男性作家が選ぶ太宰治 (講談社文芸文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062902588

作品紹介・あらすじ

「この作品が自分は一番嫌いだ」(奥泉光選「道化の華」)、
「不思議な明るさに包まれた怯えの百面相」(堀江敏幸選「富嶽百景」)、
「『男性というものの秘密』を知っている作家」(松浦寿輝選「彼は昔の彼ならず」)――
七人の男性作家がそれぞれの視点で選ぶ、他に類を見ない太宰短篇選集。

感想・レビュー・書評

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  • 「畜犬談」はあらためて可笑しいし「富嶽百景」を読むと富士山に近づきたくなる。でも太宰治はいたたまれないことを上手に書き過ぎるのだと思った。ほんとうは駄目だってわかっているのに、人にはニヤニヤして見せておきながら内心生きた心地もしない、みたいな心持ちを書くのがとてもうまくてつらい。

    男性作家が選んだこの選集はそういういたたまれない短編が選り抜かれているのだけれど、ということは世の一定数の人は太宰のその手の要素が大好きで、もしかしたらそういう傾向にあるのは男性の方が多いのだろうか。いったい何を考えているのか。

    わざわざ自分の傷に塩をすりこむような読書はつらいのだけれど、「太宰治は苦手です」と言い切る前に、「女性作家が選ぶ」バージョンの方も読もうかと思う(ちゃんとある)。

  • 「男性作家が選ぶ太宰治」◆男性作家7名が選ぶ太宰治。どれも太宰は太宰だなぁと思うし好きなのですが『渡り鳥』は文章のリズムの良さとちょっと意地悪な感じ、そして最後の一文が絶妙。『散華』は、この言葉は死を美化していて好きではないのですが、このお話はこれ以外のタイトルは無い気がしました

  • さすがは並みいる男性作家が選んだ作品集である。全部面白い。
    「ちょっとちょっと…」と傍で話しかけられるような親しげな語り口と
    抜群のリズム感が心地いい。特に気に入ったものを少し…。

    「道化の華」
    ラスト3行でいきなり視界がぱあっと広がり、ぞくっと怖くなる。
    視点のトリックで読者を驚かせるのが上手い。
    「彼は昔の彼ならず」
    心の本質が似通った人間が近くにいると、お互いに感応してしまうのだろう。
    口先三寸のペテン師のような男を非難している主人公の男もまた、
    親の遺産で遊び暮らす怠け者。
    才能ある芸術家のパトロンになりたいという、
    彼の下心を見透かしたペテン師の作戦勝ち。

  • 読みやすかった。『渡り鳥』が好き。
    『人間失格』とこの本しか読んでいないが、太宰はクセのある人をよく登場させるなあという印象を持った。

  • 選んだ作家たちの紹介文がもう少し長くても良かった

  • 中村文則さんのエッセイを最近読んだので、その繋がりで読みました。

    太宰治の人となりについてはほとんど何も知らないので、読む前の勝手なイメージでは「気難しく人嫌い」な人かと思っていましたが、作品を読むと「ユーモアの感覚もあって、実際に話せばあんがい話好きな人だったんじゃないか」という印象を受けました。

    個人的に良かったのは富嶽百景の一場面で、天下茶屋の2階に寄宿している主人公が店の人間とも親しくなってきた頃、店の若い女性店員が1人で客の相手をしている時に、わざわざ1階に降りて隅でお茶を飲みながら遠巻きに見守ってあげているところです。

    そんなにあからさまな優しさを出す感じの主人公じゃないんですが、さりげない描写の中に書き手の優しさが滲み出ているなぁ、と感じました。


  • 趣味を人に合わせてコミュニケーションの手段にしてしまう、ご飯の為に適当に合わせる…つまり〇〇を見れば〇〇は興味を持てない人生を上手く生きるためのものかもしれません
    自分の個性について考えさせられる作品でした。人が冷たくなるってこんな感じなんだと思いマス。

  • 女性作家が選んだものとはまた違う感覚の作品も多く、未読作品が多かったのでとても楽しめた。餐応夫人がすき。この作家さんはこういう作品を選ぶんだなぁ…って部分でも楽しめてなんだかお得。

  • 10代の頃に『人間失格』と『斜陽』は読んだけど、花がない印象でずっと苦手意識を持っていた太宰。「ワザ、ワザ」の呪いをかけられるようであんまり関わりたくないと思ったというのもある。今回、この短篇集を読んで、そんな苦手意識を払拭できた。どころか、好きかもと思ってしまった。
    どの作品も短編小説として端正なうえに、作家に対する尽きせぬ興味をおぼえずにはいられない不思議な魅力を持っている。うざくて面白くて頭がよくてダメで優しくてかなしくて。あーもう気になっちゃうな。これ恋ですか?
    最初に『道化の華』が収められていることで、太宰の人となりに慣れることができ、そのあとの短編をより楽しめたと思う。
    『畜犬談』はおもしろすぎた。最高。
    『散華』は理解も共感もできないんだけど、なぜだかわんわん泣きたくなった。
    『渡り鳥』は中村文則、『饗応夫人』は町田康が選者なのだが、それぞれの作家への影響がよくわかって面白かった。

  • 太宰治の作品は本当に読みやすいなーと改めて実感した。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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