縄文の思想 (講談社現代新書)

  • 講談社 (2017年11月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784062884549

作品紹介・あらすじ

縄文人のリアルな思想、彼らの他界観や世界観など生き方を律した思想が、海辺や北海道、南島という日本列島の周縁に生きた人びとの、弥生時代以降の歴史に光を当てることで明らかに。縄文は単なる失われた過去ではなく、周縁の人びとの生を律する思想として、上記の人びとのなかに脈々と生き続けてきた。考古学、神話学、民俗学を綜合し、もうひとつの日本列島人の歴史を描くこれまでにない縄文論。


 文字に残されることのなかった縄文人のリアルな思想、かれらの他界観や世界観といった生々しい観念の世界、すなわち縄文人の生き方を律した思想を、どうすれば知ることができるのか──。
 本書はこの難問に、考古学と日本列島の様々な神話・伝説といった具体的な資料にもとづき、さらには海辺や北海道、南島という日本列島の周縁に生きた人びとの、弥生時代以降の歴史に光を当てることによって解答しようとする試みです。縄文は単なる失われた過去ではなく、周縁の人びとの生を律する思想として、上記の人びとのなかに脈々と生き続けてきました。その生の様式をとおして、もうひとつの日本列島人の歴史を描くことが本書の目的です。
 では、なぜ周縁の人びとなのでしょうか。
 かれらは弥生時代以降、縄文伝統である狩猟漁撈のほか多様な生業に特化することで農耕民との共存を実現し、その結果、縄文の習俗や思想をとどめることになったと著者は考えています。周縁の人びとの、弥生時代以降の歴史に注目しようとする理由はこの点にあります。
 縄文を「思想」としてとらえようとする場合、これまでは、具体的な手がかりがほとんどないと考えられていたために、どうしても書き手の「ロマン」、思い込み先行になりがちだったのではないでしょうか。本書では、上記の画期的なアプローチにより、いままでに明らかにされることのなかった縄文の核心に迫るものです。

みんなの感想まとめ

縄文人の思想や文化を深く掘り下げ、彼らの生き方がどのように日本の歴史や文化に影響を与えたかを探る内容が魅力的です。著者は、考古学や神話、民俗学を駆使し、縄文時代が単なる過去の遺物ではなく、現代に息づく...

感想・レビュー・書評

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  • 貧富の差のない縄文時代に、農業がもたらされて弥生時代が始まった。こんな直線的な理解を打ち砕く名著。

    南方から渡来した原日本列島人=縄文人のもとに農業がもたらされる。縄文人は農業を部分的に受け入れ、渡来人と混血しつつも沿岸部を拠点とする「海民」として幅広い交易で繁栄する。縄文と弥生は長く併存するのだ。

    沖縄とアイヌの共通の文化的属性、DNAの解析、山陰と東北の言語的共通性などから「日本人の源流」が浮かび上がる(ここで、奥出雲弁と東北弁が非常に似ている、ということが推理のカギとなる松本清張「砂の器」を思い出す人はするどい)。

    日本各地の神話で、海にある洞窟はなぜ山の頂上につながっているのか。そして美しい姫が黄泉の国で醜い姿になっているのはなぜか。著者はこうした点を丹念に分析し、海の民が農耕系王朝に駆逐されていく過程を描いていく。

    本来の(美しく多様な)日本像を実感できる本。

    • ☆ベルガモット☆さん
      naosunayaさん 暑中お見舞い申し上げます

      いつもいいね!をくださりありがとうございます。
      縄文時代に興味を持つようになり、こちらの...
      naosunayaさん 暑中お見舞い申し上げます

      いつもいいね!をくださりありがとうございます。
      縄文時代に興味を持つようになり、こちらの本をnaosunayaさんの本棚で見つけました。紹介とレビュー参考になります。お正月に登録というのも素敵ですね。
      読みたい本リストに追加しようと思います。
      2022/07/24
    • naosunayaさん
      ありがとうございます!
      ありがとうございます!
      2022/07/24
  • 縄文時代の習俗、文化、思想について、著者の研究を紹介した本です。

    この国の多くの人々の遺伝子にその痕跡が残り、文化にも大きな影響を与えている縄文人がどのような思想を持っていたのかに興味を持ち、本書を読んでみました。

    ゲノム解析によって解明された人類の軌跡を綴った「種の起原」という本によると、縄文時代に遺伝的に均一な集団が日本列島に住んでいたわけではなく、縄文人と分類されている人々は多様なグループから成っていたそうです。よって縄文文化とは何かを画一的に論じることはできないでしょうし、そもそも文字を持たなかった彼らの文化を精緻に知る事は不可能だと思います。こうしたことに注意が必要という前提付きですが、アイヌや南島の人々の習俗を通して縄文の思想を探った本書の仮説は非常に興味深かったです。縄文文化のポイントとして、以下があげられていました。

    ①海と山の二元論
    ②神と人、人と人の間の贈与による結びつき
    ③自由、自治、平和、平等(ただし、排斥や閉鎖性を前提としている)
    ④広い地域での交易と移動を前提とした緩やかな定住
    ⑤ 呪術的な儀式や慣習の発達

    読んでいて感じたのは、縄文文化は、国土の7割以上を占める山々と、大きな海流が巡る海に囲まれた日本特有の風土によって育まれたものだということです。縄文時代を理想郷だとは思いませんし、そこに立ち返れなどと言う気も全くありませんが、固有な文化を一万年単位で育んだ彼らの思想の残滓が今日の我々の文化にも組み込まれていることを、もっと誇って良い気もします。

  • 「縄文の思想」というんだから、縄文の価値観について深掘りして、縄文人が何を考えて暮らしていたのか、そしてそれが現代日本人の思想に与えた影響がわかる本かと思ったが、ページ数の大半は著者の専門である縄文人とアイヌ人のつながりについてだった。
    価値観の部分もほぼ洞窟に関する話だけじゃなかった???
    これが「縄文とアイヌ」という本だったら手に取ってないので、若干タイトル詐欺である。

  • 日本の社会の形が弥生時代、農耕社会より始まった、というのことは事実としては正しいと思う。
    縄文文化→弥生文化とすると、縄文文化を前社会的とする感覚になるが、果たしてそうなのか?
    世界遺産に選ばれた「北海道・北東北の縄文遺跡群」を調べると、どうもそうではないような気がする。
    どこかで縄文文化、縄文社会について気になるところがあり、福岡伸一先生の薦めもあり、本著を手に取る。

    「海民」の存在、南北のつながり(沖縄からアイヌまで)、自分が住む瀬戸内にも関係する内容は興味深いものばかりだった。

    ある意味で閉塞的な農耕社会とのアンチとしての海民社会、縄文社会を捉えていることも、現代の日本にとっては学ぶべきところかもしれない。

    以下引用~
    ・北海道縄文人は、伝統的な「旧石器的生業体系」を維持しながら、そのことによって異文化の産物を入手することが可能だったのであり、もともと植物食への依存が大きくなかったこともあって、農耕を積極的に導入する意味はなかったのです。

    ・(アイヌにとって)海の神がむかった「高山」とは、死霊と祖霊の世界の境界であり、山の女神はその世界の住人であったことになります。つまり、海の神の山中往還譚は、海の神がなき女神を訪ねる、他界への往還譚にほかならないのです。

    ・生命の誕生や成人は、祖霊の生まれ変わりや祖霊による祝祭とむすびついており、山の神はその祖霊だったということになるのです。

    ・海民、アイヌ、南島の人びとの伝説では、海と山の二元的な世界観が語られており、その二つの世界は他界によって有機的にむすびついていました。
    そのむすびつきは、洞窟と高山という現実の空間をつうじて可視化され、生者である海の神と死霊・祖霊である山の女神の交流という神話によって論理的に了解されていたのです。

    ・山の神をめぐる農耕民の世界観は、「海」と「山」という縄文の二元的な世界観が変形されたものであり、したがって縄文の世界観の継承であると同時に、構造的な変容だったといえそうです。

    ・縄文時代の遺跡に強い階層化はうかがえません。分配と平等は縄文の思想でもあったとおもわれます。
    谷川は、平等とは分配の平等のことであり、なぜ漁民が惜しみなく分配することができたのかといえば、それが神からの授かりものだったからだ、とのべます。

    ・網野善彦は、「延喜式」に記載された神選が、コメや酒などの農作物より海産物が大きな比重を占めていたことから、「日本の神々は農業神としてだけではけっして理解しがたい、著しい海の香を身につけた神々だった」とのべ、列島社会のなりたちを複眼的にとらえる海民史観を唱えました。

    ・網野善彦は、海民が農耕民とは異なる独自の世界をもち、農耕民がその生活を維持するうえでなくてはならない交易相手であったこと、中世や近世初期の商人の出自も圧倒的に海民であったことをあげ、日本の社会像をいちぢるしくゆがめてきた閉塞的な「島国論」「稲作一元論」を克服するため、なにより海民の社会と歴史の研究を早急に充実させる必要がある、と訴えたのです。

  • 申し訳ありません。新しく得られるものがありませんでした。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/729433

  • 縄文文化、アイヌ文化、南島(鹿児島など)海民文化に、共通性が見られる、というところから、そこに残っているのは縄文の思想ではないか、という視点から書かれた本。
    (縄文文化に文字はないので文献等から知ることはできない)
    根底には、農耕(日本の弥生時代)を起源とする資本主義社会の生きづらさへに対するヒントとを縄文思想に求めようという著者の意図が伺える。

    弥生の農耕文化が朝鮮半島を経由して日本に広がったことはほとんど間違いない。
    このとき、縄文人は弥生人に駆逐されたのかというと、遺伝子が大陸の人々と十数%異なることから、縄文人は弥生人と同化もしたであろうことが書かれている(逆に言えば現代人の80%以上は中国や朝鮮半島と共通していることになる)。

    著者が縄文の思想を残しているとしているのは、アイヌと海民だ。
    イレズミや抜歯といった文化が共通しているという。

    また、縄文の思想はそれらの地域の口伝の神話と、『古事記』『風土記』などの文献との共通性からも見出だせるという。
    それは海の神と山の神がいて、海の神が山に向かうという共通性に見られる。
    もう1つはそれらの神話における(農耕の場である)平野の不在にある。
    あるいは女性が太陽光により赤い卵を授かり、そこから神的な人物が生まれる神話は朝鮮とすら共通しているという。

    この仮説通りであれば『古事記』などの神話の源流は縄文文化にあることになる。

    この本を読むと、確かに立地的に離れた地域で神話や文化の共通性が見られ、それが縄文の思想であると考えることもできる。
    一方で「共通性のみに言及」しているため、各地域の差異が分からない問題もある。

    アイヌや海民のような狩猟採集文化は平等な社会、農耕文化は支配・被支配的な社会になりやすいことはすでに知られている。

    狩猟採集は食物を蓄えられず小規模で、また獲得できるかは運次第にであるから、コミュニティ内で平等な分配が行われる。
    ただし、本書で贈与と呼ばれている行為は物々交換に近い。
    そのためマルセル・モースの『贈与論』的なものとは異なるが、「神により命を授かった」ということ自体が贈与を受けたことを意味し、その「負い目」がアイヌや海民に贈与文化を生んでいるというモース的な記述もされている。

    一方、農耕は食料の生産性の高さと定住から、人口が増える。
    (採集民族は多数の乳幼児を抱えて移動することは困難なので人口は一定以上増やせない)
    また食料の余剰が生まれ備蓄が可能なことから、管理者=生産に直接関わらない権力者や官僚が生まれる。
    (彼らは生産しなくても税金、昔で言えば年貢などで暮らすことが可能だ)

    アイヌや海民のような狩猟採集集団が、農耕の導入を拒否した理由は本書では明らかにされていないが、本州では同じ村に住んでいてさえ、農耕民と漁業民(海民)の交流はほとんどなかったとされる。
    そのため近現代でさえ、地域によっては縄文文化の痕跡と思われる信仰などが残っているという。
    なお、海民は時代によっては海賊(倭寇など)でもあった。

  • 自然との共存とは、低開発ではなく、
    自然と結び付いていた世界観、他界観が現実の世界そのものであり、
    自然自体が人々の生と死を結び付けるものであった。

    海民とアイヌは自らの社会に不可欠な自由と自治のために縄文の思想を選んだ。

    平等と分配 
    神からの贈与は魂でもあり、商品化して売り払ったり独り占めすることはしない。
    商品経済は人間性を否定している?

    ブログには、もう少し詳しく書いてあるので、よかったら見てください☆

  • アイヌの研究者である著者が、アイヌや南島のなかに生きる「縄文の思想」にせまろうとする試みです。

    アイヌにおける「閉じた」側面と「開かれた側面」の両面を指摘し、とくに海民との交流・交易について論じられている箇所は、スリリングな展開だと感じました。ただ、アイヌにかんする考古学的な事実と、本書のテーマとなっている「縄文の思想」をつなぐリンクは、十分に示されていないような印象を受けました。

    著者の語る「縄文の思想」が魅力的なものであるだけに、著者がいささか前のめりの姿勢になってしまっていることに危惧をおぼえてしまいます。

  • これまでの歴史の視点ではなく、いまなお伝承されていたり、日常生活の中で何となくやっていることと、3000年も昔の縄文時代が繋がっているという驚きたるや、言葉に尽くしても尽くし足りない。知的好奇心にグイグイと刺さってくる本は久しぶりです。

    一つ前に弥生時代の歴史という本を読んでいたので、次は縄文だな。ぐらいの軽い気持ちで読み始めたものの、これはすごい。アイヌ、南島の人々の神話から折口信夫、網野善彦、中沢新一まで。贅沢な本です。
    伝説の反転、海民の神話が農耕民に取り入れられたときにどうなるか、スサノオとは、自由とは。大いに刺激を受けた一冊でした。

  • アイヌ学からの流れで。
    縄文の沈黙貿易や解体場所の隔離が国家と階級の回避への必死の試み、という感覚はとても納得しやすかった。男女間の役割分担にその平等性への志向はあったのだろうか。

  • [自分のための読書メモ]
    講談社より同時期に出版された『世界神話学入門』(後藤明著)、また『歴史の中のコメと肉』平凡社、(原田信男著)と前後して読み進める。
    縄文の思想とゴンドワナ型の神話の類似性があるとすれば、海民のネットワークを地域を大幅に超え、時代もより長いスパンで考えることができる。

  • 私にとって最初の縄文入門となった。

  • この本では、あわゆる縄文時代に日本列島のほぼ全域に住んでいた人びとを縄文人と呼んでいますが、その縄文人の核ゲノムの解読によれば、かれらはアフリカ、ヨーロッパ、東ユーラシア(中国、日本、ベトナムなど)の人びとのいずれにも属さない、孤立的な遺伝子的特徴がある、現生人類のなかでも古層の集団なのだそうです。なんと!
    そして現代の「本土人(本州の人)」の中にはその縄文人のDNA的特徴が10数パーセントも残っているそうです(アイヌや南島の人びとはもっと)。なんだか、とてもうれしい!

  • 考古学者が、縄文人の生き方を律した思想、あるいはかれらの他界観や世界観といった、生々しい観念の世界に新たな発想・アプローチの仕方で、われわれ日本人の鬱なる「縄文性」に迫った著作です。
    その方法ですが、芸術的な感性などではなく、考古学と神話から具体的な資料にもとづいて縄文の思想を明らかにしたのです。
    内容
    はじめに
     生き残る縄文/なぜ共通する神話/伝説があるのか
     周縁・まれびと・修験者/アクチュアルな生の思想
     なぜいま縄文なのか
    序章 縄文はなぜ・どのように生き残ったのか
    第1章 海民と縄文――弥生化のなかの縄文
     1 残存する縄文伝統
     2 海民の誕生
    第2章 海民とアイヌ――日本列島の縄文ネットワーク
     1 海民のインパクト
     2 交差する北の海民・南の海民
     3 離島の墓に眠るのはだれか
     4 謎の洞窟壁画
    第3章 神話と伝説――残存する縄文の世界観
     1 共通するモティーフ
     2 他界の伝説
     3 縄文神話とその変容
     4 伝播した海民伝説――アイヌの日光感精・
                 卵生神話
    第4章 縄文の思想――農耕民化・商品経済・
               国家のなかの縄文
     1 呪能と芸能
     2 贈与と閉じた系
     3 平等と暴力
     4 動的な生へ
    おわりに

    ですが、日本の歴史、弥生〜商品流通経済・現代なのですが、縄文人が培ってきた日本人の原点は現代の日本社会に必ずや残されているはずだという私の思いにこたえてくれる素晴らしい本でした(感謝)。

  • 縄文時代から現代に至るアイヌと日本の海民との神話的連続性を、微に入り細に入り読み解いた労作。
    私も大学の卒論で同じテーマを考えたことがありましたが、伝承が共通していることを同起源の証拠とするわけにはいかない難しさがあるだけに、慎重に冒険する立場が必要ですし、これはその基準をクリアしていると思います。

  • 「モティーフの反転」すなわち「王権神話による」「意図的改変」って、神話解釈乱暴過ぎる。

  • 九州の地名にアイヌ語起源が残っていたり、古事記とアイヌ神話の共通点など興味深い指摘が多い。大学時代の先生が登場したり親しみも湧くのだが、なんとも硬い論文のような書籍で読み物としては楽しくない。研究者向けなのだろうか。内容的には質が高いと思われる。

  • 東2法経図・開架 B1/2/2454/K

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