東芝解体 電機メーカーが消える日 (講談社現代新書)

著者 : 大西康之
  • 講談社 (2017年5月17日発売)
3.82
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  • 本棚登録 :301
  • レビュー :33
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062884266

作品紹介・あらすじ

【内容紹介】
 巨大な負債を抱え、会社解体の危機に喘ぐ東芝――かつて日本企業を代表する存在だった総合電機が軒並み苦境に陥っている。東芝・ソニー・日立ほか大手8社の歴史や経営を詳細に分析することで日本の総合電機がはまった巨大な陥穽を描く。名著『失敗の本質』総合電機版とも言える1冊。


【担当者挨拶】
日本の電機メーカーはいつから総崩れになったのだろう。私が社会人になった1990年代前半、プレイステーションが売れに売れていたソニーは超人気企業だった。東芝のダイナブックやシャープのアクオスのように「あ、かっこいい」と思ってボーナスで衝動買いした製品も多い。総合電機、大手電機の隆盛はずっと続くのだと思っていた。
ところが昨今の低迷ぶりはどうだ。パナソニックで携帯電話の設計に携わっていた親友は突然業務の縮小を命じられた。超人気企業だったソニーに入社した知人も大リストラの余波ゆえか、海外に出向したまま帰ってこない。シャープはもはや日本の会社ではないし、東芝にいたっては、原発事業でつくった莫大な借金返済のために、家電をはじめ、売れそうな部門を片っ端から売却した結果、絶体絶命の「解体」状態にある。ふたたび同じ問いを繰り返したくなる。日本の電機メーカーはいつから総崩れになったのだろう。

本書の著者であり、記者として長年電機業界を取材し続けてきた大西康之氏の答は明解だ。大半の電機メーカーは日本国内に築かれた、ある二つの巨大な「ファミリー」に属することではかりしれぬ恩恵を受け、そしてそのシステムこそが、結果的に総合電機を衰退させる原因にもなったのだという。「この構造を知らずに電機メーカーの凋落を真に理解することは難しい」と氏は語る。本書の序章はその「謎解き」「種明かし」となっている。
 第1~8章では、東芝・NEC・シャープ・ソニー・パナソニック・日立・三菱電機・富士通――我が国を代表する総合電機8社をとりあげ、各社の歴史や経営を詳細に分析することで日本の総合電機がはまった巨大な陥穽を描いている。
あの名著にたとえるならば、『失敗の本質』総合電機版と言えるだろうか。(HA)

東芝解体 電機メーカーが消える日 (講談社現代新書)の感想・レビュー・書評

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  • 「「電機敗戦の年」。2017年は日本の歴史にそう刻まれることになるだろう。」

    本書は、この一文で始まる。東芝の行方は2017年秋の時点でもいまだ不透明ではあるが、解体された東芝はもはやかつての東芝ではない。すでにシャープ、三洋電機はアジアの外資系企業に買収され、半導体売上高世界一を誇ったNECの売上は事業の切り売りを行った結果、ピーク時の半分になっている。パナソニックの連結での売上高も同じくピーク時の半分に近い。2017年が「電気敗戦の年」だというよりも、やはりじりじりと追い込まれてきたということが正しい認識だろう。

    本書は、日本の電機産業の衰退の理由を、それをNTTと電力会社が手堅いインフラ需要として背後で支えていた構図が崩壊したからだと捉える。もちろん電機メーカーが数ある中で、それだけの理由に帰するのはいかにも乱暴なロジックではある。ただ、「電電ファミリー」という言葉がNEC、富士通、日立、沖電気を指す言葉として普通に使われていたことを考えると、衰退の理由の大きなひとつではあると納得もする。モトローラやノキアなどを交換機メーカーとして、日本への導入を押し込んできた外部の勢力は当時正しく状況を把握していたと言えるのかもしれない。

    実のところ、NTTや東電がメインの商売であって、半導体や家電、携帯電話は日本の電機メーカーにとって本業ではなかったので負けたというのだ。というよりもそのことも含めて総合電機という業態がよくなかったのかもしれない。ここで敗れても会社としては何とかなるというところでの戦いでは、インテルのようにここしかないところで戦っている会社とは戦えない。各社はここに至る前に、GEやIBMがやったように大胆なスクラップ&ビルドができればよかったのかもしれない。通産省主導の国家プロジェクトもまったく役に立たず、逆に邪魔をしただけだったとの結論は特に目新しくもなく正しい結論だと思う。

    本書では個別企業の説明として、東芝、NEC、シャープ、ソニー、パナソニック、日立、三菱電機、富士通が並ぶ。
    メモリと原発に賭けた東芝、液晶に賭けたシャープは、成功すれば成長できたのかもしれない。それを支えることができる環境と組織ではなかったのかもしれないけれども。ある意味では結果論で話しているところもあり、全ての筆者のロジックに付き合うこともないが、それにしても残念なことになったと思わざるをえない。

    著者は本書を『失敗の本質』をモチーフにして書いたという。日本軍の大敗を個別の事例を通して構造的に分析した『失敗の本質』と同じように、大敗をした日本の電機産業を個別の事例を通して構造的に分析したものであるという。確かにもっと早く事業整理が行われてもよかったが、総合電機としてのポリシーや日本的組織がそれを許すものではなかった。

    『シャープ崩壊』など、気が付けばこのテーマで読んだ本もたくさん増えている。電子工学科出身としてはとても気になるテーマなのだ。

    ---
    パナソニックの章で、車載電池の開発拠点で技術総括を務めていた能間氏が2013年に会社を辞めてその後の行方がわからないと個人名を挙げているがこれは大丈夫なのだろうか。取材をできていないのであれば、書くべきではないのではと思うのだけれども。サムソンに行ったのではないかという推測をしているが、10人以上の三洋電機の技術者が流出したとも言われている。そのことはおおよそは本当のことなのだろう。

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    『シャープ崩壊 ―名門企業を壊したのは誰か』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4532320569

    『崩壊!パナソニック 復活への秘策』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/B00ENU018O

    『パナソニックはサムスンに勝てるか』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4569795439

    『ザ・ラストマン 日立グループのV字回復を導いた「やり抜く力」』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4041023629

    『ソニーをダメにした「普通」という病』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4777108635

    『日本の電機産業に未来はあるのか』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4862483879

    『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4166609424

    『イノベーションはなぜ途絶えたか: 科学立国日本の危機 』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4480069321


    『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4122018331

  • 電機メーカーが日本人の誇りだった日もあるんだよなあ~
    学生時代、ケンブリッジで、僕の持っているウォークマンに、全世界の留学生が寄って来た時にはホントにびっくりした
    みんなに「売ってくれ売ってくれ!」と頼まれ、ソニーが誇らしかった。
    時代ははるかに遠く。
    そりゃ、東芝はヤバいだろうし、原発関連全滅はわかるが
    サムソンに負ける体制になってしまったのは、やはり通産省が悪い。

    リスクとって途上国へ向かったサムソンが勝つのは当たり前
    半導体もみな産学共同で、庇護しているうちにダメになり
    国民車構想も、「官僚たちの夏」では花形だけど
    邪魔しかしてなかったという説もあるもんなあ

    ソニーもストリンガーですっかりダメになり、
    門戸開放も、いいことばかりじゃない

    サンヨーシャープみな消えてったけど、
    天下の松下でもこれかあ~
    島耕作の威力を持ってしてもダメかなあ。

    ん~・・・・日本に国産電機メーカーが消える日が来るとは?

  • 東芝をはじめとした日本を代表する電機メーカーの凋落を、その会社の体質やグローバル化との関係から痛烈に批判する。

    東電をはじめとした電力と、電電公社の通信の庇護下にあったせいで競争力と気概を失ってしまい、その2つが自由化された時に大ダメージを受ける、というのは正鵠を得ている。
    ノキアやシーメンスなどを引き合いに出して、潮流が変わっているにも関わらず、プライドやサンクコストに邪魔されて利益を出せない事業に固執して損失を拡大していくというのも残念でならない。

    個人的にはシャープが鴻海の傘下に入ったのは大正解だと思うし、韓国台湾中国のメーカーを格下に見る国民や官僚の意識は百害あって一利なしだと思う。
    M&Aとか選択と集中といった流行り文句を吹聴しながらも社内政治や内紛で右往左往するんじゃなくて、コアイデオロギーをブレずに持ち続けながら社会に貢献し続ける会社であって欲しい。

  • 電機メーカーの栄枯盛衰、納得です。「原発」の未来はもはや考えられないが、廃炉はどうする???

  • 東芝、NEC、シャープ等、グローバルでの競争に勝てず衰退している電機メーカーの凋落の原因がわかる本。
    NTT及び電力会社に依存していた電機メーカー(電電ファミリー&電力ファミリー)は、情報通信と電力の自由化に伴いおこぼれを貰えなくなった。そしてNTTと電力会社のご機嫌取りに終始している間に国際敵競争力を失っていた電機メーカーは危機に陥っている、というのが筆者の主張の大枠だと理解した。

  • 電気に関わる有象無象がよくわかる。税金吸い上げ&ムラ内でのバラマキ、結果としての国際競争力低下。

  • 各メーカーの衰退について結果から紐解いていますが、それだけではなく、後からであればいくらでも書けるわけで。。。今後の見通しについてのご意見も知りたいと思いました。

  • 読了日:2018/02/04

  • 【読了】『失敗の研究 巨大組織が崩れるとき』金田信一郎 ☆5

    企業も生物同様外部環境の変化に対応できなければ淘汰されるということ。成功体験の豊富な大企業ほど変化に抗いがち・目を背けがちであるということ。身につまされるわ。

    https://www.amazon.co.jp/gp/product/4062884267/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4062884267&linkCode=as2&tag=hiroshiraka0c-22&linkId=b8bea700fade796edc26ca924524df01

    https://booklog.jp/users/hiroshirakawa/archives/1/4062884267

    ●序章
    ・NTTを頂点とする電電ファミリー・東電を頂点とする電力ファミリーの解体が現在の日本電機産業
    ・長期的視点で見ると新旧交代であり、”旧”がこれまで”新”であった日本企業になってしまった
    ・携帯電話やテレビが副業に過ぎなかったことが傷口を広げた
    ・iPhoneを”ポケットに入れて持ち歩けるインターネット”ではなく、”液晶画面付き携帯電話”とみなしたことが失策の原因

    ●東芝
    ・東電と東芝は日本の原発事業を推進する国策企業という顔も持っており、経産省の隠しポケットである産業革新機構から技術振興という名の救済金をもらって生きながらえていた
    ・半導体で負けた各社の事業部門をエルピーダとして、液晶パネルをジャパンディスプレィとして分社・統合したようにいざとなれば国が助けてくれるという甘さもモラルハザードを生じさせた

    ●NEC
    ・玉ねぎの皮をむくように事業売却を行い、売り上げはピーク時のほぼ半分
    ・他に売れる事業部門が残っていないじり貧の状態
    ・国策として半導体事業の強化に成功したが、副作用としてコスト・収益性管理がおざなりになった
    ・残った事業はSIとテレコムだが、SIは準大手の位置づけであり、大きな成長は見込めない
    ・NTTの庇護にあること・国防を担うシステムを担当していることから簡単にはつぶれなさそう

    ●シャープ
    ・国を挙げての規模の投資を行った韓国・台湾に対して、小刻みな投資しかできずに敗れた半導体事業の教訓を基に亀山工場など大型の設備投資を迅速に行ったが、リーマンショックによる需要減の影響をもろに受けた
    ・シャープやパナソニックが液晶パネルの大型工場を建設しているときにはデジタルの主戦場がテレビからスマホ・インターネットにシフトしてしまっていた。結果として大和・武蔵のような一点豪華主義になった。
    ・当時のサムスンが恐れていたのは技術アドバンテージを基に中国などで安く生産し、世界展開されること。なので、日本国内に工場を作る内向きな判断は敵に塩を送った。
    ・アップル・ホンハイ連合がEVに参入した場合、シャープの技術力が生きる

    ●ソニー
    ・iPod・iTunes・iPhoneでメーカーからリカーリング企業に転身したAppleを手本にPS4などゲームをベースにしたプラットフォームビジネスへの転換を図っている
    ・創業家からの脱却を目指してガバナンス制度を強化したが、結果として形式主義など大企業病をもたらし、創造性が大きく低下した
    ・フィリップスはアジア電機メーカーのコスト・品質に脅威を感じ、価格勝負の電機事業を売却し、医療機器に転身した。電動歯ブラシはプリンターや髭剃りと同じ利益率の高い消耗品ビジネス

    ●パナソニック
    ・パナソニックはソニーなどのファーストムーバーの動向を見ていけそうな技術に大規模投資をするという後出しじゃんけん戦略だったが、液晶テレビの不況以降各社が創造的な製品を出さなくなってしまった

    ●日立製作所
    ・技術力はあるのにビジネスが下手という触れ込みだが、”良い製品が売れる”のではなく、”売れるのが良い製品”であり、因果関係が逆
    ・事業の選択と集中・リストラを行い黒字回復したがあくまで止血の結果であり、成長のための新規事業が必要

    ●三菱電機
    ・着実に成長を続け、電機業界ではソニーに次ぐ業界2位の時価総額。三菱の中でも傍流であったことが奏功

    ●富士通
    ・人月商売から抜け出せずサービス・コンサルにシフトしたIBMとの差が広がった
    ・公共・金融系の既得権益系ビジネスから抜け出せず、ビジネス領域を拡張できなかった

  • 電機メーカー壊滅。何度も言われていたことではある。ITバブル崩壊、リーマンショック、そして東芝。
    著者は、元日経新聞・日経ビジネスのジャーナリスト。電機メーカーにとって半導体、ITは本業ではなかった。国と一体化した電電ファミリー、電力一家こそが、彼らの本業、正体であったのだ、と喝破する。それ故、「選択と集中」は中途半端に終わり、東芝解体をもって、まさに壊滅したのだと。
    復活を遂げたかのような日立・パナソニック、生き残ったようなNECや富士通などに対しても、筆者は厳しい。
    新書故に書ききれなかったことも多いだろし、物足りないところもあるが、コンパクトにまとまった良書であった。

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