〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062884334

作品紹介・あらすじ

ひとりでは何もできないロボットとともに、コミュニケーションについて考えてみた――。人とロボットの持ちつ持たれつの関係とは?

 自分ではゴミを拾えない〈ゴミ箱ロボット〉。人の目を気にしながらたどたどしく話す〈トーキング・アリー〉、一緒に手をつないで歩くだけの〈マコのて〉……。

 著者岡田さんの研究室がつくるロボットは、いずれもすぐに役立つようなロボットではありませんし、多くの機能を兼ね備えているわけでもありません。デザインもシンプルで、どこか不完全なロボットです。でも、だからこそ放っておけないロボットでもあります。ゴミ箱ロボットをみると、子どもたちは、自分たちから率先してゴミを入れます。〈マコのて〉も高齢者たちは喜んで手をつなぎます。
 最近のロボット開発が、「もっとリアルに、表情豊かに!」とより高性能をめざして、機能を付加していく「足し算型」だとすれば、岡田さんの手がけるロボットは、「引き算型」です。ロボット自体は不完全でも、相手に委ねることで、目的を実現する。まさに〈弱さ〉が周囲との関わりを駆り立てているのです。
 〈弱いロボット〉の研究で知られる著者が、もじもじするロボット、言いよどむロボットとともに、持ちつ持たれつの関係について考える一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • ただ一緒に並んで歩く「マコのて」、発話に反応するだけの「む~」、自分ではゴミを拾えなくて周りの人に手伝ってもらう「ゴミ箱ロボット」。次々と妙なロボットを作り続ける著者が、研究から市販のお掃除ロボットも含めた、ロボット開発側の視点や知見から、人間らしさやコミュニケーションとは何かを考察する。

    お掃除ロボットが周囲の壁にぶつかり人の手を借りながら作業を進めていき、私たちがその姿になぜか健気さを感じるように、人間は単独で存在する「閉じたシステム」ではなく、周囲との関わりのなかから在り方を見い出す「オープンなシステム」であるということが、繰り返し強調される。人との関わりのなかでしか存在できないロボットたちの開発やロボットに対する人々の反応を通して導かれる、「弱さを隠さず、ためらうことなく開示しておくこと」、「とりあえずやってみて、周りの反応を見て次の動きを決める」ことが本来の人間らしい在り方だという見解には、人との関わり方について改めて考えさせられる。また、お互いを参照しながら自らの動きを決定するコンピュータープログラム「目玉ジャクシ」の例から、それぞれが自然とコミュニティのなかでニッチを獲得して棲み分けが進んでいく例からは、個性や自己というものが社会における関係性あってのものだと思い知らされる。

    書籍としては、全体としてしっかり構成されているというより、個々の事例に対する考察の積み重ねをまとめて一冊にした形となっている。そのため重複や散漫になる部分も少なくはないが、結果的に人間が何であるかに対する主張は明確に打ち出されている。一風変わった研究をはじめた著者自身の動機が「何となく」だったということも、本書のテーマとのつながりもあって面白い。

  • ロボットと人間が、持ちつ持たれつの関係になる と読んで、手塚先生の漫画を思い出した

  • 完璧でなければと思ってしまうけど、弱いロボットのような不完全さや弱さが対人関係の上で意外と大事なのかもと思わされた。

  • 国語科の教科書に岡田さんの文章が載っているので,教材研究として読んだ。テクノロジーの進化は豊かな生活を生み出すけれど,その先には何があるのかという岡田さんからの問いかけ。人とロボット,そして人と人をつなぐきっかけとなるロボットの発明は今後必要だろうと感じた。

    そして,弱さを見せ合い,それぞれの強みを出し合って支え合うことの大切さを改めて感じさせられた。

  • お掃除ロボットの理想像は、人間が何もしなくても部屋を掃除してくれるというもの。現在、ルンバに代表されるお掃除ロボットは、椅子の下や物が置かれた場所は掃除できないため、人間がわざわざ椅子をずらしたり、床から物を排除したりしなければならない。そこにはロボットと人間の双方向のコミュニケーションがあるという。

    確かに理想的なロボットでは、人間は読書や仕事など自分の興味に集中する傍らでロボットは掃除するという、ディスコミュニケーションが生まれる。しかしルンバの行く先を予測し、人間はその先にある障害物を取り除いてあげる、その結果ルンバは部屋をきれいにする。一見、面倒な作業が見方を変えるとロボットとコミュニケーションしているという発想が非常に面白かった。

    その他、自分で拾わず人間にごみを拾ってもらい、お礼を言うゴミ箱ロボットや、雑談をするだけのロボットなど、いずれも不完全で人間がいないと能力を発揮できない代物が次から次へと本書には登場する。
    ロボットにとってかわる未来に恐怖心が募るご時世だが、案外こうした"弱い"ロボットとの共生が理想的な社会なのかもしれない。

  • 弱いロボットの実例(どれも愛らしい!)を紹介しながら、コミュニケーションや身体性認知科学について論じた本。

    ・エスノメソドロジー
    ・ゾウはチェスを指さない

  • むちゃくちゃ面白かった。「弱い」ロボットとはどういうことか。市場のわがままに答えて「役に立つ優秀な人の代わりになる」ロボットを作ろうとすると、ロボットはどんどん効果になり、正確性を求めて融通が利かなくなり、人との関係性は固定化されたものになり、人とロボットとのコミュニケーションは薄れる。人はもっと完璧なものを、と傲慢になる。人と関係を結ぼうともじもじすることは内に向かっているようで外とつながりを求めていること。それを見て人はつい手を差し伸べたくなる。それが「人らしい」コミュニケーションの一面ではないか。人との意思疎通に悩む人、人の「気持ち」を理解するのが苦手だと思っている人におすすめ。

  • #しもむめも

    p.47
    「人びと(ethno-)は、どのような方法(method)に従って、自分たちの行動を意味あるもの、秩序あるものとして組織しているのか」:エスノメソドロジー(ethno methodology)

    p. 84
    ‪「自己参照系」「他者参照系」‬
    ‪「自己充実欲求」「繋合希求性」‬

    p. 237
    コミュニケーションにおける「媒介物」「第三項」のデザイン・・・並ぶ関係

    読んでいたら、いつも観ている『ふれあい街歩き』の旅行者目線のカメラワークと番組の中の鳥瞰図の言及があって、観察者・行為者視点の対比が面白い番組で観ていたのでタイムリーな本だった。
    cf. https://www.jstage.jst.go.jp/article/itej/65/3/65_316/_pdf/-char/ja

  • この蟻の行動の軌跡の複雑さは、必ずしも蟻内部の複雑さを反映したものではない。むしろ、その多くは、その蟻を取り巻いている環境の複雑さを反映したもの

    人の流れ、通りの看板、由緒ある石畳の路地、建物の装飾など、その町が私たちを歩かせてもいる

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著者プロフィール

岡田 美智男:豊橋技術科学大学

「2017年 『不便益 手間をかけるシステムのデザイン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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