- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062901871
作品紹介・あらすじ
生きているのか、死んでしまったのか。素子と綾子の身を案じる相馬を乗せた東京発の急行列車は夜を繋いで走り続け、京都、神戸、姫路、岡山-と移り行く風景や車中での会話が彼の心と記憶を写し出す。そして目的地・広島着四・三六分。愛と死、原爆と平和、極限ともいえる人間の姿を斬新ながら、正統的な筆致で描いた歴史に残る長篇。日本文学大賞受賞。
感想・レビュー・書評
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実はマルチエンディング系の話の走りでは。
ただ、安っぽいメタな印象は一切なく読後はしばらく他の本に手が伸びなかった。
恋愛が絡むが、こういった作品で登場人物の言動に不満や疑問を抱くのはナンセンス。作者の人生哲学や書きたかった事をより全体で感じるのが没入するポイントだと感じる。素晴らしかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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淳水堂さん、こんにちは(^^)/
また実家に帰ったりしていたのでお返事遅れましてごめんなさい。
このラスト、実験的な形ではあるのだけ...淳水堂さん、こんにちは(^^)/
また実家に帰ったりしていたのでお返事遅れましてごめんなさい。
このラスト、実験的な形ではあるのだけど、「さあどれを選ぶ!?」という読者を試す印象にはならないのが良いですよね。
なんというか、どのルートを通っても結末は実は同じ(誰一人幸せになれない)というのが、結局全てなのかなと…。
生きのこったのが綾子ならハッピーエンドになりそうなものだけれど、そうはならないというのが、深いなと思いました。2022/02/16 -
yamaitsuさん
おかえりなさい!
帰省のことも書かれていますが、ご不幸もありましたようでご愁傷様でございます。
このラストは...yamaitsuさん
おかえりなさい!
帰省のことも書かれていますが、ご不幸もありましたようでご愁傷様でございます。
このラストは投げ出したとか奇を衒ったとか挑戦とかでもなく、読者が勝手に考えればというわけでもなく、ちゃんと道筋を示していて、そのどれだとしても納得というところがいいんですよね。
綾子だとしても、素子が死んだあとは無理だろうなあ。
そもそも相馬は二人が生きていても、どちらかと結婚して一生添い遂げることはなさそうな気もするし、だからこそあのラストは納得なんですよね。2022/02/17 -
淳水堂さん、ただいまです(^o^)
この年齢になると親は高齢ですし(勝手に淳水堂さん同世代と思ってますが)いろいろありますねえ…。
...淳水堂さん、ただいまです(^o^)
この年齢になると親は高齢ですし(勝手に淳水堂さん同世代と思ってますが)いろいろありますねえ…。
淳水堂さんおっしゃる通り、相馬は二人が生きててもどちらかを選ぶことはできなさそうですよね、優柔不断だし(^_^;)
どちらを選んでも結局もう一人を気にして誰も幸福になれなさそうだし。
そういう意味ではあの三人は奇跡のトライアングルだったのかもしれませんね。2022/02/17
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めちゃめちゃめちゃすごい、超好き。虚構と死の問題が絶えず描かれる。車窓から眺める雪の白さがカンヴァンス(それは素子の肉体にも繋がる)を導き、やがて骨、すなわち死のイメージへと結びつくシーンは、この小説の、ひとつの要素が様ざまな方面に連鎖して複層を成す感覚をよく表していて好きだった。
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読了後も悶々としている。素子の意識に魂が吸い取られそうで、でもその深淵には決して近づけない。なぜ?どうして?疑問符が幾つも連なる。生と死は常に対峙し拮抗している。けど大抵の人は死から目を背けることでバランスを保ち生きている。だがもし“それ”が心に闖入してしまったら‥崩れる。逃れる術はないのか?愛は救いにならぬのか? 人間考えることをやめたら終わり(=死)と思っている。例え結果を見出せなくてもいい、最期まで悶々と考え続けてやる。この小説で作者が用意した終わり方もそういうことなのではないかと私は解釈している。傑作。
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主人公、相馬鼎が受け取った一通の電報には、ある衝撃的な知らせが書かれていた。それを自分の目で確かめるべく、相馬鼎は一路広島へ向かう。作中作でもある相馬鼎の小説と、彼本人の空間的な移動、そして彼が広島に向かう理由である綾子・素子と関係のあるもう一人の男性の思い、素子の内部(心情)…すべての要素が、次の日の朝の広島という場所に収斂する。
最後に提示されるいくつかの結末、おそらくそのすべてが正しい可能性があり、すべてが間違っている可能性もある。あなたはどの結末を選ぶ解釈をしますか? -
池澤夏樹のとーちゃん。高いよ!上下で4千円て高過ぎるよ!でも絶版。古書で買ってもまあ割とするのでなら新しいの、と思ったけれども。この何本かの小説を一冊にまとめたような(決してメタではない)構造が、テクニックを見せつけるような感じがしないのは素晴らしい。しかしプルースト、とは少し違うと思う。