風媒花 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062901260

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  • 風媒花とは風で花粉を運んでもらう花のことである。小説の最後で一匹の鼠が水に沈められて死ぬとともに、二通の手紙が焼き捨てられる。風に乗って舞い上がるおびただしい灰が、「常緑樹の花粉より生き生きと風に運ばれて」行く。今とは比較にならないほど混迷を極めている日本と中国の関係の中で、様々な立ち位置にある人間たちの群像劇が、拳銃の暴発、青酸カリ混入などの事件を起こし、めまぐるしく絡み合いながら進んでゆく。そんな中でいくつかの文章が書かれたり読まれたりしていくのだが、それが感動的である。病気の少女が繰り返し読み返す、中国に残り中国の発展に尽くす日本人がほとんどひらがなだけで書いた祖国への手紙や、何の教養もない女が国粋主義者の集団に何か書いてみろとせっつかれて何を書けばいいかわからず、とっさに中国を研究している恋人から教えられたので意味もわからず記憶していただけの魯迅の詩をスラスラ書いてしまうシーンなど。
    物語を大きく動かす二通の手紙も同様である。手紙は焼いて棄てられるが、花粉は誰の目にも届かない距離まで撒き散らされるだろう。

  • 繊細な人間描写と、独特な風景把握。淡々としているようで、動きが早すぎる。躍動感を根底に感じる。普通の小説では絶対に用いないであろう、脳の一部分に触れてくる作品。
    読後感の充実さで、凄い、と断言できる作品なのだけれど、如何せん、想像力不足、読書量不足で、まだまだ理解できない。なにが作者の思いなのか、どうしてこういった動きを見せるのか、分からないことだらけ。この先数年、様々な経験を積んで、人と出会って、感情の機微の引き出しを知ることで、その時どう読めるか。数年後、自分がどう変わったか、きっとこの本は指針となる。
    武田泰淳、底が見えない。

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