槐多の歌へる 村山槐多詩文集 (講談社文芸文庫)

著者 : 村山槐多
制作 : 酒井 忠康 
  • 講談社 (2008年11月10日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062900324

作品紹介

個性主義芸術の時代あるいは生命主義芸術の時代と呼ばれた一九一〇年代に、彗星のごとく画壇にデビューし、二十二歳で早世した天才画家・村山槐多。彼は生得の詩的才能にも恵まれていた。人生と社会の矛盾に打ち拉がれながらも、野性の生命力の回復を希求する詩魂は、鮮烈な色彩感覚と結びつき独自の世界を構築した。放浪、デカダンスのうちに肺患により短い生を駆け抜けた槐多の詩、散文詩、短歌、小説、日記を精選収録。

槐多の歌へる 村山槐多詩文集 (講談社文芸文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 停車場の汽車のひびきをききつつもわれらが恋のことばをもきけ
     村山槐多

    満22歳と5カ月。結核で早世したこの画家の魂は、残された絵画や詩歌を通して、今なお私たちに語りかけてくる。
     1896年(明治29年)、横浜市生まれ。教員である父の赴任にともなって、少年期は四国や関西で過ごした。
     絵画や外国文学を愛する早熟な槐多。その天与の画才を見出したのは、従兄の画家山本鼎だった。従兄の激励もあり、父の反対を押し切って18歳で上京。日本美術院の研究会員となり、水彩画や油絵を精力的に描く生活となった。
     とはいえ、青年画家は経済的には「底」に陥るのが常だ。

      底をゆくこの生活のおもしろさ底を極めむところまでゆけ

    原稿料のために小説や論文なども手掛けたが、極度の近視で、視力喪失の不安はついてまわった。モデル嬢に失恋して酒に溺れ、警察のやっかいになるという退廃的な生活も、詩や日記に記されている。 
     「火だるま槐多」と称された絵画作品には、赤や青の原色遣いに圧倒的な迫力がある。生命力に満ちた異才の筆力だ。一方、詩歌には青春の切なさも見いだせる。掲出歌の「恋のことば」はじめ、次のような歌も。

      さびしさのアルミニウムに蔽はれし心地ぞすなる今日此頃は

     「さびしさ」というアルミ箔に包み込まれた、ひりひりとした青春の感覚。絵画とはまた違う叙情性が伝わってくる。結核発病後も絵筆を握り続け、命の火が絶えたのは、1919年(大正8)年だった。

    (2012年9月2日掲載)

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