未成年・桃 阿部昭短篇選 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062900607

作品紹介・あらすじ

敗戦で失職した元海軍大佐の父。時代に背を向け不器用に生きた父と家族の「戦後」を、激情を内に秘めた簡潔な表現で描いた「未成年」(「父と子の連作」の一)。幼年期の記憶のヴェールに揺曳する一情景を繊細な筆致で甦らせる「桃」。阿部文学の通奏低音である湘南の大自然と朽ちていく人の家を対比、早過ぎた晩年の心鏡を刻む「水にうつる雲」。澄明な文体と深いユーモアで人生の真実を描いた阿部昭の名篇十篇を精選。

感想・レビュー・書評

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  • 前半の話がとくに好きだった。
    いわゆる私小説系にジャンルされる話だと思うが、主人公が小説家の小説ってすごいなとふと思った。ある種、身分を露わにすることで自分の身の回りに起こることだけで勝負している気がする。それでいて彼の眼に映る景色がちゃんと面白く見える。すごい。

    おふくろがかなり好き。若い男が未成熟なまま女と関わりを持つ話は好きかもしれない。話としてはちがうところが多いけれど、安岡章太郎の「ガラスの靴」を感じる。そして母との話でまた新たなものを見た気がした。好き。

  • 文学

  • ちょっと難しかった…

  • 「未成年」、「おふくろ」の、外側は優しそうな、一人称が「僕」であるような若者が隠し持つ凶暴さが少しこわかった。もう長いこと、自分も含めた人のなまのあらあらしさに触れていなかったから。

    今まで読んできた私小説家の小説は、年を追うごとに穏やかになっていたものだったけれど、この人は若い頃の激しさを変わらずに保ち続けたように見える(「怪異の正体」、「水にうつる雲」)。日本のおじさん作家に厳しい言葉で妻との関係を語られると、これから積み上げなければならない努力の果てしなさが思われて背中が重い。

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著者プロフィール

小説家。1934年広島県に生まれ、翌年より神奈川県藤沢市鵠沼で育つ。東京大学仏文科を卒業後、ラジオ東京(現在のTBS)に入社。62年に「子供部屋」で文學界新人賞を受賞。68年に処女短編集『未成年』を刊行。その後、71年にTBSを退社し、創作活動に専念する。73年『千年』で毎日出版文化賞を受賞。76年に『人生の一日』で芸術選奨新人賞受賞。幼少より暮らした鵠沼を舞台にした作品が多く、また、短編小説の名手として知られ、数多くの作品を残している。

「2019年 『March winds and April showers bring May flowers.』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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