かかとを失くして 三人関係 文字移植 (講談社文芸文庫)

  • 講談社 (2014年4月11日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784062902274

作品紹介・あらすじ

独特な作風と言語・文化への鋭く繊細な洞察から生まれる多和田ワールドの魅力が横溢する作品集。「かかとを失くして」「三人関係」「文字移植」


群像新人賞受賞作を含む初期中編3作。
独特な作風と言語・文化への鋭く繊細な洞察から生まれる多和田ワールドの魅力が横溢する作品集。

【底本】
かかとを失くして/三人関係……『三人関係』(1992年3月 講談社刊)
文字移植……『文字移植』(1999年7月 河出文庫刊)

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

独特な作風が特徴の作品集は、ズレた人々と不思議な出来事が織りなす物語を描いています。異国に嫁いだ主人公が感じる不安定な状態や、他人の関係性に翻弄される主人公の気持ち悪さ、翻訳作業を通じて言語の崩壊を体...

感想・レビュー・書評

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  •  どことなくズレた人たちと、ズレた世界で起こる不思議な出来事の数々。
     何なんだ、この妙な展開の話はと思いながらも、不思議と心地良い文章の魅力で読み進めてしまう。

  • ◆『犬婿入り』から多和田作品2冊目。
    ◆今回もディスコミュニケーション・意思疎通の欠如を強く感じる。主人公はいつも、「私」を含まない共同体や共通言語を妬み・軽蔑し、地団駄踏んで苦しみの声をあげる。ソフィストケートされることを拒み、言葉を解体し、言葉以前のものに戻ろうとし、あるいは過剰に連ね、駄々をこねる。◆それはまるで赤ん坊の泣き声(言葉への・世界へのラブコール)のよう。かつての子であり女であり母である私は、それを不快と思うこともできず、愛し子たる彼女を、目で耳で鼻で皮膚で子宮で全身で抱きしめたくなってしまう。
    ◆「翻訳」をテーマにした「文字移植」は、いつになく具体的で作者の核を見たようで興味深かった。多和田氏の訳すアンネ・ドゥーデンの「アルファベットの傷口」を一つの作品として読んでみたい。

  • 「犬婿入り」を読みこちらも読みたくなった。
    「かかとを失くして」は、書類結婚で異国へ移動した異邦人の話。異物(異質なもの)として生きていくのは、つまさき立ちするよな不安定な状態なのかも。三作とも平衡感覚を失うような感覚を覚えた。
    イカ、いか、烏賊・・・他は?

  • kindle unlimited

    三篇とも静かに底から不安感を煽られる作品。常識から少しズレた世界でズレた人々が暮らしている。

    『かかとを失くして』
    異国の見知らぬ人と結婚した主人公は、その異国にたどり着いても、夫に会えることはなく日々が過ぎる。そして…。

    『三人関係』
    有名人とファン。「夢小説」っていうジャンルを聞いたことがあるなと思い出しました。

    『文字移植』
    翻訳者の苦悩。読み解けてはいないけど三篇の中では一番好き。リズムがいい。ことばに対する信頼感がどんどん削がれていくような感覚になりました。

  • 「かかとを失くして」
    書類結婚をして異国に嫁いできた私、それなのに姿を見せない夫、いつのまにか欠損していた「かかと」、最初から最後まで不条理な夢の中にいるよう。

    「三人関係」
    自分自身ではなく他人の関係性=物語にのめりこんでゆく主人公がとてもきもちわるい・・・。妄想と現実の境界が曖昧になり、誰が嘘をついているのかもわからなくなる。

    「文字移植」
    翻訳の仕事のために知人の別荘にやってきた主人公、しかし翻訳はいっこうにはかどらず・・・。ある言語を別の言語に置き換える翻訳という作業はまさに「文字移植」。うまく変身してくれればいいけれど、バラバラに分解してしまうこともある。主人公の陥っている状況は、言語における一種のゲシュタルト崩壊なのかも。自らの強迫観念に追いつめられていくかのようなラストはまるで悪夢です。けれど、うなされて目が覚める、という夢オチはけして用意されてはいないので、多和田作品の登場人物たちはみな悪夢のような現実を生き続けるしかないのでしょう。

  • 多和田葉子作品を読むこと。それはたぶんに語り手の世界認識の歪み(いまで言う「認知の歪み」)をどんなツッコミどころがあろうとそのまま呑み込み、突拍子もなく散乱するイメージ群を自らの中に受肉して消化することを意味するのかなと思う。いや、「なにかを読む」とはもともとそうした営みだろう。だが多和田作品の場合は語り手があまりにも受け身すぎていて(つまり、外部でカオスとして生起するできごとにいちいち翻弄されすぎていて)、したがってこちらもその迷宮世界をさまようことになる。それにしても、この迷宮世界はどこまで「天然」?

  • 濃密な世界、なににも頼れることのない不安定感、これらは我々の生きている世界そのものであり、それらを何気ない顔で過ごす我々とは一体なんて奇妙な生き物なんだろうかね

  • 「わかりたくて」この本を読んだら、本の方から「そういう人向けではないです」と言われてしまった…いや、言ってすらもらえなかった、というのが、率直な感想です。
    そこが新たなスタートともいえる。少し寝かせて、また読んでみたいと思う。

  • 「書類結婚」でまだ見ぬ夫の住む街へ降り立つ私、会社の年下のバイト仲間から縁のある芸術家夫婦との交流の様子を伝聞で根掘り葉掘り聞いて妄想的な物語を紡ぐ私、翻訳のためひとりカナリア諸島のある島へやってきた私、、、どの話もアレゴリーみたいで普通のストーリーテリンクな物語ではないので、合わない人にはてんで受け付けないと思う。笙野さんほどではないが。。
    ただ、モチーフは具体的でそこさえなんとなく興味が持てれば意外とスイスイと読めて面白い。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/682434

  • かかとを失くして、三人関係は面白かった。最後の文字移植だけ入り込めなくて読んでない。

  • 行きつ戻りつしながら、ようやく読了。
    いつものように、ぽん、と宙に放り出されて、本の世界からなかなか心が帰ってこない。

    珍しく巻末に作者本人によるあとがきが載っていたので、それで少し現実との接地面積が広がる。
    さらにその後の作品解説と年表を見て、ようやく意識が立て直される。

    「かかとを失くして」というタイトルから、私はてっきり喪失体験から漂泊を余儀なくされる話なのかと思っていたけれど、違った。かかとを失くして、爪先立ちになって見れば、世界は絶えず異化されるという話だった。
    これって、多和田葉子作品に通底するメッセージなんじゃないだろうか?
    地に足をつけて、けれど、かかとを落とさず眺めてみれば、日常も異境に変わる。
    デビュー作、読んでみる価値はあった。

  • 多和田葉子の日本語でのデビュー作「かかとを失くして」に始まり、「三人関係」「文字移植」の初期短編三作が入っている。一文、一段落が極めて長い「かかとを失くして」、また、翻訳者である視点人物の「わたし」が翻訳するアンネ・ドューデン「Der wunde Punkt im Alphabet(アルファベットの傷口)」の、ドイツ語の語順のまま書かれた読点の多い訳文と、逆に、一つも読点のない地の文が交互に現れて展開する「文字移植」は、その独特な文体で、慣れないとやや読みづらい。

    「文字移植」は、自力で翻訳を完成させることができない女性の物語である。
    視点人物の「わたし」は、過去にも翻訳をしてきたが、そのいずれも友人のエイさんの力を借りて完成させることができた。彼女が翻訳を完成させることができない理由は、「ゲオルク」と呼ばれる、彼女に翻訳をやめさせようとする誰かの存在で、「何もかもゲオルクが悪い。ゲオルクさえいなければわたしはもっと強い人間かもしれないのに」と、彼女は思っている。
    元々「聖ゲオルク」は、ドラゴンを退治して、生贄にされた姫を助けたとされる伝説上の殉教者の名前であり、まさしく、「わたし」がドイツ語から翻訳しようとしている物語とは、この聖ゲオルク伝説だった。物語の最後、「わたし」は、ようやく翻訳を完成させるが、出来上がった原稿を送るため郵便局へ向かう途中、彼女は、彼女によって「聖ゲオルク」とされた少年やアイスクリーム売りなどの男たちによって、その道行きを阻まれる。

    異国での生活、翻訳、女性など、比較的分かりやすく、多和田葉子的なモチーフが多かったように思う。また、水を吸い取るというバナナ園、土地を乾燥させる「ドラゴン風」に、サボテンや迫るバナナの木など、水と乾燥に関わって、いじれそうなモチーフもまだまだある。そうした意味で、「文字移植」は、特に、読みやすい作品だった。

  • 多和田葉子は、難しい。阿部公房のようである。不思議すぎてついていけない。でも、がんばって読んだ。三人関係は三角関係じゃない3人の関係。文字移植は翻訳する時ってこういうことなのかなぁ、他国にいるっていうのはこういうことなのかなぁっていうのがまぁ文章から感じ取れました。

  • 読んだのは数年前図書館で、ですが
    カフカ、安部公房の系譜に連なる不条理文学をより凝縮、洗練させた感じ。
    アヴァンポップとよんでいいのかわかりませんが最後にオチまである所がユーモラスで楽しい。
    不条理もの読んだことない人はおすすめです。

  • これまで読んだ中でも、その独特な世界観は際立っている。
    半分過ぎた辺りで本が行方不明に。
    見つけ出す前に他の本を読み始める。

  • 2020/3/29購入

  • 「文字移植」は〈翻訳〉がテーマの作品やけど、特に最終部はもうちんぷんかんぷん笑 書かれてることはわかるけど(そのつもり)、その意味はわからん。体力あったら、もう一回読みます。

  • いろんな引用が張り巡らされていて、多和田文学は私には難解すぎます…。
    解き明かせるようになったら楽しいのかもしれないけど。

    「三人関係」は三篇の中で一番とっつきやすかったかも。
    いたるところにある三人関係は緊張感の連続でもあるようで、妙な調和でもあるようで、不思議な感覚だった。
    「私」の妄想なのか、綾子の虚言なのか、わからないエピソードも相まって、夢の中のようだ。

  • これはかかとがない文学である。かかとがないとは?かかとがないと人はどうなってしまうのか。前のめりで、ふらふらとしていて、地に足がつかず、その地に足がついていないのが問題であり、地に足がついていないのが問題なのは、本当に問題なのか?と問い直す影あり。
    現代社会が問われるのは、このへんのことなのではないでしょうか?地に足ががっつりついていた時代から、ふわふわと漂う、地に足がついていない時代へ。その時に求められる文学とは、今をきちんと見据えた文学とは、こういうものなのではないでしょうか。壮大な試み。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。小説家、詩人、戯曲家。1982年よりドイツ在住。日本語とドイツ語で作品を発表。91年『かかとを失くして』で「群像新人文学賞」、93年『犬婿入り』で「芥川賞」を受賞する。ドイツでゲーテ・メダルや、日本人初となるクライスト賞を受賞する。主な著書に、『容疑者の夜行列車』『雪の練習生』『献灯使』『地球にちりばめられて』『星に仄めかされて』等がある。

多和田葉子の作品

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