刻 (講談社文芸文庫)

著者 : 李良枝
  • 講談社 (2010年5月10日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062900867

作品紹介・あらすじ

若くして亡くなった在日韓国人女性作家。日本で生まれ育ち、韓国人の血にわだかまりつつも日本人化している自分へのいらだちとコンプレックス。母国に留学し直面した、その国の理想と現実への想い。芥川賞作家の女の「生理」の時間の過程を熱く語る長篇と、「私にとっての母国と日本」という1990年にソウルで、元原稿は直接韓国語で書かれた講演を収録。

刻 (講談社文芸文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 主人公は書き出しの辺りで、鏡に映った、化粧をし化粧をされる自分を見ている。これは小説を書き、書かれる自分ということだ。主人公は小説の終わりに再び化粧を始めるが、これはまたもやエクリチュールを生産してしまうという意味だろう。
    それから、主人公の鋭い聴覚は時計の針が刻む音に敏感に捉える。歴史と現在にいる自己を一瞬一瞬強烈に意識させられている。日本があり韓国があり、日本で生まれた在日の自分がいま韓国にいるという現実である。また生理痛や汚いもの、気味が悪いものへの嫌悪を通して私たちの身体感覚に訴えかける。不幸なものと呼ばれる対象への屈折した興味も性的なイメージの力を借りて描かれる。これらすべて、主人公が「物」と呼ぶものである。その「物」と相対している自己の中には無数の一人称があり、それらを三人称化して見つめるより高次の私が小説を語っているのだが、その私も時として一人称の呪縛にとらわれてしまい、淀みなくいまを過ごすことはおぼつかない。悪夢としか言いようのない現実と人間と小説の真実に限りなく迫った作品である。

  • 単行本で既読。

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