試みの岸 (講談社文芸文庫 おI 3)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062900065

作品紹介・あらすじ

馬喰・十吉は、海への憧れを一艘の貨物船に託した。一族の悲劇はそこに始まる。甥の余一は、崖から落ちる十吉の愛馬アオに変身し、港町で従姉・佐枝子が自死したという噂を耳にした。駿河湾西岸地方を舞台に、運命に試される純粋な人間の行為を「光と影」の綾なす世界に、鮮やかに刻印する三部作。力強いデッサンによって、海・波・光など自然の原型を焙りだし、重苦しい生の課題を問う小川文学の達成。

感想・レビュー・書評

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  • 三部からなる連作中篇。人生の苦悶に行き当たったとき、ある者は自らを殺め、ある者は他者を殺め、またある者は人間存在を逸脱して馬に転身し……馬 に、転 身 し ! 冒頭からいぶし銀な文体と内容が展開されるところ、第二篇では突然のぶっとんだ、怪奇的な脱皮におののかされた。

    物語は海辺の集落が舞台。命のやりとりはすべて海に面した崖や岩場で繰り広げられるし、彼らの思考は波に弄ばれているような、風に煽られているような、そんな逼迫した趣がある。
    とにかく人の心のあり様は重苦しく、海も黒黒と不気味である。
    ただ、人物ひとりひとりの心理を細やかに描く一方で、広大な太平洋、原初としての海の存在感が圧倒的で、人の生のあはれというものを感じずにはいられない。

    また、はじめ二篇は三人称小説でごりごり攻めてくるのだけど、最後の一篇だけ今度は村娘の一人称語りに転じ、つまり急にころっとかわいげがでてくるのも印象的。終末的に暗い情景に、好きな人に抱きかかえてもらえるなら怪我もうれしい、なんて思ってる自分おかしい、と胸キュン独白が飛び出してくるからいろんな意味で胸に迫る。

  • 行動や会話を客観的に描写するだけの書き方は、きちんと読まないと主人公の意図や話の流れがつかみづらい。いつの間に日が変わったの!?なんて時もあった。

    さりげなく足掻いても、力尽きて砂に沈んじゃう感じ。
    たまに出てくる健康的な命が眩しい。

    2、3の方が良かった。

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著者プロフィール

1927年, 静岡県生まれ. 2008年4月8日, 帰天. 旧姓静岡高校時代にカトリックの洗礼を受ける. 1950年, 東京大学国文学科入学. 53年, パリ大学に留学. この頃, 単車ヴェスパを駆って地中海沿岸を旅する. 56年に帰国し, 留学と放浪の体験から生まれた『アポロンの島』(57年)によって, 文壇に登場する. 小説作品には, 『試みの岸』『或る聖書』『彼の故郷』『悠蔵が残したこと』『悲しみの港』『ハシッシ・ギャング』ほかがある. 91-95年, 『小川国夫全集』全一四巻刊行. また没後, 『弱い神』『襲いかかる聖書』(2010年), 『俺たちが十九の時──小川国夫初期作品集』『ヨレハ記 旧約聖書物語』(12年)などが刊行されている.

「2014年 『イシュア記 新約聖書物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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