- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062901116
作品紹介・あらすじ
旧制八高時代からの親友、平野謙、本多秋五との交友、生涯の師となる志賀直哉を訪ねた奈良旅行、最初の作品を「近代文学」に発表する経緯など-小説家・藤枝静男の誕生から、医師であり作家であることの心構え、骨董へのこだわり、晩年の心境まで-私小説に特異な新境地を切り開いた藤枝文学のエッセンスとともに、剛毅木訥なるひとがらとその人生を知るための精選随筆集。
感想・レビュー・書評
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若い頃の話や、友人であった平野謙や本多秋五についての話、骨董についての話など、いろいろと取り混ぜた静男随筆集。随筆を真面目に集成すると、割りと同じような文が出てきたりして微妙な気持ちに囚われたりすることもあるが、これは精選という感じでとてもよかった。いくつか何度も読んだ。
平野さんや本多さんについて書いた文がとりわけ面白かった。静男の目からは「ちょっと不良気味」で「父親に対する周りには見せない執着をもつ」平野謙、および「口下手」で「人を食ったようなところがない」本多秋五、という風に、二人は見える(観察している、といえそうな気がするときもある)らしい。時に容赦ない書き方なので、ちょっと笑ってしまうようなところもあるけど、「実際こんな感じの人だったんじゃないかな」と思わせる筆の力はさすが。本多さんの思想経緯を追うところの文章に表れる緊張感とかぞくぞくする。前に読んだのでもこういう緊張感があったなあ。
なんだかんだ言いながら「私はこの二人と親友であったことを感謝している」と真顔で結ぶ静男。真顔で言われた方はどう思っていたのだろうか。三人の友情はなんだかまぶしくてうらやましい。
また、堀江さんの解説が素晴らしく、何となく読んでいてぼんやりと感じたようなことが、しっかりと言葉になって輪郭がついているのを読んで、そこから再び遡って読んだりもした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「妻の遺骨」が痛切にせまる。
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藤枝静男の小説を一冊も読んでいないのに、なぜか随筆集を手に取ってしまった。でも、面白く読んだ。マイペースなおじいさんの、学生時代の思い出がまぶしい。平野謙・本多秋五との高校時代から50年続く友情がうらやましかった(文学という共通の関心があってこそだ、ということに後から気がついたのだけれど)。
朝鮮の民芸品を称える文章がいくつかあった。どんなにいいものなのか、ちょっと気になる。図鑑でも借りてみようかと思う。