- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062900652
作品紹介・あらすじ
泥のごとできそこないし豆腐投げ怒れる夜のまだ明けざらん-零細な家業の豆腐屋を継ぎ病弱な体を酷使する労働の日々、青春と呼ぶにはあまりに惨めな生活の中から噴き上げるように歌は生まれた。そして稚ない恋の成就…六〇年代の青春の煌きを刻印し、世代を超えて読み継がれた本書には、生涯、命と暮しを侵す権力に筆と肉体で闘いを挑み続けた作家の揺るぎない「草の根」の在り処が示されている。
感想・レビュー・書評
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弟に勧められて読む。自分ではまず選ばないので、ありがたい。
貧乏で身体の弱い豆腐屋の生活の中で生まれた短歌と随筆で、すごく良かった。素朴な感じとか、ひたむきさ、実直さが良い。
しかし、筆者がどこか真面目過ぎ、自身の滑稽味を楽しむ感覚に欠けるところが惜しい。
例えば、妊娠してあまり構ってくれなくなった妻について、
妊りしおのれ尊みたやすくは我触れしめぬ妻となりたり
という歌を新聞に投稿して採用され、妻に恥ずかしいと叱られたが、これも記録だと抗弁する。
そこまでプライベートなことも短歌のフォーマットに乗せればみんなで共感できるんだと感心する反面、さすがに奥さんが気の毒だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
豆腐屋を営みながら
庶民の暮らしを歌にした青年の
日常。
貧しさ、家族への思い、
仕事というもののとらえ方、
いまの日本からすると外国の話のよう。
こうした作品が大手から出版されて、
テレビドラマにまでなった
時代の感受性は、
ひょっとしたら羨むべきものなのかも
しれない。 -
なるほど非常に素朴で流麗な言葉を連ねて、非常に美しい精神世界を活写してゆく、稀なる小説。
もはや同じ日本のことについて書かれたのだということを鑑賞するには、超絶的にかけ離れてしまった現在と当時(昭和43年)。だがおそらく通じる、この小説は。
漫画のようと書くと語彙力のなさを痛感するが、漫画的な貧窮、いまとなっては想像しえない幼な妻の献身、もどかしさこの上ない「手紙」「新聞投稿」というコミュニケーション手段など、これら絶滅文化は、何か人間を鍛錬する装置でもあったのか。
いや、そうではなく、この「豆腐屋の四季」の精神世界は昭和43年の日本においてもアナクロいものであり、センセーショナルだったのである。
突き抜け方が尋常ではない。
自費出版の翌年には、大手出版社からの刊行のみならずTVドラマ化されるというサクセスストーリーなのであるが、本作が放つ異様な吸引力を思えば、さもありなん。 -
正直に生きていくことのままならなさ。病弱な体で貧しい豆腐屋を営む著者を通り過ぎる四季の情景が、この上なく美しく、哀しいと感じました。
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文学
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2017年7月9日に紹介されました!
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大道寺将司が共感を示した。
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図書館で借りて読み終えたけれども、手元に残したいので買います。
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静かに四季が美しい日本語とともに動いていく物語。豆腐作りのシーンと短歌がじんわり染みます。
もう少し年を取れば、また良いなぁって思える作品かも。大切な人から貰った大事な本の一冊。 -
貧しい豆腐屋を妻と老父とで営みつつ、移りゆく四季の中で感じる出来事を純粋な文と和歌で綴った青春の記録。慎ましく清廉とした人生を記した一文一文がとても胸に染みた。こんなに哀しく美しい生き方があるとは。自分も真摯に生きようと思える本だった
ちなみに2作目以降は政治的主張が多くなり、労働者階級として苦しみながら生きてきた筆者の想いがあまりにも強く現れているようなタイトルばかりだったので、読むのはこの本だけにしておこうと思ったのはここだけの秘密w