東芝解体 電機メーカーが消える日 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
3.75
  • (29)
  • (27)
  • (32)
  • (6)
  • (3)
本棚登録 : 326
レビュー : 39
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062884266

作品紹介・あらすじ

【内容紹介】
 巨大な負債を抱え、会社解体の危機に喘ぐ東芝――かつて日本企業を代表する存在だった総合電機が軒並み苦境に陥っている。東芝・ソニー・日立ほか大手8社の歴史や経営を詳細に分析することで日本の総合電機がはまった巨大な陥穽を描く。名著『失敗の本質』総合電機版とも言える1冊。


【担当者挨拶】
日本の電機メーカーはいつから総崩れになったのだろう。私が社会人になった1990年代前半、プレイステーションが売れに売れていたソニーは超人気企業だった。東芝のダイナブックやシャープのアクオスのように「あ、かっこいい」と思ってボーナスで衝動買いした製品も多い。総合電機、大手電機の隆盛はずっと続くのだと思っていた。
ところが昨今の低迷ぶりはどうだ。パナソニックで携帯電話の設計に携わっていた親友は突然業務の縮小を命じられた。超人気企業だったソニーに入社した知人も大リストラの余波ゆえか、海外に出向したまま帰ってこない。シャープはもはや日本の会社ではないし、東芝にいたっては、原発事業でつくった莫大な借金返済のために、家電をはじめ、売れそうな部門を片っ端から売却した結果、絶体絶命の「解体」状態にある。ふたたび同じ問いを繰り返したくなる。日本の電機メーカーはいつから総崩れになったのだろう。

本書の著者であり、記者として長年電機業界を取材し続けてきた大西康之氏の答は明解だ。大半の電機メーカーは日本国内に築かれた、ある二つの巨大な「ファミリー」に属することではかりしれぬ恩恵を受け、そしてそのシステムこそが、結果的に総合電機を衰退させる原因にもなったのだという。「この構造を知らずに電機メーカーの凋落を真に理解することは難しい」と氏は語る。本書の序章はその「謎解き」「種明かし」となっている。
 第1~8章では、東芝・NEC・シャープ・ソニー・パナソニック・日立・三菱電機・富士通――我が国を代表する総合電機8社をとりあげ、各社の歴史や経営を詳細に分析することで日本の総合電機がはまった巨大な陥穽を描いている。
あの名著にたとえるならば、『失敗の本質』総合電機版と言えるだろうか。(HA)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 「「電機敗戦の年」。2017年は日本の歴史にそう刻まれることになるだろう。」

    本書は、この一文で始まる。東芝の行方は2017年秋の時点でもいまだ不透明ではあるが、解体された東芝はもはやかつての東芝ではない。すでにシャープ、三洋電機はアジアの外資系企業に買収され、半導体売上高世界一を誇ったNECの売上は事業の切り売りを行った結果、ピーク時の半分になっている。パナソニックの連結での売上高も同じくピーク時の半分に近い。2017年が「電気敗戦の年」だというよりも、やはりじりじりと追い込まれてきたということが正しい認識だろう。

    本書は、日本の電機産業の衰退の理由を、それをNTTと電力会社が手堅いインフラ需要として背後で支えていた構図が崩壊したからだと捉える。もちろん電機メーカーが数ある中で、それだけの理由に帰するのはいかにも乱暴なロジックではある。ただ、「電電ファミリー」という言葉がNEC、富士通、日立、沖電気を指す言葉として普通に使われていたことを考えると、衰退の理由の大きなひとつではあると納得もする。モトローラやノキアなどを交換機メーカーとして、日本への導入を押し込んできた外部の勢力は当時正しく状況を把握していたと言えるのかもしれない。

    実のところ、NTTや東電がメインの商売であって、半導体や家電、携帯電話は日本の電機メーカーにとって本業ではなかったので負けたというのだ。というよりもそのことも含めて総合電機という業態がよくなかったのかもしれない。ここで敗れても会社としては何とかなるというところでの戦いでは、インテルのようにここしかないところで戦っている会社とは戦えない。各社はここに至る前に、GEやIBMがやったように大胆なスクラップ&ビルドができればよかったのかもしれない。通産省主導の国家プロジェクトもまったく役に立たず、逆に邪魔をしただけだったとの結論は特に目新しくもなく正しい結論だと思う。

    本書では個別企業の説明として、東芝、NEC、シャープ、ソニー、パナソニック、日立、三菱電機、富士通が並ぶ。
    メモリと原発に賭けた東芝、液晶に賭けたシャープは、成功すれば成長できたのかもしれない。それを支えることができる環境と組織ではなかったのかもしれないけれども。ある意味では結果論で話しているところもあり、全ての筆者のロジックに付き合うこともないが、それにしても残念なことになったと思わざるをえない。

    著者は本書を『失敗の本質』をモチーフにして書いたという。日本軍の大敗を個別の事例を通して構造的に分析した『失敗の本質』と同じように、大敗をした日本の電機産業を個別の事例を通して構造的に分析したものであるという。確かにもっと早く事業整理が行われてもよかったが、総合電機としてのポリシーや日本的組織がそれを許すものではなかった。

    『シャープ崩壊』など、気が付けばこのテーマで読んだ本もたくさん増えている。電子工学科出身としてはとても気になるテーマなのだ。

    ---
    パナソニックの章で、車載電池の開発拠点で技術総括を務めていた能間氏が2013年に会社を辞めてその後の行方がわからないと個人名を挙げているがこれは大丈夫なのだろうか。取材をできていないのであれば、書くべきではないのではと思うのだけれども。サムソンに行ったのではないかという推測をしているが、10人以上の三洋電機の技術者が流出したとも言われている。そのことはおおよそは本当のことなのだろう。

    ---
    『シャープ崩壊 ―名門企業を壊したのは誰か』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4532320569

    『崩壊!パナソニック 復活への秘策』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/B00ENU018O

    『パナソニックはサムスンに勝てるか』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4569795439

    『ザ・ラストマン 日立グループのV字回復を導いた「やり抜く力」』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4041023629

    『ソニーをダメにした「普通」という病』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4777108635

    『日本の電機産業に未来はあるのか』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4862483879

    『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4166609424

    『イノベーションはなぜ途絶えたか: 科学立国日本の危機 』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4480069321


    『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4122018331

  • 電機メーカーが日本人の誇りだった日もあるんだよなあ~
    学生時代、ケンブリッジで、僕の持っているウォークマンに、全世界の留学生が寄って来た時にはホントにびっくりした
    みんなに「売ってくれ売ってくれ!」と頼まれ、ソニーが誇らしかった。
    時代ははるかに遠く。
    そりゃ、東芝はヤバいだろうし、原発関連全滅はわかるが
    サムソンに負ける体制になってしまったのは、やはり通産省が悪い。

    リスクとって途上国へ向かったサムソンが勝つのは当たり前
    半導体もみな産学共同で、庇護しているうちにダメになり
    国民車構想も、「官僚たちの夏」では花形だけど
    邪魔しかしてなかったという説もあるもんなあ

    ソニーもストリンガーですっかりダメになり、
    門戸開放も、いいことばかりじゃない

    サンヨーシャープみな消えてったけど、
    天下の松下でもこれかあ~
    島耕作の威力を持ってしてもダメかなあ。

    ん~・・・・日本に国産電機メーカーが消える日が来るとは?

  • 東芝をはじめとした日本を代表する電機メーカーの凋落を、その会社の体質やグローバル化との関係から痛烈に批判する。

    東電をはじめとした電力と、電電公社の通信の庇護下にあったせいで競争力と気概を失ってしまい、その2つが自由化された時に大ダメージを受ける、というのは正鵠を得ている。
    ノキアやシーメンスなどを引き合いに出して、潮流が変わっているにも関わらず、プライドやサンクコストに邪魔されて利益を出せない事業に固執して損失を拡大していくというのも残念でならない。

    個人的にはシャープが鴻海の傘下に入ったのは大正解だと思うし、韓国台湾中国のメーカーを格下に見る国民や官僚の意識は百害あって一利なしだと思う。
    M&Aとか選択と集中といった流行り文句を吹聴しながらも社内政治や内紛で右往左往するんじゃなくて、コアイデオロギーをブレずに持ち続けながら社会に貢献し続ける会社であって欲しい。

  • 電機メーカーの栄枯盛衰、納得です。「原発」の未来はもはや考えられないが、廃炉はどうする???

  • 東芝、NEC、シャープ等、グローバルでの競争に勝てず衰退している電機メーカーの凋落の原因がわかる本。
    NTT及び電力会社に依存していた電機メーカー(電電ファミリー&電力ファミリー)は、情報通信と電力の自由化に伴いおこぼれを貰えなくなった。そしてNTTと電力会社のご機嫌取りに終始している間に国際敵競争力を失っていた電機メーカーは危機に陥っている、というのが筆者の主張の大枠だと理解した。

  • 刺激的なタイトルの通り、

    内容もなかなか刺激的。


    日経新聞で長く取材を続けて来た筆者からみた日本型総合電機の衰退の歴史が綴られている。


    東芝、シャープ、NEC、ソニー、パナソニック、日立、三菱電機、富士通


    どの会社にも至極手厳しい論調で、

    評価されてるのは唯一三菱電機だけ。


    筆者の指摘はよく言われていることで、

    バブル崩壊や、アジアメーカーの台頭、東電、NTTとのファミリービジネスの崩壊などの事業環境の変化に対し、適切な事業のリストラクチャリングが出来なかったこと。

    どの会社も技術へのこだわりや社内政治にしがみついてしまい、気がついた時には後の祭りになっているというパターン。


    さすがに各社ともに遅蒔きながら状況は認識していると思うのでここからどう巻き返すかだけど、残念ながらこの本にはそんな話は殆ど書いていない。逆に会社は潰れても技術者は残る。それで良いではないか!という、当たり前だけど身も蓋もない話で締めくくる。

    これには筆者の諦めの気持ちが透けて見えて悲しくなった。

  • 日本の電機メーカーの多くは、電電公社から仕事をもらっていた電電ファミリーと、電力会社から仕事をもらっていた電力ファミリーに属する。通信、電力が自由化され、そのような下請け的な仕事が減ってきたところに、グローバル競争、新興国の台頭の大きな波を受け、起業として凋落していった。本書では、大きな時代の変化に対応できなかった経営者たちの姿を、太平洋戦争での敗戦の原因となった指導者たちの姿と照らし合わせながら描いたという。
    過去の成功モデルから離れられず、市場の変化に対応するより、社内の抗争に力を注ぐ姿は確かに多くの日本企業にみられたものだとは思うが、はたして日本だけに特有なものだろうか?IBMなど欧米の大企業でも同様なことは起きた。だが、ノキア、フィリップスなど、柔軟に迅速にビジネスを変え、復活した企業も多い。日本でも、JT、富士フィルムなど成功例も多い。電機メーカーの苦境は、過去のファミリーの中でのビジネスの甘さから抜け出せていないことが根本原因なのだろう。しかし、本当に発想を変えることができ、経営が変われば、まだチャンスはあるはずと信じたい。

  • 右肩下がりの数字だけでも 衝撃的

  • 結構的を得たこと言っていると思うけど、結果がでてから分析して言うのは誰でもできると思う。

  • 東芝やシャープなどを含む
    8つの電気系企業について

    どのような経営で
    国際競争力を失ってきたか
    経営者が変わってなにをしたか

    事実がまとまった形で書かれていて
    わかりやすいので
    読んでみてもいいかんじ

全39件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

大西康之(おおにし・やすゆき)
ジャーナリスト。1965年生まれ。1988年早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。産業部記者、欧州総局(ロンドン駐在)、編集委員、「日経ビジネス」編集委員などを経て、2016年に独立。企業や業界の深層を、人物を中心に描き出す手腕に定評がある。『稲盛和夫 最後の闘い』(日本経済新聞出版社)『ファーストペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(同)など著書多数。『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(日経BP社)は第13回新潮ドキュメント賞最終候補となった。最新刊は『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア』(新潮社)

「2017年 『東芝解体 電機メーカーが消える日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

東芝解体 電機メーカーが消える日 (講談社現代新書)のその他の作品

大西康之の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
ジャレド・ダイア...
塩田 武士
村田 沙耶香
トマ・ピケティ
リンダ グラット...
有効な右矢印 無効な右矢印

東芝解体 電機メーカーが消える日 (講談社現代新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする