福島第一原発 1号機冷却「失敗の本質」 (講談社現代新書)

  • 講談社 (2017年9月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784062884433

作品紹介・あらすじ

官邸や東電本店の要請に従わず、海水注水を強行した吉田昌郎・福島第一原発所長。日本中が喝采を送った「海水注水騒動」だが、事故から5年半経って原子炉にほとんど水が入っていなかったことが判明した。6年にわたる検証で浮かび上がってきた数々の「1号機冷却」の謎に迫る!東京電力技術者や原発専門家ら1000人以上を取材して浮かび上がってきたのが、原子炉冷却をめぐる「情報の共有」に失敗という事実だった。


官邸や東電本店の要請に従わず、海水注水を強行した吉田昌郎・福島第一原発所長。日本中が喝采を送った「海水注水騒動」だが、事故から5年半経って原子炉にほとんど水が入っていなかったことが判明した。6年にわたる検証で浮かび上がってきた数々の「1号機冷却」の謎に迫る!

東京電力技術者や原発専門家ら1000人以上を取材して浮かび上がってきたのが、原子炉冷却をめぐる「情報の共有」に失敗という事実だった。東京電力テレビ会議の内容を、AIで解析し、吉田所長の疲労度を解析したり、事故対応の意思決定に組織上の問題があったことなどを突き止める。
事故6年目経過しても、次々に浮かび上がる新事実。福島第一原発事故の調査報道の金字塔というべき作品

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

事故発生時の対応体制に焦点を当てた本作は、福島第一原発の冷却失敗の本質を探る重要な調査報告です。著者は、事故から数年後に判明した原子炉への注水不足や、冷却システムの情報共有の失敗に迫り、吉田所長をはじ...

感想・レビュー・書評

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  • まずはNHK取材班の地道で粘り強い調査取材に敬意を評したい。時に政権におもねるようなことをする信用できないメディアに思われることもあるが、このように優秀で気骨のある記者たちがいるのだと改めて認識する。言葉では言い尽くせない未曾有の危機の連鎖の中、命を賭して事故対応に尽力し続けた吉田所長はじめ東電職員の姿に、深く心を揺さぶられた。ここで語られている失敗の本質は、国民に深く根ざしたものかもしれず、将来再び突きつけられることもあるだろう。もはや忘れ去られようとしている気の遠くなるような廃炉作業を負うのは、NHKなど見ない未来の若者たちだ。外国人問題などよりこっちの方がずっと差し迫った危機だと思うんだけどね。

  • 1号機には全くと言っていいほど注水されず、メルトダウンか起こった。溶けた核燃料はコンクリート床を侵食していき、核燃料・コンクリートからできたデブリスは279トン。本作の主題は事故発生時の対応体制についてだが、このデブリス話の方が強烈な印象を残した。

  • NHKの取材執念とかドリルダウンの迫力が凄いことはよく伝わる。
    ただ、F1の一番の本質がイソコンなのかどうかは、この事故全体をシステム的に捉えている人であれば疑問に思うのではないか。どちらかといえば枝葉末節にいたずらに詳しいフォーカスを当てているような気がする。
    TV会議録の自然言語解析という手法は、いろいろな組織において今後の危機管理体制のあり方について、貴重な知見をもたらす可能性があるだろう。

  • 福島第一原発の事故を詳細に分析し、何が原因だったか、組織的にその時の対応が正しかったかなどを考察している。5章まではNHKスペシャルなどで特集されていたことが中心であったが、最後の6章に最終的な分析を行なっている。当然のことながら一つのことをやれば万事OKというものではなく、いろいろな状況に応じて対応を変えていかないといけない。ここまでの大きなことではないにしろ、自分が所属している組織でも似たようなことが起きているような気がする。

  • 543-N
    閲覧新書

  • まず、その取材力に驚いた。深堀りし続ける探究心と熱意。未曾有の事故を何とか教訓として次世代に活かし、同じような災害を招いてはいけないとの思いがひしひしと伝わってきた。

    その中で導き出されたポイントを自分なりに噛み砕いたものとして簡単に列挙してみた。

    ①日本人らしい特徴なのか知識のみの机上の空論が主体となりやすく、一方で職人気質の経験のみに頼ってしまうという2パターンに陥る傾向にある。そのため、不足の事態に対して経験がないから動けない。もしくはブラックボックス化した属人性のみでしか対応できず、チームで動くことができないため、軋轢や混乱が生じる。まず、精緻なマニュアルもしくは履歴を残し、知識として伝達していきながら組織として定期的に訓練もしくは練習の必要がある。

    ②アメリカは国民性なのか取り敢えずやってみるといった経験による伝達、継承。文章で残すといった情報の共有及び見える化がしっかりとなされている。それは、多民族国家であり契約社会の国だからかもしれない。

    ③組織の反省点。今回はいくらリーダーが優秀であってもそれに頼りすぎであり、そもそも仕組み自体が1人に情報と判断が集中化されリスク管理が不十分だったことが浮き彫りになり、その先には精神論が重視されていたようにも感じた。実際に人間は72時間で気絶し、36時間後に体力、集中力の限界を迎えると言われている。今後の対策の一つとしてオンラインの活用含めてツールをうまく使い複数人での対応ができるように仕組みを考えることが必須であり、また、不慮の事故にも対処できるようなシフト体制も重要になってくる。合わせて、他部署、本店、支店と違った視野からの意見も取り入れることができる体制がリスクヘッジとなり不可欠だと感じた。

    最後にこういった問題点は通常の会社業務においても大なり小なり共通している課題であり、解決するヒントとして大変参考となる内容だった。

    とにかく、現場のリーダーであった故人の吉田所長に対してご冥福をお祈りしたい。

  • 技術的な話が「世間」に骨抜きにされる国じゃだめだよなって。本気で思う。

  • 本への期待
    事故の真相について
    有事の適切な組織や対応について

    読書後
    日本では重大事故は起きないという前提で作られたマニュアルでは、想定外だった事がいくつも重なっていた。
    また、リスク判断を見誤り、大切な訓練の一つも行われていなかった。

    これらは、よく言う安全神話から来るもので、アメリカとは真逆の考え方だ。

    最後の、吉田所長の一言が、凄く身に染みました。
    決して同じ過ちは繰り返してはいけないと強く心に思った一冊です。

  • ・実動作試験には、設備のメンテナンスとしての機能チェックだけでなく、もう一つ大事なのが「運転経験」。作動するとどうなるのか自体を正しく把握する。
    ・イソコンはこれができず、作動していないのに、作動していると勘違いしてしまった。

  • 福島原発事故を防げなかったのは,イソコンを正しく使えなかったから,という取材結果.

  • 感情論ではなく、事実に基づいた科学的見地からの分析は、この出来事を未来への教訓として活かすためには重要になる。緊急時の対応について、ことわざで言うなら「備えあれば憂いなし」か。

  • 『福島第一原発 7つの謎』とダブる内容が多く補完的内容にとどまっている。

  • NHKスペシャルを見ていなかったので、本書の事実に驚愕。
    ・冷却装置イソコンを40年間動かさなかった
     →イソコンが動いていると勘違いにつながった。
     →訓練でイソコンを動かすと原子炉に影響を及ぼすリスクがある。
     → 小さなリスク回避のために、大きな事故につながった。
    ・事故発生から12日間原子炉に届いた冷却水はほぼゼロだった。
     →吉田所長にすべての責任が集中。
     → 人間、正しく判断できるのは72時間が限界。
     → セカンドチームが必要

  • 取材の執念を感じた。
    失敗の本質が本当に何だったのか、そこにもう少し深掘りしてほしかった。

  • すごい取材力 分析
    最高の一冊

  • 驚きの連続でした。事故から6年経過しても発覚する新事実に複雑さと問題の根深さを感じました。NHKの人的及び経済的リソースありきのドキュメントですが、取材班の迸る熱量が行間に溢れています。イソコンの歴史的経緯や1号機海水注入が12日間出来ていなかったこと、Watsonによるテレビ会議分析、疲労の数値化等々どれもスクープと言ってよい内容です。事故を風化させない意味でも貴重なノンフィクション作品です。

  • 福島第一原発の「失敗の本質」に迫った調査報道の本。現場やリーダーがどんなに頑張っても事故を食い止められなかったのは組織が機能しなかったから。それは地震が起こる40年も前からの情報や経験の共有が事実の蓄積としてなされてこなかったから。日本の組織ってどうしてこうなっちゃうのか。リスクを回避するとリスクの本質って見えなくてなるんだな。

  • 福島第一原子力発電所の事故について調査報道を続けているNHK
    スペシャルだが、本書については少々まとまりが悪いかなと感じた。

    全電源喪失の状態から原子炉の冷却を続ける為に取られた海水注入。
    しかし、事故の陣頭指揮にあたった福島第一原発の吉田所長も本当
    に1号機の原子炉に海水が十分に注入されているかには早い段階で
    疑問を抱いていた。

    事故当時、日々報道される福島第一の状況を見ていても、いくら水を
    入れても満水にならないのはどこかで漏れているのではないか?と
    素人でさえ思っていた。

    唯一、電源がなくても原子炉を冷却できる非常用冷却装置イソコンが
    起動していなかったこと。また、イソコンが起動した際の排気口から
    排出される蒸気がどのような状態なのかの実際の訓練をしたことの
    ない運転員。

    そして、次々に起こる緊急事態への対応・判断が吉田所長ひとりに集中
    した結果の、極限的な疲労。複合的な結果だと思うんだよね。

    NHKでは東京電力のテレビ会議の模様をAIに解析させているけれど、
    吉田所長だけではなく、最前線で事故を最小限に抑えようとしていた
    現場の人たちは、誰もがみな持てる知識と力を存分に使って、極限状態に
    置かれていた。原子炉の暴走が止められなければ、真っ先に命を落とす
    ことになったのは彼らだったのだから。

    本書では1号機の中央制御室と免振重要棟の間で十分な情報の共有が出来
    ていないことを挙げている。ただ、それに「失敗の本質」を求めるのは
    どうだろうかと感じた。

    あの事故を検証することは大切だと思う。しかし、その事故に至るまで
    日本の原子力発電所では過酷事故は起こらないとし、全電源喪失の可能性
    までを否定して来たことから検証しなければならないのではないか。

    「原発は安全です。クリーンです」。この原発安全神話を信仰して来た
    結果が、あの過酷事故ではなかったかと、原発事故関連の作品を読むたび
    に私はそこへ戻ってしまうんだよな。

  • 3基もの原子炉がメルトダウンした福島第一原発事故において、事態の悪化を一気に加速させたきっかけは最初に水素爆発を起こした1号機でした。1号機の冷却には「イソコン」と呼ばれる非常冷却装置があったのにも関わらず、事故当時その設備が稼働していなかったという致命的な誤認がありました。1号機運転開始から約40年間、「イソコン」を訓練でも実際に稼働させてこなかったことが原因でした。なぜ原子炉冷却に最重要な設備の訓練が実施されてこなかったのか、関係者への取材と資料をもとに追及していきます。
    後半は膨大なテレビ会議の記録から、なぜ「イソコン」の稼働状況を誤認するに至ったのかをAIを用いて解析した結果を報告しています。
    NHKスペシャル取材班による丹念な取材を新書1冊にまとめた福島第一原発事故の記録です。NHK記者による執筆だけあって、文章が非常にわかりやすく読みやすかったです。

  • 東2法経図・開架 B1/2/2443/K

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