米中戦争 そのとき日本は (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062884006

作品紹介・あらすじ

【内容紹介】
中国軍は、あなどれない。日本は必ず巻き込まれる。はたして勝者は? 自衛隊元最高幹部が、「台湾」「南沙諸島」「尖閣」「南西諸島」の4つのシナリオを用いて米中戦争・日中紛争を正面から論じた初の本。日本はいま、この時代に何をなすべきなのか?

【編集担当より】
どちらかと言うと、自分は政治的にはセンターレフトだと思っているのですが、交戦規定もあやふやな状態で自衛隊が紛争地に派遣される可能性が高い現行の状態は絶対におかしいと感じています。そして、尖閣諸島を中国の艦船・航空機が侵犯するたびに、私は同じことを思うのです。「万が一、中国側が発砲してきたら海上保安庁や自衛隊はどうするんだろう」と――。「もしも、その時が来たら、日本はどうするのか」という視点や意識が、この国には圧倒的に足りないと思います(平和すぎるからなのかもしれませんが……)。

本書『米中戦争 そのとき日本は』は、「台湾」「南沙諸島」あるいは日本の「尖閣」や沖縄本島を含む「南西諸島」で米中・日中間で紛争(戦争)が勃発した際に「何が起こるのか」を、自衛隊元最高幹部が本格的に分析した初めての本となります。著者の渡部悦和氏は、かつて陸上自衛隊東部方面総監を務め、日本だけでなく米軍・中国軍の実情にも精通する、我が国を代表する軍事・戦略のエキスパートです。

「戦争が始まれば、米軍は中国軍のミサイル攻撃を避けるために、いったん日本から兵器や武器を引きあげる」「ミサイル戦・宇宙戦では中国軍と米軍の実力は互角」「中国の尖閣諸島への侵攻は『漁民』を装った準兵士集団が襲ってくる」などといった衝撃的な分析・可能性が本書では語られます。さらに、著者はこう警告します。「核戦争までエスカレートしない形で、米国と中国が“ふとしたきっかけ”から戦争状態に陥るケースは十分に想定されます。しかも、米国と中国が交戦状態に入れば、米軍基地を抱える日本は否応なく戦争に巻き込まれる可能性が高いのです」

専門用語はできるだけ少なくし、図表を約60枚使用することで、軍事にあまり興味がない方でもわかりやすく読める本を目指しました。戦争は真っ平御免ですが、これからのことを考えると、この問題、考えないわけにはいかないのではと思います。(HA)

感想・レビュー・書評

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  • 米軍機の中国沿海侵入に際し、中国が威嚇発射した空母キラー、グァムキラーのうち、内陸部から放たれた最新鋭のDF26は飛行距離なんと2500キロ。稚内-那覇間に相当します。本書(2016末上梓)では技術的に難度が高く実戦配備には時間を要するとありますが、もう実戦配備していたのですね。人工島やミサイル網を鑑みても、台湾上陸・南沙諸島・南西諸島などいずれの軍事シナリオでも、もはや米軍が中国軍を圧倒できそうにはありません。しかも、中国はサラミスライスと超限戦でアドバンテージを広げそうです。う〜ん、さすが、孫子の国。恐ろしい。

  • 数値の裏付けにより、実践的な現状解説と未来予測(2016年時点)
    台湾紛争,南沙諸島紛争及び尖閣諸島・南西諸島問題を想定した日中紛争を想定した、ランド研究所等の勝敗のシミレーション、備えに今日本のなすべきこと(自己規制の行き過ぎの回避、米との統合作戦能力の向上、過度の軍事アレルギーの払拭、中軍ミサイル攻撃への強靭性の向上、強靭なC41SR(超射程距離のキルチェーンの全段階コントロール)の構築、数か月以上の継戦能力の保持

  • 【読中感想】#無知は恥
    米も中(もちろん我が国も)も、国益を守るため、あらゆる手段を尽くしている。一見平和に見える世の中も、笑顔振りまく隣国も、必ず裏がある。なぜ?どうして?と考えて、理解に努める事は最低限必要な事ではないかと思います。

    軍事に関する専門用語が並んでいるため、内容は難解である、の一言に尽きます。他にも簡単にまとまった書籍やサイトもあるので、参考にしながら読み進める事をお勧めします。

  • 246頁にあるように、「左翼勢力のように平和、平和と唱えていれば平和が達成されるという考えは大きな間違いである」全くそのとおり。2年前の本だが、現在まで、中国の軍事的脅威は筆者の危惧通りに進んでいる。沖縄問題がメディアで語られるとき、なぜ中国の脅威と関連づけた説明がなされないのか。

  • 前半は読みにくくて辛かった。専門的な用語が多すぎて頭に入ってこない。 米中・日中軍事衝突のシミュレーションから話が具体的になってわかりやすくなる。 ネットに愛国心たっぷりな情報が氾濫する中、専門家による双方の軍事的長所短所の分析は参考になった。 民兵による尖閣占領シナリオはかなり蓋然性が高いと思われる。 日本は平和憲法理念に縛られた、非現実的な法的縛りが多すぎるという著者の指摘はもっともだと思う。これが日本の最大の脆弱性かもしれない。 最終章の「我が国が今やるべきこと」は示唆に富む。 ・左翼勢力のように「平和、平和」と唱えていれば平和が達成されるという考えは大きな間違えである。戦争を抑止するためには日本が強い存在であることが大前提となる。 ・「他国に脅威を与えない自衛力」にこだわれば抑止戦略は成立しない

  •  エア・シー・バトルについて、同新書の布施哲『米軍と人民解放軍』と内容はかなり重複する。ただこちらの方が新しい分、中国軍につき、2016年初以降の大改革も含めカバーしており、また筆者の経歴から戦術面の記述が詳細なほか、自衛隊との連携にも言及されている。
     中国軍の改革や米軍の構想について、日本語の新書レベルで詳しく紹介されているのが有益。米中戦争への米国の分析は、大規模戦争(エア・シー・バトル構想)、台湾及び南シナ海(ランド研究所報告書)の3つのシナリオが挙げられているが、いずれも単純に勝敗をつけてはいない。一方で陸海空サイバー宇宙の全てのドメインでの中国軍の急速な能力向上への米と筆者の危機感は随所で感じられる。
     他方で、筆者も書いているように、既にエア・シー・バトルはJAM-GCに変わっているのだから、この新構想自体の分析もあればよかった。また筆者の経歴から、意地悪な見方をすれば陸自びいきかなと思える箇所も複数あった。尖閣諸島を巡る日中グレーゾーン事態については(米中紛争を扱う本書の中でここが若干浮いてもいる)、治安出動や海上警備行動時の武器使用権限の記述が必ずしも正確ではないほか、方策として海保の能力強化と並列で自衛隊への領域警備任務の付与を挙げている。

  • 集団的自衛権のときに「日本が戦争に巻き込まれる」と騒いでいたが、どうやっても巻き込まれるときは巻き込まれるのはわかりきったことで、何が起きて、どのように準備するのが良いのかがわかりやすく書かれていてよかった。

  • 現ハーバード大学アジアセンター・シニアフェローであり、東方総監も務めた元陸将が、戦略・予算評価センター(CSBA)のエアシーバトル構想(ASB)とその発展系であるJAM-GC、ランド研究所による米中武力衝突のシミュレーションを元に、起こりうる米中戦争と、その時の日本の立場、果たすべき役割を説く。
    この方は、以前からweb上のニュースサイトや学会誌みたいなのでランド研究所のシミュレーションの分析とかをしてたので、その成果を本にしたということなのだろう。著作物としては本書が初めてのようだが、従来より論文等で同様のテーマを防衛関係者に問うてきたこともあり、その内容はかなり信頼の置けるものになっているだろう。
    ASBの基礎から、米中の戦力など、起こりうる米中武力衝突に関する基礎知識はこれを読めば間違いはないと断言出来る。
    エアシーバトル構想は、第一段階として中国の第一撃から始まる防勢作戦を想定しており、中国軍によるサイバー宇宙戦から始まり、続く米軍の前方展開勢力へのミサイル攻撃をいかに確実に察知するかが重要となる。この点、中国監視にも用いることができるという韓国THAAD配備はASB構想の一環とも言えるのだろう。
    ASBは当初の、中国本土に対する攻撃的なものから、懲罰的抑止と拒否的抑止のバランスを考慮したもの、さらにJAM-GCへと洗練されていき、ASBと一口に言っても当初構想と後のASBには違いもあることに注意が必要であると感じた。
    ASBにおいて日本は、初期段階において米軍が退避した後、再度来援するまで持ちこたえること、そして、その後の逆A2ADにおいて陸自を中心とした島嶼部の対艦、対空ミサイル戦力、海自による水中優勢が期待されている。陸自の対艦ミサイル戦力といったクロスドメインな形態が対中国という点では陸という単一領域(ドメイン)に拘る米陸軍と比しても先進的であり、ASBにも影響を与えたというのは初めて知った。似た内容の論文は以前フォーリンアフェアーズ誌で読んだことがあったが。
    米軍のASB、JAM-GCは、日本の防衛戦略、防衛政策にも大きな影響を及ぼす。米中衝突の際、初期段階で米軍は日本周辺から退避してしまうこと、また、米国は、中国本土侵攻による核戦争へのエスカレートを避け、かつ、中国に対するA2ADを実施するため、日本の南西諸島周辺を戦場とすること、一般の日本人にとっては耳を疑うこれらの事実は、実は米軍の戦略として公然と公開されている。このような構想への賛否はともあれ、日本の防衛を考える上で、必ず理解しておかなければならないものの一つであり、その点で本書は手軽に読めて取っ掛かりとしては最良といえる。

  • Yotsuya

  • 陸・海・空・宇宙・サイバーの5ドメイン

    台湾有事
    数で圧倒する中国の中距離ミサイルにより
    普天間、嘉手納基地は打撃を受ける。
    対艦巡航ミサイルを積んだ潜水艦により空母も同様。

    航空戦は中国本土の航空基地を攻撃することで改善はされるが、
    規模の差で米軍不利。

    潜水艦では探知能力の性能差から米軍が圧倒

    水陸両用車による上陸は台湾軍が待ち構えるため中国不利。

    南沙諸島有事
     フィリピンと中国との距離から、中国に不利。
     日本やグアムの基地も使用可能。

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著者プロフィール

渡部悦和(わたなべよしかず)
1955年愛媛県生まれ。元陸将。1978年東京大学卒。陸上自衛隊入隊後、外務省出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学等を経て、東部方面総監。2013年退職。著書は『米中戦争』(講談社現代新書)、『現代戦争論—超「超限戦」』(ワニブックス【PLUS】新書)、『日本はすでに戦時下にある』(ワニ・プラス)など多数。

「2022年 『プーチンの「超限戦」—その全貌と失敗の本質』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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