林達夫芸術論集 (講談社文芸文庫 はK 1)

著者 :
制作 : 高橋 英夫 
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本棚登録 : 23
レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062900522

作品紹介・あらすじ

軍国主義から共産主義へと移ろう時代の風に対しつねに反語的精神で佇ち、ルネサンス研究始め知の領域へのあくなき探索の道程で、「批評家と歴史家との幸福な結合」(三木清)を体現した林達夫。若き日の天稟を示す「歌舞伎劇に関するある考察」、ダ・ヴィンチ「聖アンナ母子像」の深遠な謎に果敢に分け入るスリリングな論考「精神史」、最晩年の「遊戯神通の芸術」等、林達夫の核心ともいうべき"芸術へのチチェローネ(案内)"二十一篇。

感想・レビュー・書評

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  • 一級品です。超面白かった。
    林達夫がいろいろな時代に、いろいろな場所でのこした芸術論をあつめたもの。
    22歳の一高時代に書いたものもあれば、評論家として名をなした壮年のものもあります。そのせいで、というかそのおかげで、この稀代の評論家にも「発達過程」というものがおありになったんだな、と感じられ、そこもまた良い。
    たとえば一高時代に投稿した論文『歌舞伎劇に関するある考察』においては次のような記述がある。
    <<われわれの血管を流れている血液のなかには耽美的傾向がある。悪魔的傾向がある。淫心がある。すべての犯罪への素質すらもある。機縁に触るれば、われわれはわれわれの生活の一つの態度として、美的生活を生きることも出来れば、頽廃的生活を生きることも出来る。(中略)そしてわれわれの道義的生活、第一義の意志的生活は(略)>>
    こんな前のめりの意志に溢れた若い論文もある。ここで林は歌舞伎劇がうまれた時代の土壌について、ほとんど同年代の僕が見たくなくなるような鋭い閃きをみせているが、60歳を超えたときに書いた別の論文ではまた違った顔を見せる。
    <<わたくしは自分の不得手をあれこれと矯めているうちに何もできずに生涯のたそがれに来てしまったようなウカツな手合いの一人なのである。>>『一高時代の友だち』より
    このふたつの引用において、同じ語が違った表記でなされていることに気がつく。「できる」を前者では「出来る」と表記しているが、後者で漢字を使っていない。
    この違いにはおおきな意味があると思う。
    年齢の違いによる表記の違いという意味もあるし、文章の目指す性質からくる違いもあろう。でも前者だと思ったほうが楽しめると思いました。
    論壇のエースの若さあふれる卵時代も見れちゃうお得な本。

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