- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062884525
作品紹介・あらすじ
低所得の人の死亡率は、高所得の人のおよそ3倍―――。
「健康格差」は、健康に対する自己管理能力の低さが原因ではなく、生まれ育った家庭環境や地域、就いた職業や所得などが原因で生じた、病気のリスクや寿命など、私たち個人の健康状態に気づかぬうちに格差が生まれてしまうことを指します。
私たちは不健康・不摂生な人々に対して安易に「自己責任論」を振りかざしてしまいがちですが、現在ひそかに進行しているのは、所得や家庭環境などにより自らの健康を維持する最低限の条件すら蝕まれつつあるという異常事態です。まさに《命の格差》とも言うべき「健康格差」の危機的な実態に、NHKスペシャル取材班が総力を挙げて迫ります。
「健康格差」を放置していると、将来的に社会保障費が爆発的に増大していく。私達が「健康格差」に無関心ではいられないのは、膨張する社会保障費への対策は喫緊の課題だからです。そして、私達の誰もが健康を損なう事態になりかねないからです。
たとえば、都道府県別に見ても平均健康寿命は最大で3歳以上違う。地域差に着目するだけでこれほどに人々の健康に差が出ていることに驚きます。本書では、イギリスや足立区で「健康格差」是正のために取り組まれた効果的な対策が紹介されています。イギリスでは、わずか8年間で心疾患と脳卒中の死亡者数が4割も減少したそうです。しかも、私たちでも実践可能な目からウロコの対策で。
年金・雇用・介護・少子化など、NHKスペシャル取材班は様々なテーマを取り扱ってきましたが、「健康格差」はこれらのすべての根本に結びつく問題であることがわかりました。社会と健康の問題を深く考えるうえで必携の1冊です
感想・レビュー・書評
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健康格差は自己責任か?社会の問題か? 努力して健康を保っている側からすれば不摂生による不健康は自己責任に見える。しかし、自助努力ではどうにもならないケースがありだれもが困る側になる可能性があるとするとセーフティネットは必要。不況が続く中他人を思いやる余裕がなくなっているなあと感じる。
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第1章 すべての世代に迫る「健康格差」
現役世代に迫る危機
高齢者に迫る危機
子どもに迫る危機
日本社会が抱える時限爆弾
第2章 秋田県男性が短命な「意外な理由」
「不健康な期間」の地域差は最大で3・6年
平均寿命の差を生み出す「食習慣」
第3章 イギリスの国家的対策と足立区の挑戦
脳卒中が激減!賢い「健康格差」解消法
塩分はこっそり減らせばわからない
ベジ・ファースト
第4章 「健康格差」解消の鍵は?
ハイリスク・アプローチの限界
ポピュレーション・アプローチの可能性
ソーシャル・キャピタル
ナッジ
第5章 白熱討論!「健康格差」は自己責任か
「健康=自己責任論」の背景
自己責任論にみる社会の歪み
自己責任の限界
勝ち組も逃げ切れない
第6章 拡大する日本人の「命の格差」 -
・健康と所得の格差には相関がある。所得の低い人は傾向として、安価にカロリーを摂取することを考える為、カロリーのコストパフォーマンスが悪い野菜や魚などを購入しない傾向がある。
・食生活、特に塩分摂取量によって食道がんのリスクは異なる。塩を主な保存手段にしてきた日本食では、塩分摂取量が極端に多く、それらが日本の食道がんリスクを押し上げている。
・イギリスでは、国家的なアプローチにより、パンの製造メーカーと結託し、パンの塩分量をサイレントで減少することに成功。これにより、イギリス人の塩分摂取量を年間平均で1g減少させ、心臓疾患の患者を4割減少することに成功した。
・日本も健康問題を、今後の社会保険制度における一大事と捉え、ポピュレーションアプローチにより食品メーカーと一体となったかじ取りが必要である。 -
保健の授業の課題のため、マイケルマーモットという学者の本を借りてきたねえね。
健康格差で調べるといくつか出てくる。手始めにこの手軽な新書を買ったら、それ、高校の図書館で読んで、それでこのテーマにしようと思って、マーモットの本を借りてきたんだよと。。。すんません。
この番組、3年前か。
部分的に見た記憶がある。
この問題は深刻。
政治家に自己責任論者がいると、どうなっていくのか。
社会の姿は自分たちが選択できるのに、それを放棄するとどうなるか。
ここに遅れて現れてくる。
それにしても、世界ではいろいろな社会実験が打ち出されている。 -
都道府県別で、3歳の平均寿命の差が出ている。
これは、結構、衝撃的な数字ではないだろうか。
日本では、地域・個人レベルでの「健康格差」が広がっている。
WHOは健康格差が生まれる要因を、所得、地域、雇用形態、家族構成と指摘している。
ぶしつけに言えば、所得が低く、地域GDPも平均より低く、雇用形態も非正規・無職、
家族もいないならば、短命になるということだ。
最終章は、「健康格差」は、「自己責任か」というテーマで、
一般人や俳優、専門家の意見交換がある。
いまだに、健康は、自己責任によるものだと意識が強いと感じた。
健康格差が広がると、社会保障費が増えるということは、
想像がつく。これは財政問題として国が解決しなければいけない。
なぜなら、今でも社会保障費は、膨れ上がっているからだ。
ただ、「今あなたの状態は、全てあなたの責任です」という、
冷酷な意識が日本を支配している。
税金を投入しての健康格差対策は、国民の支持を得られるのは、
かなり難しいだろうと思う。
この本では東京都の足立区の例があるが、
これから、地域の財政は間違いなくひっ迫する。
特に東京は、この20年で140万人高齢者が増加する。
その中で、「地域の健康」にどれくらい優先順位があるのか、
指導者達は、よくよく考えてもらいたい。
なぜなら、現在の健康格差は、ある面では、国が作り出したからだ。
経済格差が広がっている現在の日本は、
健康の格差も、急速に進んでいる。 -
小論文対策推薦図書 医療系
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498/エ
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健康格差は自己責任か…、いろんな立場でいろんな意見があって当然の題材。自己責任という側面もある。自分の健康は自分で守るしかないし、食生活や日々の生活で気をつけて、不調な時には受診するなどの健康に資する行動をとるのはもちろん自己責任の部分。しかし、生活をしていくために低い賃金で長時間働かないといけない人では、それらに割く時間が無いのが現実で、結果として働けないほど悪化してから助けを求めることになる。根本的な部分の解決をしないことには、より一層の格差拡大につながるのだろうなと考えさせられた一冊。
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SDGs|目標3 すべての人に健康と福祉を|
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