個人全集月報集 安岡章太郎全集 吉行淳之介全集 庄野潤三全集 (講談社文芸文庫)

制作 : 講談社文芸文庫 
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062901703

作品紹介・あらすじ

個人全集の月報は所有している者にしか読むことを許されなかった。しかしそこには、その友人や評論家などにより小説家の人生・文学観が色濃く語られている。安岡章太郎、吉行淳之介、庄野潤三。第三の新人と呼ばれながら、時代の先端を走った三人の全集を選び、一九七〇年代初頭の文学状況と空気感を、その貴重な名文の随筆集としても味わえる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • もともと作家のコンプリート癖がないので、当然、個人全集なども持っていない。でも、個人全集を買うとおまけについてくる「月報」というリーフレットが地味に面白いのはなんとなく知っている。最近は知らないけれど、以前は月報だけ書店で配っていたりしていた記憶があるから、それをもらって読んでいたのかもしれない。

    この本は、よく行く書店のサイトで目にして、「月報だけまとめるとは、まあ、なんとマニアックな」と興味津々で手に取った1冊。文学史的には「第三の新人」と呼ばれる3人の作品を、自分はどれだけ読んでいるのだろう?と記憶の底を探ってみると、

    安岡章太郎:『走れトマホーク』
    庄野潤三:『プールサイド小景』
    吉行淳之介:タイトルを忘れてしまったけど、行きずりの男娼宅に泊まり、しかも彼にしつこく言い寄られたときの自伝的エッセイ

    が出てくるのみの、まあ貧弱な読書歴…(涙)。それでも、目次を開くと、3人と交友のある文筆家がきら星のごとく名を連ねており、そこには自分になじみのある作家名も少々あるので、それを楽しむ手掛かりにしようとめくり始めた。

    基本的にはどれも、「○○さんと私」といったテーマの文章だが、各作家について、友人知人が好きに書き散らしていながら、共通のテーマがおのずと浮かび上がってくるような気がする。安岡章太郎の持つ、ある種のストイックさ。吉行淳之介の色男っぷりと、それに隠れてほとんど見えないはずの生真面目さ。「文士といえば無頼」のクリーシェからはほど遠い、庄野潤三の作品のもととなる端正な生活。私は、そこにいない人やものを、他人の証言などを用いて外から描いていく手法の文章が非常に好きなのだが、3人の作品をほとんど読んでいないことで逆に、どの文章も、「こういう人だったんだろうなあ」という、想像を働かせるもととなって、結構楽しんでしまった。

    個人的な好みでいえば、エドウィン・マクレランが安岡章太郎全集に寄せた文章と、入江光子によるその翻訳が素晴らしかったし、森茉莉の、吉行淳之介の身のこなしを記した表現が優美で、「ああ、これはモテるわ」と変に感心した(笑)。吉行淳之介については瀬戸内晴美(寂聴)も寄稿してらして、ここにもモテを見ることができる(笑)。庄野潤三の『ガンビア滞在記』という作品にがぜん興味がわいてきたので、読んでみようかなと思っている。

    なんだか、お三方ともいろいろバラされてしまっているようだったり、クオリティ的に「こんなの読まされてもなあ」といった文章もないわけではないけれど、それはお友達の心安さということで許容範囲なのだろう。文集として読むもよし、文壇関連(ゴシップも少々あり)本としてぱらぱらめくるのもよし、という本だと思う。それにしても講談社さん、この企画は以下続刊なんですかーっ?

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著者プロフィール

円地文子(1905.10.2~1986.11.14)小説家、劇作家。東京生まれ。国語学者の家に生まれ、幼時より古典に親しむ。「ひもじい月日」で女流文学者賞。著書に『妖』『女坂』(野間文芸賞)『なまみこ物語』(女流文学賞)『朱を奪う者』(谷崎潤一郎賞)『遊魂』(日本文学大賞)『円地文子訳 源氏物語』(全10巻)がある。
佐多稲子(1904.6.1~1998.10.12)小説家。長崎県生まれ。26年、同人誌「驢馬」の同人(中野重治、窪川鶴次郎、堀辰雄など)と出会う。28年、「キャラメル工場から」を発表。プロレタリア作家として出発する。著書に『くれなゐ』『女の宿』(女流文学賞)『樹影』(野間文芸賞)『時に佇つ』(川端康成文学賞)『夏の栞-中野重治をおくる-』(毎日芸術賞)など。
宇野千代(1897.11.28~1996.6.10) 小説家。1921年、『時事新報』の懸賞小説に「脂粉の顔」が当選。36年、ファッション雑誌「スタイル」創刊。着物デザイナーなど実業家としても活躍。著書に『おはん』、『色ざんげ』、『或る一人の女の話』、『幸福』(女流文学賞)、『雨の音』(菊池寛賞)など。

「2014年 『個人全集月報集 円地文子文庫・円地文子全集 佐多稲子全集 宇野千代全集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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