験」がキーを握るなど

■第二章 ヒットチャートに何が起こったか
「音楽は特典に勝てない」/オリコンの未来像/ビルボードが「複合チャート」にこだわる理由/カラオケから見える10年代の流行歌/ヒット曲が映し出す「分断」など

■第三章 変わるテレビと音楽の関係
東日本大震災が変えたテレビと音楽の歴史/「入場規制」が人気のバロメーター/「メディアの王様」ではなくなった/『ASAYAN』以降の空白など

■第四章 ライブ市場は拡大を続ける
「聴く」から「参加する」へ/「みんなで踊る」がブームになった時代/スペクタクル化する大規模ワンマンライブ/メディアアーティストがライブの未来を作るなど

■第五章 J-POPの可能性──輸入から輸出へ
はっぴいえんどのイノベーション/洋楽に憧れない世代の登場/なぜカバーブームが起こったか/「過圧縮ポップ」の誕生/中田ヤスタカが作る次の「東京」など

■第六章 音楽の未来、ヒットの未来
音楽を“売らない”新世代のスター/ロングテールとモンスターヘッド/小室哲哉の見出す「音楽の未来」/unBORDEの挑戦/水野良樹が語る「ヒットの本質」/音楽シーンの未来など

感想・レビュー・書評

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  • 2019年4月10日読了。「CDが売れなくなった」と言われて久しい中、音楽は聴かれなくなっているのか?今の人々はどう音楽を楽しんでいるのか?そして「ヒット」とは何か?などについて小室哲哉・水野良樹といったヒットメーカーらへのインタビューやチャートデータなどを参照しつつ論考する本。「CDが売れなくなった」は事実だが、Youtubeやストリーミングアプリにより音楽を聴く人はずっと増えており、夏フェスが多くの参加者を集めTV番組もフェス形式を取り入れるなど人々の「音楽を聴く機会」が増えるよう時代もすでに変わっている、ということは分かってはいたことだが、改めて腑に落ちた。しかし、「誰もが口ずさめるヒット曲を作らないと、音楽が痩せてしまう」という危機感はどこからくるものだろう?みんながそれぞれの趣味で音楽を聞き、ばらばらな音楽がそこら中に存在する。そんな世界ではいけないのだろうか?

  •  こけおどし的なタイトルだが、要するに00年代を経て10年代に至った日本のポップ音楽産業においては、かつては有効だったような、CMやドラマとタイアップしてCDの販売数を上げ、ランキングにおいて上位に食い込むことによって楽曲(あるいはCDタイトル)が「ヒットする」という図式が、もはや無効になってしまった、ということである。だから、正しくは「ヒットというものがなくなった」ということではない。この書名は正しくないのだ。
     90年代にはCDは確かによく売れたが、世界的に見てそれはもはや売れなくなった。リスナーは音楽を「所有する」のではなく、「アクセスする」ようになった。これはもちろん、インターネット、ストリーミングサービス、スマートフォンなどのテクノロジーの波が社会形態を大きく変容・再生成しているという事実によるだろう。
     CDなどの楽曲タイトル販売ははっきりと低調になったが、実はライブのほうが利益を増加させている。従ってミュージシャンの活動も、ライブの方がメインになってくる。音楽産業はそちらにシフトするのが必然である。
     本書によると、J-POPの世界では、最近は明確に「誰もが知っているヒット曲」は出てこなくなり、CDランキング(オリコン)はまったく無効で、カラオケで歌われる曲を統計すると、長く愛される楽曲のすがたが見えてくる、ということだ。
     しかし、やはり「ヒット曲はなくなった」というのは誤っている。
     著者も最後の方で海外の状況に目を向けたときに気づくのだが、アメリカなどでは依然として明確な「ヒット曲」が存在する。それは、様々な要素を考慮した総合的なランキングを参照している。
     Spotifyのようなストリーミングサービスが台頭してきたにもかかわらず、日本での音楽状況が以前過去のCD販売中心の姿勢から切り替えられないのは、日本の企業というものが大半はトップダウンで、保守に凝り固まった世情を知らない年寄りが権力をふるい、いつまでたってもカローシを得意とするような、あまりにも愚かな企業だからだろう。
     このため各企業はストリーミングサービスに乗り気にならず、日本では、最新のヒット曲がほとんどストリーミングに登場しない。その一方ではCD離れは決定的な状態になっているのだから、若者はCDは買わず、 なんとかYouTube等で新曲に接しているようなのだ。
     このように、日本の音楽産業は相変わらず古くて劣悪であり、本書の著者のようには楽天的になれない。明らかに英米よりはずっと遅れている。産業界の認識主体が、時代に追いついていないのである。
     だから、日本では、音楽やる人々は、企業(レコード会社とか)なんぞ無視して、好きなことをやればいいと思う。
     本書について言うと、どうも著者自身の考えがまとまっておらず、論理の筋が通っていないように見えた。

  • 2019/9/6購入
    2019/9/18読了

  • 本文中で取り上げられていることは、出てから2年経った今でも納得感を感じる。CD不況のこと、特典商法のことなどを多面的に書いているのも好印象。
    最後の辺りでストリーミングサービスについて触れているが、これを読んでいたら興味が湧いてきた。何か試すのもありかと思う。

  • 洋楽を聞かなくなったら邦楽はお終い。海外で流行ったBABY METALやきゃりーぱみゅぱみゅもヘヴィーメタルやテクノの要素を採り入れてるからこそ外国人に受け入れられたのだと思う。異文化が交わって作られる洋楽には敵わない。ほぼ単一民族である日本は外国のモノマネをやめたらつまらなくなるだろう。

  • 概要
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    本書のタイトルにある「ヒット」とは、音楽のヒット曲のことを指す。かつては年間オリコンチャートの上位に入る曲は大半の日本人が知っている曲であったが、現在ではオリコンチャートの順位が世間での認知度と必ずしも相関を持たず、そもそも日本人の大半が知っているような曲自体が生まれにくくなっている。本書では、音楽のビジネスモデル、音楽とテレビの関係、オリコンチャートなどについて、かつてヒット曲が大量に生まれた時代と、「ヒットの崩壊」が起きている現代を対比しながら、今後の音楽の在り方について述べている。以下では、その中でも音楽以外のコンテンツ・ドメインにおいても今後重要になるであろうことが書かれていたという点で最も印象に残った、音楽とテレビの関係について紹介する。

    音楽とテレビの関係
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    かつてテレビは、ヒット曲を「生み出す」場であった。典型的な例は月9ドラマの主題歌で、日本国民の多くが月9ドラマを視聴し、主題歌のCDを購入し、オリコンチャートの上位にランキングするようなヒット曲となっていた。しかし現在ではテレビ番組の視聴率は軒並み低下し、ドラマやCMをきっかけにヒット曲が生み出されることは非常に稀になりつつある。全員が同じ曲を聴く時代が終わり、今では消費者は自分の好きなコミュニティに所属し、その中で人気の曲を聴くようになった。その背景には、SNSの普及や音楽フェスの盛況などがある。

    そのような時代において、テレビはヒット曲を「紹介する」場になっていると筆者は言う。音楽番組におけるアーティストの紹介の仕方がその顕著な例である。オリコンチャートでは上位に入っていない曲であっても、「音楽フェスで◯万人動員」や「ツイッターで◯万リツイート」のように、多様な尺度を持ち出してアーティストの人気ぶりを紹介している。これによって、普段は自分の好きなコミュニティに閉じこもっている人も、音楽番組を見ることで、他のコミュニティでどういったアーティストが人気なのかを客観的な尺度と共に知ることができる。

    上記を読んで、あるドメインにおいて各コミュニティで人気のコンテンツを客観的な指標と共に俯瞰できるプラットフォームの重要性を強く感じた。音楽に限らず、書籍、動画共有サイト上の動画、論文に至るまで、コンテンツは多様化が進み、消費者のコミュニティも細分化されている(論文の場合は消費者というより研究コミュニティという方が適切かもしれない)。多様化自体は歓迎されることだと思うが、自分が日頃馴染みのないコミュニティのこととなると、どういったコンテンツが人気なのか分からなかったり、人気があるコンテンツを知っても、なぜ人気なのか、どういう尺度で人気なのかが分かりづらかったりする。音楽におけるテレビのように、そういった情報を俯瞰できるプラットフォームがあることで、ドメインの全体的な潮流を把握できたり、消費者の興味を広げたりできるというメリットがある。また、どういった評価尺度があるのかを明らかにすることで、クリエータにとっても、コンテンツを発信するアプローチを広げることにつながるかもしれない。

    まとめ
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    90年代のJ-POPのようなヒットの仕方をする曲はほとんど無くなっているが、音楽そのものは今も多くの人に様々な形で受け入れられており、ヒットの形が変わったに過ぎない、というのが本書の趣旨である。CDは売れなくなったし、オリコンチャートはかつてのように機能しなくなったし、音楽コンテンツはもう終わった、と思う人にとって本書は、その認識を改めるのに有用だと思う。

  • 元ロキノンライターによる日本の音楽市場およびリスナーに関する分析本。様々な業界人へのインタビューや書物からの引用を交えながら、70年代から2016年時点までの市場の変化を的確に検証していると思う。特定のジャンルやカテゴリに偏ることなく、歌謡曲・演歌からボカロ・アイドルまで幅広く押さえた上での考察なのが良い。「ヒット」とは何なのか、その正体を感じ取ることができるはず。音楽ビジネスに興味がある人はもちろん、上を目指して必死に頑張っているバンドマンや地下アイドルなどの若者たちにとっても有益な一冊になるだろう。

  •  過去10数年間に起きた音楽業界の構造転換を、音楽ジャーナリストの著者がさまざまな角度から浮き彫りにしていくルポルタージュ。
     
     「国民的ヒット曲」が生まれなくなり、CDが売れなくなった。そうした変化をふまえて『ヒットの崩壊』というタイトルになったのだろうが、タイトルから受ける印象よりもずっと明るい内容だ。
     CDが売れなくなったといっても、それは「音楽業界の崩壊」を意味せず、業界のありようが変わっただけであり、むしろ、いまの音楽業界は活気に満ちている――ということが書かれているからだ。

    〝なぜ「音楽は売れない」のに「バンドもアイドルも生き残る」時代になったのか?
     そこには、一つのシンプルな解答がある。
     音楽業界の構造が変わり、いまや音源よりも興行が重要な収益となっているから。つまり、CDよりもライブで稼ぐ時代になっているのだ。〟

     著者はそのような業界の大転換を、キーパーソンへのインタビューと、第一線の音楽ジャーナリストとしての経験・知識から、鮮やかに浮き彫りにしていく。文章は明晰で、論の進め方にもあいまいさがなく、大変わかりやすい本だ。
     私自身がヒット曲、ヒットチャートというものにほとんど興味がないせいもあって、目からウロコが落ちまくる内容であった。

  • 芳しいものではなかった 怒髪天 「デビューさいち最遅」で武道館公演を成功させた 相乗効果で凄い波及力を持っていたんで 刷り込み 曲の出口 人々の興味は細分化され、セグメント化されてきている。 共通体験 人間の対決 人々の耳目を集めるランキング対決 オリコンランキングは二重の意味でハッキングされたのだ。 宗教とは投票に近い 膾炙かいしゃ 「入場規制」が人気のバロメーター 凋落 相互扶助の精神が少しずつ薄らいできたのだ かつてあった「お茶の間」というイメージは解体された カルチャー全体に対する興味が細分化した アーキテクチャ=構造 バズる パパイヤ鈴木 ファレル・ウィリアムス 三代目 ランニングマン 10年代のすうせい趨勢だ 音楽は本来「コンテンツ」ではなく「コミュニケーション」だ 地殻変動はいつ頃にあったのか 招聘 かくせい隔世の感 ノスタルジーと諦念の入り混じったような文学的な情景を描き出していた 紙幅が足りないので大幅に端折るが イエローサブマリン音頭 メタルダンスユニット・ベイビーメタル 「カレーうどん」としての発想 上田剛士 ヒャダイン 中田ヤスタカ 変化をいと厭い「ガラパゴス化」していた スポティファイ アデル25 ロングテールとモンスターヘッドが二極化した時代 「右向け右」の数百人ではなくオンターゲットでしっかりと届けることを目指しています。 健全な「ミドルボディ」を作る ゲゲゲの女房 一番強いのは『歌う』ということ 島宇宙化 百花繚乱 旧態依然 新開誠 ローカルな多様性 201610柴那典

  • 新書の中には、特段の根拠もなく著者が思ったことだけが書かれている本もあるのだけれど、この本はきちんと取材すべきところに取材をした上で書かれているので、とても納得感がある。ヒットチャートという概念を持たしつつも、今となっては時代遅れとなっているオリコン、その昔のCD全盛時代の恩恵を教授した小室哲哉、2000年代の過渡期にスルッとでてきたいきものがかりなど、取材力って大事だなぁと思える良書。

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立。雑誌、ウェブ、モバイルなど各方面にて編集とライティングを担当し、音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は「AERA」「ナタリー」「CINRA.NET」「MUSICA」「リアルサウンド」「ミュージック・マガジン」「婦人公論」など。「cakes」と「フジテレビオンデマンド」にてダイノジ・大谷ノブ彦との対談「心のベストテン」連載中。著書に『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)がある。
ブログ「日々の音色とことば」 http://shiba710.hateblo.jp/
Twitter: @shiba710

「2016年 『ヒットの崩壊』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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