単線の駅 (講談社文芸文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062900270

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  • 「昔日の客」読了記念に。

  • ・≪車内禁煙≫
    昭和49年の作品。4,5年前に湘南電車の平塚・東京間が車内禁煙となったころのエピソード。日に50-60本吸う愛煙家の筆者が戸惑いながら、ルールを重んじ、守らない者に注意を促す。時代を感じる。
    ・筆者が農薬や化学品、人間の驕りに危機感を感じる気持ちが度々みられる。例えば、≪盛夏漫筆≫(昭和50年)『私は彼らを可愛がっているが、だからといって、それにたかる虫を一匹残らずやっつけようという気はない。植物と昆虫のつながりは微妙であってそれをバッサリ断ち切ろうとするのは人間の思い上りであろう。この世の全責任を負えるほど人間はエラくはない。』
    ・≪小説の脊骨≫筆者の若い頃は、文学修業と言えば純文学を勉強することであったそうだ。純文学畑の人たちが稼ぎのために通俗小説などを書くようになったことを嘆く。通俗小説なり、式場小説なり、五十過ぎの作家の書くもののほうが若い人のよりもまだマシだという。五十代の作家は、検閲、取り締まり対策に露骨な言葉を使わぬよう必然的に文章がうまくならざるを得ないのだそうだ。筆者は、小説とは元来、事態によって変わってゆくもの、放っておけばいいと諦めつつも、文学界の将来を憂う。
    ・メモ。木山捷平 『茶の木』、大岡昇平、松井栄造(野球選手、懇意にしていたが戦死した)、浅見淵
    他に、暢気眼鏡映画化の際のエピソードも昭和十五年 島耕二監督 日活多摩川作品。原作とはまったく違っていて尾崎は腹を立てた。

  • 数少ない尾崎一雄のエッセイが読める本。あの日この日、復刊されないかな。

  • よい。井伏さんより気が短く庄野さんより細かい尾崎さん。

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著者プロフィール

尾崎一雄

一八九九(明治三十二)年、三重県に生まれ、小学生時代に神奈川県に移る。小説家。早稲田大学国文科卒業。在学中より志賀直哉に師事。プロレタリア文学の興隆に押されて行きづまり貧困と沈滞の時期を経て、結婚が再起の契機となり、一九三七(昭和十二)年ユーモア小説『暢気眼鏡』で芥川賞。戦争末期より大病を得、病中の死生観を吐露した『虫のいろいろ』を発表。『まぼろしの記』、自伝的回想『あの日この日』(ともに野間文芸賞)ほか著書多数。七八年文化勲章。八三年三月没。

「2022年 『新編 閑な老人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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