男性作家が選ぶ太宰治 (講談社文芸文庫)

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本棚登録 : 67
レビュー : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062902588

作品紹介・あらすじ

「この作品が自分は一番嫌いだ」(奥泉光選「道化の華」)、
「不思議な明るさに包まれた怯えの百面相」(堀江敏幸選「富嶽百景」)、
「『男性というものの秘密』を知っている作家」(松浦寿輝選「彼は昔の彼ならず」)――
七人の男性作家がそれぞれの視点で選ぶ、他に類を見ない太宰短篇選集。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルの通り、男性の作家さんが選んだ太宰の一篇をまとめた本です。
    文庫なのに1300円超えなんですが、買って良かった。

    ・道化の華
    太宰の遺書とも言われる「人間失格」の主人公と同じ名前の大庭葉蔵という人物が出てくる。女と心中して自分だけ生き残ったという設定も太宰本人っぽい。
    時々作者が顔を出して、自分の小説はなんて駄作なんだろうと嘆いているシーンがウザったくもあり笑いを誘ったりもする。


    ・畜犬談
    有名なコピペ『汚い仔猫を見つけたので虐待することにした』と言うのを何となく思い出させる。
    主人公は犬が好きなんだか嫌いなんだかよくわからないけど、犬はこの主人公のことすごく好きそう。
    最後はハッピーエンドでよかった。


    ・散華
    一番好きな話です。
    御元気ですか。/遠い空から御伺いします。/無事、任地に着きました。/大いなる文学のために、/死んでください。/自分も死にます、/この戦争のために。
    この手紙を最高の詩だと評価し、死に様を散華と評価した理由が切々と語られています。
    死を覚悟しないと、芸術は完成しないのかもしれない。


    ・渡り鳥
    オリジナリティなどは存在しない。既存のものを上手く噛み砕いて表現できるかどうかだ。とはっきり言い切っていて納得と言うかなんと言うか。
    飲み代を奢ってもらえると知ったらころっと態度を変える主人公がこんなことを言ってて、読んでいていい気分ではなかったけど、なんかのたとえ(文壇批判?)としてわざとこう書いてるんだろうな。


    ・富嶽百景
    「富士には、月見草がよく似合う」の名文とともに
    太宰が29歳のときの生活が、その時の心のありようによって変わる富士の様子とともに描かれている話です。
    この月見草のくだりは竹取物語がベースになっていたり、全体の文章構造も一つの主題が繰り返し反復されるロンド形式が用いられ、
    一見取りとめのない私小説のようでいて、その実かなり計算され、古典の知識がめぐらされた一作のようですが、詳しいことはすっ飛ばして読みました。
    心の持ちようがいいときは富士がはっきりと見え、そうでないときは見えない。
    井伏鱒二の仲介で奥さんと結婚したあたりまでのことが書かれていたけど、その後、太宰の心に富士は何度くっきり見えたのでしょうか。奥さんではない人を好きになり、心中までした太宰ですが、もしかして死ぬ前の方が富士がくっきり見えていたりして。
    太宰の心のバロメーター=富士は、奥さんやあまたの女性の支えではなく、己の芸術を貫けるかどうかだったのかなと思った。
    勝手すぎる気もする。


    ・饗応夫人
    私小説っぽくなくて、純粋なフィクション。
    呆れるほど人のいい未亡人が、いろんな人に尽くしすぎて逆に身を破滅させていくような話。
    人の好さに漬け込んでくる人にはイライラ。それにはっきり断れない夫人は心底まどろっこしい。
    語り手であるメイドはそんな夫人の態度を指して、動物ではなく人間がもつ貴さや優しさの一つだといってたけど、私はちょっと納得しかねますw


    ・彼は昔の彼ならず
    主人公をして駄目男というレッテルを貼られた青扇。
    でもラスト、主人公はこのダメ男こそ自分の姿そのものだと思い知る。
    主人公は青扇に天才の影を見たけど、実は自分そっくりのダメ男だったと気付く。青扇の最初の妻も実はそれに気付いてて、それでもいいと思ってたと明かす。
    青扇のダメダメ振り、口だけ振りにイライラし、でもなぜか女は入れ替わり立ち替わりするのに苦笑。
    これと自分がそっくりだったと気づいたときはショックだろうなと思った。


    何度か読んだことのある話もありましたが、新たな視点で読めました。
    それぞれ選者の作家さんのコメントがついているんですが、そのコメントも見もの。
    奥泉光さんは太宰のこと嫌いだってはっきり言ってるし、町田康さんは投げやりなんだかいつもの町田さんなんだかwww

  • 「畜犬談」はあらためて可笑しいし「富嶽百景」を読むと富士山に近づきたくなる。でも太宰治はいたたまれないことを上手に書き過ぎるのだと思った。ほんとうは駄目だってわかっているのに、人にはニヤニヤして見せておきながら内心生きた心地もしない、みたいな心持ちを書くのがとてもうまくてつらい。

    男性作家が選んだこの選集はそういういたたまれない短編が選り抜かれているのだけれど、ということは世の一定数の人は太宰のその手の要素が大好きで、もしかしたらそういう傾向にあるのは男性の方が多いのだろうか。いったい何を考えているのか。

    わざわざ自分の傷に塩をすりこむような読書はつらいのだけれど、「太宰治は苦手です」と言い切る前に、「女性作家が選ぶ」バージョンの方も読もうかと思う(ちゃんとある)。

  • 「男性作家が選ぶ太宰治」◆男性作家7名が選ぶ太宰治。どれも太宰は太宰だなぁと思うし好きなのですが『渡り鳥』は文章のリズムの良さとちょっと意地悪な感じ、そして最後の一文が絶妙。『散華』は、この言葉は死を美化していて好きではないのですが、このお話はこれ以外のタイトルは無い気がしました

  • さすがは並みいる男性作家が選んだ作品集である。全部面白い。
    「ちょっとちょっと…」と傍で話しかけられるような親しげな語り口と
    抜群のリズム感が心地いい。特に気に入ったものを少し…。

    「道化の華」
    ラスト3行でいきなり視界がぱあっと広がり、ぞくっと怖くなる。
    視点のトリックで読者を驚かせるのが上手い。
    「彼は昔の彼ならず」
    心の本質が似通った人間が近くにいると、お互いに感応してしまうのだろう。
    口先三寸のペテン師のような男を非難している主人公の男もまた、
    親の遺産で遊び暮らす怠け者。
    才能ある芸術家のパトロンになりたいという、
    彼の下心を見透かしたペテン師の作戦勝ち。

  • 女性作家が選んだものとはまた違う感覚の作品も多く、未読作品が多かったのでとても楽しめた。餐応夫人がすき。この作家さんはこういう作品を選ぶんだなぁ…って部分でも楽しめてなんだかお得。

  • 10代の頃に『人間失格』と『斜陽』は読んだけど、花がない印象でずっと苦手意識を持っていた太宰。「ワザ、ワザ」の呪いをかけられるようであんまり関わりたくないと思ったというのもある。今回、この短篇集を読んで、そんな苦手意識を払拭できた。どころか、好きかもと思ってしまった。
    どの作品も短編小説として端正なうえに、作家に対する尽きせぬ興味をおぼえずにはいられない不思議な魅力を持っている。うざくて面白くて頭がよくてダメで優しくてかなしくて。あーもう気になっちゃうな。これ恋ですか?
    最初に『道化の華』が収められていることで、太宰の人となりに慣れることができ、そのあとの短編をより楽しめたと思う。
    『畜犬談』はおもしろすぎた。最高。
    『散華』は理解も共感もできないんだけど、なぜだかわんわん泣きたくなった。
    『渡り鳥』は中村文則、『饗応夫人』は町田康が選者なのだが、それぞれの作家への影響がよくわかって面白かった。

  • 太宰治の作品は本当に読みやすいなーと改めて実感した。

  • 「道化の華」「畜犬談」「散華」「渡り鳥」「富嶽百景」「饗応夫人」「彼は昔の彼ならず」収録。

    「饗応夫人」、「彼は昔の彼ならず」が1番面白かった。

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プロフィール

1909年(明治42年)、青森県金木村(現五所川原市)生まれ。本名、津島修治。東大仏文科在学中に非合法運動に従事し、やがて本格的な執筆活動へ。35年、「逆行」で第1回芥川賞の次席となり、翌年には処女作品集『晩年』を刊行。以後「走れメロス」「斜陽」など多数。

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