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本 ・本 (196ページ) / ISBN・EAN: 9784062901413
感想・レビュー・書評
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近代リアリズムの発生、展開、変質、崩壊と章を分けて近代小説が論じられる。発生では、花袋の私小説が藤村に文壇での影響力で勝った様が述べられる。展開では私小説が、作家個人=作中の人物ということを、書き手だけでなく読み手も前提とせざるを得ないことを嘆く。芸術に作家個人のスキャンダル性などを透かすことを嫌悪している。変質では、19世紀欧州の自然主義とそれを習った日本の自然主義が大きく乖離していることを批判する。最後の崩壊では、執筆当時の風俗小説の批判に至る。全体を通して見ると、小説の娯楽性を否定したいのかなと思う。高尚なものであってほしいのだろうなと。今ではすっかり純文と他ジャンルの垣根が見えなくなった。又吉が芥川賞を受賞したと知ったら、著者は発狂しかねない。
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近代文学の歴史を見るうえではなかなか面白い書物だが
戦前と戦後の断絶を説明するには至ってないように思う
とはいえ、その回答を導くためには十分なヒントとなる論考だろう
つまりこうだ
瀬川丑松がみずからのルーツを暴露した勇気でもって
「この戦争は負ける」と公的に叫んだ政治家、あるいは文化人が
ひとりでもいたならば
それでずいぶん日本人のプライドは救われたはずだったのである
それができなかった結果が、純文学の風俗小説化であり
長じては現在の村上春樹バッシングに至るものと
僕はそう考えてる -
「風俗小説論」と題しているわりに、風俗小説をほとんど論じないまま終わる。
むしろ中村光夫が語ったのは、「風俗小説」を生み出すに至る原因である自然主義小説や、その延長にある私小説、その反動である新感覚派とプロレタリア文学についてである。
丹波とのやりとりで前提の共有が出来ていないと感じて書かれたということなので、まさに前提となる部分を書いたと言えるだろう。
「近代リアリズムの崩壊」の章がいちばん読んでいて面白くためになった。
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