村のエトランジェ (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 115
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062900546

作品紹介・あらすじ

都会的感覚で描かれた戦時下の心象風景

小さな村に疎開してきた美しい姉妹。ひとりの男をめぐり彼女らの間に起こった恋の波紋と水難事件を、端正な都会的感覚の文章で綴った表題作ほか、空襲下、かつての恋人の姿をキャンバスに写すことで、命をすりへらしていく画家との交流をたどる「白い機影」など、初期作品8篇を収録。静かな明るさの中に悲哀がただよい、日常の陰影をさりげないユーモアで包む、詩情豊かな独自の世界。「小沼文学」への導きの1冊。

長谷川郁夫
パリサイ人・ニコデモは、いわば善意の傍観者として描かれていた。と記せば、新約聖書ヨハネ伝中のこの人物に小沼さんが興味を惹かれた理由は明らかだろう。父親とも、キリスト教とも、戦争とも等間隔の距離を置く傍観者としての立場を病める文学志向者は選択した、いや選択せざるを得なかったのだ。(中略)傍観者であることの苦痛は、憂鬱と倦怠、ニヒリズムの暗い気分となって、「村のエトランジェ」1冊に一刷毛の翳りを残している。――<「解説」より>

感想・レビュー・書評

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  • 書くのが遅くなってしまった。(4/19)
    白孔雀のいるホテルと、村のエトランジェがとくに良かった気がする。次点で紅い花、汽船。けどどう良かったか書くとなると難しいな。チェーホフぽかったのかなと、かもめを読んだからかそう思う。人の死ぬタイミングや動機、そこまでの経緯に近しいものを感じた。そうだ、主人公の立ち位置がいいんだ、これらの小説は。解説で傍観者の文学と言われていたけれど、まさにそんな彼(=主人公)の内面が、それを見る視線、起きる出来事によって浮き彫りにされている。で、その内面というものは小説でしか書き表せない曖昧ななにかだったりする。だからいいんだ。村のエトランジェはとくにそういうものを感じる作品で、冒頭で女が詩人を川に落とす場面からはじまり、回想を挟んで、川に落としたのを見ていなかったと僕とセンベイがともに嘘をつくという流れがたまらなく素敵だった。
    そういえばカプリ島が作中に登場していた。庄野潤三の本で、「小沼の好きな曲だった『カプリ島』...」という風に出てきた覚えがあったのでなんだか嬉しくなった。

  • 著者初めての作品集。昭和二十年代に書かれた作品なので戦争の影響が色濃いですが、文体や物語に古さはほとんど感じられません。ミステリーっぽいものや歴史ものなど多彩ですし、読みやすく、ユーモアも感じられる。面白くもあり、いい小説と思いました。
    自分は「白孔雀のいるホテル」が一番よかったですね。

  • 小沼丹の初期短編集。大寺さんに辿り着く前にはこんなにも多彩な作品を手掛けていたのですねと云うのがまず第一印象。瀟洒なミステリから東西問わずの歴史掌編までバラエティ豊かな1冊で、非常にお腹いっぱいになれます。
    お気に入りは「登仙譚」「白孔雀のいるホテル」「ニコデモ」あたりですが、ちょいちょい出てくる気の強そうな美人キャラと、ひょろりとした長身の詩人キャラも好きです。

  • 「都会的な感覚」「ユーモア」という世評に惹かれて読んでみた。が、よくわからない‥>< 特に、女性陣の魅力がさっぱり、で悲しい。

    太平洋戦争前後に書かれた8篇を収録した短編集。星2つは、作品のせいじゃない。。(2018.5.17読了)

  • 小沼丹初の作品集。
    表題作は、主人公の疎開先でのざわざわした出来事が綴られていて、なんだかミステリぽい。
    作者はミッション系の学校出身で、自身英語教師でもあったので、使われているカタカナ語が目新しく思えました。巻末には年鑑と作者写真も載っていて、ひととなりを知る事もできる贅沢な文庫です。

  • 初期作品集 やっぱり大寺さんが登場する話のほうが好みだ。

  • まだ作家の方向性が定まっていない感じ。もっと後期の作品の方がすきだな。

  •  大学生になったばかりの頃、僕はひと夏、宿屋の管理人を勤めたことがある。宿屋の経営者のコンさんは、その宿屋で一儲けして、何れは湖畔に真白なホテルを経営する心算でいた。何故そんな心算になったのか、僕にはよく判らない。
     ……湖畔に緑を背負って立つ白いホテルは清潔で閑雅で、人はひととき現実を忘れることが出来る筈であった。そこでは時計は用いられず、オルゴオルの奏でる十二の曲を聴いて時を知るようになっている。そしてホテルのロビイで休息する客は、気が向けばロビイから直ぐ白いヨットとかボオトに乗込める。夜、湖に出てホテルを振返ると、さながらお伽噺の城を見るような錯覚に陥るかもしれなかった。
     コンさんは、ホテルに就いて断片的な構想を僕に話して呉れてから云った。
     ――どうです、いいでしょう?ひとつ、一緒に考えてください。
    (「白孔雀のいるホテル」本文p.148)

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著者プロフィール

東京生まれ。1942年、早稲田大学を繰り上げ卒業。井伏鱒二に師事。高校教員を経て、1958年より早稲田大学英文科教授。1970年、『懐中時計』で読売文学賞、1975年、『椋鳥日記』で平林たい子文学賞を受賞。1989年、日本芸術院会員。

「2018年 『ゴンゾオ叔父』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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