犬をえらばば (講談社文芸文庫)

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  • 講談社
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本棚登録 : 24
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062901949

作品紹介・あらすじ

石坂洋次郎、坂口安吾、吉行淳之介、遠藤周作、江藤淳、近藤啓太郎らとの交流を「愛犬」を通して綴る、ユーモアと知性溢れるエッセイ

感想・レビュー・書評

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  • 石坂洋次郎、坂口安吾、吉行淳之介、遠藤周作、江藤淳、近藤啓太郎らとの交流を「愛犬」を通して綴る、ユーモアと知性溢れるエッセイ。

    「安岡、おまえはよっぽど運のいい奴だ。はじめて飼った日本犬にこんなにいい紀州犬が当ることは、めったにない。これは十年日本犬を飼っても一度めぐり会えるかどうかという名犬だ」
    P66より

  •  犬をテーマにしたエッセイ集。
     確かに「犬」が主人公なのだが、実は「犬」の飼い主たちとの交友録的な側面が強い。
     その飼い主たちというのは、近藤啓太郎、遠藤周作、吉行淳之介をはじめ、江藤淳、坂口安吾、庄野潤三、小島信夫とそうそうたる作家、評論家たちである。
     特に吉行淳之介の箇所など「そこまで暴露しちゃっても大丈夫なの?」と読んでいる方が心配になるくらい、赤裸々な内容が書かれていたりする。
     それだけ、お互いに強い信頼で繋がっていたのだろう。
     ユーモラスでもあり、適度な悲哀も感じることが出来る好エッセイといった感じ。
     文章はいつも通り読みやすいが、今回「あれ、こんな漢字を使うんだ……当て字なのかな、それともこの時代はこういう書き方をしたのかな」といった漢字の使い方が目についた(気になる、というほどではないが)。

  • 犬エッセイには傑作が多いと、クラフト・エヴィング商会プレゼンツの『犬』を読んだ時にも思ったけど、こちらはエッセイの名手、安岡章太郎の手になるもの。絶対に面白いに違いない、と買ってみたら、果たしてほんとうに面白かった。
    著者によれば、「犬には飼い主の顔がうつっており、飼い主はそれに向かってヒトリゴトをつぶやいているに過ぎない。つまり犬を飼うということは、そういう孤独な遊びであって、犬をつれて散歩している人は、孤独な自分のタマシイを犬の姿に結晶させ、それを引っ張って歩いていると言ってもいいのである」だとか。そう書く安岡自身は、悪友の近藤啓太郎のすすめで紀州犬のコンタを飼い始めたことから、やれコンクールだやれ交尾だとふりまわされるさまが、吉行淳之介、江藤淳、坂口安吾、丹羽文雄、遠藤周作など、友人作家たちとの交流を交えて語られていく。
    文壇交流録としては、やはりダントツに吉行淳之介の話がそのペットの変遷と「艶福」問題も絡めて面白いのだが、ともに必ず大事な試験には落ちるという遠藤周作と顔をながめあって、「お前はなんちゅうアホな男や」と嘆息したというくだりなんか、想像すると噴き出しそう。
    もちろん犬エッセイなので、愛犬コンタの様子とその心情はほんとに熱心に観察されています。こやつが獣性を失わないでいることに、本人も飼い主も動揺してしまうあたり、冒頭の「犬は飼い主の鏡」という通りですね。安岡の筆を通して描かれたコンタの様子とともに、愛犬をいっしょうけんめい観察しては想像をめぐらす安岡章太郎自身の姿も目に浮かんできます。やっぱり犬の話はおもしろい。

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著者プロフィール

安岡章太郎(1920年5月30日~2013年1月26日)小説家。高知県生まれ。1941年慶應義塾大学文学部予科入学、44年に陸軍に応召、満州へ送られるも胸部疾患で現役免除。戦後復学するが、脊椎カリエスを患い、48年英文科を卒業。51年、文壇デビュー作「ガラスの靴」が芥川賞候補となり、吉行淳之介、阿川弘之らとともに「第三の新人」と呼ばれる。53年、「悪い仲間」「陰気な愉しみ」により芥川賞受賞。60年、『海辺の光景』で野間文芸賞、67年、『幕が下りてから』で毎日出版文化賞、74年、『走れトマホーク』で読売文学賞、82年、『流離譚』で日本文学大賞、89年、『僕の昭和史』で二度目の野間文芸賞、91年、「伯父の墓地」で川端康成文学賞、96年、『果てもない道中記』で読売文学賞(随筆・紀行賞)、2000年、『鏡川』で大佛次郎賞等、数々の文学賞を受賞。2001年、文化功労者。

「2018年 『僕の昭和史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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