現代小説クロニクル 1995~1999 (講談社文芸文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062902731

作品紹介・あらすじ

1975年以降に発表された名作を5年単位で厳選する全8巻シリーズ第5弾。現代小説は40年間、如何なる創作の道を歩んできたのか

感想・レビュー・書評

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  • 近現代を小説を通して知りたいな、好きな作家を見つけたいなと思ってこのシリーズをよんでいます。今回、新しい発見がありました。角田光代さんの学校ごっこ、阿部和重さんの無情の世界、この2作品に他の作品とは違う面白さを感じられる。それはなんでかなと考えてみると、作品の描かれた時代、舞台と、僕が生きた時代がおおよそ重なっている。そこからくる生々しさがある。僕にとって生だったものは、当日流行した学校の怪談や架空請求、そこからくる不気味さや罪悪感。それは作品のテーマとは違う。ぴったり一致はしない。それでも空気や感覚といったものが小説から迫ってくる。本を読んでいて楽しい。それだけじゃない。この95-99より過去のシリーズには、親たちが若かった頃の時代の空気や感覚が、きっとある。そういったことが信じられる。信じて読める。そんな発見がありました。

  • それぞれ個性ある短編集だった。

  • 『現代小説クロニクル』アンソロジー、5冊目は1995年〜1999年に発表された短編を収録。
    川上弘美の芥川賞受賞作、『蛇を踏む』が収録されていた。タイトルに惹かれて単行本を買って、一読したときの衝撃を今でも覚えているが、もうそんなに時間が経ったのか……。流石に最初の衝撃はもう無いが、川上弘美は、この頃から完成されていたのかなぁとも思う。

    黒井千次『声の巣』は留守番電話を重要なモチーフにした短編。主が不在の部屋で、勝手に入り込んだ友人たちが、留守番電話の録音を、これまた勝手に聞く……という、ちょっと不思議なシチュエーションでストーリーが進む。全編に漂う不穏な空気が不思議と記憶に残る。
    不穏といえば角田光代『学校ごっこ』もそうで、小学生同士、そこに担任教師も交えた人間関係の持っている、緊張感と今にも崩れそうなバランスにハラハラする。
    阿部和重『無情の世界』の、何処までが本当で、何処までが『ネタ』なのか解らないところも面白い。

    全体的に本巻は、ちょっと懐古的な『純文学』と、インターネット黎明期を前にした現代的な作品が入り交じった構成になっているように思う。
    全8巻予定だから残りは3冊か。これが完結したら、『戦後短篇小説再発見』の11巻以降を復刊して欲しい。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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